モチつきぺったん殺ウサ事件   作:白井茶虎

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 お月見村で殺ウサ事件発生!!
 容疑者はマインドコントロールされて責任能力無し!?
 新たに出てきた第三のウサギとは!?
 のんびり探偵と体力バカ刑事が挑む!!
 全ての鍵は、おモチが握る……


発生編

××××年××月23日 事件はとある山村『お月見村』で起きた。

 その日、お月見村は年に一度の神聖なる『御餅月之儀』を行っていた。

『御餅月之儀』とは二匹の村民たるウサギが『聖なる臼』と『聖なる杵』を用いて『聖なる舞』を納めながらモチをつき、『神が宿りし餅』を作ることである。

『御餅月之儀』は神聖なものであるが故に、村民を含め誰も見てはならない。

 そんな最中、事件は起きた。

 

 ××市警察署に通報があったのは午前6時ちょうど。

 その時早朝トレーニングのため既に出勤していた、鬼畜野球ブラウザゲームで縦分身魔球を放りそうな茶色い有袋類、空焚多柄流(からだき・たえる)は、お月見村に向かってすぐ野を駆け山跳んだ。原っぱではライオンが毛糸のたてがみをなびかせて吠えていた。川ではプラスチックのアヒルたちが好き勝手な方向を見てぷかぷか浮いていた。山では野うさぎがかじられたしっぽを綿あめで補強していた。

 着いたのは午前6時13分のことであった。

 

「ちょっとちょっとお嬢ちゃん。今日はお祭りだから村に入っちゃだめだよ」

 

 空焚は村の入り口の警備員らしきウサギに呼び止められ、少し不機嫌そうに懐から薬入れを取り出した。

 

「警察の者です」

 

「ほ~う、これはよく出来ているね。小さな刑事さん」

 

「いえだから私は本物の現役刑事です」

 

「今日はね、大切なお祭りだからね、刑事さんでも入れ――あ、村長。何か御用でしょうか」

 

 村のほうから一匹の冴えない中年ウサギがやってきた。

 

「後で警察が来るから出迎えに来たのだよ。で、そちらのお嬢ちゃんは?」

 

 見るからに不機嫌そうな顔から一転、引き締まった顔で言う

 

「あなたがお月見村村長、通報者兼第一発見者うさリリス氏ですね。××警察署の空焚と申します」

 

「え……いえ! 失礼しました!」

 

 うさリリス村長は警備員と共にあわてて敬礼する。

 

「良くはないのですがよく有ることで」

 

「ほ…本当に失礼いたしました……それで…あの、お一匹(この世界では何でもかんでも匹ダヨ!)ですか?」

 

「他の者は車ですので後三十分ほどで着きます。では案内よろしくお願いします」

 

 たしかあんた、さっきまで警察署居ったよなあ。どうやってきてん。そんな言葉を胸に隠しながら現場へと案内する。

 そこは村の中心。祭りなどの行事を行うための場所らしい。

 

「儀式は午前4時に始まり、1時間と少しで終わるはずでした……しかし2時間経っても終わっていないようですので不審に思い……」

 

 二本の杵が落ちている。そのすぐそばにはとても大きな臼、中にはホカホカとゆげをたてた金色のモチが入っていた。

 そして、臼の陰に、全身がおモチの様につぶれ無残に綿をはみ出させている一匹のウサギが倒れていた。まだ、若いウサギだった。

 

「この方が被害者のうさダバダ氏ですね」

 

 空焚が合掌をして言った。そして現場付近の写真を撮り始める。一通り撮り終えたのか、うさリリス村長に向き直り質問する。

 

「怪しいぬいぐるみを見たとか、犯ぐるみに心当たりはありますか?」

 

「怪しい者ならいましたが………犯ぐるみはもう捕まえております…………」

 

「えーーーー!」

 

 ひとしきり驚いてから

 

「それは、だれです?」

 

 と緊張した声で訊いた。

 

「この者です」

 

 と言い、前に出されたのは数々の心配そうな眼に囲まれたうさダバダ氏と同じ年頃の若いウサギ。

 

「……うさハートです……」

 

 消え入るような声。

 

「あなたが犯ぐるみですか?」

 

「はい……」

 

「では署まで――」

 

 空焚が連れて行こうとすると

 

「うさハートは悪くないんです!」

 

「悪いのはうさダバダだよっ!」

 

「うさダバダがヘマして!」

 

「臼にマインドコントロールされたんだ!」

 

 遠巻きに見ていたウサギたちが口々に騒ぎ出した。

 

「マインドコントロール!? 何じゃそりゃあ!?」

 

 騒ぐ村民を落ち着かせている間にかなりの時間が経過した。まもなく、村民に導かれて後続の刑事たちがやって来た。

 

 

 

「ふむふむ、これは間違いなく撲殺ですが、いろいろと不自然な点がありますねぇ」

 

 鑑識係のバリバ・リ・クーゼが言った。

 

「具体的には?」

 

「一番おかしいのが、」

 

「おかしいのが?」

 

「なぜモチが金色かということですねぇ」

 

「そこかっ」

 

 空焚はずっこけた。

 

「まあ後は遺体があまりにも無残なことですね」

 

「そういえばおモチ状態ですが」

 

 クーゼが杵を持ってくると

 

「この『聖なる杵』は見た目よりずっと軽い素材で出来ています」

 

「ホントだ」

 

「この重さだとあそこまで無残にするのは、はっきり言ってムリですねぇ。空焚さんみたいな例外を除くとすると」

 

 その時

 

「た~た~り~ぢゃ~」

 

「ぅわびっくりした」

 

 いきなり村の老婆ウサギが叫びだした

 

「こ~れ~は~も~ち~が~み~さ~ま~の~み~わ~ざ~ぢゃ~」

 

 うさリリス村長がやってきて説明する

 

「『御餅月之儀』はとても古くから伝わるものでして、言い伝えの中に、今回の事件に係わっていそうなものがあるのです」

 

「それが『たたり』だとか『マインドコントロール』だとかですか」

 

「さすが刑事さん」

 

 散々『お嬢ちゃん』呼ばわりしやがってと思い少々不機嫌な顔になる

 

「えー……『御餅月之儀愚弄せし者、彼の者には天罰が下るであろう』この村では一般的に『聖なる舞』を間違えたら恐ろしいことが起きる、という解釈で伝わっているのです」

 

「ほほう」

 

「続けてください」

 

「天罰についての文はこうあります。『喪地之神(もちのかみ)が相の手に宿り神の業を用いて彼の者を裁かん』モチの神……あ、『聖なる臼』に宿っていると云われている神様のことです。ちなみに『聖なる杵』には『津気之神(つきのかみ)』が宿っていると伝えられております。………脱線しました。すみません。モチの神がパートナー、一緒にモチつきをしているウサギを操って神業でどうにかする……皆、そう信じております」

 

「で、最近の若いもんが操る云々を『マインドコントロール』と称しているわけですねぇ」

 

 クーゼがまとめた

 

「さすが鑑識さん。話がわかっています」

 

 ガキには理解できない話だって言いたいんかい。内心だけで毒づき、うさリリス村長に言う。

 

「神様のせいでも一応自分が犯ぐるみだと認めているのでうさハートさんは連行します。それとおそらく凶器である杵、遺留品の臼とおモチも署まで持って帰るのでそこんとこよろしく」

 

 村長が空焚に詰め寄り

 

「これは神器です! そんな罰当たりなこと許可できません!」

 

「では容疑者うさハートと、共犯者モチの神、ツキの神を連行します」

 

 こ~の~ふ~つ~つ~か~も~の~という声に押されて、容疑者と遺留品を乗せたパトカーは去っていった。

 

*****

 

「確か怪しい者が居たそうですね」

 

「ええ。村の倉庫に捉えております」

 

 あの後暴動寸前だった村民をなんとか落ち着かせて、撤収作業に移っていた空焚が訊く。

 

「その怪しい者は事件と関係があるか、判りますか?」

 

「いえ……ですがよりにもよってこの日に現れた侵入者ですからもしかすると……」

 

「侵入者? ああ、『御餅月之儀』の日は一切立ち入り禁止だからですね」

 

「『御餅月之儀』は門外不出の秘儀ですからね、特に外の人には絶対見られてはならないのです。本当は神器も全て持ち出し禁止なのですが……」

 

 うさリリス村長が顔を曇らせた。

 

「その話はもう終わりました。調査が終わり次第必ずすぐにお返しします。それより一応その『侵入者』と面会したいのですが出来ますか?」

 

「ええどうぞ。もし村の秘密を暴こうとしたすぱいすならそのまま捕まえて下さい」

 

「了解しました。……“すぱいす”?」

 

「最近の若いもんは“間者”のことを“すぱいす”と呼ぶのです。いやはやついていけませんわ。ははは……」

 

 なんだスパイか。納得したようなしていないような気持ちを抱き、村長についていく。

 村の中心から入り口から遠い外れまで来た。

 

「ここが倉庫です。この村は今日の事件が起きるまで平和そのものでしたから、侵入者を捕らえておける場所はここぐらいなのです。あっ君。ご苦労さん。曲者を捕らえに刑事さんが来て下さった」

 

「ご苦労様でっす! 村長っ! 刑事さんっ!」

 

 見張り番をしていた若いウサギが鍵を開け、中に入る。中は真っ暗で、そう広くはない。足元を懐中電灯で照らす。が。

 

「村長っ! いませんっ!」

 

「まさか!? 逃げられはしないはずじゃないか!?」

 

 空焚は焦ってうろうろするウサギたちを横目に見、暗い倉庫をじっくり見渡し……

 

「いたっ! あそこの布の束の上にいかにも怪しいかげが!」

 

「流石刑事さんっ! ここはボクがっ!」

 

 駆け寄っていく見張り番を止め、

 

「慎重に行くべきです。私に任せてください」

 

 布の束に近づき……

 

「えい!」

 

 一気に引き抜き上にいたモノを引きずり落とした。

 

「間違いありませんっ! コイツが曲者ですっ!」

 

「……」

 

「zzz」

 

「……ってノンビさん!?」

 

 

 

 空茶音濃枇(くっちゃね・のんび)、通称ノンビさん。この水色のボディと青いヒレヒレがステキな怪獣は、探偵でありこの物語の謎解き役である。刑事である空焚とはいわゆる腐れ縁であり、何時からのものなのか彼らも含め誰も知らない。ともあれ二匹は数多の難事件だったりショーモナイ事件であったりを解決しており、××警察署では『空っぽコンビ』としての名を知らない者はいない。

 

「な……なななんでノンビさんがこんなとこで『アヤシーモノ』になってんの」

 

「お……お知り合いですか……?」

 

「そういうものです」

 

「ぐーぐーぐー」

 

「おきろーーーーー!!!!!」

 

 空焚は倉庫を崩壊させかねない大声を出したが

 

「……ぐーzzz」

 

 効果はないようだ。

 

「村長っ! この熟睡はゴッドですっ! もしや私たちは捕まえてはならないお方を捕まえたのでしょうかっ!」

 

「確かに信じられん。も……もしや村民たちの安眠を守っていらっしゃる『偶多良神(ぐうたらかみ)』様か!?」

 

 二匹のウサギが騒いでいるのを見て空焚は密かにため息をついた。

 

「ソレは確かにぐーたらしていますが神様では断じてありません。おとなしーいきものです。この人はいつごろ進入したと思われますか?」

 

「発見したのは私が儀式の様子を見に行った時間ですから6時頃です。儀式が行われた広場の北に位置する『にんじん通り』で倒れて……いえ、ぐっすり眠っておられました。昨日の夜7時から外出禁止でしたからその間……としか分かりません」

 

「ということはうさダバダさんが殺された時間にはバッチリ居た可能性が有るわけですか」

 

「まさか」

 

「重要参考ぐるみそのにとして連行します。村へ侵入した理由は取り調べの際聞きますが、そちらへの引渡しは事件解決後、犯ぐるみでなかった場合で良いですか?」

 

「………」

 

「あ、そうそう。儀式の日に村を進入した罪ってどんな罰が下されるのでしょう?」

 

「……えー、『ダメだ』と書かれているのみで、具体的な罰については記述がありません。前例が無いので過去のことも参考に出来ないのです……」

 

「では『綿が出る寸前の破壊力を持つ一撃』はどうでしょう?」

 

「そっそこまでやらなくても! 殺すとか荒事はやめてください!」

 

「さすが刑事さんですっ! オニですっ!」

 

「打ち所を心得ているので死にはしません。それにいつもこの人を起こす力に三割を付け足すだけですよ」

 

 朗らかにそんなことを言った。ウサギたちはこの刑事はヤバイと直感し、これ以上止めるのをやめた。

 そして、空焚は罪ぐるみを倉庫から出した。

 

「z―――」

 

「すぅ、はぁ」

 

 息を整え深呼吸して

 

「いいかげんおきろッ!」

 

 ボフッ!

 

 

 

「う~ん、ねむいよぉごはんいらんからもっとねる~」

 

 べちべちべち

 

「次は平手打ちか……!」

 

「往復ビンタですっ……!」

 

 こそこそと話しているうさリリス村長と見張り番。

 

「いろいろ怪しいので署までご同行お願いします」

 

「あ~たえるちゃん~おはよ~。なんか~あっちこっちいたいん。もしかしてばりばくんにかじられたかな~」

 

「さぁ、パトカーは無いので駆け足ですよ」

 

「えぇ~? そんなんつかれるやんー~~」

 

「それでは引きずるしかありませんね」

 

「たえるちゃんひどい~」

 

「行きましょう」

 

 どこからともなく出した縄でノンビをくくりつけ、そのまま去っていった。そんな様子を見ていたうさリリス村長は、少々険しい顔だった。

 

「やはり……あのノンビとかいう者、ただ者ではないな」

 

 それを聞いた見張り番は村長がいつもと違うと感じた……気がした。

 

(気のせいですっ!)

 

 だから、こう答える。

 

「その通りですねっ! なぜタイホされるか一度もツッコミませんでしたよっ!」

 

 村長は

 

(聞いていたのか……)

 

 と少し驚いたが

 

「とにかく嵐は去った。かたづけを始めよう」

 

 と言い残し、村の中心へ向かった。見張り番も手伝いをしに行くため後を追いかけていく。

 村は、静かになった。

 

 

 

 

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