戦闘記録を収めたノートPCを持って、鎮守府の食堂に入るとすでに三島大樹少将と大淀が席に付いていた。
テーブルにノートPCを置いて開く。
「こちらが戦闘映像になります」
「拝見させてもらうよ」
シュヴァンフヴィードがキーを叩くと映像は流れ始めた。
端末が小さいことから自然と大樹の後ろに扇状に集まり、ノートPCの画面を凝視する。
「見て見て! 映像に色が付いてるよ!」
「鮮明で……綺麗」
「あ、小さく見えるのが敵艦かな?」
「うーちゃんにも見せるぴょん!」
「静かにせんかい! 聞こえないやろ」
卯月たち駆逐艦は背が小さいことから1番前に陣取りながら戦闘の映像を観覧していく。
「お、空母から艦載機が飛び立ったな」
「数は……30機かしらねぇ」
「鳳翔さんが言った通りの数だね」
「あわわわわ、大変なのです!」
「大丈夫、記録映像なのだから」
数秒後、シュヴァンフヴィードから放たれた多目的ミサイル3本がヲ級に命中。2本が船側に、1本が艦橋を吹き飛ばした。ヲ級の艤装は炎上して爆沈した。
「あ、あれが言うとったみさいるかいな?! ほんまぶっ飛んどるな!」
「ああ、相手にとっては何が起きたかわからぬまま沈んだのだろうな。恐ろしいものだ……」
この鎮守府のつわものである龍驤と長門も流石に驚愕を隠せないでいた。
映像は変わり、ル級1との砲撃戦を映す。艦載機迎撃する映像は、キャニスター弾の誤射を避けるために残念ながらない無いが致し方ない。
「なっ! 砲弾が命中したのに無傷? どうなっているんだ?!」
「それは重力電磁障壁と言う防御装置です。詳しくは機密に付き申し上げませんが、見ての通り16インチの砲弾数発ではびくともしない防御力を誇ります」
「そして、ル級を一撃に沈める威力の巨砲。一斉射での全弾命中させる精度の高さ――シュヴァンフヴィード……君は本当に怪物のようだな」
畏怖の念で大樹はそう言う。
が、本当の化け物は自分から生まれた物を差すのだろうとシュヴァンフヴィードは考える。
試作として小型された超兵器機関を搭載され、従来の艦を凌駕するが、その後の妹たちは遥かに凶悪な戦闘力を誇るのだから。
そして、映像はル級1,2の艤装が爆発して間もなく途切れた。
ノートPCを閉じると、シュヴァンフヴィードは木曽に向き合う。
「以上が、私の戦闘記録。これで信頼して欲しいとは言いませんが、貴女が言う疑惑は晴れましたか?」
「……ああ。いい加減なことを言ってすまなかった」
頭を深く下げて木曽は謝罪する。
案外、悪い娘ではないのだろう。彼女も大樹と共に自分に立ち会った艦娘。それなりに信頼されており、今回の疑惑もここにいる皆を守るための正義感からの行動なのだろう。
「いいえ、私こそいろいろと隠してしまってごめんなさい。軍事機密は同盟国であっても公開することは許されないものですから」
「次世代戦艦の試作艦と言っていたね。その辺は承認しよう。しかし最低限、君の艤装の詳細を明かしてほしい。いいかね?」
「はい、後日にスペックをまとめた資料を提出します」
「結構だ。では解散とする。全員次の命令があるまでは英気を養うように」
食堂を退出する大樹に全員が敬礼をした。
「ねぇねぇ~シュヴァンフヴィードさんの艤装にはどんな武装が搭載されてるの?」
「うーちゃんも気になるぴょん!」
「みさいるってどんな兵器なの? 僕らにも搭載できる?」
「私も……気になる」
「駆逐艦にもミサイルは詰めますが大掛かりな改装が必要となります」
「本当かい! 僕たちも空母を一撃で沈められるの?!」
はい、頷くと皐月たち駆逐艦は衝撃を受けた。非力な自分たちでも敵空母を沈められる可能性に沸き立つ。
「マジかよ。そうなれば単艦で艦隊を殲滅することなんて簡単じゃあねえかよ!」
「そうよねぇ。流石に驚くわぁ」
「他にも対艦だけでなく、対空、対潜用のミサイルが存在します。これにより単艦であらゆる状況に対応することができます。私の国の次世代戦艦の構想はどの状況にも対応できる汎用性を重視していました」
「まさに一騎当千か……戦艦の私としては羨ましいと思って仕方ないよ」
「他にはどんなものがあるの?」
「主砲が51センチ50口径連装砲2基。副砲は15.7センチ60口径連装砲4基。12.7センチ65口径連装両用砲8基。近接防御用40ミリ6砲身ガトリング砲8基全てが自動制御できます」
「え? 手動じゃないのですか?!」
「はい」
「実にХОРОШО(ハラショー)だ」
次々と質問されるがシュヴァンフヴィードは答えた。収拾が付かなくなる前に「ほな。今日はここまでや。シュヴァンフヴィードはんも疲れているんやからな」と龍驤が逃げ道を作ると、駆逐艦の娘たちは名残惜しそうに頷くと食堂を後にし、それが合図に他の艦娘も散らばっていく。
シュヴァンフヴィードもノートPCを持って食堂を出ようと歩き出すと木曽が立ちはだかる様に開口部に立っていた。
先程と違い威圧的な感じはしない。
「なにか?」
「いや……まだ礼を言ってなかったと思ってな……ありがとう」
木曽はそれだけ言うとシュヴァンフヴィードに背を向け、廊下を進んでいく。最後の部分が聞き取れなかったが、恐らく「ありがとう」と言われたのだろうとシュヴァンフヴィードは微笑む。
「まったく素直じゃやいんやから」
隣に来た龍驤はケラケラと笑う。
「ま、悪い奴じゃないんよ。仲良くしてやってな」
「わかった。そうする」
「よろしくな」と龍驤は手をひらひらと振りながら廊下を歩いていく。
宿舎から出で内火艇に戻ろうとシュヴァンフヴィードは桟橋を目指して歩いていく。
太陽は水上戦に半分沈み、海面が茜色に染まっている。自身の艤装も夕日を浴びて、神秘的な輝きを放っていた。
桟橋に着くと、待たせていた内火艇に乗り艤装へと静かな湾内を進んでいく。
艤装の後部の搭乗口?に着くと、そこにはル級1,2の2人がやつれた表情で待って居た。
「オ帰リナサイ、シュヴァンフヴィード旗艦」
「ただいま」
タラップを上がると2人は敬礼する。
「貴女たち2人も補給長手伝いご苦労さま」
「ッ! ゴ存ジデシタカ……」
「副長から聞いた。よく手伝ってくれたね、ありがとう」
「イ、 イエ。旗艦デアル貴女ノ為ナラ喜ンデヤリマス!」
嬉しそうに答える姉にル級2はため息を吐く。
「ネエサン、最初ハ渋ッテタ癖ニ、旗艦殿ニ誉メラレルト妖精ニ言ワレタ途端、張リ切ッチャウンデスヨ……」
「イ、言ウナル級2!!」
顔を真っ赤にして俯くル級1にふふっとシュヴァンフヴィードは小さく笑うと右の手で彼女の頭に手を置く。瞬間、ル級1がはじかれた様に顔を上げる。
真っ赤な顔がさらに赤く染まる。
「それでも手伝ってあげてありがとう。でも、私の為だからって命を粗末にすることは許さない。わかった」
「ハ、ハイ!」
撫でながらそう言うと、尻尾を振る子犬のようにル級1は頬を緩ませる。本当にわかっているのだろうか?
「…………」
「貴女もありがとう」
「ン……アリガトウ御座イマス」
妹のル級2の頭を撫でると気持ちよさそうに目を細める。余程気持ちよかったのか止めると2人は物惜しそうに瞳を潤ませた。
そう言えば彼女たちの名前はどうしようかとふと思う。いつまでも名称のル級ではややこしいし、1,2と番号で言うのはあまりにも酷だと良心が痛む。
そうだ、こうしよう。
「唐突だけど貴女たち2人を姉妹にしようと思うの」
「「エ?!」」
「いつまでもル級じゃ深海棲艦のまま。私の旗下なら相応の名がいると思うの」
2人は互いに顔を見合わせると嬉しそうに頷く。
「姉の貴女は、ランドグリーズ。妹の貴女はラーズグリーズとこれからは名乗って」
「ランドグリーズ……」
「ラーズグリーズ……」
2人は咀嚼するように呟く。すると瞼から涙が溢れぽたぽたと床に落ちていく。流石のシュヴァンフヴィードも驚きを隠せなかった。
「い、嫌だった?」
「イエ、凄ク嬉シイデス! 旗下ク加エテ頂イタダケデナク、貴女の妹ニシテモライ名前マデ貰エルナンテ……アリガトウ御座イマスッ!!」
「私モネエサント同ジデス! 本当ニ嬉シイデスッ! アリガトウ御座イマス!!」
2人は心底嬉しそうに笑う。ホッと息を吐くと、シュヴァンフヴィードは2人を抱き寄せる。
突然のことに2人は固まる
「姉妹になったのだから敬語はいらない」
「シカシ……」
「命令――ううん、姉としてのお願い」
「ワカ……タ、オ姉サマ」
「ハイ、オ姉サマ」
2人は誓うようにシュヴァンフヴィードを強く抱きしめた。
はい、姉のル級がランドグリーズ。妹がラーズグリーズになります。
響きが似ているのと同じ戦乙女なのでしました。
決してエスコン要素ではありません(-_-;)
感想誤字脱字なんでも待っています。