ぬら孫じゃないの!? 作:パズゥ〜
今回から、区切りのいいところまで連続投稿をして、また書き溜まったら連続投稿という形にしたいと思います。リアルが忙しくなかなか書けない状況なので申し訳ありません…
「…生き肝信仰じゃと?」
「はっ!現在、京の都や大坂などでは生き肝、特に赤子や公家、武士などの貴き者の肝を食べると強靭な力を得ることが出来ると妖の中で噂が広まっております」
羽衣狐と呼ばれるようになり、数百年。妾は、
(…一体誰がそのような
確かに、生き肝を食べることで妖力や霊力が上がることは上がる。しかし、それは赤子や貴き者の生き肝ではない。陰陽師や巫女のような、霊的なものや妖と関りがあり、陰陽術のような特殊な力を使える者の生き肝でないと力を得ることは出来ない。それは、霊力や妖力は血液と同じく心の臓から作られるからじゃ。
(噂に尾がついて、事実と異なって広まった…?)
「それともう一つご報告がございます」
「?何じゃ?」
「淀殿から文が届いております」
「ふむ…またか…」
飛禅から渡された文を見ながら、妾は生き肝信仰と並んで妾を悩ませている者について考える。
妾、羽衣狐は羽衣神社と呼ばれる神社で崇められており、商売繁盛、健康安全などにご利益があると言われておる。これに関しては、頼光殿の一件で妾が京の守護を担っているようなことになってしまったのが原因じゃ。そのため、妾は妖にもかかわらずちょっとした土地神以上に畏れを持っておるのじゃ。しかも、止めと言わんばかりの竹千代の件じゃ…本人は悪気はなく純粋に、妾に恩を感じてくれているのじゃろうが、天下人となった者が羽衣狐のおかげで困難を乗り越えることが出来たとか、今の私があるのは羽衣狐のおかげであると大々的に言ってはならんじゃろう…
しかも!!妾を崇める宗教を作るのはどうだろうかと提案をしてきよった!!いかにあの時の事に対して感謝しているからと言って、やり過ぎじゃ…目が危ない光が灯っておったような…洗脳してはいないのじゃが?というか、竹千代よ。分かっておるのか?妾を絶対神とした宗教を広めるということは、キリシタンの二の舞になるんじゃぞ?流石に妾はそんなの嫌なので丁重に断ったのじゃが、それではこれだけでもと言って二条城を渡してきたわ!!
おかしいじゃろう!?
何故そんな軽い感じで城を渡す奴がおるか!!
天下人となって物の価値が分からなくなったのかのう…
あの謙虚な竹千代はどこに行ってしまったのじゃ…
これも、断ろうとしたのじゃが、竹千代並びに古参の家臣たち全員からDOGEZAされ、使ってくださいと言われてしまってはのう…しょうがなく、了承したらあれよあれよの間に二条城に妾の羽衣神社が移され、名目上は城なのじゃが、中立の立場の籠城のできる神社という訳が分からぬものになってしもうたのじゃ…
そんな、二条城に妾がいるためか、羽衣神社と徳川は繋がっていると周りから思われてしまうのじゃ。しかし、実際は我ら京妖怪は政には干渉せん。人には人の妖には妖の領分というものがあるからじゃ。だから、中立という立場をして、純粋に参拝に来た者の願いがかなう様に力添えをしておるのじゃが、中にはそうとは考えておらぬ者も少なからずおる…そう、淀殿のように…
「ふぅ…」
妾は淀殿からの文を読み終わり、深いため息をつく。
「いかがされましたか羽衣狐様?」
「む?いったい何時からいたのじゃ鬼童丸?」
顔を上げると、鬼童丸が目の前に座っておった。
「はっ…飛禅と入れ違いで入室をしました」
「飛禅じゃと…?」
いかん…いつの間にか文を持ってきた飛禅がいなくなっておる…
「その様子ですと、飛禅が退出したのも気付いておりませぬな…」
「うっ…すまぬな…全く気付かなかったのじゃ」
「羽衣狐様がそのようになるほど集中されるとはどのような文だったのですか?よろしかったら内容をお教えいただけますかな?」
心配そうな顔をして鬼童丸は妾にあらかじめ用意していたのだろう、茶を渡しながら聞いてくる。
「淀殿からじゃ」
「…なるほど、それは…」
鬼童丸も淀殿と聞き納得いったとばかりに頷く。
「して、内容とは…やはり豊臣方への助力でしょうか?」
「そうじゃ。淀殿は我ら中立の羽衣神社を陣営に組み込むことで、豊臣にこそ正義があるとしたいみたいじゃのう…」
内外にしつこく中立だと言っておるのだが、どうしてこう自身の勢力に入れたいと思う輩が多いかのう…
今では羽衣神社は日ノ本でも一位、二位を争うほどの信仰があるからじゃろうか?
我らが加われば、民たちもこちらに着くという考えかのう?
「それは…また…豊臣は羽衣狐様の存在を知っておられるのですか?」
「いや、豊臣は知らぬ。太閤も知らんじゃろう…現にこの文も妾宛ではなく巫女長宛だしのう」
妾の存在は戦国の世の時代には御伽噺ような存在となり、実在し、妖であるということを知っている者はほとんどおらぬ。
たまに、妾が助けていた者も祀られておる妾のおかげと考えており、妖の妾と結びつけるものはほとんどいなかった。
まあ、頼光殿や竹千代のように実際に妾のところまでたどり着いた者もおったが、それは、その者が悪意が無く純粋に妾に会いに来た者たちであるからじゃ。邪な者は妾のとこには一生かかってもたどり着けぬからのう…
ゆえに、第六天魔王に太閤は妾の存在を知らぬ。
知っておれば、必ずその力を求めに来ることは明確じゃからな。
そう言えば、最近なかなか骨のある武者を見つけたのう…名前は何じゃったか?
源次郎じゃったか?あのように真っ直ぐな目をした男は今の時代珍しいからのう。
「狐様?羽衣狐様?」
「…ぬ?すまぬなまた考え込んでしまったようじゃ」
鬼童丸の声で思考の海から浮上する。
「…あまり無理をなさらないでください。京鬼組合の方で何か手伝えることはありますでしょうか?」
「いや、酒吞に茨木には生き肝の件で京の治安維持に力を注いでほしいのであまり負担を駆けたくなくての?」
「お気遣いありがとうございます。私でしたらいつでも力になります故、存分にお使いください」
鬼童丸は良い子に育ったのう…
下心からではなく本心から言っているためこんなにも心に響く言葉に泣きそうになるのじゃ…
「あい分かった。ありがとうのう鬼童丸。本当にお主は父方に似て真面目じゃのう」
「ありがとうございます。まあ、母があのような感じですので、必然的にこうなったと言いますか…」
「フフフ…そうじゃのう。金時も今のお主のように酒吞に振り回されておったわ!」
そう、何を隠そう鬼童丸は酒吞童子と坂田金時との間にできた人と鬼の半妖なのじゃ!!
酒吞の10年近く口説きに口説き、最終的には金時が根負けしたことで、無事?結婚という事となった。
結婚し子を成した酒吞は妾たちが驚くほど変わった。
まず、子が生まれてことで生まれた母性じゃな。
刃物のような雰囲気だったのがウソのように柔らかくなった。
そして、心から楽しそうに笑う。とても、敵の血を顔に浴びながら浮かべる笑みと違う優しい笑みじゃ。
また、人間をエサとか玩具としか見ていなかったころとは違い、一つの命あるものとして接するようになった。これは、金時に鬼童丸のおかげじゃな。夫婦仲も良く金時が亡くなるまで一緒にいたからのう。
「そう言えば、鬼童丸は何か用があって来たのではないのか?」
「はっ…そろそろ時間ですので、お知らせに来た次第でございます」
!!…もうそんな時間か!!時間がたつのが早いのう…
「あい分かった!!それでは出る故、
「はっ!!かしこまりました」
鬼童丸が言っておる時間とは、妾が依り代にさせてもらっておる巫女の憑依できる時間が限界に近くなったことを指しておる。霊体じゃと、何分不自由な事が多く、送られてきた文や書類整理に面会(妖限定)などの時はこうして憑依させてもらっておるのじゃ。
「……うぅぅん…?…」
「幸殿、お疲れ様でした。湯を手配しております故、ゆっくりとおくつろぎください」
「…鬼童丸しゃん…?…あい…」
幸はまだ12と若いが、歴代の妾の依り代を担当した巫女たちの中でもダントツに憑依時間が長く、この先が楽しみな娘である。
「それでは、幸よ。今日もご苦労じゃったのう?ゆっくりと休むのじゃぞ?」
「はい!羽衣狐様もゆっくりとお休みくだしゃい!!…って!あぅぅ…///」
フフフ…可愛いのう…妾にも子が出来たら幸のような子が欲しいのう…
そんなことを思いながら、鬼童丸に後を任せ、妾は部屋の外へと出た。
「ふむ!!今日の仕事は終わりじゃ!!ちと、町でも回ってみようかのう?皆忙しいからバレずにひとりで行けるじゃろう…フフフ」
この時妾はまだ、生き肝信仰にせよ、豊臣の事にせよ、京を、日ノ本を巻き込む重大な事になろうとは感じてはおらなんだ…
読了ありがとうございました。
今回冒頭に登場した野衾の飛禅さんですが、これは作中では紅葉がイタチのようだと言っていましたが正しくはムササビです。江戸時代ではムササビの事を野衾と呼んでおり、妖怪の一種だと考えられていたそうです。
次回は明日、視点が紅葉から鬼童丸に移ります。