【艦これ×SCP】SCP-5038-HM-EX及びSCP-5039-HM関連資料集   作:宮園レイン

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SCP-5124-HM-J - 比叡カレー

アイテム番号: SCP-5124-HM-J

 

オブジェクトクラス: Safe Neutralized

 

特別収容プロトコル: SCP-5124-HM-Jは、サイト81██の調理場にて、一般的な冷蔵庫の冷凍室に入れて鍋ごと冷凍保存されています。サイト管理官の許可なく対象を摂食することは禁止されています。

事件-5124-HM-J-1における収容違反により、対象を保管している冷蔵庫は、財団標準の複合型電子ロックを備えた第20低脅威物保管庫に移されました。電子ロックはレベル2/5124-HM-Jクリアランスを持つ職員のみがアクセスできます。

 

現在、対象実体は存在しておらず、対象によって流布されたミーム的異常性も無力化された為、収容の必要はありません。

 

説明: SCP-5124-HM-Jは、SCP-5039-HM-A-022"比叡"によって調理されたカレールウです。

 

対象は濃紫色をしており、強い刺激臭を放っています。この刺激臭を嗅いだ人物は眩暈を引き起こし、不快感を露わにします。

対象を10g以上摂食した人物(以下、被験者)は、食後5~60分の間に意識を失い、昏睡する可能性があります。被験者は昏睡から約3時間で意識を取り戻します。

摂食から1~2日後、被験者は焼けるような腹痛と猛烈な下痢に襲われ、トイレに駆け込むことを強いられます。

 

対象は、サイト81██のSCP-5139-HM収容施設内の共用スペースに設置された調理室で調理されました。同じ収容施設内に収容されていた複数のSCP-5039-HM-Aが、よろよろと歩く、頻りに咳き込む、喉に手を当てて苦しむ、施設内の監視カメラに何かを訴えるなどの異常行動が見られたことから、機動部隊ゆ-13"憲兵隊"の隊員2名が現場に進入しました。隊員らは完成した状態の対象を発見し、その異常な発色と耐え難い刺激臭からこれをアノマリーとして認め、収容に至りました。また、生物災害に繋がる可能性を考慮し、調理室は消毒の為に7日間に渡って封鎖されました。

 

摂食後の症状は概ね予想通りと言えるでしょう。後日、成分分析と調理した本人へのインタビューも行いましょう。

― ██博士

 

 

補遺1:

インタビュー記録-1422-HM-J-1

対象: SCP-5039-HM-A-022

質問者: ██博士

付記: SCP-5039-HM-A-022との円滑な会話の為、質問者は対象を"艦名"で呼称している。

 

[記録開始]

 

██博士: こんにちは、比叡さん。

 

SCP-5039-HM-A-022: あ、██さん。あのカレー、結局どこに持っていったんですか?

 

██博士: そのカレーのことで、比叡さんに聞きたいことがありまして。

 

SCP-5039-HM-A-022: はい、あのカレーはいつも頑張っている司令の為に作りました! でも、それどころの話ではなくなってしまいましたけど……。

 

██博士: いえ、そうではなく、どうやってあのカレーを作ったのかを伺いたいと思いまして。

 

SCP-5039-HM-A-022: どういう風にって、ごく普通に作りましたけど?

 

██博士: それは本当ですか?

 

SCP-5039-HM-A-022: はい。レシピも見て、ちゃんと作りましたよ!

 

██博士: では、レシピ通りに作ったということですか?

 

SCP-5039-HM-A-022: あ、いえ。完全にその通りではありません。

 

██博士: 何かアレンジを加えたのですね?

 

SCP-5039-HM-A-022: はい。カレーといえば香辛料! なので、気合い! 入れて! 色々入れてみました! [五秒間の沈黙の後、溜息] ……なのに皆さん、なぜか私のカレーから逃げるんです。

 

██博士: そうでしたか。なぜあのカレーがああなったのか、少し合点がいきました。

 

SCP-5039-HM-A-022: もしかして、あのカレーの何が悪かったのかご存知なのですか?!

 

██博士: ご存知というか、憶測ですね。時に比叡さん、完成したカレーの味見はしましたか?

 

SCP-5039-HM-A-022: 味見? そういえばしてませんね。でも大丈夫です! あれだけ香辛料を入れたんですから。

 

██博士: [5秒間の沈黙] なるほど。やはり、原因は香辛料の入れ過ぎのようですね。

 

[記録終了]

 

終了報告: このインタビューの後、彼女には許可なしでのカレー調理を禁止する旨を言い渡しておきました。これで、新たなSCP-5124-HM-Jが生まれる事はないでしょう。しかし、あれだけ落ち込まれると流石に罪悪感に苛まれますね……。

― ██博士

 

 

補遺2: SCP-5124-HM-Jの成分分析の結果、███種類もの香辛料が検出され、1gのカレールウに対して1種類につき約0.7gの香辛料が投入されています。その辛さはスコヴィル値*1換算で6,000,000SHUに及びます。なお、着色料らしき成分は一切検出されませんでした。

 

これであの刺激臭と辛味の原因が科学的に解明されました。しかし、あの毒々しい色合いについては解明に至らず、残念に思います。もしかすると、SCP-5039-HM-A-022は無意識に「プロトコル西行」のような特殊な調理手順を踏んでカレーを調理しているのかもしれません。 つまり、彼女の言う"普通に作った"調理手順をより詳細に調べるべきでしょう。

― ██博士

 

 

補遺3:後日、SCP-5039-HM-A-022の協力の元、SCP-5124-HM-Jの調理作業を観察・記録することで、レシピの詳細が判明しました。判明したレシピを用いて以下の実験が行われました。

 

実験記録-5124-HM-J-1

対象: D-5124

実施方法: D-5124にSCP-5124-HM-Jのレシピに従って調理させる。

結果:SCP-5124-HM-Jオリジナルと同等の辛味は再現されたものの、ルウの色は再現されなかった。

 

この実験結果が示すのは、レシピ自体に異常性はないということだ。……着色料も使っていないのに、なぜあんな色になる?

― ██研究員

 

 

補遺4: SCP-5124-HM-Jに関する事件が複数発生しました。詳細は以下の事件記録を参照してください。

 

事件記録-5124-HM-J-1

201█年██月██日のサイト81██において、機動部隊ゆ-12に所属する隊員4名が、同部隊の指揮官にSCP-5124-HM-Jの摂食を強要する事件が発生しました。対象を12g摂食した指揮官は昏睡状態となり、医務室に運ばれました。摂食から2時間17分後、指揮官は意識を取り戻しました。対象の覚醒直後に行われた医学的検査では異常は見られませんでした。

対象の摂食を行わせた4名の隊員は、摂食させた理由について「カレーのことは作った本人から聞いた。彼女が頑張って作ったのだから、指揮官に是非食べてもらいたいと思った」との旨の供述を行いました。

 

 

事件-5124-HM-J-1の発生により、SCP-5124-HM-Jを保管する冷蔵庫は、財団標準の複合型電子ロックを備える第20低脅威物保管庫に移動されました。アクセスはレベル2/5124-HM-Jクリアランスを持つ職員に限られます。

 

 

事件記録-5124-HM-J-2

201█年██月██日から同年██月██日の間に掛けて、サイト81██内においてSCP-5124-HM-Jの取扱い改訂を求める署名運動が発生しました。

その内容は「機動部隊ゆ-12指揮官は、比叡のカレーを責任を持って完食すべきである」というものであり、運動の中核メンバーとなっている職員らは当該サイト内の食堂でSCP-5124-HM-Jの取扱い方法の不適切さと、機動部隊ゆ-12指揮官による対象を摂食することの必要性を訴える演説を行い、署名を促しました。

 

当該サイト管理官は、SCP-5039-HM及びSCP-5124-HM-Jに関する意図的な機密情報漏洩と収容違反の疑いで、機動部隊ゆ-13に対して署名運動の鎮圧と中核メンバーの拘束を命令しました。

拘束された運動の参加者はいずれもSCP-5124- HM-J担当職員でした。拘束時に回収された署名用紙には94名の署名が確認されており、そのうち78名は対象アノマリー担当ではない職員による署名であることが確認されています。

その異様とも言える共感者の多さから、サイト管理官は認識災害及びミーム災害の可能性を考慮し、日本支部情報災害対策部門への協力要請を行いました。

201█年██月██日、サイト管理官命令により、協力要請は取り下げられました。

 

考えてみれば、作ってもらった料理を摂食するよう促すのがミーム的異常性のわけがない。わざわざ作ってもらった手料理をありがたく食べるのは調理した人への礼儀であり、道徳的に当たり前であると言ってもいいはずだ。たとえそれが濃紫色の激辛カレーだったとしても。

― ██研究員

 

 

事件記録-5124-HM-J-3

201█年██月██日、サイト81██内の2/3の職員の間で、SCP-5124-HM-Jの取扱いに関する投票が非公式に行われました。投票用紙には2つの項目が記されており、具体的には「1. 比叡のカレーは機動部隊ゆ-12指揮官が残さず全て食べきるべきである」と、「2. 比叡のカレーは収容を維持されるべきである」の2つの項目が用意されています。

なお、この投票に参加した全職員が項目1にチェックを入れたことが確認されています。この結果は、極めて順当な結果と言えます。

 

私は、なぜSCP-5124-HM-Jを機動部隊ゆ-12の指揮官に食べさせる為だけにここまでするのか、正直理解できませんでした。確かに、手作りカレーを取り上げられた彼女は気の毒ではありますが、それが異常性を帯びている以上、対象が何であれ収容するのが我々財団職員の責務です。

しかし、投票に集まった皆さんの話を聞いて、私は啓蒙されたのです。これが彼女の――比叡さんの愛情が籠もったカレーであるということを、私はすっかり失念していました。このカレーは、ただ冷蔵庫に寝かせておいても何の意味も持ちません。"提督"が食べることで、初めて意味あるものとなるのです。財団職員としての責務は重要ですが、これは人としての責務であると認識しています。

よって、ここに私は、機動部隊ゆ-12指揮官によるSCP-5124-HM-Jの摂食実験を進言します。

― ██研究助手

 

研究主任として、██研究助手をSCP-5124-HM-J研究プロジェクトからの解任を進言します。彼女の言動は、財団職員としての自覚を欠いた行動です。

― ██博士

 

サイト管理官命令により、研究助手の解任を却下する。その上で██研究助手の進言を採用し、管理官命令で摂食実験を実行する。研究主任はこの命令を厳守するように。

― サイト81██管理官

 

先日の情報災害対策部門への協力要請撤回の件といい、最近のサイト81██管理官の判断は理解に苦しむ点が多い。そもそも、SCP-5124-HM-Jの異常性が概ね解明された今、なぜ摂食実験を行う必要がある?

― 機動部隊ゆ-12指揮官 "提督"

 

██研究助手が述べた通りだ。彼女が"提督"の為に腕によりをかけて作った手料理なんだ。ならば、君が食べるのが礼儀というものだ。

― サイト81██管理官

 

この[罵倒語]管理官め。もうまともな人間は██博士以外残ってはいないのか?

― 機動部隊ゆ-12指揮官 "提督"

 

 

補遺4: ██研究助手により、SCP-5124-HM-Jに当たる異常存在はカレーそのものではなく、「機動部隊ゆ-12指揮官が何らかの情報災害によって"SCP-5039-HM-A-022が調理した料理の摂食を徹底的に拒絶しなければならない"という認識に囚われている」という事象であるとする説が提唱されました。これがミーム的異常性を持っていると仮定した場合、本件はAK-クラス:世界終焉シナリオの前兆となりうることを意味します。

 

もはやこれはSCP-5039-HM-A-022個人の問題ではない。作って貰った料理を感謝して食す。そんなごく普通の、しかしながら大切な価値観を守る為、我々は一刻も早く彼に"比叡カレー"を食べさせ、認識を改めさせなくてはならない。それこそが唯一の対抗ミームだ。

― サイト81██管理官

 

 

補遺5: サイト81██管理官と██研究助手の監督下で、AK-クラス:世界終焉シナリオ阻止の為、機動部隊ゆ-12指揮官に対してSCP-5124-HM-Jを完食させる試みが施行されました。

 

実験記録-5124-HM-J-2

対象: 機動部隊ゆ-12指揮官

実験方法: ゆ-12指揮官にライスに盛り付けたSCP-5124-HM-Jを摂食させる。機動部隊ゆ-13が実験を監視し、対象が摂食を拒否する場合は警告を行い、必要であれば威嚇射撃を行う。

結果: 対象はSCP-5124-HM-Jを数分間睨んだが、機動部隊ゆ-13隊員の警告を受けると、ゆっくりと摂食を開始した。対象は摂食開始から1時間12分後にSCP-5124-HM-Jを完食した。

 

本実験の成功により、SCP-5124-HM-Jは無力化された。手料理を作ってもらったことに感謝し、ありがたく食べるという当たり前ながら尊い道徳観は守られ、世界常識の書き換えを未然に防ぐことに成功した。比叡女史の想いもまた、ここに成就されたのだ。

― サイト81██管理官

 

 

補遺6: ██博士からの通報を受けて、サイト81██がミーム災害によって機能不全に陥っていることが判明しました。これを受けて、事態収束の為に機動部隊█-██が出動しました。機動部隊は実験-5124-HM-J-2が終了した14分後に到着し、サイト81██の人員全てに対してBクラス記憶処理が実施されました。

 

また、SCP-5124-HM-Jは全て消費された為、対象はNeutralizedクラスに再指定されました。

 

遅い。 ― 機動部隊ゆ-12指揮官 "提督"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脚注

*1トウガラシの辛さを計る単位。正式にはスコヴィル辛味単位 (Scoville heat units, SHU)と呼ばれ、カプサイシンの含有率を表す。対象を砂糖水で薄めたとき、複数の被験者が辛みを感じなくなった倍率の数値がそのままスコヴィル値となる。

例としては、「鷹の爪」のスコヴィル値は約40,000~50,000SHUとされている。

 

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