黒歴典〜悶えながら頑張る人〜 作:ぬー(旧名:菊の花の様に)
「ご相談、ですか」
私は両手を負傷してから1週間して、ようやく日常生活に支障がでないくらいまで回復したのはいいものの、なのはちゃんが持ってきてしまったさらなる問題に頭を抱えそうになりました。
ただでさえ両手が使えない間に…………と私の頭の中は1週間の出来事を振り返り始めました。
『そう、あの悪夢が始まったのは両手を怪我してからの翌日じゃった……』
さすが世神じいちゃん、相も変わらず無駄スペックです。
私の両手は、火傷、切り傷のコンボで何も持てない状態になりました。
最初、世神じいちゃんに診察してもらい、一週間という時間を言い渡された時、私は能力のことが頭をよぎりました。
おそらく、私が能力を使えば、一瞬で治るのでしょう。
だがしかし、と私は考えました。
おそらく、この怪我を直した場合、私は自分の手を見る度に思い出すのでしょう。
その時に使用した詠唱を。
今までの詠唱は、一瞬で終わるものがほとんどでしたので、思い出さなければ忘れていくものでした。
しかし、詠唱に関連付くものが私の視界に入ってしまった場合、私のこの常識的な脳は思い出してしまうのでしょう。
だから、私は自然治癒することを選択しました。
世神じいちゃんも、
「まぁ、どちらでも良いんじゃがの」
と本当にどうでもいいような様子で紅茶をすすっていました。
そして、両手が使えなくなった翌日。
私は忘れていたのです。
優しさとは時として残酷なものなのだということを、です。
「え、三鷹くんどうしたの?」
「おい、御門!それどうしたんだ?!」
「あー、怪我でもしたのかな?」
「え、なにしたの?」
数々の優しい言葉が私にかかってきます。
私がクラスに入った瞬間のクラスメイトの反応です。
私はそんなクラスメイトの反応に涙を流しそうになりつつも、大丈夫だという旨を伝えました。
ちなみに、日常生活については、世神じいちゃんに手伝ってもらって、指を使わなくても書けるペン、スプーンなど、ある程度はいつもの生活ができるように準備をしてきました。
「お、三鷹、それいつ治りそうなんだ?」
私は後ろからかけられたこの声に対し、おそらく油を指していない機械のように、ギギギギ、という感じで振り向いたでしょう。
そう、そこにいたのは、爽やかな顔をしていた、
「よ、よ、吉木君…………」
吉木君が立っていました。
しっかりと認識阻害の能力は使ったのに……。
どうして?という言葉が私の頭の中を埋め尽くしました。
「あ、えーと、たぶんですけど、一週間だそうですよ」
「それじゃあそこまでいろいろなことできないじゃんか、どうすんだよ、そこんとこ」
私は、その言葉に対して、必死に考えました。
おそらくこの言葉に対して、私が生半可な答えを返せば、おそらく吉木君はこういうでしょう。
『じゃあ僕が手取り足取り手伝ってあげるよ』
やけに似ている世神じいちゃんの声真似に寒気を感じつつも、私の脳は一瞬にして答えを導き、
「いえ、こういうことを自分で「あ、吉木君仲いいんだからいろいろ手伝ってあげなよ」や…………え?」
嘘…………だろ。
私は突如として聞こえてきたクラスメイトの言葉に唖然としながらも、脳内では助かるための手段を考えていました。
「おう、そうだな、わかったよ」
私の敵は吉木君だけではなかったというのですか…………。
吉木君はそこで爽やかな笑みを私に向け、
「まぁ、俺らの間には、固い固い友情があるからな!」
肩を組んできました。
普通ならこれはきっと少年漫画によくある少年隊の友情を育むワンシーンなんでしょうが、どうにも私の背中には悪寒が走りました。
『ついでにケツにもな』
……否定はできません。
そしてそこからは私と吉木君との表面上では仲良くしているだけなのに、裏ではかつてない死闘が繰り広げられる、という図ができました。
吉木君は善意の元、私の元へと手伝いに来て、対する私は詠唱、知恵、コネ、すべてを使って吉木君から見つからないようにしました。
だがしかし、それはことごとく失敗に終わりました。
詠唱も、知恵も、工夫も、コネも、すべて、そのすべてが吉木君の目の前では意味をなしませんでした。
最初はまだ反抗の意思がありました。
私は最初には詠唱を使いました。
『代表的な詠唱は、我は願い、そ『いやっさ!!』うるさいのぉ、どうした……』まぁ、大まかな内容としては、認識阻害、視界に写ったとしても私の姿のみ見えない、なぜか近づけない、など、周りに迷惑をかけないように、細心の注意を払い、頑張りました。
それに対して吉木君はいつの間にかするりと私の隣にいたのです。
見つからないはずなのに、近づけないはずなのに……
なぜなのでしょう、そう考えていました。
中盤になってくれば詠唱による策は尽きかけてきて、私は違う方法で吉木君との接触を避けるようにしました。
知恵を使い、コネを使い、発想を変えたりなど、え、こんなこともするの?!、ということまでしました。
…………吉木君はそれくらいの策でどうこうねきる相手ではないのか、というのを悟りました。
私もわからないうちにいつの間にか隣にいるのです、彼は。
終盤になってくるともはや考えることを放棄し始め、吉木君からの介護に身を委ねることしかできることがなくなってきました。
『そして三鷹は吉木の魔の手に堕ちていき、同性の良さというものに気づいていくのであつ「てない!!」……ちっ』
私は同性愛の道に屈するにはいかないのです。
いくら友人が同性愛だとしても、私は常識人です。
同性愛を私は否定しないですが、私はノーマルです、女の人が好きなんです、男はお呼びじゃありません。
ですので、私は逃げ続けました。
結果としては、逃げられなかったですが、私はそれでもいいんです。
ずっと逃げ切ったことが私にとっては常識人という証になったからです。
『いや、終盤介護を受け入れたって言ってたんじゃ…………』
まぁ、そんなこんながあり、私は今ここにいるのですが、
今回なのはちゃんが持ってきた話というのは、
「管理局、ですか」
私の新たな人生の十九頁、頭が痛いです
次回『第二十頁、本当に、いいのか』