あんさんぶるガールズ!〜あんガルな日常〜   作:銀の鈴

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徐々にギャグ成分が増えます。ご注意下さい。


第3話「天使な歌姫」

転校初日の放課後、転校生は生徒会長からの呼び出しを受けた。

 

「だが、断る!」

 

生粋の革命児だった姉から教育を受けた転校生にとって、権力者というのは従う相手ではなく、戦う相手だった。

 

そんな反骨心の塊ともいえる転校生に権力を使っての呼び出しなどとなれば、彼が反抗することは火を見るよりも明らかだった。

 

「はいはい、わたしが付いて行ってあげるから子供みたいなことを言わないの」

 

転校生はなつみにドナドナされた。

 

そして、ドナドナされた転校生は、生徒会メンバーの口車に乗せられて、生徒会長再任選挙に巻き込まれることになる。

 

だがそれは、今語るべきことではない。

 

今、語るべきは一連の騒動で知り合った一人の天使のことだ。

 

「〜〜〜♪」

 

天使に誘われるままカラオケに出向いた転校生は、地上に舞い降りた天使の歌声に聞き惚れていた。

 

「どうだったかな? 転校生くん」

 

歌い終わった天使は、恥ずかしそうに歌の感想を転校生に尋ねる。

 

「もうっ、最高です! はじめ先輩こそ世界一の歌姫ですよ!」

 

「もう、転校生くん。お世辞はいいから本音を聞かせて欲しいな」

 

仕方ないなあ、という顔で転校生を窘めたあと、天使は再び歌の感想を転校生に求める。

 

そう、地上に舞い降りた天使の最近の趣味はカラオケだった。

 

ずっと浮世離れしていた天使――転校生に言わせれば天使が浮世離れしているのは当然なのだが――は、生徒会長再任選挙の騒動で色々と考えさせられたらしく、最近になって普通の女の子がすることに興味を持つようになった。

 

転校生は、そんな天使に悪い虫がつかないようにと陰日向となって彼女を見守っていた。

 

そう、見守っているのだ。決してストーカーなどではないから勘違いしないで欲しい。

 

その証拠として、天使の人間界での仮の妹である“いちか”と転校生は天使不可侵同盟を結んでいた。

 

この同盟は、天使をこの世のあらゆる邪悪なる存在から守ると共に、互いを牽制をするための神聖なものだった。

 

そんな神聖な同盟に所属する転校生は、崇める天使の問いに対して居住まいを正してから答える。

 

「何言っているんですか!? たとえ、はじめ先輩の御言葉でもはじめ先輩の歌声こそ世界一のメロディを奏でる奇跡の音楽だということは否定させませんよ! そう、音楽です! 音を楽しむと書いて音楽と呼ぶ真の音楽こそが、はじめ先輩の歌声です! 天上の神々ですらはじめ先輩の歌声に聞き惚れることでしょう! だがしかし! だがしかしですよ! たかが、神々如きがはじめ先輩の至高の歌声を与えて欲しいなどと余りにも不遜です! このはじめ先輩が舞い降りて下さらなかったら地獄そのものだった世界を生み出した神々如きに、はじめ先輩が歌声を恵んでやる必要なんかありませんよ! はじめ先輩の清らかで聖なる歌声は、僕がこの矮小な命を懸けてでも絶対に守り通してみせます! もちろん、同盟者のいちかといえど例外じゃありません! そう、あのアブノーマルなはじめ先輩の人間界での仮の妹こそが、この僕が真に倒すべき相手なのかも…殺気!?」

 

「とうっ、くたばれ薄汚い男め!」

 

突然、カラオケルームの扉を蹴破って飛び込んできたいちかが、転校生に真剣で斬りかかった。

 

咄嗟に身を捻りいちかの剣を躱す転校生。

 

「同盟者に何をするんだっ、いちか!」

 

「うるさいっ、あたしの目を盗んでお姉ちゃんと二人っきりでカラオケに来るなんて、あんたなんか同盟破棄よ!!」

 

「同盟破棄だとっ!? ちょ、ちょっと待ってくれ! それだと天使のラブリーエキスが入ったスペシャルドリンクの供給はどうなるんだ!?」

 

「そんなの供給停止に決まってるわよっ!」

 

剣士としては無類の才能を誇るいちかの本気の斬撃を、天使への純粋な想いを力に変えた転校生は軽々と避けていた。

 

だが、いちかの無情すぎる宣言に転校生は生きる希望を失いかけた。

 

次の瞬間、転校生はいちかに土下座をする。

 

「すいませんでした!! もう二度とこの様な真似は致しません!! ですから同盟破棄だけは勘弁して下さい!!」

 

転校生の見事としか言いようのないほどの惚れ惚れとする土下座っぷりには、頭に血が上っていたいちかをも冷静にさせた。

 

そして、冷静になったいちかは思う。

 

お姉ちゃんのラブリーエキス入りスペシャルドリンク供給停止は、幾ら何でも言い過ぎだったと。

 

もしも自分と彼が逆の立場で、自分がスペシャルドリンクの供給停止を宣告されたなら、それは死ねと言われたも同然なのだから。

 

いちかは、土下座をする転校生の肩に優しく手を置いた。

 

転校生は恐る恐る顔を上げる。

 

顔を上げた転校生の目に映るのは、仏のようなアルカイックスマイルを浮かべたいちかの顔だった。

 

二人の視線が重なり合った。

 

その瞬間、二人の魂は分かり合う。

 

転校生は、己の裏切りを許してくれたいちかの慈悲深さにただ涙を流す。

 

いちかは、裏切りの荒野へと自ら堕ちるほどの転校生の想いの深さに共感の涙を流す。

 

涙を流しあう二人はいつしか握手を交わしていた。

 

そして、はじめはそんな二人に問うた。

 

「それで、転校生くんにいちか、なんとかエキス入りのドリンクって何のこと? 私にも教えてくれるかな」

 

転校生といちかは逃げ出した!!

 

「こら、二人とも待ちなさい!」

 

仲良く逃げ出す二人を追いかけるはじめ。

 

その姿には、『生き神さま』と信仰され孤独だった少女の面影など微塵も感じられなかった。

 

 

 




転校生の性格は安定しません。何故なら、あんガラーの数だけ転校生は存在するからです。
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