いたりなにのもきんにはくゃじのまあ   作:喜怒哀LUCK

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前回書き忘れていましたが、この作品は『博麗霊夢の小間使い』の裏にあった話となっています

霊夢と小間使いが異変までに過ごした三年間、語られなかった期間の話です

小間使いのほうの閑話として入れようかと思いましたが、いっそ新作としてだそうかと


いしさやりぱっやはスリア

 魔法の森にすむ魔女アリス・マーガトロイドは最近妙な噂を、自身が魔法で半自動化した自立人形『上海』と『蓬莱』から聞いていた。なんともおかしな話だが、生き物や植物が、ある方向から遠ざかるように移動しているとのこと。生き物が移動するのは別に、食料を求めてだったり、魔獣の類から逃げるために移動するのは珍しくなかったのだが、植物までもとなると珍しい。初めて聞いた話だ。その噂に興味はあるが、自身の魔法の研究と、人形の完全自立化の研究を秤にかけるまでもなく、どこか頭の隅に置いていた。

 

 それからどれだけ経ったか、家の周りから生き物の気配が消えていった。いくら魔法の森に瘴気が漂っているとはいえ、それに耐えられる生き物は少なからずいる。周辺に生息している生き物は全てそれに当てはまっているはずだから、瘴気にやられたわけではないだろう。

 食べ物を求めて移動したかとも考えるが、生き物の気配が消えると同時に、植物から元気がなくなっているようにも感じる。瘴気を吸って成長する森の植物は、稀に魔力を持つものができるが、それも感じられないのだ。そこで以前上海と蓬莱が教えてくれた噂について思い出す。

 

「元を辿れば原因が見つかりそうね。本来こういうのは魔理沙や霊夢がやるんでしょうけど、魔理沙はともかく霊夢は動こうとはしないでしょうし」

 

 こんなことは滅多に起こらないし、異変としても良いだろう。そうなると異変解決のためにいるといっても違いない博麗の巫女霊夢か、よくそれに引っ付いて我先にと異変を解決しようとする同じ魔法の森の住人の魔理沙が率先して動くべきだろう。

 しかし霊夢はどこかずぼらで、異変といえども幻想郷に対して影響が少ないと動こうとはしない節がある。最近は「同居人」のおかげで幾分かマシになっているらしいが。魔理沙も魔理沙で、ここに住んでいるのならこの異変には気づいているはずだ。

 

「それなのに解決されてないのは、異変を起こした犯人が強いという線は────ないわね。あの娘ったらスペルカードも火力が高いのばかりだから、近くで何か起きたら気づくはずよ」

 

 まだ魔理沙が異変に気付いていない可能性が出てくる。それなら異変が解決されていないのにも納得できるが、そうなると誰かが解決しなくてはならない。

 

「仕方ないわね」

 

 放っておいたら誰かが解決するだろうが、すでに影響は家の周りにまで浸透しているのだ、待っていたら犯人と遭遇する可能性はある。戦って簡単に負けるような力量じゃないことは自分自身のことだからよくわかっているが、万一のことがある。こちらから先に仕掛けて不意を狙ったほうが良いだろう。

 そう考えてアリスは作業を一時中断し、上海と蓬莱を連れて、より何も存在しないほうへと足を進めた。

 

 

 正邪は約一月前から魔法の森を歩き回っていた。基本住処を決めていない正邪はどこにでも現れるが、それが仇となりほとんどの場所で誰も見つからないという、独りぼっちの時間を過ごしていた。せっかく考えた作戦も、誰にも会わなければ意味がない。一縷の望みをかけて、魔法の森にやってきた。この森は瘴気が漂っていて、生半可な生き物は存在しない。それほど強い生き物がいるなら少しくらい、と思っていたのだが。

 

「…………ぐすっ、ぐすっ

 

 そのアテも外れて、どれだけ探しても誰にも会うことは叶わず、期待していただけに、そのショックは大きく、泣きながら地面に蹲ってしまった。

 最後の頼みの綱だったので、これからどうするかを考えていると、ゆっくりと誰かが近づいてくる音がした。周りには何もないからこそ、どれだけ気配を隠してもそれはわかりやすい。

 

「────妖怪? それにしては随分と貧弱そう」

 

 そして現れたのは金髪の美少女だった。西洋人形のような無垢の美しさが備わっていて、佇まいからは気品ささえも感じられる。脇に人形を二体携えているのはどうしてだろうか。

 少しだけ正邪は警戒する。わざわざ自分に近づいてきた意図は何だろうか。考えられるのは、ついに私を始末するという考えを持つものが出てきた、というのが最悪の場合ある。

 

「ねぇ、ここらの生き物が貴女を中心としていなくなっているのだけれど、犯人は貴女かしら? だったら退治しなきゃならないわ」

「犯人っていうか、まぁそうなんだけどさ。反省はしてないけど後悔してるんだから、そんな責めなくてもいいじゃんかよぉ……」

 

 確かに悪戯が過ぎたことは認めるし、それによって嫌われてこんなことになったのは自業自得だとは思うけど、独りぼっちになって悲しいのに追い打ちされると流石に耐えられない。

 じわじわと涙が溢れ出てきて、若干えづきだす正邪。そんな姿を見せられて可哀そうだと感じたのか金髪の美少女、アリスはどういうことか説明を求めた。

 

「私は天邪鬼だから人の嫌がることをするのが好きだし、やってたんだけど。急に周りから誰もいなくなっちゃってさ……。それまではどこかに行けば誰かがいたけど、こんなに独りぼっちなのは初めてだよ……。人里でも石投げられるし、悪かったと思ってるけどさぁ……」

 

 正邪から説明を受けたアリスは、なんとも言い難いなと感じていた。どう考えても正邪の自業自得なのはわかるのだが、天邪鬼な以上妖怪としては正しいわけで、度が過ぎたとはいえアリスからしてもここまで迫害されるものなのか、という同情の心が沸いた。

 それでどうしたいのか聞いてみると、今のままは嫌だからとりあえず誰でもいいから一緒にいても許してくれる奴が欲しい、とのこと。本来の正邪とはかけ離れた、随分と下手に出ている。

 

「…………くすん

「ほら泣かないの。これで拭きなさい」

 

 アリスは基本面倒見がいい。同じ魔法の森にすむ住人としてか、それとも師としてか、手が空けば魔理沙の家に行き、掃除洗濯、食事の用意など色々手を焼くほどだ。そんなアリスが正邪を放っておけるわけもなく、泣き出した正邪にハンカチを手渡した。

 

「三日後のお昼、人里にきなさい。貴女が本当に今をどうにかしたいのなら、手伝ってあげる」

 

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