鎮守府や泊地に詳しい方いたら教えてください(__)
北方方面防衛の要所、単冠湾鎮守府。
択捉島のほぼ中心に位置する、直径約11キロの湾内には10数隻に及ぶ艤装が停泊することが可能で要所足りる風格を見せる。
しかし、相次ぐ深海棲艦の空襲により、現在の稼働が可能な艤装は実施上4割であった。
先の空襲で破壊させた施設の残骸の撤去、修復に艦娘と妖精、そして彼女たちを束ねる提督、三島大樹少将は躍起になっていた。
彼は空母戦闘群を指揮する機動戦術を得意とし、幾度となく深海棲艦の猛追から帝国を防衛してきた兵(つわもの)である。
が、幾度となくの命令、司令無視などの独断行動を取ることから、一部の官僚からは煙たがられている。
それは、彼の艦隊運用信条が、臨機応変、見敵必殺をとしているためである。
自分勝手ではあるが、戦果をあげているため、厄介払いを込めて辺境の北方方面最重要拠点の一つ、単冠湾鎮守府に配属されていた。
「提督、被害状況の確認が終わりました」
艦娘、大淀が提出した資料に目を通すと、深いため息を大樹は吐く。
「湾内に駐在中だった空母艤装3隻が大破、うち2隻が炎上して湾内に轟沈。戦艦艤装2隻が大破、巡洋艦艤装2隻と駆逐艦艤装4隻が小破。入渠中の長門の艤装にも被害……艦載機の損失は約150機……死傷者妖精が800名、艦娘加賀に蒼龍が意識不明の重体。重症に榛名と霧島。その他多数か」
「はい、工廠にも空襲を受けましたが施設機能に支障が無いのが幸いです」
「そうだな、しかし、人的被害は大きい。武器が在っても使える者いなければ意味がない」
「……そうですね」
この空襲で、主力空母加賀、蒼龍の2名の艤装を失ったのは、予想以上の痛手であった。
深海棲艦空母戦闘群は小規模ながら、明け方の完全な奇襲により、空母艤装3隻を轟沈せしめた。
これにより、兼ねてより計画していたアルフォンシーノ方面への進行が大幅にその期間を延長せざるを負えない。
まさか……そのことをしっての、最小戦力による奇襲なのか?
考えを打ち破るように指令室の扉が開かれる。
駆けこんできたのは、通信妖精であった。
「報告します! 第1艦隊航空戦闘群旗艦鳳翔より入電です」
「読んでくれ」
「はっ! 我、作戦を中止し、母港に帰投す。尚、追撃の途中、艦娘を発見。敵の空母戦闘群は彼女が殲滅。共に帰投する、以上です」
1日を得て、鳳翔率いる第1艦隊航空戦闘群とシュヴァンフヴィードは深海棲艦の襲撃もなく、艦隊は帝國領海内に入ることができた。
その短い時間で、シュヴァンフヴィードは妖精たちに現状とこれからの方針を説明した。
多くの妖精たちが、祖国が無いことに悲しんだが、みな涙を飲み込んでシュヴァンフヴィードに付いていくと了承した。
『鳳翔より発光信号……ワレニ、ツヅキ、湾内ニ、入ラレ、タシ……以上です』
鳳翔の艦橋から光信号が、発せられ、シュヴァンフヴィードは後に続く。
『前方に、艦影……空母2、戦艦3、巡洋2、駆逐艦4……損傷している艤装が殆どです』
見張り員の報告に、傍らにいるル級1が苦い顔をする。
僚艦になったことから彼女たち2人を艦橋内に立ち入ることをシュヴァンフヴィードは許可していたからだ。
「ココヲ攻撃シタノハ私タチデス。命令デ、敵ノ拠点ニ居ル空母ヲ奇襲シロト言ワレマシタ。作戦ハ成功……帰還途中ニシュヴァンフヴィード旗艦ニ遭遇シマシタ」
「そう。でもそれは命令に従って行ったこと。気に病むことじゃないと思う」
「……ハイ、アリガトウ御座イマス。シュヴァンフヴィード旗艦」
気を遣ったのではなく、シュヴァンフヴィードはただ真実を述べた。彼女たちは命令を自行しただけであって何ら非を感じることは無いのだから。それよりも……。
「そのシュヴァンフヴィード旗艦って言うの……何とかならない?」
「イケマセンカ?」
困った顔をするル級1に「そうじゃないけど」と口を濁らせる。
なんだかこそばゆい感じがして仕方なかった。
「しかし、よくあれだけの航空隊でこれほどの被害を与えましたな」
辺りを見渡した副長は双眼鏡から目を話とル級たちに振り向く。
「念入リニ練ラレタ作戦デ、攻撃目標ガ定マッテイマシタ。迎撃機ガ飛ビ上ガル前ニ攻撃ヲ加エ離脱シマシタ」
副長の問いにル級2は答えた。
一撃離脱の攻撃でこの損害を与えるとなると、あの異形航空機は余程性能がいいのかと副長は思ったが、自分たちの敵ではないとも感じていた。レシプロ機並みの速度などシュヴァンフヴィードに搭載された火器管制装置の前では止まっている的を射抜く程、容易いことだからだ。
『かんちょー……鳳翔より……通信……です』
「繋いで」
『こちらは鳳翔。シュヴァンフヴィードさんは私たちと共に司令部に出頭していただきますか?』
「わかりました。艦載機での着陸は混乱を起こす恐れがあるため、内火艇で向かいます」
『気遣いに感謝します、では』
通信が切れると、シュヴァンフヴィードはエレベーターに向うとするとル級たちも続いていく。
「なんでついてくるの?」
「イ、イケマセンカ?」
目を潤ませた子犬の2人にため息を吐く。
鳳翔には艦隊は殲滅したが、ル級たちを救出したことは伏せてあった。もしも話して、鳳翔が拘束に踏み切る可能性が無きにしも非ずであったし、誤解を招くことはしたくなかった為である。
それなのに敵の、あまつさえ自分たちが攻撃した鎮守府の敷居を共にまたごうとしている図太い精神に感服すら覚えた。
「貴方たちを連れて行けば、誤解を招く可能性がある。だからここで待機」
「ソンナ?!」
「私タチモオ供サセテ下サイ! シュヴァンフヴィード旗艦!」
「貴女ナニカアレバ今度コソ私タチハ……行キ場ヲ失ッテシマウ……ダカラ!」
必死に懇願する2人に首を横に振り、肩を落として消沈する2人にシュヴァンフヴィードは微笑む。
「貴女たちを連れて行けば、相手を刺激してしまうかもしれない。だから、ここにいてほしい。大丈夫、私は帰ってくるから」
そう言い残して、エレベーターの扉が閉まっていく。
閉まる直前、ル級1、2は「如何カゴ無事デノ帰還ヲ!!」と敬礼していた。
「どこの艦娘?」
「すごく大きい!」
「白くてきれいだな~」
港には大勢の妖精が復興の作業の手を止めていた。港湾に現れた1隻の艤装にくぎ付けになっていたからだ。
純白の流体的な船体に、2連装の巨砲。日本製の艦橋で、大和型よりも高い。その存在感は、人の目を釘付けにする気品を併せ持っていた。
「なんてきれいな艤装……」
「確かに。黒鉄の城――いや、まさに白鉄の城だな。あんなものは初めて見た」
港まで出てきた大樹と大淀は思わず感嘆の声を漏らす。
少しして、内火艇で第1艦隊航空戦闘群の面々は集まる。
その中に、紺色の軍服にマントを纏った少女が、あの艤装の艦娘なのかと大樹は気づいた。
「旗艦鳳翔以下、第1艦隊航空戦闘群帰還致しました」
「ご苦労鳳翔。偵察中に追撃の任務を出し、済まなかった」
「いえ……それで損害は?」
「ひどいものだ。空母艤装2隻が湾内の藻屑とかした」
「そんな……あの子たちは?!」
「加賀と蒼龍が意識不明の重体。龍驤は司令部に居たから何ともないが……」
「あの子たちが…………」
鳳翔は崩れ落ちるようにその場に座り込む。電と雷に響は心配そうに鳳翔に寄り添う。
「天龍。鳳翔宿舎に運んだ後でいい、報告書を提出してくれ」
「ったく、しゃあない……龍田無事か?」
「ああ、軽いケガだそうだ。みんな宿舎に居る」
「了解だ……鳳翔さん立てるか?」
「………………はい」
か細く消えそうな声で返事をした鳳翔を天龍は手を貸し、4人は宿舎に歩いて行った。
「それで君が、鳳翔の言っていた艦娘か?」
残された艦娘に大樹は向き合い問う。
「そうです。私はウィルキア王国海軍近衛艦隊旗艦、次世代試作戦艦シュヴァンフヴィード級1番艦シュヴァンフヴィード。以後お見知りおきを」
ゆったりとした動作で、シュヴァンフヴィードは敬礼した。
緋色の瞳は射抜くように、大樹に向けられていた。
感想誤字脱字なんでも待っています。
追記、駆逐艦の数を減らしました……すんません