Fate/Pocket Monsters   作:天むす

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 アーチャー(Fate/stay night)inアニポケ
 英霊・エミヤの分霊は、今日も何処かの世界でいつも通り人類の後始末に奔走中☆ 今回の現場は焼けた森の中! 答えを得ていても、やっぱり硝子の心は痛んでしまう……希少な生き物と地球温暖化、そして儘ならない正義の味方の在り方に嘆いていると、そんな彼の前に不思議な妖精が現れた!?
 淡い赤色の妖精はエミヤの嘆きに呼応するように涙を流し、まるで慰めるようにその胸にすり寄ってくる……。すると突然、その場に不思議な音が響き渡り、エミヤは光に包まれ――子どもの姿でトキワの森に突っ立っていた!!(立っていたとは言っていない)

ハーメルンテスト投稿です。
一発ネタ&続編未定連載できる執筆状況でないため、短編投稿です。
不備などがありましたら指摘して下さると有難いです。
(一応連載へ移りました)

19/03/08 修正



序章
Fate/Pocket Monsters


 

 人類の〝存続するべき〟集合無意識――アラヤに召喚されたその守護者は、この時も人間のもたらした破滅の後始末をしていた。

 この守護者は、名を『エミヤ』としている。末端ではあるが英霊の座に至った西暦二〇〇〇年代の人間であり、生前は〝正義の味方〟として慕われ、恐れられた者だ。

 世界には主に二つの抑止力が存在し、人類の破滅回避を『アラヤ』、星の生命延長を『ガイア』としている。どちらも世界の継続を維持するものであり、英霊はアラヤ側の抑止力である『守護者』とされ、手段の一つに値する。しかし、全ての英霊が守護者に当たるわけではなく、知名度や神性の高いものはガイア側に与するため、必然的に守護者の任に就くのは『信仰の薄い英霊』か『生前にアラヤと契約し、自身を売り渡した者』と限定される形となる。

 エミヤはアラヤと契約した元一般人だった。

 養父と交わした〝正義の味方〟になると言う約束を守るために、全ての人々を救うために、己の全てを世界へ明け渡した愚かな男だった。

 結果的に、ある意味では正義の味方となったエミヤだったが、彼の望む『全ての者の救済』は叶わぬままであり、それは死後であっても変わってはいない。

 何故ならば、エミヤは辿り着いた果てにて、守護者として人間を処理していたからだ。

 助けたかったものを殺し、救いを求めるものも殺す。破滅の要因となるその場全てのものを殲滅する。それが今のエミヤ(守護者)だった。

 初めこそ、その抗いがたい使命に絶望したが、しかし、今の彼にはそれ以外のものもあった。

 嘗てこそ、絶望の果てに自分殺しを試みた。しかしその過程を得て、エミヤは以前まで抱いていた〝答え〟を思い出した。

 原点を同じくする自分に、己を導いてくれた師に、光輝く憧れし星に、エミヤは救われた。己が歩んで来た道のりは、胸に抱いた志は、決して間違いではなかったのだ、と。

 故に、エミヤは守護者であった。

 何れにしろ、誰かがやらねばならない役割である。望む形とは違えど、エミヤは得た答えを魂に刻み、頑張って行こうと誓った。

「…………」

 頑張って行こうと誓った、が――やはり辛いものは辛いことに違いはない。

 焼け落ちた森の中、最後の標的を処理したエミヤは構えていた黒い大弓を下ろし、重いため息を吐いた

 たまの息抜きとしてアラヤ以外からの召喚に応じることもあるが、それは分霊であって本霊のエミヤではない。永遠に囚われの身であるエミヤは、一種の拷問を受け続けているような状況下にある。硝子の心ながら硝子故に腐らない彼だが、疲れる時は疲れる人間だった。

 特に、今回の召喚は彼の心に重くのしかかった。

 森が焼け落ちたために動物たちの多くは生き絶え、近くに村があったために老若男女を皆殺しにした。ついでにエミヤは猫派だったのだが、当然そんな事は関係なく、一匹残らず猫も殺してしまっている。この場に、生き物は欠片も存在していなかった。

「……慣れた、と思っていたが……」

 殺戮は、生前からエミヤの行っていたことの一つだった。いつしか殺すことに慣れてしまっていたが、本来の彼は『奉仕体質』と言わしめる程のお人好しである。

 エミヤの心は、救えなかった命に嘆いていた。

 黒く焼けた大木に触れ、その命がとうに落ちていることを実感する。

 この森はどうなるのか、エミヤにはわからない。放置されるのか、更地とされてしまうのか。時間に囚われぬ身であれど、先を知ることのできないこの身で、せめてまた緑豊かな世界に戻って欲しい、と無責任にも願ってしまう。

「……我儘な願いかな……」

 エミヤの体が引っ張られる。分霊である今の彼が、役目を終えたことによって座へ戻ろうとしているのだ。

「……ビィ」

 と、そんなエミヤの前に、不思議な生き物が現れる。

 全身は淡い赤色で、球根のような頭に二本の触覚を生やす、小さな羽根を持つそれ。何とも面妖なその生き物は、一見妖精のように見える。

 妖精はガイアに属することもあるため、もしかしたら森が焼けたことによって現れたのかもしれない。アラヤ側であるため、あまりガイア側を知らないエミヤはそう予想を立てる。

「ビィ~……」

「すまない。私ではどうすることもできないんだ」

 妖精はエミヤの周りを飛び回り、焼けた森に触覚を垂らして悲しげな声を上げる。それを見たエミヤは、焼けた原因とは関係ないながらも申し訳ない気持ちとなった。

 見たこともない形をした妖精だが、エミヤにはそれがとても美しいものに思えてならなかったのだ。そんな美しいものを傷つけてしまった。そのことがエミヤに罪悪感を抱かせ、妖精へ可哀想と同情してしまう。なんと言う傲慢か。感情を自覚して、エミヤは唇を噛んだ。

 だが、エミヤにできることは何もない。できることとしては、この惨状を引き起こした一つとして、悲しみを生み出す一つとして、清く姿を消すくらいのことだ。

「何処から来たか知らんが、安全な場所に行くといい」

 妖精を一撫でし、エミヤは優しく声をかけた。

「……ビィ、ビィ~!」

「ど、どうした!? 何か嫌なことをしてしまったか!?」

 すると、妖精は途端に泣き出した。エミヤは何か不快な思いをさせてしまったのかと慌てるが、妖精はそれを否定するように首を振る。

 そこで、不意にエミヤは信じられないものを見た。

 なんと妖精が流した涙が焼けた地面に落ちると、そこから瑞々しい草花が芽吹き始めたからだ。

 エミヤは知らなかったが、この妖精は『セレビィ』と呼ばれる全く別世界の生き物だった。時を渡る未来の存在であり、セレビィが現れれば豊かな緑が生まれると伝わる、平和の象徴とされる幻の生き物だ。こことは別世界であるが、その伝説に偽りはない。

 セレビィの涙を中心に、焼けた森にはどんどんと緑が広がっていく。唖然とするエミヤにも、ここが先まで戦場であったとは思えない程に、見る見る間に自然が覆い尽くしていく。

「これは……一体……」

 何が起きたのか。まるで魔法のような光景に全く理解の追い付かないエミヤは、ただただ目と口を開いて眺めるばかりだ。

 セレビィは平和の象徴とされる。つまり、焼け野原になったここも、未来では自然に囲まれる平和な土地となっていることを暗示させるだろう。もちろんそんなことをエミヤは知らないが、困惑の次に胸を占めたのは、たしかな安堵だった。

 無惨としか言えない程に汚れてしまった森が、元の美しい景色を取り戻している。壊れてしまったものが元に戻っていく。また立ち上がっていく。

 セレビィの成したことはエミヤに希望の光をもたらし、その心を癒すものとなっていた。

 セレビィは緑に包まれた焼け野原にて嬉しそうに一回転すると、その喜びを分かち合うようにエミヤの胸元にすり寄った。エミヤは抵抗することなくそれを受け入れ、またつるりとしたその頭を撫でてやる。

「すごい……こんなことが、まるで奇跡じゃないか。君は一体、何者なんだ?」

 神でもこんな奇跡を成すことができるのか、少なくとも神秘の薄れた現代では不可能と言えるだろう。その不可能を成した存在を、エミヤは心底から称賛する。

 異変が森のみならず、自身にも起こっていることにも気付かずに。

「――――っ何だ!?」

 その時、不思議な音が響き渡った。

 鐘のような、オルガンのような、言い表すことができない、しかし美しい音だった。

 それは一度では止まず、二度三度として連続的に起こる。それに呼応するように光の波紋が広がり始め、辿れば、その発生元はエミヤの抱くセレビィだった。

 呆けていても、エミヤは守護者だ。直ぐ様異変に気付き、セレビィから距離をとる。

 ここで漸く、本来ならとうに座へ戻っている頃であることに彼は気付いた。しかし、僅かに引っ張られる感覚はあれど、未だに座へ戻る気配はない。そもそも、先の奇跡は有り得ない光景ながら、抑止力が働いた様子が全く見られなかった。

 この妖精をもとに、何かが起きている。そう確信して警戒を強めるが、そんなエミヤとは反対に、セレビィは小さな手を真っ直ぐ伸ばしてきた。

 まるで誘うようなその仕草。断られると思っていないのがありありと窺える。純粋で裏など欠片もない、幼さを思わせるものだった。

 それに、エミヤは警戒を解いてしまう。

 この妖精は己に害を与えるものではないと、そう思えたのだ。具体的な根拠などない。しかし、確信はある。何故ならば、何よりも優しい、そのエメラルドの瞳。セレビィはただひたすらに、エミヤを愛おしそうに見つめている。こんなに澄んだ瞳を持つものが、何の悪意を抱いていると言うのか。

 気が付けば、エミヤも応えるように手を伸ばしていた。

 この未知なる妖精の手を取れば、何が起こるかわからない。けれど、妖精の期待に応えたいと、そう思えたのだ。

 相変わらずのお人好しか。脳裏で仕方ない、と少女が困った顔で笑う。自分の口角も持ち上がることを自覚し、エミヤは途中から自分の意思で腕を伸ばしていた。

 小さく短い指に、武骨で焼けた指が触れる。

 やはり――エミヤは納得した。

 やはり、これに悪意はない。ただ純粋に、何処かへ己を誘おうとしている。そして、そこに連れられることが、これへ何らかの幸福を与えるのだろう。

 ならば、応えてやらねばならない。

 エミヤは光に包まれ、意識を手放した。

 

 

 

 Fate/Pocket Monsters

 

 

 

 気が付くと、エミヤは森の中に居た。

 先までの場所とは違い、太い木々がうっそうと生い茂る少し空いたスペース。その地べたに寝転んでいた体を起こし、ぐるりと周囲を見渡した。

 見えるのは木々と草花、そしてその間から覗く青空。何処からどう見ても自然豊かな森の中だ。ついでに、エミヤの周りを楽しそうにくるくると舞い踊っている妖精と似た気配が、草木のあちらこちらから感じられる。

 やはりここは先の場所ではない。妙な確信に、エミヤはため息を吐く。

 少し早合点してしまったか。己で良しとしたことであるが、結果が予想外であったためにハの字の眉を寄せる。

 先程は背を押してくれた少女の影は既にない。記録に宿る影と知っていながらも、その無責任さにも頭が痛かった――否、これは間違いなく責任転嫁である。わかっている。こうなったのはすべて己の責任であるのだと。

 深いため息が出た。

「…………何処だね、ここは?」

「ルルルビィ~♪」

 思わず問いかけたエミヤに、セレビィは楽しげな笑みを返し、その胸へすり寄った。

 




ふんわりとした下地設定メモ

セレビィ
Lv.50
同族以外には人見知りだったが、エミヤの魂から伝わる優しさや悲しみに触れ、エミヤを支えたいと思い、懐いた。人見知りながら、懐いた相手にイタズラをするお茶目なところもある。好きなものはエミヤの作るご飯。
 色:淡い赤色(ピンク)
特性:自然回復(しぜんかいふく)
    他のポケモンに交代すると異常状態が回復する。
性格:おくびょう(素早さ↑攻撃↓)
 技:まもる(ノーマル変化自分、必ず先制でき(優先度:+4)、そのターンの間、相手の技を受けない。連続で使うと失敗しやすくなる)
   やどりぎのタネ(くさ変化命中90単体、使用後毎ターン、相手のHPを最大HPの1/8ずつ減らし、その分自分のHPを回復させる。自分は交代しても効果が引き継ぐ。くさタイプには無効)
   わるだくみ(あく変化自分、自分の『とくこう』ランクを2段階上げる。)
   サイコキネシス(エスパー威力90命中100特殊単体、10%の確率で相手の『とくぼう』ランクを1段階下げる)

 エミヤ
分霊の一つであり、セレビィのトレーナー。仕事の帰宅途中にセレビィと出会い、時渡りによってポケモン世界のトキワの森へトリップしてしまった。一応『ポケットモンスター』というジャンルは知っているが、表面上なだけで子どもに人気ってことくらいしかわからない。
アラヤの支配下にあるものを無理矢理時渡りさせたため、その影響で霊基に傷が付き、回復のため子ども化。また時渡りと世界を超えたことが都合良く化学反応し、何故か受肉した。姿は十歳頃の2Pカラー士郎。身体能力は元のままであるため、喩え6Vガブリアスが相手でも戦える。元々人外のためか、ポケモンの意思をニュアンスで捉えられる。衣装は武装風だと好みです。
トリップ後、途方にくれるエミヤはオーキド博士と出会い、旅に出るまでの間は研究所の世話になることとなる。
衣装案①
【挿絵表示】

 ②
【挿絵表示】

 ②の詳細(モノクロ)
【挿絵表示】

一応今後の展開予定
サトシの見た目三つ歳上であり、序章はアニメが始まる三年くらい前に飛んでいる設定です。この後にオーキド博士と出会い、ポケモン世界について半年程学びます。そしてある程度の知識を得た後、二年半でカロスまで旅をし、アニメ1話にマサラタウンに戻ってくる、と言うところからアニメ沿いで書いていくかもしれません。
ストーリーの書き方としては、エミヤを絡ませたい話を虫食いで書いて行けたらな、と思っています。シゲルのようにたまに出で来る準レギュラーキャラみたいな? 同郷で昔遊んでもらった兄貴分先輩トレーナーみたいな? そんな感じになればなー、というふわっふわな設定で書いていました。

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