思いつきシリーズ   作:ベンジャー

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乃木若葉は勇者である 流星の章 その2

あれから数日後……。

 

若葉は諏訪を守る勇者、「白鳥 歌野」と定期的に連絡を取り合っており、互いに近況報告を行っていた。

 

『諏訪より白鳥です。 定時の勇者通信を始めます』

 

会話以外で会ったことは無かったが、近況報告を終えた後は「うどんか蕎麦、どちらが優れているか」時には互いの地方にある名物勝負などを行っており、2人は親しい仲ではあった。

 

しかし……。

 

『乃……木さ……聞こ……か?』

 

最近はノイズが酷く、何時まで諏訪との通信ができるか分からない状況であった。

 

『最近多くなって来ましたね。 この通信もいつまで続けられるか……』

 

そんな歌野の言葉に若葉は僅かな不安を覚えるが、それを払拭するように彼女は歌野に「そろそろいつものアレをやらないか?」と提案する。

 

『そうですね、今日こそ雌雄を決しましょう!』

「うどんと蕎麦、どちらが優れているか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(昨日も決着がつかなかった……)

 

翌日……若葉は今はみんなで食堂でうどんを食べに来ていたところだった。

 

「にしてもさー。 毎日毎日訓練訓練、なんでタマ達がこんなことしなくちゃいけないんだろーな」

 

球子が愚痴るようにそう言うのだが、そんな彼女に杏が敵に対抗できるのは勇者だけだからと答えるがそれでも球子にはイマイチ納得できない。

 

「でも普通中学生って言ったら友達と遊びに行ったり、恋……とかしちゃったりさ。 そういう生活をしてるもんじゃん?」

 

そんな球子の言葉に若葉は「今は有事だ」と静かに答える。

 

「だからこそ神樹様を奉っている対バーデックス機関の『大社』が存在し戦う私達のために丸亀城を改築して傍に寮や食堂まで提供してくれている。 授業で何度も聞いているだろう? 私達が人類の矛となって……」

 

球子に若葉は少々厳しめの口調でそう答えるのだが、球子はそんなことは言われなくても分かっている。

 

だが、彼女は……自分達は軍人ではなくまだ中学生なのだ。

 

それだけではなくいずれは自分達は命がけの戦場に出る運命にあるのだから、思うところがない訳じゃないし、球子としてはみんなでそのことについての愚痴の1つや2つを言い合いたかったのだろう。

 

しかし、若葉からの真面目過ぎるとも取れる言葉に球子は苛立ち、立ち上がってつい大声で叫んでしまった。

 

「分かってるよ!! 分かってるけどさぁ!!」

 

だが、球子はすぐに冷静さを取り戻し、申し訳なさそうな表情を浮かべて「ごめん」と謝り、椅子に再び座り込む。

 

そんな時だ。

 

「ご馳走様!! 今日も美味しかった!!」

 

そこでうどんを平らげた友奈だったのだが、彼女は先ほどまでの様子をうどんを食べるのに夢中で見ていなかったのか「どうしたのみんな?」と首を傾げる。

 

そんな友奈に対し、一同は呆れたように「はぁ」と溜め息を吐く。

 

「なんで溜め息!?」

 

それにショックを受ける友奈だったが……。

 

「……大丈夫だよ、みんなで頑張ればなんとかなる! ねっ?」

 

どうやら話を全く聞いていなかった訳では無く、彼女はみんなを励ますようにそう言うのだった。

 

そう自信ありげに笑顔で語る友奈を見て若葉は何か思うところがあったのか、暗い顔を浮かべる。

 

「『仲間に自分の考えを押しつけてしまって、自分はリーダーに相応しくないのかもしれない』って感じの顔してるね?」

 

とそこで現れたのは彼女等の授業などを担当している大社の1人である青年「星川(ほしかわ) 一郎(いちろう)」である。

 

「星川さん……」

「若葉ちゃんは真面目過ぎるんだよ」

 

そんな一郎の言葉に同意するようにひなたも頷く。

 

「そうなんですよ星川さん! 若葉ちゃんったらそこが玉に瑕と言いますが……まぁ、そんな若葉ちゃんも可愛いんですが……」

「うん。 でもさ、多分球子ちゃんが若葉ちゃんに言って欲しかったのはそういうお堅い言葉じゃなくてももっと砕けた言葉なんかじゃないかな?」

 

「そうだろう球子ちゃん?」と一郎が球子に尋ねると球子は戸惑いつつも「お、おう……」と頷く。

 

「そ、そうなのか球子……?」

「ま、まぁ……少しはタマの言葉にも同意してほしかった……って気持ちはある、かな?」

 

それを聞いて若葉は「すまん」と軽く頭を下げ、一郎は「あんまり喧嘩したらダメだよ~」と若葉と球子の頭をポンポンっと軽く叩いた後、食堂のおばちゃんにうどんを注文するのだった。

 

「あの人、ホントに大社の人なのかしらね?」

 

するとそこで千景が疑問に思ったことを口にし、それに「というと?」とひなたが尋ねると千景曰く、他の大社の人達はなんというか……無感情というかそんなイメージがあったのだが……。

 

あの一郎という男はそういう雰囲気が一切なく、それを理由に千景は一郎はホントに大社の人間なのだろうかと疑問に思ったのだ。

 

「まぁ、確かに……大社の中では珍しく結構フレンドリーな人ですね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、数日が経つある日のこと……。

 

『ごめ……なさ……通信の……悪くて……』

 

いつものように通信機器で歌野と連絡を取っていた若葉だったが、酷くノイズが入っていた。

 

「何かあったのか?」

『ちょっとしつこいバーデックスを退治した……だけ……。 でもその時……通信機が、壊れて……』

「通信機が……直りそうか?」

 

若葉が歌野に尋ねるが、なにかどうも歌野の様子がおかしいことが若葉には分かった。

 

『……そちらも頑張って……。 きっとなんとななります。 私も……予定よりも……』

「聞こえているか!? 白鳥さん!!? 応えてくれ!!』

『二年も長く……お役目を続けられて……。 乃木さん、後はよろしくお願いします』

 

それを最後に歌野との通信は完全に途切れてしまい、歌野の最後の言葉から若葉は諏訪が墜ちたということを即座に理解した。

 

さらに、次の瞬間彼女の持っていたスマホが突然大きな警報音が鳴り、辺り一帯の時間が止まる。

 

そしてスマホの画面には「樹海化警報」という文字が大きく映し出されていた。

 

すると世界は神樹がこの世界を守る為に作り出し、現実の世界の被害を最小限に抑えるための固有結界「樹海」が出現。

 

「来たか……バーデックス!! エレメント!!」

 

若葉は覚悟を決め、スマホにあるアプリを指で押すと戦闘装束……「勇者服」を彼女は身に纏い、変身を完了させる。

 

(白鳥さん、人類を守るお役目……確かに受け継いだ!! いや、白鳥さんだけじゃない。 ウルトラマンが人類を守ろうとしてくれた意思もだ!!)

 

若葉は生大刀を構えて力強く宣言する。

 

「我ら四国勇者が、丸亀城にて迎え撃つ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、この樹海化した世界は人間は勇者しか入ることができない筈にも関わらず、そんな彼女の様子をこの遠くの方からこっそりとあの一郎という男性が見つめていた。

 

当然、男性は勇者になることができないので彼は勇者ではない……。

 

「さて……先ずは勇者様達のお手並み拝見と行こうかな?」

 

一郎はそう不敵な笑みを浮かべて呟くのだった。

 

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