あんさんぶるガールズ!〜あんガルな日常〜   作:銀の鈴

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ぎんニャンの登場だ〜♪出番は少ないけどね。ちなみに転校生の出番はなし!


第7話「剣の道」

剣豪“宮本武蔵”は、額につけたご飯粒だけを敵に斬らせるほどの見切りを体得していたという。

 

だけどその行為は、わたしが敬愛する部長に否定された。

 

「にゃはは、実戦では何が起こるか分からないからね。紙一重で真剣を躱す“余裕”なんて持つべきじゃないよ〜☆」

 

確かにその通りだ。

 

斬撃を紙一重で躱せば、確かに自分の体勢は乱れない。反撃も容易だろう。

 

だけど、紙一重ということは敵からも近いということだ。

 

例えば部長なら紙一重の距離――肌と肌が密着するほどの超至近距離からでも致命的な寸打を放つことが出来る。

 

寸打――中国拳法でいう発勁、寸勁といわれる技法に通じる技だ。

 

他にも柔道部の主将のように組み技に通じた者なら至近距離など得意とする距離だろう。

 

剣士としての技だけではなく、他の武道の技を体得している敵などごまんといる。

 

それを見越してのご教授、流石は部長です。

 

「それに紙一重で剣の刃は躱しても、剣撃で生じる真空波を喰らうわさ…☆」

 

し、真空波…?

 

よく分からない単語に疑問を感じてしまったわたしに気付かれたのだろう。

 

部長は『見本を見せるわさ♪』と笑いながら抜き手も見せずに剣を振られた。

 

――ズバァッ!!

 

部長が剣を振られた先に飾られていた花瓶が見事な切り口で真っ二つに断たれる。

 

「ふ、触れずに斬られるなんて!?」

 

「にゃはは〜♪ トモには少し早い技だったかな〜☆」

 

部長は笑いながら『散歩に行ってくるわさ♪』と言い残し、剣道場を立ち去られた。

 

わたしは呆然と二つになった花瓶(の残骸)を見つめ続けた。

 

 

***

 

 

「というわけで、真空波を飛ばす練習をしますよ、いちかさん」

 

「じゃあ、あたしはカ◯ハ◯波の練習をしますね〜♪」

 

わたしの言葉を本気にされていないのでしょう。いちかさんは巫山戯た態度で両手を突き出しながら笑っています。

 

とりあえず、気に喰わない態度なのでボコりましょう。

 

〜〜〜現在、残虐な行為が行われています。自己規制中〜〜〜

 

 

「では改めまして、真空波を飛ばす練習をしますよ、いちかさん」

 

「ふぁ、ふぁい……が、がんばり…ま…ます…」

 

なんだか元気がありませんね。ですが、今のわたしは気分爽快な気分なので大目にみてあげましょう。

 

「それで、いちかさんはどうすれば真空波を飛ばせると思いますか?」

 

「あたしに聞くの!?」

 

残念ながら、わたしがどれほど速く剣を振っても真空波は出ませんでした。

 

そこで思いついたのが、荒唐無稽な内容の漫画やゲームを嗜むいちかさんです。

 

剣撃で真空波を飛ばすことも、一般常識に照らせば荒唐無稽な行為でしょう。

 

ならばそこにヒントがあると考えました。

 

「さあ、いちかさん。その首を飛ばされたくなければ、真空波を飛ばす練習方法を考えなさい」

 

「無茶振りすぎるっ!?」

 

しばらくの間はギャアギャアと喧しかったいちかさんですが、ぴょんぴょん丸を抜いたところ、わたしが本気だと悟ったのでしょう。

 

今度は一転、蒼白になりながらもウンウンと頭を悩ましながら真剣に考え始めました。

 

うふふ、良いアイディアが出ることを期待しましょう♪

 

 

***

 

 

いちかさん曰く、真空波といえば南斗◯拳らしいです。

 

「まずは石の灯篭を斬り裂く練習からです!」

 

そして真空波を飛ばす云々よりも先に、剣(拳)の鋭さを得ることが先だと仰られました。

 

その言葉に、わたしは目からウロコが落ちる想いです。

 

確かに部長ならば容易く石の灯篭どころか、鋼鉄の灯篭をも真っ二つにしてしまえるでしょう。

 

それだけの腕前があるからこそ、真空波を飛ばせるのだと察することが出来ました。

 

「王道に近道なしですよっ、副部長!」

 

うう、わたしは恥ずかしいです。

 

わたしよりも未熟ないちかさんですら分かっている事を分かっていなかったのですね。

 

 

***

 

 

神樹神社から譲り受けた廃棄寸前の石の灯篭。

 

それを前にして、わたしは精神統一を行う。

 

今のわたしの腕ならば石の灯篭なら斬ることは出来る。と、相談をした部長が太鼓判を押して下さりました。(さすがに鋼鉄はまだ早いと言われました)

 

その言葉を胸に、わたしは気を高めていく。

 

「副部長っ、コツは体内の気を一点に集中して一気に爆発させるんですよ!」

 

いちかさんのアドバイスを受けて、わたしはぴょんぴょん丸にありったけの気を注ぎ込む。

 

そして、わたしの気が最大をむかえた瞬間、大きくぴょんぴょん丸を振りかぶって一気に振りおろした。

 

――パキーン☆

 

「わたしのぴょんぴょん丸が折れたぁあああっ!?」

 

「あっ、この石の灯篭って、中身は鋼鉄製だったんだ…☆」

 

無残に折れたぴょんぴょん丸。

 

痛いよー、痛いよー。と泣き叫ぶぴょんぴょん丸の声が、わたしの魂に聞こえてきます。

 

「いちかさん……この石の灯篭…いえ、この鋼鉄の灯篭は、神樹神社のものでしたよね」

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!? 確かにこの灯篭はあたしン家が寄付したものだけど、中身が鋼鉄製だなんて知りませんでしたよ!」

 

痛いよー、仇をとってよー。とぴょんぴょん丸が泣き叫ぶ声が、わたしの魂に聞こえてきます。

 

「……いちかさん、折角ですから……剣が折れた場合の戦い方をお教えしますね」

 

「え、えっと〜、遠慮し……ひぃっ!? た、助けてーっ!! お姉ちゃーん!!!!」

 

いちかさんの言葉の途中でしたが、わたしの我慢が限界を迎えました。

 

抑えきれない殺気をぶつけながら、いちかさんに襲いかかります。

 

「いちかさん、待ちなさいっ!! 待たないと酷いですよ!!」

 

「待ったらもっと酷いことになりそうなので、待たないですーっ!!」

 

追いつけそうで、追いつけません!

 

ええいっ、イライラします!

 

――ヒュン☆

 

「ひぃっ!? 今、何かヒュンって飛んできたーっ!?」

 

「い、今のはまさか真空波!?」

 

逃げるいちかさんにイラついたせいで思わず折れたぴょんぴょん丸を振ってしまいましたが、まさか真空波が出るなんて信じられません。

 

「見事だわさ、トモ!」

 

「部長!?」

 

信じられない思いで、手の中のぴょんぴょん丸を見つめていると部長が現れました。

 

「トモ、剣はただの武器じゃない。持ち主と心通わす戦友だわさ」

 

「ぴょんぴょん丸は戦友…」

 

「トモの想いに、その剣は折れながらも応えてくれたわさ」

 

「わたしの想いに、ぴょんぴょん丸が応えてくれた…」

 

「剣と魂を通じ合わせることで、持ち主は剣士となれるんだわさ」

 

「ぴょんぴょん丸と魂を…」

 

わたしは部長の言葉に涙を流す。

 

未熟なわたしのせいで、ぴょんぴょん丸は折れてしまったのに。

 

未熟なわたしのせいで、ぴょんぴょん丸は傷付いてしまったのに。

 

ぴょんぴょん丸は、そんな未熟なわたしの想いに応えてくれた。

 

「ぴょんぴょん丸……本当にありがとう」

 

「トモ…」

 

「部長…」

 

ぴょんぴょん丸を胸に泣き崩れるわたしの肩を、部長が優しく抱きしめてくれた。

 

「次はその剣の想いにトモが応える番だわさ」

 

「はい、部長。わたしは必ず、ぴょんぴょん丸の戦友に相応しい剣士になってみせます」

 

わたしはこの日のことを生涯忘れないだろう。

 

ぴょんぴょん丸と心を通じ合わせたこの日のことを。

 

そして、部長に導かれたこの日のことを。

 

 

 

「あの〜、あたしはもう帰っていいですか〜?」

 

 

 

 

 




剣道部の話を書いていると、旧あんガルのぎんニャン板で小話を書いていた頃を思い出す。ついこの間のような気がするなあ。
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