食事をしながらシュヴァンフヴィードは鎮守府の艦娘たちと談笑をしていた。
その多くは質問のであるが、いやな顔を1つせずに丁寧に答える彼女に好印象を受けていた。
「ええっ! じゃあ帰る場所がないのかぴょん!!」
シュヴァンフヴィードの現状に驚く卯月に「はい」っと落胆気味に答えた。
「私の祖国はこの世界にはありません」
「それは悲しいぴょん……だからうーちゃんが慰めてあげるぴょん!」
「ぷっぷくぷー」と持ち前の一発芸を披露する卯月に「いや、ダメやろ」と的確な突っ込みをかます。
「……10点」
「相変わらず弥生は厳しいね」
「だねぇ~」
同じ姉妹艦の弥生は不機嫌そうに、皐月は苦笑いを、文月は楽しそうににやける。
「みんなでうーちゃんをいじめるなぴょん」と卯月は頬を膨らまれる光景に、ふふっとシュヴァンフヴィードは口元が緩む
「ねぇねぇ、シュヴァンフヴィードさんはいつまでここにいるの?」
「それは……わかりません。ですが突然いなくなることはありません」
「ほんと? だった今度あたしたちと遊ぼうよ~」
「こら文月、客人艦娘にあまり無理を言ってはいかん。遊びならこの長門が――」
「ええ~だって長門さん遊ぶの飽きたんだもん」
「なん……だと……」
ガーンと明らかに落ち込む長門。シュヴァンフヴィード以外の全員が「仕方ないよ」と諦観の視線を送る。
「ちょっといいか?」
振り向くと、そこには眼帯をした少女が威圧的な瞳で立っていた。
駆逐艦の子並みの慎重に水兵のようなデザインのセーラー服の上に黒のマントを羽織、同色のブーツにグローブ、白の軍帽。
腰に軍刀を差し、それは軍人より、海賊を彷彿?させる。
眼帯も天龍とは違い右になっているもの特徴だろう。
「俺は木曽だ」
「私はシュヴァンフヴィード」
「知ってる。さっき応接室であったからな」
木曽の言うとり、応接室で対面し、シュヴァンフヴィードの中で2番目に印象に残っていた艦娘だった。
大樹を含む4人の艦娘の中で、唯一敵意の眼差しを向け来ていたからだ。
「それでなにか?」
すっと隻眼が細められる。
「あんた言ったよな。単艦でここを襲撃した連中を殲滅したって」
「ええ」
「証拠は?」
「はあ?」
「聞こえなかったか? 一体どうやって敵艦隊を殲滅したっていう証拠がある?」
「…………」
シュヴァンフヴィードの沈黙に「はっ、そうだろうよ」とわざとらしく両手を上げ、大げさに振る舞う。
「証拠はあんたの中だけ。鳳翔さんの艦隊が接触したのはその後だ。あんた以外に見たやつはいない。そうだろう?」
より一層の殺意を持った隻眼がシュヴァンフヴィードを睨む。
「木曽! シュヴァンフヴィードに失礼だぞ! 訂正しろ!」
「せや! その言い方はあらへんやろ!」
「なら、こいつが深海棲艦のスパイでない証拠はなんだ? 同じ艦娘だからか? 存在しない国の? 俺はこいつが何かを隠していると思うがね」
「…………」
表情にこそ出ないが、シュヴァンフヴィードの動悸が速くなり、額には冷や汗が浮かんでいた。
「わかりました。木曽さんの言う通り私は嘘をついていました?」
観念したように立ち上がり、瞳を閉じる。
「嘘だと?」
長門は目を見開いて驚く。
「それ見ろ、やっぱりこいつは奴他のスパイなんだ!!」
木曽は軍刀を抜き、刃をシュヴァンフヴィードに向けた。
「なんや……シュヴァンフヴィードはん…………嘘って?」
「それは…………」
閉じていた瞳を開き、困ったように微笑む。
「実は、私の艦には無人偵察機がありまして」
「無人……偵察機?」
オウム返しのように聞く木曽に頷く。周りの龍驤たちも顔を見合わせる。
「名をメーヴェと言います。全長は7メートル。全幅13メートル。航続距離約3000キロメートル。上昇限界高度は8000メートル。無線誘導で安全に偵察ができる優れものです」
「それがなんだ?」
「偵察機……無人ですので搭乗員の視界はありませんが遠隔操作で得た映像は記録しています」
「映像? それが何だと言う?良い?んだ!」
「わかりませんか? 映像記録にしっかりと空母と戦艦、駆逐艦の撃沈映像が映っていると言っているんです」
「っ?!」
驚いた木曽を見て意地悪く笑みを浮かべる。メーヴェのカメラセンサーが写した映像は本体のメモリーに記録されている。
「無人の偵察機……そんなものまであるのか」
「はい。隠していたことは謝罪します。機密に該当する兵器ですので」
勿論嘘である。
「もし、疑うのであればそれを三島司令官とここにいる全員で観覧していただき判断していただきたいのですが?」
「…………いいだろう」
木曽は軍刀を収めると踵を返して食堂を出ていく。
場の緊張した空気が緩み、見ていた全員がホッと胸を撫でおろす。
「すまんなシュヴァンフヴィードはん。うちの木曽が失礼なこと言うて」
「いえ。疑うのも当然。襲撃があり、示し合わせたように襲撃した艦隊を殲滅した不明の艦娘が現れる。しかも単艦で……信じられなくて当たり前です」
そしてなにより、まだ話していないことに、後ろめたさがあるのは真実であるから尚更だと、シュヴァンフヴィードは内心で嘆息する。
ともあれ、これで当分は疑われずにいられるのだろう。
しかし、このことを副長にどう言おうか考えるのであった。
「はあ、それは災難でしたね」
本体(船体)?ここは表現に疑問が艤装の意味を考えるとおかしいのでに戻ってきたシュヴァンフヴィードに副長は事の成り行きを話と苦笑いをする。
他人事のように言う彼女にむっとなる。
「それで、彼女たちを映してあるところを消去することはできる?」
「私には何とも。そういったものは整備長の方が詳しいと思います」
確かに、メーヴェの整備を担当しているのは彼女であるし、自分達よりよっぽどこの手の事には詳しいだろう。
それよりの忠犬のように待って居るはずの2人の姿がないことに気づく。
「彼女たちは?」
「ああ、食堂です。ここに居てもやることがないようなので、補給長の手伝いに向かわせました」
「よく言うこと聞いたね」
「はい。最初は渋りましたが「かんちょーが誉めてくれるかもな~」と言ったあさっり飛んでいきましたよ」
「……そう」
なんてちょろいのだろうか。自分のためなら死も惜しまないんじゃないだろうかとシュヴァンフヴィードは嘆息する。
「それじゃ整備長に会いに行ってくる」と副長に告げエレベータに乗り、1階まで降り通路を歩く。本来なら通信機呼び出せばいいのだがル級1たちを見て行こうと思い立ったからだ。
食堂に入り厨房を覗くと……。
「おい、ジャガイモの皮むきはまだ終わらないのかい?!」
「ハ、ハイ! モウ少シデ出来マス……」
「遅い! あんたたち2人のせいで全体の調理が遅れるんだよ!わかったら手を動かしな手をっ!!」
「「ハ、ハイィイイ!!」」
「それが終わったらニンジンの皮むきを頼むよ」
「マ、マダアルノカ?!」
「仕事なんていくらでもあるんだよ! わかったら手を動かす!!」
「「ソンナアァァァ!!」」
……うん、見なかったことにしよう。シュヴァンフヴィードは気づかれないように食堂を後にした。
恨むなら抜擢した副長を恨んでくれと格納庫に繫がる通路を進みながら、心中で合掌した。
格納庫に付くと、整備員たちは職務の艦載機の整備に汗を流していた。
ちょうど整備長はクレーベの整備監督をしているのをシュヴァンフヴィードは見つけた。
「整備長、今いい?」
「かんちょー殿! 如何御用でしょうか?」
先の戦闘の偵察映像を公開することと一部削除ができるかを尋ねると、整備長は「できますよ」といいながらメーヴェのカメラセンサーをいじり、内部からメモリーチップを取り出し、ノートPCに差し込むと
画面に映像が映し出された。
「こちらに全て記録されています。彼女たちの船体?が爆沈したとこまででその後の映像データを削除するでよろしいですね?」
「お願い」
「わかりました」と、映像を早送りにして、爆沈のしたところで映像を止める。整備長はキーボード叩き「削除しました」と画面に表示された。
「これで大丈夫です。映像はこのノートPCで見てくださいね」
「ありがとう」
「お安い御用です」
渡されたノートPCを受け取り、シュヴァンフヴィードは急ぎ足で格納庫を出た。
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