黒歴典〜悶えながら頑張る人〜   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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前話の次の日。


第十六頁、はぁ、分かりましたよ

「今日の放課後、部室で待ってて下さいね」

 

その言葉は笑顔で私に向けられました。

 

もちろん、こんな言葉だけを聞けば告白だとか、騒ぎそうになりますよね。

 

だが、それは今のなのはちゃんの表情を見てないからそんなことが言えるわけがないと私は思うんですよね。

 

この表情は、笑顔ではありますが、決して喜びや嬉しいといった意味での笑顔ではないのだと思います。

 

きっと、その笑顔に込められた意味、

 

それは、激怒。

 

「え、えぇ、待ってますよ」

 

そんな言葉を私は言いながら逃げる算段を考えようとしますが、

 

「あ、一応他の皆さん(・・・・・)にも言っておきましたので」

 

………………。

 

あ、詰みましたね。

 

私は能力でどうにかする、という考えもここでやめにすることにしました。

 

だって、”皆さん”に言ったんですよね?

 

杉岡にも、八木橋さんにも、

 

当然、吉木君にも。

 

何故でしょう、彼ならきっと私が瞬間移動で地球の反対にいても追ってきそうで怖いのです。

 

「まぁ、後でゆっくり話しましょうね」

 

今できる最大の虚勢を張って、私は答えました。

 

そして見えなくなるなのはちゃんの影。

 

「ってことで」

 

「へぇい!!」

 

ほっとすらさせてくれない後ろからの声。

 

その声は案の定、

 

「吉木君……」

 

「僕はお前が逃げないと思うけど、一応な」

 

そう笑顔で言う吉木君。

私の逃げ場は、もうありません。

後は覚悟を決めるだけです。

 

 

………………でも、私は一体何をしたのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は放課後、なのはちゃんに言われた通り部室にいます。

 

そこには当然部活のメンバーが揃っているわけで、

 

吉木君はバスケットボールを指の上でくるくると回しながら暇そうにしていて、

 

八木橋さんはいつもの内容を知ってはいけない本を読んでいて、

 

「なんであなたはそこに立っているんですか?」

 

「あ?」

 

杉岡のクソ野郎さんはドアの前に立っていました。

 

「だから、なんであなたはそこに立っているんですか、と聞いているんですよ?」

 

「あぁ、一応でも頼まれたことだからな、全力で取り組まねぇと気が済まないんだ」

 

それはあれですか、遠回しに私が逃げ出しそうだと?

 

「私は逃げませんよ」

 

「万が一にも備えることが悪いことなのか?」

 

………………はぁ。

 

私は心の中でため息をつき、考えていた詠唱(・・・・・・・)を忘れます。

 

一応嫌な予感はするので、今のうちにこっそりとドアの鍵自体を壊しておこうと思ったんですけどね。

 

なのはちゃんが入れない、となればドアを直しているうちに時間が経ってくれるかと思ったんですけど…………

 

あれ?

 

あ、詠唱を工夫すればできるんじゃないんですかね?

 

今さっきまで考えていた詠唱は、”視界に入るドアの鍵を壊すこと”でした。

 

でも、それは杉岡のクソ野郎がちょうどドアと被ってしまって効果が現れないのです。

 

なら私に一番近いドア、という風に指定したら、いけますよね、これ。

 

「我に最も……

 

コンコン

 

 …………」

 

来てしまいましたね。

 

まぁ、私別に悪いことをしたつもりはないですから、小細工は必要ないと思うんですけど。

 

「失礼します」

 

いつもの軽い調子ではなく、むしろ堅苦しい感じで入ってくるなのはちゃん。

 

そしてその表情はしっかり笑顔でした。

 

「どうぞ」

 

私は内心すごくビクビクしながら答えます。

 

やはり実物を目の前にすると逃げたくなりますね。

 

なのはちゃんは私の目の前のソファに腰掛け、

 

「三鷹さん」

 

「はい?」

 

いつもの感じいつもの感じ、と心の中で唱えながら私はいつもの感じで返します。

 

「三鷹さん、魔法が使えるんですよね?」

 

いきなりの質問に私は思わず真意を探ろうとしますが、それだと余計なことを話して墓穴を掘りそうだったので、思考をやめました。

 

「えぇ、一応……といっても念話が少々できるだけですね」

 

「違いますね」

 

「い…………」

 

や、違いませんよ、と言おうとしたところで、私はなんとなく危険を感じました。

 

「いや、まぁ、あまり人に知られたくなかったので、あまり人前ではないわないんですけど、嗜み程度には魔法が使えます」

 

「………………」

 

な、なにをじっと見つめる必要があるんですかなのはちゃん?

わ、私はかなりポーカーフェイスで言ったつもりですが?

 

「…………はぁ、良いです、率直に聞きます。

 三鷹さんは、ジュエルシードを消す程の魔法を使えますか?」

 

ジュエルシード……あぁ、あの石ですか、それだったら…………

 

「片手間でできますけど?」

 

「……………………」

 

え、なんでしょう?なのはちゃんと杉岡が唖然としています。

ん?ん?あれくらいの石だったらみなさん片手間でできますよね?

 

「三鷹…………それ、本気で言ってるのか?」

 

「え、どうしたんですかいきなり改まっちゃって。

 え、本気も何もあんな石ころだったらささっと消せますよね?」

 

ここまで言ったところで、私は世神じいちゃんのあるセリフを思い出しました。

 

杉岡のジュエルシードごっくん事件の少し前、私が世神じいちゃんにジュエルシードがどんなものかと聞いた時の会話です。

 

:

:

:

:

:

 

「それって、持ってるだけで危ない代物なんですか?」

 

「いや、人、物問わず寄生して、ジュエルシードの中にある力によって、思考が持つ物には願いを叶えさせる。

そして、思考を持たない物は、その道具がもつ本来の力を何倍にも膨れ上がり、ただただ暴れる」

 

:

:

:

:

 

 

あ、そんなものを片手間なんて…………

 

今更修正はできませんよね。

 

そんなのは分かりきっています。

 

なら、なら…………

 

「今度、ジュエルシードを見つけたら、私も戦いに参加するので、それで実力を見せますよ」

 

よく漫画である、実はそこまで強くなかった作戦を取りましょう。

 

私の不甲斐ないところを見せれば、一発で幻滅しますよ!!

 

あれ?なんか、涙が出てきました……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『三鷹さん!!来てください!!』

 

そんなことを言った日から数日が経ったある日、私のケータイから、なのはちゃんの焦っている声が聞こえてきました。

 

「分かりました!!今行きます!!」

 

と、私はそんな焦ってる声に感化されたわけではないですが、急いで現場に向かいます。

 

急いでる理由だって、もちろんあります。

 

早めに行かないと当て馬感しないじゃやないですか!!

 

むしろ遅く行くなんて論外です!!

 

それじゃあヒーローみたいになっちゃうじゃないですか!!

 

私は急ぎました。

 

急いで急いで急いで急いで急いで、やっとこさ着きました。

 

瞬間移動も頭をよぎりましたが、目的地が街中だし、瞬間移動って強そうに見えてしまうのであえて使わないでおきました。

 

そして、私の目に飛び込んできた風景は、

 

巨大な光の柱が上がるあの例の石でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の新たな人生の第十六頁、告白もどきをされた結果、強そうな石に出会いました。




次回そんなチートじゃないけど、長めな詠唱します。

次回『第十七頁、ショウ』
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