「それよりも話を追うごとに口調が柔らかくなってるよね、フィースト」
「…………///」
「……え?」
「神奈、そっちの探索お願い」
「あ~い……」
「……やっぱ一緒に行こう」
「う~い……」
暗い空間の中で、二人の声が木霊する。 一つはちゃんとした女性の声、もう一つは、今にも倒れそうな女の子の声だった
「マスター、しっかりしますの。 ここを超えれば、しばらく休息できますの」
そこに現れる三つ目の声。 幼さが消えない声だったが、落ち着きのあるものだった
「あのね……今、何層だと思う?」
「25層、クォーターポイントですの。 どうか致しましたの?」
「………………」
普通過ぎる回答に、盛大に心の中でため息をつく
「……それじゃあ、階層攻略する前まで、何階まで階層は解放されてた?」
「8層ですの」
「だれる理由わかった?」
「世の中の俗に廃人と呼ばれている方たちは、24時間通しても大丈夫らしいので……マスター、後少しですの」
「……何その励まし方……」
……励ましてくれてるだけありがたいか
「神奈、大丈夫?」
「大丈夫に見えます?」
「うん」
「…………」
どうやら大丈夫らしかった。 現実世界でこんな無理をすれば、目の下が真っ黒になることだろう
「まぁ、ボスとか全部神奈に任せてたからね……」
「こっちのレベルと装備が充実してるせいで、無駄に堅いだけだったから大変でした」
25層の推奨レベル、およそ30。 こちらのレベル、祝3ケタ突破。 ボスを瞬殺できる一撃が重いスキルがなく、ほとんど連撃ばかりで戦闘が作業化していた
「フィースト、なんかいい一撃必殺スキルない?」
無駄に多いスキル欄を見ながら言う
「そっちの方がスキル豊富でしょ?」
「…………」
……探すのが大変なんですよ
「一発が重たいよりも、連撃で怯ませながら攻撃していったほうが、爽快感でない?」
「身体が疲れます」
「大剣使ったらどう?」
「あれは範囲技しかないよ」
「高く飛び上がって叫びながら叩き斬ったらそれっぽくなりそうだけど?」
……具体的すぎるよ
「…………お?」
無駄に多いスキル欄の中で、ようやく体術の部分を見つけた
「鋼塵撃……迅影……応龍玉……豪覇究級掌……?」
名前を読めただけで感心している自分がいた
……これ、やっぱり劉が考えたのかな。 ……ゲーム一本作れそう
「なんか……すごそうな技だね」
フィーストが苦笑いを浮かべて感想を述べた
「試してみたら? ちょうどモンスターが近くにいることだし」
「そうしてみます」
すぐ隣の空間にモンスターが発生したのを確認し、スキルの発動条件を見ながらそこにいく
「すぐ近くで見ているから。 何かあったら入るよ」
「了解」
モンスターを視認できる範囲まで来た。 さっき倒したものと同じ種類のモンスター、リザードマンが空間内を徘徊していた
「……まずは鋼塵撃から」
リザードマンに奇襲を仕掛け、怯ませる
「ふっ!」
そこから、片足を軸に一回転して勢いよく掌底を繰り出す
「はっ!!」
続けざまに、もう片方の足を軸に半回転して同じように繰り出す
「…………あれ?」
物足りないまま、そこで技が終わってしまった。 リザードマンもライフがゼロになり、消滅した
…鋼を塵にする割には……一手足りないかな。 何かコンボの初段で出すようにしよう
「今のすごく切れてたよ」
「……どうも///」
……魅せてたわけじゃなかったけど、褒められるとなんか嬉しいな
「じゃあ、次は迅影ね」
「うん」
こちらに気がついていないもう一匹のリザードマンに狙いをつける。 そして姿勢を低く、片手を腰の位置に構える
「こうすれば、発動するはず……――!!」
装備しているグローブに光が走った。 スキル発動の合図だ
「っ!!」
地を蹴ると、自分でも驚くほど速く動け、あっという間に距離を詰めることができた。 勢いを殺さずにそのまま両手を突きだすと、リザードマンを後方に吹き飛ばした。 吹き飛ばされたリザードマンは壁にぶつかって消滅
「…………」
…………移動技なのか。 一気に距離を詰めることができるから便利だ。 初手に使うとしよう
「……今の、私でもちゃんと捉えられなかったよ」
「見えてたのね」
「まぁ、ね」
「…………」
瞬間移動できる人の言う言葉には、妙な説得力があった
「次は?」
「応龍玉……全然イメージが湧かない……」
「ものは試しっていうから、やってみなよ」
「うん……」
さっきのリザードマンで部屋に居た個体は全部倒してしまったので、出現する間に再度スキル発動条件を確認する
「……うーん……」
……スキル発動に要する時間は二フレームで、発動させるには鋼塵撃を繰り出した後に両手を引いて、攻撃時には獲物を丸呑みする大蛇の如く両手を上下に大きく突き出す……で、いいのかな。 ……これ、格ゲーだったっけ
「来たよ」
「!!」
フィーストの声でメニューを閉じて頭を上げると、リザードマンが二匹復活していた
「…………」
コンボを繋げている最中に倒してしまわないように、弱い武器に変えておく
「そりゃっ!」
そして奇襲を仕掛け、鋼塵撃を繰り出す
「っ!!」
二撃目を繰り出した後、両手を引いて勢いよく上下に大きく手を突き出す
「!!!!」
すると、両手の間の空間から光が溢れた。 そのせいで、目が眩み、肝心の技が見れなかった
「おおぉ~!」
フィーストが感嘆を漏らした。 視界が元に戻ると、リザードマンは既にいなかった
「フィースト、どうなってた?」
技を発動したままの姿勢から直り、フィーストに訊く
「神奈の両手から人一人余裕で入れるような光の球がいきなり現れて、モンスターに多段ヒットして一瞬で消滅させてた」
……よくわかんない
「なんか映像とかない?」
「そうくると思って、鋼塵撃から録画しておいたよ。 用意周到でしょ?」
……いつの間にやってたんだ……って、スキル発動条件を確認してた時か
「……はい、お好きにどうぞ」
フィーストが準備済みの動画プレーヤーをこちらに見せた
「ほい、っと」
再生ボタンを押して再生する
「…………………」
鋼塵撃から見てみると、フィーストが切れる、と言っていた意味がよくわかった。 自分でも速いと思った
「…………」
鋼塵撃が終わり、迅影に移った。 それなりに距離があったのにも関わらず、まるで瞬間移動したかのように距離を詰め、リザードマンを吹き飛ばしていた
……先制攻撃とか余裕でできそう
「………………」
最後に応龍玉に入った。 鋼塵撃を放った後、両手を上下に突き出している
……ここから技が……
「!!」
突き出した両手のひらの辺りから急に大きな光の球が現れ、リザードマンを巻き込んだ後、消滅するとともに吹き飛ばした。 そこで映像は止まった
「………………」
驚きのあまり、モンスターが徘徊してるというのに呆然としてしまった
「ね? 言ったとおりでしょ?」
「理解できなかったから……」
「……縛り上げてレイに渡しちゃうよ?」
「すみませんでした」
身の危険を感じ、土下座して謝る
「マスター、それはそれで失礼ですの」
「うぐっ……」
……一体どうしたらいいんだろう……
「……まぁ、それはいいとして、最後の技を試してみようよ」
「……うん」
なぜかこちらに気がつかない間抜けなリザードマンに狙いをつける。 そして、スキル発動条件を確認する
「…………」
……こっちも時間は二フレーム……発動させるには迅影を出して、攻撃時には迅影の後に一撃を出すだけ……どこかで似たようなのをやった気が……
「よし……」
再び狙いをつけ、腰を落として構える。 グローブが光り、迅影が発動した
「っ!!」
迅影で瞬時にリザードマンのすぐ近くまで迫り、そのままの勢いで正拳突きを放つ
「!?」
さらにグローブが輝き、虹色の光を放ち始めた
……まだ続きが……?
「!」
一回毎にしか効果が出ない迅影がまだ継続していた
……もう一撃いける!
「ふっ!!」
ライフがゼロになってもなぜか消えないリザードマンに再接近する。 普通に迅影を発動させた時よりも速く動けていた
「はあっ!!」
思い切り掌底を叩きこむと、手のひらから膨大な量の虹色の光が勢いよく解き放たれた。 それに直撃したリザードマンはその場で消滅していた
「…………」
「……凄いね」
……凄いけど……現実味がないや……
「今のも録画しておいたから、見たくなったら言って」
「今すぐ見ます」
……客観的に見ることができるなら見ないと損だ
「はい」
フィーストが準備完了のプレーヤーを回してくる。 時間がやけに少なかった
「ポチ、っと」
再生ボタンを押すと、私が腰を落として構えているところから始まった。 そしてグローブが光り、リザードマンの目の前に瞬時に移動し、リザードマンに正拳突き
……ここから発動する……
「……!!」
再接近して掌底を当てると、手のひらから虹色の極太のビームのようなものが放たれた。 距離が遠くなるほど扇状に開き、ビームの周りには衝撃波が見えていた
「…………」
その光景を見て、とある記憶を思い出した。 道場の師匠が指弾でサンドバッグを粉砕していた光景だ。 もっとも、あれは目に見えない波動だった
「…………」
……手からビームなんて出すんだったら、掌よりも砲に変えたほうがいいんじゃないかな、これを考えた人は
「豪覇究級掌、だっけ? これでボス攻略が捗りそうだね」
「そう、ですけど……」
……もっと気軽に発動できて、一撃が大きいのがいいんだよね。 今のままだと、かなり疲れる
「マスター、あんまり欲張ってはなりませんの」
「連続で動き続けて疲れたんです。 楽になったっていいじゃないですか」
「装備欄にATK値が限界値になってるものがありますの」
……『ものすごくつよいOO』シリーズのこぶしのことか
「それを着けたら負けな気がする」
「そのプライドが疲れる原因になりますのよ」
「ぐっ……」
……そう言われると返せない
「派手な技を連発するか、強い装備で無双するか、どちらか選べ! ですの」
「……派手な技で」
レイの変な気迫に気圧されても、プライドを選んだ。 レイの言葉で『ものすごくつよいこぶし』には変な効果音があることを思い出したからだ
「後少しで一旦階層攻略を中断できるから、頑張っていこうよ」
「それならフィーストがアタッカーやってください。 サポートでバフつけてるんで」
「レアアイテムもらってもいいの?」
「……」
アイテム欄を見てみる。 スクロールしてみても、厚さ一ミリ程度のスクロールバーはなかなか動かなかった
「……もう充分です」
「いらないの売っておけばよかったのに……」
「……」
お金を見てみる。 左端の枠ぎりぎりまで数値が詰まっており、桁が限界だということがわかった
「カンストしそうです」
「効果が強い回復アイテム詰め込んだら?」
「…………」
再びアイテム欄の消費アイテムの欄を見る。 そこには、状態異常とライフを完全に回復できる完全回復薬がずらりと並んでおり、ただ一つ残った空欄には転移結晶があった
「買う余地、ありません」
「そっか……じゃあ、行こうか」
「はい」
ボスがいるであろう大きな扉まで移動する。 そこに行くまでに遭遇したモンスターは、全て殴って消滅させた
「……あぁ、カンストまで秒読みされてる……」
「お金って地面に置けなかったっけ?」
「やってみます……」
お金のアイコンを試しに押してみると、ダイアログが現れた
「渡すのと……置くのがあります」
「全額募金してきたら?」
……それはさすがに……でも……
「桁数一つ下げるくらいなら寄付してもよさそう」
「行きませんの?」
「!」
レイの言葉に気を取り直す
「お疲れでしたら、早く済ませることをお勧め致しますの」
「ん、じゃあ行こう」
「了解です」
扉に手をかける。 冷たい鉄の感触が伝わってきた
「……!」
その時、ある疑問が浮かび上がってくる
「レイはどうするの?」
「敵さんには攻撃されないし狙われないので問題ありませんの」
「あ、そう……」
……じゃあ、来ても問題ないか
「準備いい?」
「OKです」
装備を常識的に見て、現時点で最強の武器に切り替える。 装備は『猫パンチ』。 全ての能力値に+300の補正がつく
「……神奈」
「何ですか?」
「いや……」
私の方をちらっと見て、そして俯いてしまった
「なんでもない。 三、二、一で突撃するよ」
「?」
一瞬だったが、その時に私の上の方、足元、そして手元を見ていた
「…………!」
……猫パンチは狙ってやったわけじゃないんだけどなぁ
「……三……二……一……っ!!」
「んぬぬ!!」
気を取り直して、重い扉を一気に開け、中に入る
「ボスは……」
「!」
視線の先、暗がりの中で、四つの紅い物体が妖しく光る。 そして、空間が塗り替えられ、様々な色が壁を覆った
「禁止区域にしては……神奈、私から離れないで」
「っ! わかった」
嫌な空気を感じ、フィーストの隣に立つ
「ボスは……あれでいいのか」
フィーストの向く先には、二つの頭を持った巨人が居た
「…………」
それを見てると、不快な気分に陥った。 巨人には、嫌な思い出しかなかった
「マスター、無理をしなくても……」
レイが心配したのか声をかけてくる
「……大丈夫。 同じ轍は二度も踏まないよ」
「それならいいですの。 この空間は結晶の使用を制限されてるほか、データが不安定になっておりますの。 誤って狭間に落とされないよう戦闘には注意をしてくださいですの」
「うん」
……今回は初のサポート役だから、激しく動かなくて済むかな
「……」
巨人の体力を見る。 バーは五つ。 それなりに硬いのかもしれない
「こっちから仕掛ける。 ついてきて」
「了解」
フィーストが大剣を出しながら疾走し、それに続いていく
「っ!」
フィーストが巨人の目の前まで迫ると、天井付近まで飛び上がった。 フィーストに気を取られている間に巨人の視界から外れる
「はぁあっ!!」
落下しながら、フィーストが巨人に向けて大剣を振りかざす。 大剣が当たると、巨人のライフが一気にバー四つ分減った
「………………」
……もしかして、さっきのは技を試す前に言っていたやつかな
「っと……」
仰け反った巨人が、姿勢を戻すと同時に両腕を振り回してきた。 それを距離を取ることで回避する
「神奈、出番だよ」
「何の?」
「指弾、あるでしょ?」
……豪覇究級掌のことかな
「今、突っ込んだら危なくないですか?」
「? ……まぁいいや」
何かすれ違っている気がした
「放っておくとあのまま回っていそうだから足を止めてほしいなぁ、って思ってたんだけど、武器投げつけてみる」
「手裏剣?」
「今装備してる大剣」
「……」
……片手剣を投げるならわかるけど、身長と同じくらいある大剣を投げるなんて……考えてることが大胆すぎるよ、フィースト
「それっ! 飛んでけ!!」
フィーストが槍投げの要領で、巨人に向かって大剣を投げつけた。 それが巨人に突き刺さると残り一本のバーも空になり、消滅した
[Congratulation!!]
「…………」
ずっと階層攻略をしてきたせいか、お祝いメッセージにも慣れてしまった
……これって本来、たくさんの人数でぎりぎりの戦闘を繰り広げながら勝利するからくるんだよね。 それをほぼ一人で楽々と終わらせるんだからもう……
「マスター、何か不満がおありですの?」
「何にもないよ」
「そうですの? 簡単に勝てたから物足りなさを感じているとお見えしましたの」
「………………」
……この子、怖いです……
「…………」
「……」
レイから目を逸らしてフィーストの方を見ると、フィーストは周りを警戒していた。 片手で大剣を引きずり、もう片方の手で結晶でできた剣を握りしめながら
「……!」
そして周囲を警戒しながらこちらに来ると、ちょうど壁を覆っていた色が消え、元の薄暗い空間に戻った
「…………」
フィーストが傍まで来るものの、一向に警戒を解かない。 それのせいで緊張が解けない
「……ここから出よう」
「はい」
不穏な空気を拭えないまま次の階層への扉に向かう
「ここまでは何もなし……か」
「……」
扉までたどり着くが、その間は気が抜けなかった
「開かない……」
ボスを倒したはずなのに扉が開かなかった。 押しても引いてもびくともしない
「神奈、危ない!!」
「ぐっ……!」
急にフィーストに吹き飛ばされ、地面を転がった
「……!」
起き上がってフィーストの方を見ると、私がさっきまで立っていたところに巨大な鳥の足が突き刺さっていた。 それが引き抜かれると、こちらに向いてくる
「っ…………」
こちらが精一杯なのをあざ笑うかのように、足だけだと思っていた全体の姿が現れた。 ただでさえ足が大きかったのに、それが小さく見えるほど鳥の身体は大きかった
「…………!」
鳥が姿勢を低くし、足に力を溜めだした
「そんなところを見ていていいのか?」
「!」
鳥がフィーストの声に気付いて振り向こうとしたその時、鳥の身体から巨大な結晶が突き出た
「っらあ!!」
鳥の身体が浮き上がって振り回され始めた。 そして振り回されている間に結晶が抜け、壁に叩きつけられる。 フィーストの方を見ると、いつの間にかもう片方の手に、刃の部分を巨大化させた結晶の剣を握り締めていた
「ふっ……」
巨大化させたままの剣を鳥に向けて、思い切り投げつけた。 さらにもう一つ投げ、ちょうど壁に叩きつけられた際に広がった両翼を縫いつけるように突き刺さる
「……私がすぐそばに居たことが大きな誤算だったな」
フィーストが何も持っていないのに、半身をずらして両手で剣を構える仕草をする。 すると、光が迸り、身の丈ほどある結晶でできた大剣が現れた
「これで!!」
またしてもそれを投げつける。 鳥の身体の中心部に突き刺さると、そこを中心に、結晶が四方八方に突き出てきた
「……終わりだ……」
結晶が弾け、鳥の身体が四散した。 鳥を形成していた欠片が黒い煙を立てながら消滅していく
「……生身の人間にやったら、間違いなく放送規制で真っ黒画面が入りますの……」
「…………」
フィーストの一方的な攻撃をしている光景と、レイの突っ込みどころ満載の言葉で混乱した
「……」
混乱しつつも状況を把握し、扉の方に歩いていって開けようと試みる
「……!」
すると、今度はすんなりと開いた
「フィースト、開いたよ!」
「わかった」
フィーストとレイがこっちに向かってくる
「今回の件でようやくはっきりしたよ」
「何がですか?」
「今まで散々道中で妨害してきていたものが」
……空中庭園なのに落とし穴とか、初見じゃ絶対に見破れるわけがない即死トラップや、マップ上には表示されていないのにそこにある壁のことかな
「あれって一体何なんですか?」
扉をくぐり、階段を昇っている最中でフィーストに訊いてみる
「あれらはここでいうバグ、だよ。 世界の、ね」
「は、はぁ……?」
……世界のバグ……このゲームの中に発生した有害なバグってことでいいのかな
「このゲームを終わらせず、徹底的に妨害し、それでもなお進もうとするのなら抹殺する悪質な代物だよ」
……うへぇ~……
「……そ、それが何で私達ばかり?」
「最前線にいるからだよ。 いなければ何もしてこない、今のところはね」
……今のところは? ということは……
「もし……もし仮に50層くらいまで登ることができたら……」
「手当たり次第殺し始めるだろうね……」
「……!!」
半透明の怪物に大事な親友が殺される情景が浮かんでしまった
……真貴奈……
「でも、そんな奴らでもこの世界のルールには逆らえない」
「?」
「あいつらはこの世界にバグという形で入ったに違いない。 だから、システムによる絶対的安全圏には入れないはず」
……街に安全圏……?
「……つまり?」
「街から出なければとりあえずは大丈夫ってこと」
心の中でほっとする
……真貴奈は襲われずに済む……
「フレンドに連絡しておいた方がいい?」
「パニックに陥ると困る。 ここはプレイ中に開発者に連絡しておくのが得策だよ」
階段を上がりきり、その先にある扉を開くと、もう何回も見た広大な草原が広がっていた。 少し先に目的の街が見える
「ちょっと言ってみる」
「はい」
フィーストがフレンド一覧を開き、とある名前の欄を押してボイスチャットを開いた
「………………」
「………………」
中々相手が出てこないようだった
「……またか……」
「……また?」
「神奈を助けるときも一回じゃ出てこなかったんだよ」
「へぇー」
……そんなことが……というか、そんなフレンド一体どこで……
『……また問題事か?』
「まぁ、そんなところだ」
「…………」
……どこかで聞いたことがあるようなないような……
『その様子だと……救出できたようだな、おめでとう』
「なかなかいいスリルを味わえたよ。 後で絞めてやるから覚えてろ」
『……冗談と受け取っておく』
……思い出した。 確かヒースクリフっていうけど実は開発者の茅場って人だ。 いつの間に取ったんだろう
『今度はどうした?』
「システムによるユーザーの保護の範囲について聞きたい」
『現実でやれば死ぬようなことはこっちでも死ぬ。 ……そういうことか?』
「ちょっと違う」
……どこまでやると駄目かじゃなくて、どこまで保護されてるか聞きたいんだよね
「モンスターは町に入れないとか、デュエル以外は町の中じゃ傷つけられないとか」
『……前にも似たようなことを聞くが、そんなことを聞いてどうする?』
「できるのならそれを強化してほしい」
『なぜ?』
……向こうは事情を知らないんだったっけね
「薄々気づいてるんじゃないか? 自分が手掛けてきたものに不純物が混じっていることに」
『……君の仕業か?』
……知らなくても感づいていたみたい
「だったらシステムを強化しろだなんて言わない」
『それもそうか。 具体的にどうすればいい?』
「今からそっちに対象のデータを送る。 それらとの距離が近くなった場合に瞬間的に近くの街へ強制送還し、その階層の出入りをしばらく禁じるプログラムを作ってくれ」
……データなんてどうやって取ったんだ、って突っ込まない方がいいかな
『……わかった。 だが、他のプレイヤー達はどうする? 私は町の中だけを動き回らせるためだけにこの世界を作ったわけではないぞ』
「まだすぐに来ると決まったわけじゃない。 今の間なら組み込んでも問題ないよ」
……予告なんて一切ないけど
『そうか……すまないな』
「それと、そっちに階層の様子を映せるものはないか?」
……フィースト……まさか……
『覗き見か?』
……同じことを考えてた
「最前線で行動してるんだ。 こっちから楽に確認できればそれに越したことはない」
『そういえば26層にいるのは君達三人だけだったな。 特別に使えるようにしておこう
……真貴奈は来てないのか
「感謝する」
『なに、これも何かの縁だろう。 また何かあったら連絡をくれ』
「次からは早く出ろよ?」
『……善処しよう』
ボイスチャットの終了を示す音が鳴り、フィーストがメニュー画面を閉じた
「……これでなんとかなるかな」
「そうじゃないんですか……」
……開発者を言いくるめるプレイヤーなんて、今までやってきたオンラインゲームの中でも一度もなかったよ。 ……それよりも早く休みたい
「……」
少し遠くに見える街の城門に向く
「……はぁ」
精神的に限界を感じ、その場に座り込む
……どうして街に入らないとアクティベートできないの……?
「マスター……しょうがないですの。 頑張りに免じて出血大サービスであそこまでお届けですの」
「…………」
あまりに疲れすぎて、お礼を言うことができなかった
「その代わりに……」
レイが指を自身の口元に軽く添えた
「……これですの♪」
「…………」
それを見た瞬間、全身が凄まじい脱力感に襲われ、意識を失った
フィ「第……二?回、質問コーナー」
カ「まだ二回目なのにもう回数忘れてるよ……」
フィ「んで、ここに来たからには何かあるんでしょ?」
カ「うん。 私の猫耳と尻尾はいつとれるの?」
フィ「クリエイトし直さないと無理」
カ「………………」
フィ「髪結んでいるの解いてメイド服でも着たら似合いそうだと思いマス」
カ「……今度やってみる」
フィ「…………(冗談で言ったのに)」