ウォーシップガンナー艦これ  白鉄の艦隊   作:タオモン3

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どうもタオモン3です。
艦これ×鋼鉄の第二弾です。第一弾? 知らない子ですね……



戦艦シュヴァンフヴィードの帰還

少女が初めに感じたのは浮遊感。次いで瞼を開け自分が水の中にいるということ。

目の前に見える光が徐々に遠くなっていくこと。

彼女は光に、水面に向かって手を伸ばそうとするが、身体に力が入らない。やっとの思いで手を伸ばせたときに彼女はすっと目を細め悟った。

――ああ、私は沈んでいくのか。

暗くなる視界に不思議と恐怖は感じていなかった。いつか訪れることだと覚悟はしていたし、自分も多くの姉妹たちをこの暗闇に沈めてきた。

――使命の為に。

――存在意義の為に。

――矜持の為に。

――生き残るために。

沈めて、沈めて、沈めてきた。

ただ今度は私の番が来ただけのことだと遠ざかる光を見つめ少女は思う。

開いていた瞼も徐々に重く、視界が薄らいでいく。

――もう……いいか。

最後の景色を見終え、少女は瞼を閉じて暗闇に吸い込まれていった。

敗れた物たちが行き着く――水底の墓場に。

 

 

 

 

 

無機質な鉄の冷たい床に小女は寝ていた。白磁のように白い肌に整えられた純白のショートヘア。まだ顔に幼さを残した少女だ。薄い灰色の長布を被されている。

 

「――あ――お――てく――」

 

暗闇に中に響く声に、少女――シュヴァンフヴィードの意識が覚醒した。

――だれ? 私を呼ぶのは?

瞼を開けるとまぶしい光に反射的に目を細める。

 

「起きてくれたのですねかんちょー!」

 

徐々に慣れてきた視界に入ってきたのは頭が饅頭みたいに大きく、しかし体の大きさも比例している、いわゆる二頭身の生き物たちだった。

 

「……ッ!?」

 

驚いて反射的にシュヴァンフヴィードは跳ね起きた。

当然被されていた長布は重力に互い落ちると、中から白磁の美しい裸体が露になった。

 

「おお、かんちょーが起きたぞ!」

「……かんちょ」

「よかった! よかった!」

「やっとお目覚めか」

 

わいわいと騒ぎ立てる二頭身の生き物にシュヴァンフヴィードはたじろいだように目が泳ぐ。

二頭身の生き物は5人ほどいる。よく見るとそのすべてが紺色の軍服に帽子を被っている。シュヴァンフヴィードはその服装に見覚えがあった。ウィルキア王国海軍士官の軍服だ。

 

「……だれ? なんでその軍服を着ているの?」

「はっ! 我らはシュヴァンフヴィードかんちょーの艤装妖精です!」

 

質問に一人が敬礼し答え、他もそれに習い全員敬礼した。どうやら敵意のある相手ではないようだ。落とした長布を広いマントを羽織る。彼ら艤装妖精を改めてみると軍服の下部がズボンであったりスカートだったりとするが、顔立ちや髪型から女性なのだと見て取れた。

 

「私は艤装妖精統括長兼副長であります」

 

そう言うのはシュヴァンフヴィードに初めて声をかけてきた妖精だ。

 

「艤装妖精? 艦長って私のこと?」

「そうであります」

「私は艦……艦長じゃない」

 

否定するがシュヴァンフヴィードは自身に四肢があることから確信を持てなかった。私は艦の記憶を持っているただの人間なのでは?

凡人なら気が狂いそうな事態ではあるが、シュヴァンフヴィードは別段、驚きや動揺するような素振りを見せなかった。

しかし、艤装妖精たちは互いに顔を見合わせながらおろおろしている。副長と名乗った妖精を除いて。

 

「いいえ、貴女は我々のかんちょーです。一度沈んだ貴女は艦娘として生まれ変わったのです」

「艦娘?」

「はい。沈んだ艦の魂魄が人の形をもって現世に顕現する存在……なのではと思います」

 

そう言う副長であるがどこか釈然としていないようにシュヴァンフヴィードには見えた

 

「自信がないのね」

「……申し訳ありません。我々も自分たちがどのような存在なのかわからないのであります。わかるのは貴女がシュヴァンフヴィードであること。そして我々は貴女の一部であることであります」

「私の一部?」

「はい。貴女がどのように生まれ、どのような戦場に向かい、どのように戦い、どのように沈んだのかも……我々一同は知っています」

 

俯く妖精たちに、そうっとシュヴァンフヴィードは短く吐息を出すように頷く。

あの沈んでいく感覚はまぎれもなく本物なのか。彼女たちは思うところはあるのだろうけど嘆いても一度沈んだ事実は変わらない。

アレより私は弱かった……ただそれだけなのだから。

 

「貴方たちが私の一部ならわかるはず。悔やんでも、嘆いても仕方ない。それよりも艤装とかわからないことの説明をして」

 

淡々と話を切り替えるがその声音は若干、苛立ちを帯びている。

 

「……はい。申し訳ありません。艤装というのは艦娘しか動かせない専用の装備だと思ってください。それぞれの艦娘の生前の艦そのものが艤装になります」

「前の体が艤装ってことなの?」

「ご明察です。今我々がいるここは艦橋であります」

 

確かにそうだとシュヴァンフヴィードは辺りを見渡した。

防鏡から日差しが刺して室内は明るいが、計器類が動いていない。まるで魂が失われているように沈黙しているように彼女には見えた。

 

「…艤装は動いてないの?」

「はい。現在艤装は全体機能が停止状態であります」

「起動をするには?」

「貴女が接続すれば艤装は動かせます。中央にあるサークルの中心に立ってください」

 

副長妖精が指さす先は、魔法陣のように床が造られている。

ちょうど部屋の中心の辺りだ。

 

「……わかった。それで……服はないの?」

 

今のシュヴァンフヴィードは被されていた長布を羽織っているがその下は全裸である。

羞恥心は感じていないが、彼女らの前でいつまでも全裸でいることがみっともないと感じていた。

 

「申し訳ありません。かんちょーが目覚める前に艦内を隈なく調べましたが衣類は自分たちのしかありませんでした」

「そうなの」

 

なら仕方ないか。シュヴァンブルク港に帰港したさいに軍服を支給してもらおう、と考える一方、自分のことをどう本国の近衛艦隊司令部に説明しようかと逡巡しながらシュヴァンフヴィードはサークルの中心に立つ。

ガコンっと立っている床が微か沈み、まばゆい光が輝く。

光は全身を包み込み羽織っていた長布が吹き飛んだ瞬間、

――起動対象艦娘……シュヴァンフヴィードと確認。接続プロセスを開始します

脳内に機械的な無機質の音声が聞こえた矢先、大量の情報が一気に流れる。

――機関始動、30……60……95パーセント稼働率正常。

――重力電磁場の展開を開始……20……50……90……出力100パーセント、フィールド安定。

――全方位レーダー起動……索敵内に反応なし。

――武器管制システムオンライン……主砲51センチ砲……副砲15.5センチ砲……12.5センチ砲……40ミリバルカン砲……多目的VLS……確認完了、全武装オールグリーン――

 

「……うぅ……ああぁ……っ!」

 

驚きのあまり目を見開く。

大量の虫が這いずるような不快感で小さな悲鳴を上げ、背ずしが強張り身体ががくがくと震える。

シュヴァンフヴィードは耐えるようにギュッと手を握りしめた。

情報の波に飲み込まれないように集中しなければたちまち意識を持っていかれかねない。

不快の濁流の中、シュヴァンフヴィードは自身の視覚、聴覚の感覚が研ぎ澄まされ、体の奥底から変化していくことに気づいた。サークル内の光は粒子になり、体のラインを沿うように全身を包んだ。

瞬間、繭のように全身を包んでいた光は消滅し中から現れたシュヴァンフヴィードは変身していた。

紺色を基調としたウィルキア海軍伝統の軍服を身に着け、軍帽を被り、白のマントを羽織、軍靴を履き、腰にサーベルを帯刀している。 

間近でその姿を見た妖精たちは一斉に集まり出す。

 

「くぅ……はぁ……はぁ……」

 

光の消滅と共に脳内に送られてきた情報の波も収まっていた。

額からどっと汗が滲み出て不快感をより一層高めた。

 

「かんちょー!!」

「……大丈夫? ねぇ……大丈夫?」

「がんばれかんちょー! がんばれー!」

「深呼吸だ、それで息を整えるのだ」

「…………はぁ……大丈夫」

 

わいわいと騒ぎ立てる妖精たちを見て肩で息をしながらも気丈に振る舞う。

 

「大丈夫でありますか?」

「ええ……それよりこれは?」

 

軍服を身に着けていることに気づいたシュヴァンフヴィードは振り返り副長に尋ねる。

 

「恐らく艤装に接続したことで本来の姿になったのだと思われます。艦娘が艤装を使用するとき専用の戦闘服に身に着けるようです」

「なるほど、これがね」

 

軍服に目を通し頷く。

額の汗を拭うために軍帽を脱いだとき、軍帽には祖国ウィルキアの象徴――白鳥、力を表す剣が二本、金色の糸で刺繍されていた。

シュヴァンフヴィード、その意味は……白鳥のように美しい。名の由来は北欧神話に記されている戦乙女の一人、スヴァンフヴィード。

刺繍まさに彼女自身を表していた。

 

 

 

 




感想、誤字脱字なんでも待っています。

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