黒歴典〜悶えながら頑張る人〜 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
結果として、私たちは無事帰ることができました。
まぁ、あの黒い少女の攻撃にはほんとヒヤヒヤしましたけどね。
あの時、私は黒い少女たちに忠告をした後、すぐさま詠唱を開始していたのです。
”力の向きを反対にする”
これだけに焦点を当てれば、詠唱は少なくて済むことを私はこの頃になって見つけていたのです。
まぁ、内容は闇の中、ということで。
でも、欲を言えば反射する見えない盾くらいまで詠唱をしておきたかったんですけど、生憎時間がなく、一度の攻撃しか返せない詠唱になってしまったのですが、相手が退散してくれて良かったです。
そのあと、
運んだ後どうしたかは…………聞かないでください。
私もそこらへんの記憶がないんですよね。
でも、世神じいちゃん曰く、
”(瓦)三枚はいける”
といっていました。
………………あ、フェレットさんに私の詠唱見られてましたね。
これは消すしかないですね。
「起きてるなのは?」
「ん?どうしたのユーノ君?」
夜、なのはの部屋で、なのはが寝ようとしていた頃、フェレットことユーノが、いきなり質問した。
「なのははさ、一緒に戦ったあの先輩が、三鷹さんのいっていた魔法使いだと思う?」
それは、質問というより、違うよね?、という意味で聞かれた質問。
「……………………」
押し黙るなのは。
そう、なのはも気づいていたのだ。
自分たちの探している魔法使いが、杉岡でないことに。
もちろん、杉岡は戦えるし、それなりに強い。
だが、あくまでそれも”それなり”、いや、言い方を変えれば中途半端に強いのだ。
現にジュエルシードの生み出した怪物と戦う時、杉岡は最終的にはボロボロになる。
ジュエルシードとそこまで戦えるのは、それはすごいことなのだが、
「杉岡さんは、違う気がする。
強いけど、私たちの探している魔法使いは、もっと強い」
なのはは、言い切った。
これは、同時に、三鷹が嘘をついている、ということなのだからこそ、なのはは答えるのをためらった。
でも、そうと決まれば、次に来る疑問は当然、
”なぜ嘘をついたのか”
これが全くわからない。
「なのは、これから言うのは、僕の見たことのみで言うんだけど」
「うん」
「なのはは三鷹さんから”森の中で倒れている君を見つけた”、って言ったよね」
「うん」
「それ、なのははどうやってとらえた?」
「どういうこと?」
「そのまんまだよ。
あの言葉が、真実なのか。
それとも、魔法を見て、その上でついた嘘なのか」
「あの言葉に、嘘はないと思うな。
多分、三鷹さんは倒れた私を見つけたんだと思う。
だから、
自然と、強調してしまった言葉。
だが、それよりも優先することが、ユーノにはあるため、あえて触れないでおく。
「それね、違うんだ」
「ってことは、三鷹さんも巻き込まれて?!」
夜なので大声では言わないが、驚きを示すなのは。
「うん。
でも、彼はあの子たちに会って、それでも助かった」
「見逃してくれたってこと?」
安堵したような声。
「いや、全然」
「え…………」
息を飲むなのは。
「攻撃された。
僕もいきなりすぎて障壁が張れなかった。
でも、彼は何か唱えた後、その攻撃を相手に跳ね返した」
「それは、すごいことなの?」
まだ魔法というものに触れてあまり経っていないなのはには、そのすごさが分からなかった。
だが、ユーノの口調からなんとなくわかる。
それは、すごいことなのだと。
「ちょっと難しい話になるけど、魔法は、放った後もその人の物なんだ。
だから普通、相手の魔法自体をどうこうすることは、人の物を盗るのと同じで、すごく難しいことなんだ」
「ってことは…………」
なのはは頭が切れる。
天才というレベルではないが、頭が切れる。
そして、ここまでの話を聞いて、なのはにも分かったことがある。
「そう、そんな難しいことを平然とやってのける三鷹さんこそ」
「私たちの探している魔法使い……」
「あの、一つ、聞いていいですか?」
数日経ったある日の夕暮れ。
この日なのはは杉岡と一緒にジュエルシード捜索をしていた。
結局、三鷹が探している人かもしれない、と予測が立てることができたのだが、いかんせんなのはには本人に直に聞く勇気なんてものがなかった。
なので、何日かおきにやるこのジュエルシード捜索の時に、同じ部員である杉岡に聞こうと思ったのだ。
「ん?なんだ?」
一方で杉岡は今日も今日とて見つからないジュエルシードに不満たらたらな様子だったが、なのはの問いに耳を貸す。
「あの、KY部の皆さんの中で、一番強いのは、誰ですか?」
「それはどういう意味でだ?」
速攻聞き返す杉岡。
杉岡も馬鹿ではないし、ただの小学生でもない。
なので、今日のなのはの様子から、何か悩んでいることがあるのかとあたりをつけたが、どうやら当たったようだ。
当人としては”やっとか”という感じなのだか、
「それは…………」
言い淀むなのは。
なのはは真剣に考える。
なのはは考えたのだ、三鷹が嘘をついた理由を。
そして、その答えは意外にも、本人が言っていたのだ。
『そ、その人はあまり人に会いたくないという人で、人になかなか顔を見せないんですよ』
このセリフ、遠回しに”自分が魔法使いとして人に会いたくないし、魔法使いとしての顔を見せたくない”ということを言っているのだと。
だからきっと、生半可な聴き方じゃはぐらかされるに決まってる。
そう考えたなのは、一生懸命考え、
「魔法を使うことにおいて、です」
ここで杉岡はニヤリと笑う。
杉岡は、客観的に見ると、自分から手伝ったように見えるが、本人からすれば、記憶がないうちに勝手に契約させられていた、という感じなのだ。
杉岡の性格上、それを破棄するということは考えられないのだが。
でも、それでも杉岡には気に入らないところが一つあった。
それは、
三鷹の掌の上で踊らされているように感じたからだ。
だから、杉岡は意趣返しに、
「それは俺だ、って言いたいけど、真実はそうじゃない」
「やっぱり…………」
なのはの口から漏れる本音。
とここで杉岡は明日にも見ることのできるなのはに責められてタジタジになる三鷹の顔を想像しながら、
「実はな…………」
唾を飲むなのは。
そして、
「イダダダダダダダダダ!!」
「「?!」」
なのはよ肩で同じく唾を飲んでいたユーノもこれには驚く。
ユーノは杉岡の前では極力感情を見せないようにしていたのだが、今回はさすがに驚いてしまった。
「ど、どうしたんですか?!」
オロオロしてしまうなのは。
対してユーノはまた例の黒い少女の仕業かもしれない、ということで身構える。
だが、そんな心配も杞憂で、
「ちっ……あいつの仕業か」
「え?え?」
とこれまたおどおどするなのは。
ユーノは以前警戒中だ。
「あー、そんなに心配しなくていいよ、これ部活の奴のせいだし」
「?」
言っている意味がわからないなのは。
ユーノも同じようでフェレットの姿で首を傾げている。
「あー、なんか喋れないみたいだから、遠回しに言うな。
”お前らの予想は当たっている”
そんだけだ」
といい、杉岡は「今日はもう帰るわ」と言い、去っていく。
そして、杉岡の言葉に唖然としたまま立ち尽くすなのは。
しばらくして再起動すると、
「やっぱり、三鷹さんが…………」
「おっと、杉岡の野郎に仕掛けた呪いが発動しましたね。
でもまぁ、伝えることができなくしてありますから、大丈夫でしょう」
同時刻、家の中で一人安堵する三鷹。
だが、世神は知っている。
三鷹のかけた制限は、
三鷹が魔法使いとか、強いとかそれに関することを言おうとしたら、頭が痛くなる。
だが、実際杉岡が言ったのは、
なのはたちの予想が当たっているとだけ言ったのだ。
ゆえに、この制限に引っかからなかった。
そして、世神は明日にでも起こるであろう展開ににやけながらも、紅茶を片手に雑誌を読む。
私の新たな人生の第十五頁、よかった、ばれなかったんですね……
もうちょっと三鷹君を戦わせた方がいいのか悩む今日この頃
次回『第十六頁、はぁ、分かりましたよ』