黒歴典〜悶えながら頑張る人〜   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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第十八頁、平和ですねぇ

「消えなかった…………んですか?」

 

私は思わずその場に座り込んでしまいます。

 

両手は焼け爛れて、血がどくどくと流れ出ています。

 

めちゃくちゃ痛いです。

 

いやそれより悶えたいです。

 

なんですか「紡ごう」とか「まるで悲しみの涙のように」とか…………

 

私は頭を思い切り地面に叩きつけ…………ません。

 

「私には、やる事があります」

 

立ち上がり、自分に言い聞かせます。

若干厨二病っぽいですが今はこんな事でもしてないと今にも悶え死にそうですから。

 

「自分には、力があって、助けたい人がいて、これで助けなかったら人外とか化け物以前に人間ですらないですよ」

 

そして、私は詠唱を始めます。

 

「我は、願うものなり」

 

「平穏を、安泰を」

 

「あらゆる悪も、あらゆる罪もその前には関係ない」

 

「神は赦さないだろう」

 

「我の自己満足のためだけに物理法則をねじ曲げるのを」

 

「ねじ曲げるは、治癒の常識」

 

「傷は消えゆき、痛みは去る」

 

「我の願うものに祝福を」

 

「それは別に時を巻き戻すことではない」

 

「醜い人間に施すには余るものだということも理解している」

 

「だから我はあえて、こう祈ろう」

 

「時よ戻れ、人間は美しい」

 

巻き戻し擬き(フェイクバック)

 

すると、私の望んだ人たち……黒い少女、そのお供の犬、なのはちゃん、フェレット、ついでに杉岡に光が降り注ぎます。

 

そして、数秒もたたないうちにみんなの体はボロボロの状態から完全に治っていました。

 

「あ…………」

 

私はその時気づいてしまいました。

 

みんなが治ったにも関わらず私の手からドクドクと血が流れていくのを。

 

「私…………自分のこと、治す対象にしてなかったんですね……」

 

そのつぶやきと共に、私の視界は徐々に暗くなっていく。

 

そして、私の目に映ったのは、ダッシュで駆け寄ってくる黒い少女となのはちゃん…………

 

え?黒い少女?

 

トスッ

 

そんな音が、気を失う前に聞いた最後の音でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は今の状況についていけませんでした。

 

三鷹さんがジュエルシードを消したところまで良かったんですけど、

 

「我は、願うものなり」

 

何か言い始めたのです。

 

それがまた何かを起こすことはわかっていたのですけれど、私は三鷹さんが力で何をしようとしているのかが全く見当もつきません。

 

もしかして…………また何か消そうと…………

 

「っ…………」

 

まだ声は出ませんでした。

 

「平穏を、安泰を」

 

「あらゆる悪も、あらゆる罪もその前には関係ない」

 

え、これって…………

 

「神は赦さないだろう」

 

「我の自己満足のためだけに物理法則をねじ曲げるのを」

 

もしかして…………

私はやっぱり、という気持ちを抑えられずに笑顔になってくる。

 

「ねじ曲げるは、治癒の常識」

 

やっぱり、三鷹さんは…………

みんなを救うつもりなの?

 

「傷は消えゆき、痛みは去る」

 

そして、私は気づく。

 

三鷹さんの手から大量に流れ落ちる血を。

 

気持ち悪くなる。

でも、私は何もできない。

 

そのことが悔しくて悔しくて、

 

悔しくて悔しくて…………

 

いつの間にか、視界がユラユラしていく。

 

涙が目に溜まっているんだろう。

 

三鷹さんは、傷ついてまでみんなのことを救おうとしている…………

 

なのに、なのに………っ

 

私は唇を噛み締めて涙をこらえる。

 

この涙は、すべてが終わってから流すものなんだ。

 

そう自分に言い聞かせて。

 

巻き戻し擬き(フェイクバック)

 

そして、私の体は光に包まれた。

 

私の体からは、痛みは消え、傷はふさがり、魔力でさえも回復させた(・・・・・・・・・・・)

 

でも、私はその最中に見たのだ。

 

光を浴びない三鷹さんを。

 

私は回復した後、走り出す。

 

三鷹さんの元へと。

 

「三鷹さん!!」

 

三鷹さんは倒れる。

その体はドンドン地面に近づいていく。

 

隣には、フェイトちゃんがいた。

 

フェイトちゃんも三鷹さんのことを心配して駆け出したんだ。

 

そして、私たちは、2人で三鷹さんの事を支えた。

 

「なんで、こんなにボロボロになってまで人を助けるの?」

 

きっと、誰に言ったわけではないのだろう。

それは、小さな声で、私にしか聞こえなかった。

 

それに、私は、答える。

 

「三鷹さんは…………三鷹さんだからだよ……」

 

答えになってないな、と心の中で少し笑ってしまう。

 

「そっか…………」

 

私の答えにフェイトちゃんは小さく頷く。

 

そして、

 

「私は、この人に助けてもらった」

 

三鷹さんを抱きしめ、私から奪い取るかのように後ろに下がる。

その表情は、まるで自分の宝物を取られまいとする女の子のようだった。

 

「私は、この人に恩返しがしたい」

 

フェイトちゃんは小さな声で何かを唱え出した。

フェイトちゃんの足元には魔法陣が現れ、徐々に光は増していく。

 

「フェイトちゃん!!」

 

私はいきなりのことに追いつけなくて動けなかった。

 

光は強くなる。

 

間に合わな…………

 

ガギガギガギ

 

魔法陣から響く嫌な音。

歯車が狂ったような、そんな音だ。

 

その音と共に、魔法陣の光は弱くなっていく。

 

「まったく、何してくれてんだよ」

 

私の後ろから聞こえた声。

フェイトちゃんの表情は凍りついている。

 

その視線の先にいたのは、

 

「うちの部長は常識人なんだ。

 これ以上の非常識に付き合わせるのはもうやめてくれ」

 

杉岡さんはゆったりとした足取りでフェイトちゃんに近寄っていく。

 

「それに、これは俺の勝手な意見なんだが」

 

杉岡さんはフェイトちゃんの目の前に立ち、

 

「ふざけるなよ、小娘」

 

瞬間、杉岡さんから何かが噴き出したような気がした。

それは、感じるだけで気持ち悪くなるものだった。

お腹のそこから湧き上がってくる気持ち悪い感覚。

 

「自分のエゴに他人を巻き込むな。

 俺は全力でやる事を全力で肯定する。

 だが、それで起きる他人への迷惑を考えないのは最低だと思う。

 だからこそ、聞く。

 お前は、自分の我儘でうちの部長に迷惑をかけると少しでも思うのだったら、その手を離せ」

 

沈黙。

 

フェイトちゃんは唇を噛み締め、

 

「…………」

 

三鷹さんを杉岡さんな預けた。

 

「よかったよ」

 

三鷹さんをお姫様抱っこし、微笑む。

でもまだ気持ち悪い雰囲気は消えない。

 

「これでまだお前が駄々をこねるのなら、俺はお前を半殺しにしても部長を連れて帰ろうとしていたよ」

 

ゾクッとした。

この言葉に、きっと嘘偽りはないんだろう。

 

じゃあ、そう言って杉岡さんは去っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、なんであなたは私を無理やりにでも連れ去ったんですか?」

 

「いや、そりゃあ…………」

 

私は自宅で布団から起き上がり、お見舞いに来てくれたとともに、状況を説明しに来た杉岡と話をしていました。

ちなみに世神じいちゃんは何か用事があるらしく、家にはいません。

 

「ん?どうかしたんですか?」

 

「いや、理由はなかったんだ」

 

「へ?」

 

私はせっかく杉岡に感謝の気持ちでも表してやろうかと思ったのですが、

 

「いや、なんとなくなんだ。

 なんとなく、連れて行かれたら危ない、そんな感じがしたんだ」

 

「………………はぁ」

 

私は怒るに怒れなくなってしまいました。

 

仮にも前世を過ごした人間の直感です。

まったく真実ではない、とは言い切れないからです。

 

「……………………」

 

「…………ん?今なん「大丈夫?!三鷹君?!」うおっ、八木橋さんじゃないですか」

 

「いやぁ、学校行ったら三鷹君が休んでるって言ってたから、急いで来ちゃった」

 

乱れた髪を直す八木橋さん。

 

「で、どんな感じなの?怪我?」

 

「えぇ、しばらくは手が使えないみたいです」

 

私は包帯で覆われた両手を八木橋さんに見せます。

八木橋さんは私の様子を見て、少し固まり、

 

「じゃあもしかして、食べ物食べずらいの?」

 

「えぇ、ギリギリフォークで食べれる、って感じですね」

 

「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

いきなり八木橋さんが歓喜し始めました。

 

「ど、どうしたんですか?!」

 

「またかよ……」

 

私はオロオロとして、杉岡さんはため息をつく。

 

「いや、ちょっと吉木君にあーんさせてもらっている三鷹君のことを考えたら……グヘヘ」

 

「ふざけるなよ」

 

「イデッ」

 

ここで杉岡が流石に見かねたのか八木橋さんにチョップをしていました。

 

「なにすんのよ!!」

 

「それはこっちのセリフだバカ。

 そもそもこいつがそんなことするような奴に見えるのかよ」

 

正論です杉岡。

 

「それを攻略していくのを見るのがいいんじゃない!!」

 

「いやそれ以前に性を考えろ」

 

「そんなもの乗り越えないで何が人生よ!!」

 

「……………………」

 

「………………!!」

 

「…………………!」

 

「…………」

 

「………………」

 

私は2人の言い争いから意識を外し、窓から外を見ます。

 

そして、自分の両手を見て、

 

「平和ですねぇ」

 

ボソッと呟きました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の新たな人生の十八頁、とりあえず、一件落ちゃ「三鷹!!大丈夫か!!」「吉木君ktkr!!」「なんで今のタイミングでくんだよ!!」「いや、三鷹が心配だったから……」「「………………」」「どうした?」「「あの、ごめん」」「?」

 

く、ですね。

 




この頃黒歴典の更新が早いな……
エタらないように頑張ろう(必死

ちなみに回復の詠唱はdiesをパクりに行ってます。

次回『第十九頁、嘘…………だろ』
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