黒歴典〜悶えながら頑張る人〜   作:ぬー(旧名:菊の花の様に)

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詠唱いっぱいです


第二十三頁、黙っていて下さい

「ふわぁー」

 

大きなあくびとノビをして、私は爽やかな朝を迎えます。

いろいろと昨日あったので、ゆっくりと寝てしまいました。

 

 

 

…………昨日はリンディさんとの話を終えると、なんと時間は吉木君と電話をしてから二時間もたっていて、外は日が沈み、あともう少しで夜に変わってしまい、子供が帰るのには危ないような時間帯になってきたので、私は早く帰ろうとしたら、リンディさんが魔法を使って送ってあげようかと言ってくれたのですが、私はそこで大切なことを思い出したのです。

 

それは、なのはちゃんの存在です。

 

私は、ここに来る前に、なのはちゃんに1時間程度で戻って来ると言っていましたが、もう既に二時間もたっていました。

 

私は青ざめ、リンディさんに学校に送ってもらえるよう頼み込み、急いで部室に向かうと、

 

いたのです。

 

「すー、すー、すー」

 

と、寝息を立てながら寝ていたなのはちゃんが。

私は、悪いことをしてしまった、と思い、なのはちゃんをおぶり、家に送っていくことにしました。

 

案の定、家の人はカンカンで、なんでこんな遅い時間に帰ってきたのか、となのはちゃんが怒られそうだったので、私のせいなんです、と誠心誠意謝り、なのはちゃんのことを叱らないで欲しいと頼み込みました。

 

 

 

…………と、東奔西走しながら昨日は過ごしていたので、大人の体だったらともかく、子供である今の私には、結構な負担だったらしく、足が少し筋肉痛になっていました。

 

だがしかし、なんと今日は土曜日。

 

子供である私にとっては土日は休みなのです。

 

そんな子供の頃には当たり前だった事実に幸せさを感じながら、リビングへと向かいます。

 

「おはようございます」

 

いつも私より何故か早く世神じいちゃんは起きているので、いつもの癖で挨拶をしましたが、

 

「……………………あれ?」

 

私は帰ってこない返事に思わずリビングを見渡してしまいます。

 

「……一体どうかしたんでしょうかね?」

 

と、心配したような声を出してみますが、案の定私の声は、あまり心配そうな感じには聞こえませんでした。

 

「まぁ、仮にも神様なんですからね」

 

あれ?と私はここで思いました。

 

わたしは今誰に話していたのでしょうか。

 

もしや、きのうの厨二病が私にまで…………

 

私はいてもたってもいられなくなり、壁に向かって走り出そうとすると……

 

『三鷹君!!』

 

私の頭の中に声が聞こえてきました。

念話で伝えられたその声に、私は自衛手段を中止し、念話の相手の名前を呼びます。

 

『どうしたんですか八木橋さん』

 

念話の相手……八木橋さんの口調は切羽詰ったもので、私は急いで返答を待ちますが、そこで念話はブツッ、という音とともに、切れてしまい、私の胸の中を焦燥が支配します。

 

私はその焦燥にかられたまま、詠唱を始めようとしますが、

 

「…………はぁ……」

 

1度冷静になることにしました。

 

焦りにかられては、最善の選択ができない、と私は思い、頭を冷やします。

 

そして、状況整理をし始めます。

 

まず、今の時間は、午前10時、小学生ならば確実に起きている時間帯で、まず間違い電話のように、ドッキリやそういう類のものではないことが分かるでしょう。

 

そこで、気になる点は、2つ。

 

1つは、いきなり念話がかかってきて、いきなり切れてしまった理由。

 

おそらく、考えられるのは、

・急いで念話をかけたはいいが、急ぎすぎて切れてしまった

・急いで念話をかけたが、邪魔をされてしまったせいで、念話がきれてしまった。

…………

………

……

 

と、私の頭の中を色々な仮定が飛び交います。

そして、声のトーンから考えられないもの、時間帯から、八木橋さんだから、といろいろ絞っていった結果、たどりついたのは、

 

急いでいる、それも至急。

 

私はそうと考えついたら、杞憂でもいいか、と自暴自棄になりながら、

 

能力の概要、

 

「移し、写し、映せたまえ」

 

能力に具体的な指向性を与える、

 

「望みしは遠望なり」

 

場所の設定、

 

「場所は我との繋がりを持ちしものの場なり」

 

目の前に映す、

 

「眼前に映るは虚空ならず」

 

虚空の映像(ヴォイドスコープ)

 

私は泣きながら虚空を見つめます。

そして、そこに映るのは、ピンク色の光と、なんとも形容し難い、絵の具をぐちゃぐちゃに混ぜた色のような光が入り乱れた空間でした。

 

私は思わずパニックになりそうでしたが、よくよく見ると、そこには二つの影がありました。

 

1つはピンク色の光を放つなのはちゃん。

 

もう1つはどす黒い色の光を放つ高杉さん。

 

映像を移すだけなので音声はわからないですが、ここからでもわかるのは、両者ともに無傷で戦っていて、なのはちゃんが防戦一方なのだということです。

 

私は、その事実に驚きましたが、努めて冷静になり、場所がどこなのかを確認します。

 

ところとごろ光の隙間から見えるのは、緑色の木でした。

 

そして、さらに空中から見えるのは、下に広がる町並み。

 

そこから私は、少し遠いところにあるあの山だ、ということを察することができたので、

 

節稼ぎ

 

(いざな)いたまえ、運命よ」

 

節稼ぎ

 

「運命には逆らわず」

 

節稼ぎ

 

「我はただ運命を加速させる」

 

節稼ぎ

 

「収束を迎えるために」

 

節稼ぎ

 

「我は許さぬ、この掌からこぼれ落ちることを」

 

節稼ぎ

 

「全ては我の掌で踊っていればいい」

 

節稼ぎ

 

「くるくると、くるくると」

 

節稼ぎ

 

「そのためならば、私は手を延ばそう」

 

節稼ぎ

 

「その手は届き、真となるから」

 

能力の詳細

 

「我を(いざな)え、運命よ」

 

 

運命の導き(リードフェイト)

 

 

その瞬間、私の目の前の景色が変わりました。

 

そこにあったのは、さきほど見た風景。

だがしかし、木々がなぎ倒される音や、戦いの音が私の耳に入ってきます。

 

その音は、いつもの私にとっては恐怖の対象であったのでしょうが、今はそうではなく、ただの騒音でさかありませんでした。

 

なぜなら、今の私の頭の中を占めるのは、ほとんどが羞恥の感情だったのです。

 

なぜあんなことをスラスラと…………など、後悔や後悔や後悔が並びに並びまくり、私の頭は自衛手段(頭を打つ)を取りたくてしょうがなかったのですが、ギリギリ残っていた理性が、この戦いを止めなければ、という大事なことを思い出させ、私は即座に行動に移ります。

 

「広がり、視界を奪え」

 

(スモック)

 

すると、私を中心として、煙が舞い上がりました。

 

その煙に2人は驚いたのか、

騒音は止みましたが、今度は声が聞こえ始めます。

 

「黙っていて下さい」

 

「音よ、止め、今この一瞬だけでも」

 

静かに(シャラップ)

 

一瞬の静寂が訪れました。

 

そこで、私はもうこの際無力化してしまおうと思いたち、能力がやんだのを見図らい、

 

節稼ぎ

 

「聞け、すべての愚民共よ」

 

節稼ぎ

 

「我の言葉を聞くがいい」

 

節稼ぎ

 

「粛々と、ただ粛々と」

 

節稼ぎ

 

「そこに声も、音も、ましてや空気の震えでさえもいらない」

 

節稼ぎ

 

「なぜなら我が言葉を授けるからだ」

 

そこで煙は晴れていきます。

私はそこで、気づいてしまったのです。

 

もしこの煙が晴れてしまえば私が詠唱しているところを見られてしまいます。

 

それはダメです、死ぬほどダメです、見られたら死ねます。

 

ということで、早めに詠唱を終わらせることを決意しました。

 

節稼ぎ

 

「争いはなぜ生まれる?」

 

節稼ぎ

 

「人が生きているからだ」

 

節稼ぎ

 

「起きているからなのだ」

 

節稼ぎ

 

「ならどうすればいいだろうか」

 

能力の詳細

 

「そう、全てを眠らせればいいのだ」

 

発動のトリガーを設定。

 

「だから、今この瞬間、我の言葉は眠りを与える」

 

「始まらない物語《ネバースターティングストーリー》」

 

ドサドサドサ

 

人が倒れる音が私の耳に聞こえてきました。

 

それは、私も例外ではないのですが、

 

「ここで、寝たら、後悔します……っ」

 

私は気合で近くにあった木のもとへと歩いていき、

 

「うぉぉぉぉおおおお!」

 

ドンッ

 

あぁ、これで、やっと、眠れます。

 

 

 

 

 

私の新たな人生の第二十四頁、おやすみなさい。




次回『第二十四頁、この子は…………』
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