黒歴典〜悶えながら頑張る人〜 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
八木橋さんの秘密が知れてから1週間たちました。
え?杉岡さんのくだり?
いや、いやいやいや。
ご冗談を言わないでくださいよ。
必要ですか?
必要ないですよねぇ。
まぁ、でも一言でまとめると、こうですかね?
テンプレ乙
はい。
あ、でも、私の能力から逃れられた理由がよく分からなかったですよね。
あれ杉岡さんの体質に秘密があったんですよ。
少し前にも言った通り、杉岡さんの体質は「中途半端になってしまう体質」です。
そして、この前飲み込んでしまったジュエルシード。
この二つが中途半端に混ざり合ってしまったことにより、彼の体質が進化したんです。
それは、杉岡さんが願うことによって、中途半端になる能力が使えるようになったことです。
気まぐれに。
これは世神じいちゃんに聞いたことなので、事実なんでしょうが、その、なんというか、杉岡さんの体質が発動する確率が、
『儂がほうじ茶を飲むのと同じ確率じゃ』
この説明で「あぁー」と答えた私に、一発いれてやりたいです。
でも、そんな低い確率のものを私の能力から逃れるのに使ってしまったなんて…………
ちなみに、本人には言っていません。
だって、確率が確率ですから…………
……時は変わって現在。
私は今、部室にいます。
「ねぇ、三鷹君、お茶飲む?」
「なぁ御門、このマンガの続きないの?」
人が増えました。
「えーと、みなさんはなんでここに?」
「「いや、入部したから」」
「あ、そうですか」
……………………
コポコポコポ。
パラ、パラ。
部室に聞こえるお茶を注ぐ音と、マンガのページをめくる音。
いやー、のどかでいいですね。
「……………………」
「……(チラッ)」
「…………(チラッ)」
上から、私、八木橋さん、杉岡さんの順です。
私は、読心術は使えないですけど、今のこの流れは空気を読めない方以外だったら、大体の察しはつきます。
ツッコミです。
きっと2人は待っているのでしょう。
私が『いつ入部したんですか?!』というツッコミをするのを。
だけど、あえて私はしません。
いや、できません。
ネタバレしてますから……
いや、私も今日の朝まで知りませんでしたよ。
だけど、今日家を出る時に、世神じいちゃんから、
『あ、そういえば、あの2人部室に入れる状態にして、お主の部に入部させといたよ』
私にも、世神じいちゃんにも、悪気はありませんでした。
しかもその時は、条件反射で、分かりました、って答えてしまって、後から1人でツッコミしてましたよ。
でも、私も少し言葉のチョイスを間違ってしまいました。
最初の『みなさんはなんでここに?』という質問は、日直とか学級の仕事がないのですか?、という意味で言ったのに、自分で地雷踏んでしまったとは予想外でした。
「…………あの……」
私は重い口を開く。
なんで私がシリアスムードでもないのにこんな重い思いをしなければいけないのか、すごく不思議です。
『ぶぁはははははは!!」
念話の向かい側の人がうるさいです。
というか、この人マジなんなんですか?
あの一軒以来、何回か私達の家に遊びにきてますけど、その時の世神じいちゃんのキャラが…………
八木橋さんの前では優しいキャラ。
杉岡さんの前では親切キャラ。
2人いるまえでは両方を合わせたキャラ。
結果、私は世神じいちゃんに完全に逆らえなくなりました。
逆らえば、2人にあることないことが吹き込まれて…………
あ、話してる最中でしたね。
私は先程の言葉の続きを考えつつ、話します。
「私は「ガラガラガラガラ!!」誰ですか?!」
私は少しホッとしながら、扉の方に視線を向けます。
2人も同様に扉の方に視線を向けました。
そこにいたのは、
「よっ、御門、俺のこと部活にいれてくれよ!!」
「よ、よ、よ、吉木さん……」
そこにいたのは、私の友人の、吉木和人さんがいました。
私の思考が一気に加速します。
私の頭の中にはいくつかの選択肢が出てきました。
物理的に逃げる。
倒す。
現実から逃げる。
謝る。
精神的に逃げる。
『物理的に逃げる』がこの場において最適だと判断されました。
私が逃げようとしたその瞬間。
「キャァァァァァァ!!!!」
約一名から歓喜の声が上がりました。
その人とは…………
「八木橋さん…………」
「ねぇねぇ、なんでここに吉木かんが?!
やっぱりあれなのかな?!三鷹君狙いかな?!
いや、もうこの際そんなことどうでもいいんだよ!!
付き合ってよ!!
そして見せて欲しいの!!男同士のイチャイチャというものを!!
私は、猛烈に、感動してます!!」
「え、まさかの腐女子?!」
今のツッコミは杉岡さんのものです。
対して私はというと。
「……………………」
ついていけませんでした。
当然私は、物理的だけではなく、精神的にも、現実からも逃げる事に決めました。
ダッ!!!!
「ん?どうした?御門?」
だけど、私はいつの間にか腕を掴まれていました。
私は驚きました。
明らかに吉木さんは、部室の中心にいました。
おそらくドアまでは4、5歩。
対して私は、目測ですが、確実に吉木さんの手の届かないところを通ったはずでした。
なのになんで私は吉木さんに腕を掴まれているんですか?
「あ、そっか、これ必要だもんな」
そう言って吉木さんは、一枚の用紙を私に差し出しました。
そこに書いてあったのは、
『入部届 氏名 吉木和人
部活名 KY部
入部動機
友人の御門君がいるから』
「あ、ありがとうございます」
私はその手紙を何時もの調子で言いながら受け取ります。
手紙はポケットに入るくらいに折りたたんでしまいます。
その間も笑顔を崩さないようにしていますが、私は思いっきり大声で、念話をします。
『世神じいぃぃぃぃぃぃちゃぁぁぁぁぁぁん!!』
『儂じゃないよ♡』
ブツッ
強制的に念話を切られました。
私は考えようとしましたが、すぐに思いついてしまいました。
あ、これ吉木さんが自分でやったんですね。
私はこの教室を
という事は、これは全て吉木さんには効かないんでしたね…………
『愛の力に特典なんぞないも同然』
「ま、よろしくな、吉木」
「あぁ、こちらこそよろしくな」
吉木さんと杉岡さんは、握手を交わす。
でも、なぜでしょう。
私には、その握手が友好の握手、というより、同盟を結ぶ時の握手の様なものに思えてしまいました。
「で、この部活ってなにすんの?」
「「……………」」
八木橋さんの問いに、2人は答えませんでした。
私は、自分の部屋で、この頃起こったいろいろな事について、考え事をしていました。
一週間前にあったいきなり消えたジュエルシードの反応。
そこにあった、人の魔力反応。
もう1人のジュエルシードを集める少女、フェイトちゃんについて。
今集まったのは、まだ3つ。
会ったのは、サッカーの試合の次の日。
すずかちゃんのお家でお茶会をしていた時に、発動したジュエルシードを封印しようとしたら、黒衣の少女に出会った。
彼女は魔法使いだった。
彼女は、なんていうか、危ないっていうか、なんというか、脆い。
触れれば、崩れてしまいそうなくらいに。
私は知りたい。
彼女の戦う理由を。
彼女から実際に聞いた事がないから分からないけど、私が知っている限りでは、彼女は2つ持っている。
いずれも私が先を越されてしまったものだ。
「なのは」
聞こえる声。
その声の主は、しゃべって魔法が使えるフェレットの、ユーノ君だった。
「少しだけ、ジュエルシード集めをやめようと思うんだ」
「え?!どういうこと?!」
ユーノ君は、自分のせいでジュエルシードが散らばってしまったから、自分1人で集めていたんだけど、途中で力尽きたところを私が助けた。
その後、なんやかんやあって、私は魔法使いになった。
でも、今までの一番ユーノ君が頑張ってきたジュエルシード集めを辞める、ということに、私は驚きを隠せなかった。
「いや、僕はジュエルシードより危険なものが、この街にある気がするんだ。
それも、ジュエルシードがチャチなものに思えるくらいの」
「でも、それはユーノ君には関係ないんじゃ……」
「それは、僕の予想では、人だ」
「えぇっ?!」
あの怪物よりも強い人間がいるの?!
私はまたも驚いてしまった。
「だから、もしかしてだけど、その人を探すことができれば、手伝ってもらえるかもしれない」
「でも、それよりだったら…………」
「うん、なのはの言いたいことも分かるよ。
それだったら、探した方が早いんじゃないかってことくらい。
その人がジュエルシードをこの世から無くすことができなければ、僕もこんなことは考えなかった」
「それって…………」
「そう、この前のジュエルシード。
あれは、完全にこの世から消えた」
「でも」
「僕たちはジュエルシードに敵わないから、封印してやり過ごしているんだ。
できることならもうすでにこの世からジュエルシードは無くなっているよ」
「そうだよね」
「ジュエルシードは確かにこれから役に立つかもしれない。
けど、その過程でたくさんの人が傷つくようなら、僕はジュエルシードを消す。
だからこそ、探すんだ。
ジュエルシードを消す事ができる人を」
「……………………うん、分かった。
私も、手伝わせてほしいの」
「ふふふっ、本当になのははお人好しだな。
僕からもお願いするよ。
手伝ってください」
頭を下げるユーノ君。
私はその姿を見て、笑みを浮かべた後、
「当然だよ」
そう言いました
私の新たな人生の第十一頁、部員増加しました(不本意ながら)
あなただったら、吉木さんとあった時、あの五つのコマンドの中から、どれを選びますか?
次回、第十二頁、私は一体何をやってるんでしょう…………