やはり彼に研究は向いていない   作:かんごりん

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加筆しました。


彼は同じ苦労人を訪ねる

 「はあっ!? どういうことだよ! 俺は《王竜星武祭(リンドブルムス)》に出場登録なんてしてないぞ!?」

 

 突然の出来事に脳のキャパシティが一気にオーバーした俺は衆目の前にも関わらずについ叫んでしまった。

 しかし、実況は俺のその様子に困惑の表情を浮かべながらも今の状況について説明してくれる。

 

 「『ええと・・・、比企谷選手で間違いありませんよね?』」

 

 「ああ、『アルルカント・アカデミー』所属の比企谷八幡だ。 校章だってここにある」

 

 俺はそう言いながら、胸元の校章をアピールする。

 『六花』の校章はその学園の生徒しか身につけれない規則があるので、これで俺が少なくともアルルカントの学生であることは証明できるだろう。

 

 「『・・・はい、照合完了しました。 本人で間違い無いようですね』」

 

 「当たり前だ」

 

 「『ですが、《王竜星武祭》の出場選手リストにしっかりと比企谷選手の名前が登録されているのですが・・・』」

 

 「なっ!? 一体誰がそんなことを!?」

 

 聞き捨てならないその言葉を聞いて、俺が犯人の正体を聞こうとすると、

 

 「はいはーい、私だよ八幡〜」

 

 どこからかそんな聞き覚えのある声が聞こえて来た。

 俺はその声を聞いた瞬間に今起こっていることの全ての繋がりが理解してしまった。

 

 思えば、何度も前兆は目にしていたのだ。

 

 エルネスタが何度も釘を刺してきた日付に一分たりとも遅れるなと言われた時間帯に極め付けは指定された場所。

 ただ決闘するだけなら学園の演習場でよかったはずなのに態々こんなデカイスタジアムを指定してきたこと。

 最近《王竜星武祭》に関する情報が特に多かったこと。

 少し考えれば馬鹿でも気づけた筈のことなのだ。

 

 だが、俺は気づけなかった。

 

 その理由は今考えればよく分かる、馬鹿な俺は天才エルネスタ・キューネの掌の上で動いていただけだったのだ。

 こんなにヒントが転がっていても全く気づけないようにこの日までの行動をその天才的な頭脳で俺に悟られない範囲で制限して仕組んでいたのだったーーーーーー

 

 

 

               ★

 

 

 

 「思い出したら腹立って来たな」

 

 俺はそう言いながら目の前でガンガンいっている扉を見据える。

 他の学園にも自動ドアはあるが、技術の進歩しているアルルカントは“人の形”をしていて、尚且つ“専用のカード”を持っていないと開かない仕組みになっている。

 扉の周り十メートル内に入れば認証スキャンがされ、異常なしとコンピュータが判断したら扉が開くシステムになっている。

 だから、あいつはここには入れないという訳だ。

 

 ・・・まあ、カード失くしたら一時的に何処にも入れなくなる上に、面倒な手続きが必要なんだがな

 

          ガンッ!

 

 おっと、どうでもいいアルルカントあるあるなんて置いといて、こいつどうしようか

 このゲル状の体からして恐らく作ったのはエルネスタじゃなくて、『超人派(テノーリオ)』の連中だろう。

 エルネスタのことだ、どうせ交渉かなんかで手に入れたのを自分好みに改造したんだろ。

 今のところあいつらに俺と並走できるようなバケモンを作る力はないはずだし、ずっと俺を追い回してきた時点であいつの嫌がらせに決まってる。

 

 (・・・しょうがねぇ、万が一にもないだろうがここで放置して他の奴に迷惑掛かっても面倒だ。 ちゃちゃっと終わらせてパレードんとこにでも行くか)

 

 パレードというのはエルネスタのことで同じく頭を悩ませている苦労人仲間のカミラ・パレードのことだ。

 アルルカントの最大派閥の『獅子派(フェロヴィアス)』の会長をやってるあいつは“だれが使っても強力な《煌式武装(ルークス)》の製作”を目標に日頃から大量の煌式武装を作っている為に俺はよく試験運用を頼まれる。

 律儀な性格をしているパレードは一回一回使った感想を言うだけで報酬をくれるのだ。

 前に一度「お前も学生なんだからそんな金に余裕ないだろ、報酬なんていい」と言ったことがあるのだが、返ってきたパレードからの答えはいつも少ない仕送りで生活している俺に格の違いというのを感じさせるものだった。

 

 「いや、少ないとはいえ危険が伴う試験運用をやってもらっているのだからこれくらい払わせてくれ。 それに煌式武装の製作で貰っている給金も使い道があまりなくて困っていたのだ」

 

 思わず養って下さいと言いそうになったのを寸前で堪えたあの時の俺は褒められてもいいはずだ。

 

         ガンッ!  ガンッ!

 

 さっきから無視してきたが、そろそろ煩わしくなってきたので壊してしまおう。

 

 (こういうタイプはどうせ斬撃、打撃系統は効果ないからなぁ・・・、消し去るか)

 

 そう考えた俺は扉に近づき、扉が開いた瞬間、

 

 「【水玉】」

 

 飛び込もうとしてきたゲル状の生物を玉状にした水で包んでから、

 

 「ほい、圧縮っと」

 

 そのまま玉の大きさを縮めて潰す。

 この技は本来なら水中で息ができるように作ったのだが、エルネスタの《疑似人形(パペット)》を相手しているうちにできるようになった。

 

 「さてと、この時間帯ならパレードは自分のラボにいるかな?」

 

 突然押しかけても迷惑かと思ってとりあえず電話してみることにした。

 

 「・・・・・・『私だ、どうした比企谷?』」

 

 流石はパレードきっかり6コール後にでた。

 

 「ちょっと用があるんだが、今ラボにいるか?」

 

 「『ああ、いるぞ。 今から来るのか?』」

 

 「ああ、そのつもりだったんだが・・・駄目だったか?」

 

 「『いや、問題ない。 だが、少し時間をもらえるか?』」

 

 「大丈夫だが、どうかしたのか?」

 

 「『今は少しばかり散らかっていてな、比企谷が来るのなら片付けておこうと思ってだな』」

 

 「俺は気にしないが?」

 

 「『こちらが気にするのだ、『獅子派』の会長が来客を迎え入れるのにその場所が汚れていては私に立つ瀬がないのでな』」

 

 「パレードがそう言うなら、じゃあ今は一時半だから二時でいいか?」

 

 『ああそれで構わない、すまないな比企谷』

 

 「こっちこそ急にすまないな、それじゃあまた後でな」

 

 「『ああ』・・・・・・」

 

 通話が切れた。

 その後俺は片手をポケットに突っ込みながら廊下を歩く。

 

 「時間が来るまで暇だな、何しとくか」

 

 誰もいなかったので声に出してみたが、さしていい案は浮かばなかった。

 何して時間をつぶそうか悩んでいると、

 

            グゥ〜

 

 腹の音が鳴ってしまった。

 エルネスタの乱入ですっかり忘れていたが、俺はまだ飯を食ってなかった。

 

 (三十分もあるわけだし、購買で小腹に溜まるものでも買っておくか)

 

 財布を見てみれば、大好物のマッ缶(MAXコーヒー)も一緒に買ある金額があることに気づき一緒に買おうと決めた。

 マッ缶が楽しみになった俺は気分を良くしながら購買へと向かった。

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