そこは「ヴォート・インターナショナル」と呼ばれる企業によって管理されるスーパーヒーロー達が活躍する世界。
その世界はヴォートに雇用された200名超のスーパーヒーロー達が存在しており、彼等は各地でのヒーロー活動の他、時には米政府や他国から恐れられる特殊兵器として、さらにまたある時には様々な作品やエンターテインメントに登場するポップアイコンとして活躍していた。
その中でも特に人気が高く、実力が認められた7人はヒーロー達のトップとも言えるスーパーヒーローチーム「セブン」への加入が認められるのだ。
しかし、そんなヒーロー達を管理するヴォート社であるがその実態はヒーローを利用して巨利を得ることしか考えない私利私欲の塊とも言うべき組織であり、ヴォート社に所属するヒーロー達の殆ども、表沙汰にこそなっていないがとてもヒーローとは呼べない悪行を裏で行っていた者ばかりと言うのが世の真実である。
例えば、セブンのメンバーであれば女性を事故とは言えひき殺し、粉々にしたにも関わらず多忙を理由にその恋人の男性や遺族に直接謝りにも来ないどころか、「歯を飲み込んじまった」と裏で話のネタにして笑い話にする世界最速の男こと、「Aトレイン」。
セブンに新たに加入した女性ヒーロー、「スターライト」を脅迫し、フ〇ラを強要した七つの海の支配者と呼ばれる男、「ディープ」。
透明化して女子トイレや産婦人科を覗くのを趣味としている透明人間、「トランスルーセント」。
自分の意に沿わなければ平然と気に入らない相手を殺し、表では「アメリカの象徴」「最高峰のヒーロー」と賞されるセブンのリーダー、「ホームランダー」。
中にはアマゾネス風のコスチュームを身に着ける白人女性の「クイーン・メイヴ」や先ほどのスターライトのように善性を失わないヒーローも一部こそいるが、そんな彼等が良くも悪くもスーパーヒーローとして活躍するのが、この世界の日常的風景。
そして先ほど紹介しなかったが、セブンのメンバー最後の1人、漆黒のコスチュームに身を包み、無愛想で寡黙で全てが謎に包まれ、ミステリアスな雰囲気を醸し出す男性、・・・・・・「ブラック・ノワール」はというと・・・・・・。
(・・・・・・暇だ)
ヴォートの命令に従い、現在はテロリストが潜んでいるであろう廃墟を高い崖の上から見下ろしつつ、沈みかける夕日を背に次の命令があるまで、暇を持て余しながらそこで待機していた。
(未だに次の命令が来ない。 やることがない。 暇だ)
彼のマスクには小型のカメラが装着されており、それを通してヴォート社にリアルタイムで映像が流されている。
そのため、今は仕事中にも関わらず下手にスマホゲームなんかでもして暇を潰していたら、間違い無く怒られてしまう。
怒られるのは嫌、それにもしもホームランダーの耳にでもそんな情報が入ってしまったら下手をすればほぼ間違い無く面倒なことになる。
だから彼はヴォートの命令である「夜中になるまで待機」という命令を忠実に守り、日が完全に沈むのを待っていたのだ。
(しかし、確かに俺は転生特典として『ブラック・ノワール』を選びこそしたが、『ザ・ボーイズ』の世界に転生するなんて聞いてない)
尚、このブラック・ノワール・・・・・・見た目や能力こそまさに正真正銘、「ザ・ボーイズ」という作品に登場するスーパーヒーロー、「ブラック・ノワール」と同じなのだが、先ほどの台詞からも察することができるように、実は彼、所謂「転生者」と呼ばれる者なのだ。
とある事件が切っ掛けで、彼は命を落とすこととなったのだが、その時ラノベなどでよくあるあの世で神と出会い、その時に彼は神からこの「ブラック・ノワール(ドラマ版)のコスチュームと能力」を転生特典として授かったのだ。
ちなみに、なぜブラック・ノワールなのかというと、前世の彼はAmazonプライムで配信されていたザ・ボーイズのドラマにドハマりし、その勢いのままに原作コミックスも購入。
中でも特にドラマ版の見た目の格好良さなどからブラック・ノワールを気に入り、彼は転生特典として神にブラック・ノワールの力を授かり、この世界へと転生したのだ。
最も、どこの世界に転生するかはランダムらしく、神にすらそれは分からなかったらしいが。
そしてその結果、なんだか原作とドラマの設定が混ざってる感じこそあるが、彼はまさかの本家本元のザ・ボーイズの世界に転生することとなり、今はこうしてヴォートの為にブラック・ノワールとして働いているという訳なのである。
(まぁ、意外とヒーロー活動自体は結構楽しいのだが、いずれは我々に挑んでくる『ザ・ボーイズ』の連中に対処しなくてはな・・・・・・。 楽しんでばかりはいられんな)
ただ、意外と彼自身は今の境遇に悲壮感などは特には抱いておらず、彼自身すっかりヴォートの色に染まってしまっているので、彼はむしろ楽しんでヴォートの為に働いていたのだが、1つだけ懸念があるとすれば自分達ヴォートやセブンに楯突いてくる「ザ・ボーイズ」と呼ばれる連中のこと。
しかし、そのザ・ボーイズというのが一体なんなのか、どういった者達なのか、それは特に説明せずとも良いだろう。
何故なら、彼・・・・・・ブラック・ノワールは・・・・・・。
この世界からこれから数十分後に消失するのだから。
*
『時間だ、ブラック・ノワール。 殲滅しろ』
「・・・・・・」
夕日が完全に沈み、空の色が完全なる夜へと変わったことで、ブラック・ノワールはヴォートからの指示を受け取ると、彼は「了解」とでも言うようにコクリと頷き、テロリスト達の潜む廃墟に向かって駈け出して行く。
(さぁ、正義を執行するとしようか)
ノワールは先ずは木陰に隠れながら見張りのフェンスで作られた入り口に立つ、銃を構えた門番2人を刃先まで黒いナイフを投げ飛ばすことでそれを2人の頭に突き刺して殺害すると、ノワールはフェンスの入り口を飛び越えて敵のアジトへと潜入。
内部へと侵入したノワールは誰にも気付かれぬよう、影の中に潜み、近づいて来た女性の背後に回り込むと、女性の首根っこを掴んで勢いよく地面に叩きつけ、両手で上下に彼女の口を掴みあげるとそのまま顔が上下に真っ二つになるように力任せに引き裂く。
「あがぁ!?」
ノワールは引き裂いた女性の返り血を浴びながら屍となった彼女を投げ捨て、2人並んで一緒にアジトの中を巡回中だったテロリストの男性2人を発見。
するとノワールは彼等に気付かれぬようにゆっくりと背後から近づき、彼から見て右側の男性の首を手に持ったナイフで首筋を切断し、息の根を止めると即座に左側にいた男性がノワールの存在に気付き、銃口を向けるのだが・・・・・・。
ノワールは目にも止まらぬ速さで男性の懐に飛び込み、彼の腹に拳を叩き込むのだが・・・・・・その拳は男性の腹を貫通し、男性は目を見開き、口から血を吐き出しながら弱々しく地面に倒れ込む。
「ぐぅ・・・・・・アァ・・・・・・!? だ、ダァ・・・・・・だァず、ゲ・・・・・・テ・・・・・・!」
しかし、腹を貫かれてもまだ息はあったらしく、彼はノワールに必死に手を伸ばしながら助けを乞うが、当然ノワールは聞く耳を持たない。
(貴様等悪党に生きる価値なんてあると思っているのか?)
だからノワールは男性の頭を足で踏みつけ、少しずつゆっくりと足に力を込めていく。
「あ・・・・・・あァ゛!? やめ゛、d」
男性の片方の目玉が飛び出し、歯がポップコーンのようにポンポン弾けても、鼻の形が変形しようとも、ブラック・ノワールはその足を決して退かさず、最後には思いっきり力を込めて「グシャ!」と彼は男性の頭を完全に踏み潰し、グチャグチャとなった脳天が地面に転がると、それを見たノワールは「フッ」と小さく鼻で笑うのだった。
(中々に今のは面白かった。 面白い命乞いをする奴だった)
その後も、ブラック・ノワールは次々とテロリスト達を殺害して殲滅していき、時には相手の口の中に手を突っ込んで胃腸を取り出し、それを使って他の相手の首を背後から締め上げて窒息死させ、余裕があれば先ほど足で踏み潰した男性のようになるべく苦痛と死の恐怖を与えた末に息の根を止め、次々とテロリスト達を葬っていく。
しかし、その光景はまるで・・・・・・たった1人によるテロリスト達の大量虐殺とも呼べるものだった。
(任務・・・・・・完了・・・・・・)
最後にテロリスト達のリーダーを始末すると、ブラック・ノワールはマスクの内側にある、耳につけたインカムを操作してテロリスト達の殲滅を完了したことを伝えようとしたのだが・・・・・・。
しかし、次の瞬間、突如としてブラック・ノワールの視界が真っ白になり、気付けば彼は・・・・・・先ほどまでとは違う、見知らぬ場所に立っていたのだった。
(・・・・・・はっ? なんだ? 何が起きた!? どこだここは?)
*
「おぉ、やったぞ成功だ! 勇者様方、どうかこの世界をお救いください!」
(いきなりなんだ。 なんだこいつ等は・・・・・・?)
目の前にはローブを着た数人の男女が祈りを捧げるかのようなポーズで立っており、中央に立つローブを着た男性の言葉に対し、ブラック・ノワールは「はっ?」とでも言いたげに首を傾げる。
その際彼の後ろの方から「はっ?」と言う複数人の声が聞こえてきた為、ノワールは声のした方へと顔を向けるとそこには髪がぼさっとした盾を持った青年、黒髪の剣を持った少年、弓矢を持った薄い緑色の髪の青年、槍を持った金髪でロングポニーテールの青年が立っていた。
見たところ、彼等もまたノワール同様にどうして自分達がこんなところにいるのか理解できていないのか、困惑しているようで、それを瞬時に理解したノワールは万が一にも彼等に危険が及ばないようにする為にも、彼等を守るようにローブの男達の前に立ち塞がる。
「あっ? なんだこの妙な格好した奴は?」
「全身真っ黒・・・・・・」
「コスプレ・・・・・・?」
「バ、バットマン・・・・・・?」
(誰がバットマンじゃい! 確かにコウモリの耳とマントつければ殆どバットマンに見えなくもない気もするが! そもそもバットマンモドキなのはセックス依存症のテックナイトの方だ!)
ノワールの存在に気付いた青年達はそれぞれが彼の見た目に抱いた感想を口にし、バットマン呼ばわりされたことが少々気に入らなかったノワールは決して自分がバットマンではないことを教える為に、どこからか名刺を取り出し、それを自分をバットマン呼ばわりした盾を持つ青年に丁寧にお辞儀をしながら手渡す。
「名刺・・・・・・? えっと、、『ヴォート社 セブン所属 ブラック・ノワール』? ヴォート社? セブン? なんだそれ?」
盾の青年の問いかけに対し、ブラック・ノワールはコクコクと無言で頷く。
「というか、これ本名じゃないですよね? しかもブラック・ノワールって・・・・・・日本語に略すと『黒黒』じゃないですか」
(本名だよ! 人の名前バカにすんな! それにノワールブラックシュバルツとか名乗る奴よりはマシだろ!)
弓の青年の言葉に、ノワールは心の中でそう反論するのだが、「まぁ、初見ならこの反応は当然か」と考え、特に怒るようなことはせず、ノワールは「取りあえず話を続けろ」とでも言うようにジェスチャーしながらローブを着た男達に話しの続きをするように促す。
「勇者様、どうかこの世界をお救いください!」
するとそこで、ローブの男が再び、ブラック・ノワール達に声をかけてこの世界を救ってくれと懇願してきたのだ。
「それは、どういう意味ですか?」
「色々と込み入った事情がありますが、古の儀式により、あなた方伝説の四聖勇者を召喚させて頂きました」
弓を持った青年が問いかけると、司祭と思われるローブの男は詳しい説明は後ほどするとして、先ずは基本的な情報をノワール達に説明し、分かりやすく言えば彼等は自分達の世界を救って貰うために「四聖勇者」と呼ばれる伝説の勇者達を召喚したらしい。
(1人多くね・・・・・・?)
ノワールの言う通り、彼等が召喚したのは「四聖勇者」と呼ばれる存在であり、四聖と言うからには勇者は4人の筈なのだ。
しかし、今ここにいる召喚された勇者と思われる者達はノワール自身を含めて5人いる。
これは一体どういうことなのだろうかと思い、「5人いますけど?」と書かれたプラカードをどこからか取り出し、彼は司祭に問いかけた。
((((あのプラカードどこから出したんだ!?))))
盾を持つ青年達は、ノワールがどこにそんなプラカードを仕舞う場所があったのだろうかと頭に疑問符を浮かべたが、司祭は確かに勇者が5人いることに疑問を感じ、「確かに、何故か5人いますね・・・・・・」と首を傾げる。
「伝説では勇者は剣、弓、槍、盾を持つ4人の勇者とされていたのですが、あなたは一体・・・・・・なんの勇者なのでしょうか?」
(知らん、そんなのは俺の管轄外だ)
他の4人と違い、ノワールは自前のナイフ以外武器らしい武器は持っていない。
強いて他に武器があるとすれば、この自分の手に持っているプラカードで相手を撲殺するぐらいだが・・・・・・それぐらいしか無いので、ノワール自身にも自分がなんの勇者なのかは分からなかった。
「まぁ、仕方がありません。 その辺りの話はまた我等が王に会った時にさせて頂きます。 それよりも、この世界は今、滅亡の危機に立たされているのです。 勇者様方、どうかお力をお貸し下さい!」
司祭は神に祈るかのように両手を合わせ、ノワール達にこの世界を救ってくれと懇願し、そんな彼等の姿を見てノワールは顎に手を乗せ、「ふむ」と少しばかり考え込む。
(どうやらここは俺が先ほどまでいた世界とは違うようだな。 まさか異世界転生した身で、今度は異世界転移に巻き込まれるとはな。 いや、確かにアメコミは大体みんな最終的に元の世界に帰って来るとは言え、異世界転移なんて日常茶万事だが・・・・・・)
ノワールは状況的に考えて自分は盾の青年達と共に異世界に彼等によって「勇者」として召喚されたのだろうと冷静に分析し、先ずは何はともあれ情報収集が必要だと判断し、彼等から情報を得る為にも話だけならば聞いても良いだろうと考える。
(何よりも、彼等の言う『滅亡』とやらの話が本当ならばそれこそ、私のようなヒーローの出番だろうしな)
「まぁ、話だけなら・・・・・・」
司祭の話を聞いて、盾を持った青年もノワールと大体同じ考えなのか、話ぐらいなら聞いても良いだろうと思い、ノワールも盾の青年に同意するようにコクコクと頷き、サムズアップして「良いよ!」と司祭達に伝えるのだが・・・・・・。
「断る」
「えっ」
「・・・・・・」
しかし、剣を持った青年は司祭の頼みを一蹴し、それに続くように槍の青年や弓の青年も剣の少年に同意するように頷く。
「そうですね」
「元の世界には帰してくれるのか? 話はそれからだ」
「強制的に呼びつけた罪悪感はお前等にはないのか?」
剣を司祭達に突きつけながら、ブラック・ノワールと盾以外の青年達は司祭達に対して威嚇的な態度を取り、ノワールはそんな3人に呆れて小さく溜め息を吐き、頭を抱えるのだった。
「仮に平和になったらポイッと元の世界に戻されてはタダ働きですしね」
「こっちの意思をどれだけ汲み取ってくれるんだ? 話によっちゃ、俺達がお前等の敵に回るかもしれないぜ?」
(確かに彼等の言い分も理解できないこともないが・・・・・・。 今は右も左も分からない状況なんだぞ? 先ずはこの世界での情報を得るのが最優先だろうに)
剣の青年達が文句を垂れたくなる気持ちも分かるものの、幾ら何でも今の状況で強気に出てどうするとノワールは両手で「まぁまぁ、落ち着け」とでも言うように3人を宥める。
「ま、先ずは我が国『メルロマルク』の王に拝謁して頂きたい。 報奨金の交渉はそれからでお願い致します・・・・・・」
司祭は戸惑いつつもノワール達には報酬の交渉をするにしても先ずは王と会ってからして頂きたいと言われ、喧嘩腰だった3人はここでこの司祭と話していても、展開は前には進まないと判断した為、彼等は渋々納得し、司祭の案内されるまま一同は王のいる場所へと案内されるのだった。
「しょうがないな」
「考える余地はありそうですね」
「まあ、どいつが相手でも話は変わらねえけどな」
(なんでこいつ等こんな上から目線なんだ?)
*
その後、5人は司祭達の案内で謁見の間の玉座に腰掛けるこの国の王と思われる老人の前に連れて来られた。
「ほう、こやつ等が古から伝わる四聖勇者か・・・・・・。 むっ? しかし、勇者が1人多い上に1人だけ珍妙な格好をしているようだが・・・・・・まあよい。 ワシがメルロマルクの王、『オルトクレイ=メルロマルク32世』だ。 勇者達よ、それぞれの名を聞こう」
(珍妙ってなんだ!? かっこいいだろうがこのコスチューム! しかし、なんだか胡散臭い感じのジジイだな)
ノワールはこの国の王と名乗る老人、「オルトクレイ=メルロマルク32世」から胡散臭さを感じ取るものの、取りあえず今は情報が得るのが先決だと考え、今は何も言わずに黙っておくことにする。
「天木 錬、年齢は16歳。 高校生」
最初に剣を持った青年、「天木 錬」が名乗ると今度は槍を持った青年「北村 元康」がオルトクレイの前で名を名乗る。
「俺は北村 元康。 21歳、大学生だ」
それに続くように、今度は弓を持った青年「川澄 樹」が自ずからの名を名乗る。
「次は僕ですね。 川澄 樹。 17歳、高校生です」
それからブラック・ノワールがプラカードを取り出し、それを使って自己紹介を行う。
『私の名はブラック・ノワール。 年齢は数えてないから知らん。 ヴォート社という会社のセブンと呼ばれるチームに所属している』
「最後に俺だな。 俺は・・・・・・」
ノワールが自分の自己紹介を終えると、最後に盾を持った青年がオルトクレイに自分の名を名乗ろうとするのだが・・・・・・。
「ふむ。 レンにモトヤスにイツキ、そしてブラック・ノワールか・・・・・・」
「えっ、あの! 王様! 俺を忘れてる!」
「うん? おぉ、すまんな」
しかし、オルトクレイは盾の青年の存在を忘れ、彼はそのことについて謝罪をするのだが、ノワールはどうにも今のオルトクレイの行動に不信感を抱かずにはいられなかった。
(存在を忘れていたというよりも、今のは・・・・・・完全に無視していたような・・・・・・。 ワザとらしいな。 盾の彼が無礼な態度を取っている様子も無かったし)
「『王様』だなんてダメですよ、敬意を払わないと」
そんな盾の青年に対し、樹が相手はこの国の王なんだから気安く呼ぶのはダメだろうと注意するのだが、正直ノワールからすると「お前等よりはマシだろ」と心の中でツッコまずにはいられなかった。
「じゃあ、『陛下』とか? 堅苦しくねえ?」
「んん。 王様で良い」
咳払いをしつつ、オルトクレイが盾の青年にそう言うと、盾の青年は「まあ、なんでもいいや」と言って改めて自己紹介を行う。
「俺の名前は『岩谷 尚文』。 大学生だ」
「・・・・・・さて、先ずは事情を説明せねばなるまい」
「スルーかよ」
盾を持つ青年、「岩谷 尚文」はオルトクレイの自分に対する態度に少々腹正しさを感じはしたが、ここで文句を言っても仕方が無いので尚文は黙ってそのままオルトクレイの話を聞くこととなり、彼が言うにはこの世界には「終末の予言」というものがあり、それによると世界を破滅へと導く「波」と呼ばれる現象が幾重にもなって訪れる、波が振りまく厄災を撥ねのけなければ世界は滅んでしまうのだという。
尚、尚文達が召喚される前に第一波がこの国を襲った襲ったそうなのだが、その時は自国の騎士と冒険者達とでなんとか最初の波を退けることに成功したらしい。
だが、オルトクレイが言うには第二、第三の波はさらに強力なものとなることが予測されており、第2波まで既に一ヶ月を切っているのだそうだ。
ちなみに、各国には「龍刻の砂時計」という道具が古くから存在し、それで波が来るタイミングなどが分かるらしく、波が押し寄せなくなるまでその砂時計は砂を落とし続けるとのこと。
「わしらは波というものを甘く見ておった。 だが実際に目の当たりにして思い知ったのだ。 あれは四聖の勇者達だけが対抗できうるものだと。 そして伝承に従いお前達を召喚した」
第二、第三の波の規模を予想すると、とてもこの国・・・・・・否、この世界の人間だけで波に対抗することは困難だそうで、その為にオルトクレイは伝承に倣って四聖勇者なる者達をそれぞれ召喚したのだということを彼は尚文達に説明をしてくれた。
「もはや一刻も猶予もないのだ・・・・・・!」
両手に力を込めながら、オルトクレイが波の脅威を勇者として呼ばれた5人に伝えると、ノワールは「成程な」とでも言うように両腕を組みながら自分達が呼ばれた理由について納得する。
(つまり、波に対抗できる、ヒーローが必要なのだな? 救いを求める手があるのならば、それを掴むのがヒーローだ。 俺はやっても構わない)
ノワールとしてはこの世界の人々がその「波」の呼ばれるものの脅威に晒されているのならば、ヒーローとして手を差し伸べない訳にはいかない。
そのため、ノワールはオルトクレイの頼みを快く引き受けるつもりだった。
「話は分かった。 で、召喚されてまさか無報酬って訳じゃないよな?」
しかし、錬、元康、樹はノワールとは違い、あっさりと引き受けようとは思っていなかったようで・・・・・・。
「勿論、波を見事退けた暁には十分な報酬を差し上げます」
そんな錬の報酬についての問いかけに、オルトクレイの隣に立つ大臣らしき男性が応えると、彼は錬達にそれに見合った報酬を約束するのだった。
「へぇ。 まあ、約束してくれるなら良いけどな」
「敵にならない限りは協力してやる。 だが、飼い慣らせると思うなよ?」
「ですね、甘く見て貰っては困ります」
元康、錬、樹がそれぞれ言い放つと、尚文とノワールの2人は「常に上から目線だなこいつ等」と思わずにはいられなかった。
「話はついたな。 では勇者達よ、おのおののステータスを確認するのだ」
「えっ、ステータスってなに?」
オルトクレイのその言葉に尚文も樹も、元康もノワールも「ステータス」とは一体なんのことなのだろうかと思い、首を傾げていると・・・・・・。
「なんだお前等? この世界に来て真っ先に気付くことだろ」
(知るか。 なんだその情報通ですって顔は?)
錬だけはオルトクレイが一体なんのことを言っているのか理解していたようで、錬が言うには自分達の視界の端にアイコンのようなものがあるらしく、それに意識を集中するように言われると、アイコンが拡大され、オルトクレイの言う、自分達の現在の「ステータス」と呼ばれるものが表示される。
「・・・・・・」
ブラック・ノワール
黒の勇者
レベル 計測不能
装備 コンパウンドV
スキル 言語理解 鋼鉄の肉体と超人的超怪力
(なんだ、これは?)
ブラック・ノワールは自分のステータスに書かれた文字を読んで思わず固まってしまい、色々とツッコミどころがある自身のステータスに驚愕するのだった。
(黒の勇者ってなんだ!? まるで意味が分からんぞ! なんで俺のレベルは計測不能なんだ!? コンパウンドVが俺の装備ってどういうことだ!? あと、言語理解以外の俺の能力前いた世界と特に変わらないし!)
どうやら、ノワールのステータスは要するに前いた世界と特に変わらないようであり、彼は他のみんなも自分と同じような感じなのかと尚文達の話に耳を傾けてみると・・・・・・。
「レベル1、ですか。 これは不安ですね?」
「そうだなぁ。 これじゃ戦えるかどうか分からねえな」
樹や元康が話しているのを聞いてみたところ、どうも彼等は自分とは違い「計測不能」なんていうレベルは出ていないらしく、普通にレベル1からのスタートだったようだ。
(俺の身体に流れている、『コンパウンドV』の影響か?)
ブラック・ノワールの語る「コンパウンドV」とは所謂、スーパーヒーローを作り出すため彼の勤めるヒーロー達を管理する会社、ヴォートが作り上げた「薬物」であり、それを人に使用することで、彼等はスーパーパワーの持つ超人達を生み出し、人工的にスーパーヒーローを作っているのだ。
そしてこのブラック・ノワール、彼自身の身体にもまた、コンパウンドVの投与が施されており、コンパウンドVの液体が自分の血と一体となっていることから彼は恐らく、コンパウンドVがそういった意味で自分の装備品扱いになっているのだろうと予想を立てた。
「っていうか、なんだこれ?」
「ステータス魔法という勇者のみが使える能力です」
そこで尚文が自分のステータス画面を見つめながら、これがなんなのかと首を傾げていると、大臣がその疑問に応えるように口を開き、ステータスについてのことを軽く説明してくれた。
「ノワール殿も、そのステータスを確認すれば己がなんの勇者かも分かるであろう」
オルトクレイの言う通り、確かにステータスを確認したところ自分は「黒の勇者」と書かれていた。
しかし、なんだかこの胡散臭いおっさん達に自分の情報を開示するのは嫌だなと、そう思いノワールはスーツに仕込んであったナイフを取り出し、それをオルトクレイ達に見せつける。
「・・・・・・」
「もしや、『ナイフの勇者』・・・・・・ということですかな?」
「・・・・・・(コクリ」
大臣の問いかけに、ノワールは頷き、大臣とオルトクレイは何やらヒソヒソ話を始めるが、ノワールは特に気には留めなかった。
「やはり伝承にはそのような勇者はいなかったようだが・・・・・・まあよい」
「それで、俺達はこれからどうすればいいんだ?」
「これから冒険の旅に出て、所持された伝説の武器を育てて強化して頂きます」
今度は錬の問いかけに大臣が質問に応え、大臣の解答を聞いた尚文は勇者として召喚されたぐらいだから、チート能力があるのではないかと期待したのだが、流石に最初から強くてニューゲーム状態という訳にはいかないことに「最初から強い訳じゃないのか」と少しばかりガッカリするのだった。
「っていうか、俺のは武器ですらねえし・・・・・・」
「・・・・・・」
そんな風に少しばかり残念そうにする尚文に対し、ノワールが励ますように彼の肩をポンッと軽く叩くのだった。
(その、なんかすまん・・・・・・。 俺だけは最初から強くてニューゲームらしい)
「まっ、使い物になるまで他の武器とか使えばいいんじゃね?」
「そこはのちのち片付けていけば良いだろう。 兎に角、俺達は自分磨きをするべきだ」
「ひたすらレベル上げですね・・・・・・」
元康は盾が使い物になるまで他の武器を使っていけば良いと尚文に提案し、錬や樹もそこは後々考えるとして先ずは兎に角ひたすらに自分達自身を鍛えて行くのが先決だと話し、なら尚文はこの5人でパーティーを組んでレベルを上げしていこうと言うのだが、そこで大臣が待ったをかける。
「じゃあ、俺達5人でパーティーを結成すれば・・・・・・」
「お待ち下さい勇者様! 勇者様方は、別々に仲間を募り、冒険に出ることになります」
なんでも大臣が言うには言い伝えでは彼等勇者の持つ伝説の武器はそれぞれ反発する性質を持っているらしく、共に行動すると互いの成長を阻害すると言われているのだという。
そのため、パーティーを組むことは出来ず、そのためオルトクレイは勇者達と共に一緒に戦う仲間を明日までには募っておくとノワール達に伝えるのだった。
「日も傾いて来ておる。 今日はゆっくり休み、明日旅立つがよかろう 勇者の仲間はこちらで逸材を用意しておく」
*
その後、ノワール、尚文、元康、錬、樹の5人は城の者が案内してくれた来賓室で今日はみんなで休むこととなり、現在は全員食事を済ませ、雑談をしているところだった。
「なあ、これってゲームみたいだよな」
部屋のソファで腰掛けながら自分のステータスを見ていると、不意に尚文は思ったこと口にする。
「っていうかゲームじゃね? 『エメラルドオンライン』そっくりじゃねえか?」
「えっ? なんだ、そのゲーム?」
「はあ? 超有名だろう?」
尚文の言葉に対し、そう返す元康だったが、超有名だったと言われても尚文は特にそんな名前のゲームなど聞いたことがなく、すると今度は横から樹が口を挟み、これは元康の言うそんな名前のゲームではないとのことだった。
「何を言っているんですか? ネットゲームなどではなく、コンシューマーゲームの世界ですよ。 『ディメンションウェーブ』っていう」
「違うだろ、VRMMOだ。 『ブレイブスターオンライン』とほぼ同じと言っていい」
しかし、今度は錬がこれはそんな名前のゲームではないと言いだし、一同は妙に自分達の話が噛み合わないことに違和感を覚え、元康は座っていた椅子から立ち上がってノワールにもゲームの話題を振る為、彼のいる方へと視線を向けるのだが・・・・・・。
「ってなにしてんだアンタ!?」
そこでは部屋の隅っこの方で一体どこで用意したのか床に一畳の茣蓙をひき、背後には障子の扉を立たせ、茶道に勤しむブラック・ノワールの姿があり、尚文達はそんな彼の姿に驚愕せずにはいられなかった。
(・・・・・・ふぅ。 落ち着く)
ズズズとお茶にストローを挿してマスクを被ったまま飲みながら、心を落ち着かせるノワール。
「いや落ち着ついてんじゃねえよ!? ツッコミどころありすぎんだろうが!? その畳と障子どっから用意したんだよ!? なに!? もしかして四次元ポケットでも持ってんの!? あと、なんでお茶飲む時はストローなんだよ!? そこまで本格的ならマスク外して最後までちゃんと普通に飲めよ!!?」
こんなカオスな状況にも関わらず、リラックスしているノワールの姿を見てすかさず元康がツッコミを入れて行くのだが、ノワールは特に意に返すようなことはせず、ただプラカードを掲げてそこに書かれた文字を元康に見せる。
『細かいこと気にするな、将来ハゲてしまうぞ?』
「ハゲねえよ! だってこれは細かいことじゃねえから!」
ノワールの奇行に頭を抱えながら、兎に角色々と情報を整理するためにもノワールを手招きして呼び寄せると、先ずは念のために一般常識の確認を行うことに。
「念のため、一般常識の確認だ。 千円札に描かれてる人は? せーの!」
「「「「湯田正人/谷和原剛太郎/小高縁一/谷原源剛太郎!! 誰!?」」」」
『俺は日本人じゃないからよくは知らん』
その後も去年の流行語大量や好きな声優など有名なサイトの名前やネット用語、有名ゲームの名前をお互いに尋ねあったが、どれも一致するものはなく、どうにも自分達はそれぞれ別々の日本から来たであろうことが予想された。
前世は日本人だが、現在はアメリカ人のノワールを除いて。
(ふむ。 私を知らない時点で薄々感じてはいたが、ホームランダーやクイーン・メイヴのような有名なヒーローの名前や世界中で話題になった、『テックナイト、隕石の穴にファックして世界を救う』というニュースも知らないようだったしな・・・・・・)
当然、テックナイトの事件のことを話した際、ノワールは尚文達から「なんだその事件!?」と盛大にツッコまれたが、彼の世界では実際に起こったことなのだから仕方がない。
「ハァ、どうやら僕達は別々の日本から来たようですね」
「そのようだ。 同じとは到底思えない」
『私はアメリカだがな』
「時代が違うだけかと思ったが、ここまで一致しないなんてなぁ」
樹、錬はこれまでお互いに知っている一般常識などについて全員で話し合った結果、全員がそれぞれ別々の世界から来ているのだろうと予想し、元康は時代が違うだけの可能性についても考慮したが、ここまで話が噛み合わないとなるとやはり全員別の世界からきたというのが色々と辻褄が合うだろう。
「っていうか、俺とノワール以外はみんなこの世界とそっくりなゲームやってたのかよ。 なんで俺達だけ知らないんだろう?」
ソファに腰かけながら、なぜ自分とノワールだけがこの世界について知らないのだろうかと頭に疑問符を浮かべていると、急に元康、錬、樹の3人が一斉に視線を意味深気に視線を向け、それに気付いた尚文は急にこちらを見つめて来る3人に戸惑う。
「えっ、なんだよ?」
「あっ、いえ、やっぱり盾だからかなーって」
「あっ、そう思う?」
「まあ、当然だろう」
樹、元康、錬の反応を見て尚文は「えっ、盾ってなんかダメなの!?」と彼等の態度から不安を覚え、そんな尚文を見て錬や樹と同じくこの世界そっくりのゲームをやっていたという元康が尚文に盾の勇者について自分の知っていることを話し、説明する。
「よし、元康お兄さんが常識の範囲内で教えてあげよう。 俺が知る限り、シールダー・・・・・・盾がメインの職業な?」
「うん?」
「高レベルは全然いない、負け組の職業だ」
「えっ? ノオー!!?」
尚文は、元康から盾についての話を聞くと、彼は頭を抱えながら悲痛な叫び声を上げるのだった。
「お前等の方は!?」
念のため、錬や樹のやっていたゲームは盾はどういった扱いなのだろうかと僅かな希望を抱いて2人に尋ねるのだが、どちらも元康と同じく扱いの悪い職業だったらしく、それを受けて尚文はショックのあまりソファに倒れ込んでしまうのだった。
(俺の世界には、ソルジャー・ボーイのように盾1つで戦うヒーローがいるんだが、彼がこの場にいれば尚文に色々とアドバイスできたかもしれんな。 元ネタのキャプテン・アメリカと比べるとヘタレだけどな、アイツ)
ノワールは自分の世界にいた自分と同じヴォートに所属している知り合いのヒーローのことを思い出しながら、尚文を励ますように彼の肩をポンポンと軽く叩くのだった。
『ちなみに君たちの世界のゲームでは俺と同じような5人目の勇者に当たる存在はいるのか?』
「あー、いや、俺の世界にはアンタと同じ職業に当たる奴はいなかったかな」
「俺の世界にもだ」
「僕も・・・・・・」
ノワールはプラカードを出しながら元康達に自分と同じようなポジションの職業などはあるのだろうかと尋ねるのだが、彼自身「ナイフの勇者」と偽ってこそいるが、それでもやはり彼と同じようなポジションのようなものは存在せず、3人が言うには基本的に盾、剣、槍、弓しかやはり無いとのことだった。
(ハァ・・・・・・。 まあいい、俺が弱いなら仲間に頼れば良いじゃないか。 中には、女の子だっているかもしれない)
またソファに寝転びながら、落ち込んでいた尚文はそう考えることで気持ちを切り替え、起き上がると彼はベランダに出て夜の街中を見つめる。
(盾的には敵の攻撃を防いで仲間を守る感じか。 元の世界では縁が無かったが、ここなら出会いだってあるかも。 へへ、大丈夫! 折角の異世界なんだ。 俺が弱くてもどうにかなるさ!)
気持ちを切り替えた尚文は、両手の拳を握りしめて決意を新たにすると、彼は気合いを入れるためにも大声で外に向かって叫ぶ。
「よーし!! 頑張るぞー!!」
「そ、そうだな。 明日は冒険の始まりだ。 部屋に戻って今日はさっさと寝ちまおうぜ」
急に叫んだ尚文に元康達は驚いたものの、彼の気持ちを汲んでか特に注意するようなことは言わず、元康は明日に備え、今日はもう寝ようと全員に提案するのだった。
(そうだよ! 明日からは俺の大冒険が始まるんだ!)
*
その翌朝、ノワール、尚文、錬、樹、錬の5人は再び王のいる謁見の魔に訪れ、そこではオルトクレイが勇者の仲間として用意したと思われる冒険者達の姿が確認出来た。
「伝説の勇者達と共に、波に立ち向かおうという者を募った。 さあ、未来の英雄達よ、旅立つのだ!」
すると、オルトクレイの号令の元、集められた冒険者達はそれぞれが仕えたい勇者達の元へと歩いて行き、尚文は「そっちが選ぶ側!?」と内心驚いたが、文句を言えるような状況ではないので彼は思わず目を瞑ってしまう。
しかし、ずっと目を閉じている訳にもいかない為、尚文は勇気を出して目を開けて出来れば可愛い女の子が1人でもいてくれと少しだけ邪な期待を抱きつつ、後ろを振り返って自分の仲間になってくれた人達を確認すると・・・・・・。
そこには錬は5人、樹は3人、元康は4人、尚文とノワールは0人といった非情な現実が広がっていたのだった。
「ちょっと王様!?」
「流石にわしもこのような事態が起こるとは・・・・・・」
この結果に対して尚文は流石にこれは酷すぎないかと苦情を入れるのだが、オルトクレイ曰く、自分もこの結果は予想できなかったと主張するのだが、ノワールはそんなオルトクレイの態度を見てどうにも「白々しい」と感じずにはいられなかった。
(王様の奴、なんだか、随分とワザとらしい態度だな。 やはりあの王、信用すべきではないのかもしれん)
「志願者ゼロとは人望がありませんね」
尚文とノワールの仲間になりたいという冒険者が0人であるという結果に対し、大臣が呆れたようにそう言うのだが、ノワールは正直、昨日来たばかりなのに人望もクソも無いだろうと思うのだった。
「むん? そんな噂が広がっておるのか」
「何かあったのですか?」
そんな時、オルトクレイの側近の1人が彼に耳打ちをすると、オルトクレイは元康の問いかけに応えるように先ほど側近から聞かされた話を説明し、なんでも盾の勇者とナイフの勇者はこの世界に疎いという噂が城下でささやかれているらしい。
「伝承で勇者はこの世界を理解しているとされている。 その条件を満たしていないのではないかとな」
「なっ・・・・・・」
「夕べの雑談、盗み聞きされてたんじゃないのか?」
「マジで!?」
そんな噂がささやかれているのは、昨日の自分達の雑談が誰かに聞かれたからではないかと元康は予想し、尚文はそんなことで仲間が誰も自分に来てくれないなど納得出来る筈もなく、錬に5人もいるなら少しは分けてくれと頼み込む。
「つうか錬! お前、5人もいるなら分けてくれよ!」
「俺はつるむのが嫌いなんだ。 ついていけないなら置いていく」
しかし、錬の元に集った冒険者達は、錬にそう強く言われてもその場を動こうとはせず・・・・・・。
「元康! これって酷く無いか!?」
「い、いやぁ、偏るとはなんとも・・・・・・」
「均等に分けた方が良いんでしょうけど、無理矢理では土気に関わりそうですね」
元康は「自分に言われても困る」と言いたげな表情を浮かべ、樹は無理矢理分けても士気に関わってしまうからと言われてしまうのだが、当然、それで尚文は納得できる筈もない。
「ノワールからもなんとか言ってくれよ! アンタも1人だろ!?」
『俺は別に1人でも良いが。 気が楽だ』
確かに、ノワールも尚文と同じく仲間0という状況ではあるが、1人の方が気楽だからと言って特に気にするようなことはしなかった。
『だが、確かに尚文と一緒に戦う仲間がいないのは幾ら何でも気の毒だ。 どうにかならないのか王様?』
しかし、昨日の話を聞いた限り、尚文の職業である盾は元康達の理屈だと負け組の武器、仲間がいなくて彼はどう強くなれば良いのだとノワールはオルトクレイにせめて仲間1人ぐらいは尚文に寄越せないのかと改善案を求めるのだが・・・・・・。
「勇者様! 私、盾の勇者様の元へと行っても良いですか?」
そんな時、尚文の元に行った冒険者の1人が手を挙げ、赤ぶ・・・・・・赤い髪の女性「マイン・スフィア」が尚文の元に行っても良いかと尋ね、元康は「良いのか?」とマインに問いかけるが、彼女はにっこりと笑って「はい」と応えるのだった。
(なんだ。 この女・・・・・・? この女の顔を見ていると何故か無性に顔面をブン殴りたくなる)
ただ、ノワールは尚文の元に行っても良いとの述べるマインの顔を見ると、なぜだか分からないが無性に彼女の顔を殴りたくなる衝動に駆られたが、彼は必死にその衝動を抑えつけ、必死に堪える。
(仕事が忙しくて最近色々と溜まってたからな。 イライラしてるんだろうか、私は。 この世界にも風浴ってあるだろうか?)
「他にナオフミ殿の下に行っても良いという者はおらんか?」
ノワールがそんなことを考え、尚文が見た目が美人ということもあり、マインが自分の仲間になってくれたことに内心喜んでいると、オルトクレイが他にも尚文の元に行きたいという冒険者はいないかと呼びかけるが、結局はそれ以上は集まらず・・・・・・。
「うーん、しょうがあるまい。 ナオフミ殿はこれから自身で気に入った仲間を勧誘し、人員を補充せよ」
「えっ、ああ・・・・・・はい!」
「勇者達には月々の援助金を配布するが、今回、ナオフミ殿とブラック・ノワール殿には他の勇者よりも増額するとしよう」
そうして、オルトクレイによって尚文とノワールには銀貨800枚、他の勇者には600枚と援助金がそれぞれ配布された。
「これで装備を整え、旅立つが良い!」
「「「「はい!!」」」」
「・・・・・・」
*
「またな、尚文! 彼女をしっかり守ってやれよ!」
「手伝うことはできませんけど、仲間集め、頑張ってくださいね」
「時が来たら、また」
そして、元康、樹、錬は尚文と一時の別れの言葉を交わした後、それぞれ仲間達と共に冒険へと旅立つのだが・・・・・・ノワールだけは1人残り、取り出したメモ帳に文字を書き込み、マインに見られないようにこっそりと尚文にそれを見せる。
「んっ? なんだよ一体・・・・・・」
『あの女、警戒しておいた方が良い。 どうにも胡散臭い匂いがする』
「えっ、なんでそんなこと・・・・・・」
尚文はそのメモに書かれた文字を読んで、なんでそんなことを言うんだとノワールのことを少しだけ睨む。
『確証がある訳じゃない。 だが、私の仕事柄、あの女は信用するなと直感が訴えて止まないんだ。 兎に角、念のために警戒はしといた方が良い』
「うーん」
ノワールはマインには胡散臭い匂いがするから気をつけろと尚文に忠告するのだが、尚文としてはマインをあまり疑いたくは無いようで、そんな尚文を見てノワールは兎に角警戒だけはしといてくれとだけ伝え、尚文の肩を軽くポンッと叩くと彼もまた冒険の旅を始める為に城の外へと足を踏み出すのだった。
(さて・・・・・・それじゃ先ずは・・・・・・。 金も貰ったことだし、風浴に行ってスッキリしてくるか)
いやさっさと冒険に出ろよ。
*
そして、勇者達が冒険(ノワールだけは風浴に何件か行っただけだが)へと旅だって翌朝。
ノワールは今、とある宿に部屋を借りて身体を休めていたのだが・・・・・・。
突然城の騎士達が一大事だから城までやって来て欲しいと急に呼び出され、彼は寝る時はスーツを着ていないのだから押しかけてくんなと騎士達に苛立ちつつも、何時もの漆黒のスーツに身を包み、ノワールはその「一大事」とやらが気になったこともあり、騎士達に従って彼等に言われた通り、城へと向かうのだった。
城の謁見の間に辿り着くと、そこには既に元康、錬、樹と・・・・・・なぜか怯えた表情のマインがいた。
『一体何があったんだ?』
「それは・・・・・・ッ」
何時もの文字の書かれたプラカードを掲げながら、ノワールは元康達に一体何があったのだろうかと尋ねると、元康はマインに気遣うような視線を向けた後、こっそりと何があったのかをノワールに耳打ちした。
(なに? 尚文が、仲間のマインを強姦しようとしただと?)
元康が言うには、昨日の夜、ノワールが借りていたのとは別の宿屋で、尚文が酒に酔った勢いで別室で休んでいたマインの部屋に押し入り、彼女を押し倒され、服を無理矢理破られて強姦されそうになったのだという。
「チッ、尚文がそんな奴だったなんてな・・・・・・」
「あぁ、胸くそが悪い」
「勇者の名に恥じる行いですね・・・・・・」
「・・・・・・」
元康と錬、樹はマインからの話を聞いて尚文に対して激しい怒りと軽蔑の感情を抱くが・・・・・・。
ただノワールだけはマインが強姦されそうになったという話を聞いても、元々彼女のことを胡散臭いと感じていたことから素直に信じることが出来なかった。
それになによりもマインの流す涙が物凄く嘘泣きっぽい。
だがしかし、なんにしても尚文が来ないことには話は始まらない。
今は城の騎士達が尚文を連行して来ているそうで、少しだけ元康達と共に尚文が来るのを待っていると、騎士達に身柄を拘束された尚文がやってきたのだ。
「なんなんだよ、一体・・・・・・!?」
雑に床に投げつけられ、尚文はそのことに腹正しさを感じながらも顔を上げると、彼はマインの姿を見てホッとしたような表情を浮かべる。
「マイン! 無事だったのか!?」
マインの身を案じていたかのような発言をする尚文だが、マインは怯えた表情で元康の背中に隠れ、そんな彼女の反応を見て尚文は首を傾げた。
「マイン? あっ、王様! 俺、寝込みに全財産と盾以外の装備品を全部盗まれてしまいました! どうか、犯人を捕まえて・・・・・・」
「黙れ外道!!」
尚文は寝ている最中、支給金や昨日マインと共に買い揃えた盾以外の装備品を盗まれてしまい、その犯人を捜してくれとオルトクレイに訴えようとしたのだが、その言葉は途中でオルトクレイの言葉によって遮られてしまい、彼に「外道」と呼ばれた尚文は一体なんのことか分からず、困惑してしまう。
「哀れな冒険者マインよ、すまぬがもう一度証言して貰えぬか?」
オルトクレイは頭を抱えながら、マインに証言をするように頼むと、彼女は身体を震わせながら、オルトクレイに言われた通り昨夜あった出来事を話し出す。
「っ、盾の勇者様がお酒に酔った勢いで、突然部屋に入ってきて私を押し倒して・・・・・・。 『まだ夜は明けてねえぜ』とか言って私の服を、無理矢理引き千切ったんです・・・・・・!」
「ぶふっ」
「えぇっ!?」
涙を流しながら、そう語るマインだが・・・・・・その内容は尚文に取って身に覚えのないものばかりだった。
覚えていないのは、酒を飲んでいるからでは無いかと思われるかもしれないが、昨日の夕食時にマインにワインを勧められてこそいたが、彼は「苦手だから」と言って断っていたのだ。
つまり、彼は昨日から酒の類などは一滴も飲んでなどいなかった。
しかし、それを証明できる者はこの場には他に誰もいない。
ちなみに「まだ夜は明けてねえぜ」というマインの台詞を聞いて「マインが考えたにしても尚文が実際に言っていたとしてもバカじゃねーの」と思わずノワールは吹き出してしまっていた。
「私、なんとか逃げ出して・・・・・・偶然、同じ宿に泊まっていたモトヤス様に助けを求めたんです!」
「な、なんだそりゃ・・・・・・!?」
(そりゃ、『まだ夜は明けねえぜ』とかなんだそりゃってなるよな)
正直言って、ノワールからするとこの光景は茶番にしか見えず、ただの勘でしか無いが恐らく尚文はマインに罠に嵌められ、ありもしない強姦未遂の容疑をかけられていると見える。
しかし、今の状況では自分が口出しをしても尚文を助ける為の材料が少なすぎることもあり、もうしばらくは様子を伺うしかなかった。
「マインが朝まで待って騎士を呼ぶ方が良いって言わなきゃ、俺がお前を斬り捨ててたところだぜ」
「何言ってんだよ!? 俺は昨日、飯を食って食い終わった後は部屋で寝て・・・・・・。 っていうか、その鎖かたびら、お前が枕荒らしだったのか!?」
(なに?)
尚文は現在、元康が着込んでいる鎖かたびらを見て、それは昨日武器屋で自分が購入したものと同じものであることに気づき、てっきり元康が盗んだのかと思ったのだが、その鎖かたびらは昨日、酒場でマインと会った際に彼女からプレゼントされたものだという。
「誰が枕荒らしだ! この服は昨日、酒場でマインと会った時にプレゼントして貰ったものだ!」
「我が国で最も犯してはならぬ禁忌を盾の勇者がな」
オルトクレイは呆れたような視線を尚文に向け、そんな彼の言葉に禁忌とは一体なんのことだと尚文は首を傾げる。
「メルロマルクで女性への性的暴行は例え未遂であっても極刑!」
「勇者で無ければ、即刻処刑ものだ!!」
大臣とオルトクレイの言い放ったその言葉に、尚文は驚愕し、彼は必死に自分の無実を訴える。
「処刑!? だから、誤解だって言ってるじゃないですか!? そこまで言うなら証拠を、証拠を出せ!!」
「盾の勇者の部屋を捜索していたところ、その・・・・・・このような物がベッドの上に・・・・・・」
尚文が訴えるのならば証拠を出せと言うと、騎士の1人が前に出てオルトクレイに片膝を突くと、彼は尚文が泊まっていた部屋を捜索していたところその証拠となるものが出てきたとのことで、彼はマインが着ていたと思われる下着が取り出され、それを見たマインは、昨夜のことを思い出してか顔を真っ赤にして悲鳴をあげる。
「あっ、いやああああ!!!?」
(耳障りな悲鳴だな。 なんでこいつを見てるとこんなイライラするんだ? だが、この時を待っていた)
ノワールはマインに鬱陶しさを感じつつ、彼はマスクの耳元当たりにあるスイッチをカチカチと押すとマスクの内部に仕込まれたある機能を起動させる。
「なんでだよ!? 俺が起きた時、そんなもの無かったぞ!?」
するとノワールはあくまでも無実を訴える尚文の元まで歩み寄り、彼の前に片膝を突いて尚文の腕を掴み、その手の平を見つめるとマスク内部に仕込まれた「指紋認証」機能により、尚文の指紋を読み取る。
「あっ、ノワール・・・・・・何を!?」
「・・・・・・」
ノワールのその行動に驚く尚文だったが、ノワールは尚文の肩に「心配するな」とでも言うように手を乗せると、今度は証拠として出された下着をマスク内部の機能を使ってスキャン。
(ふむ、やはりな)
その結果、騎士の持って来た下着には尚文の指紋どころか、髪の毛1つついていないことが判明し、ノワールはプラカードを取り出し、「彼は強姦などしていない」と尚文の無実を主張したのだ。
「なっ、何を根拠に・・・・・・!! 現にその下着が尚文がマインを襲ったっていう動かぬ証拠じゃないか!?」
『俺のマスクには様々な機能がついていてね。 指紋認証も出来る優れものなのさ。 そして尚文の手とその下着を読み取ったところ、下着には尚文の指紋どころか髪の毛1本すら存在しなかった』
元康は騎士の持って来た下着こそ、何よりの証拠だと主張するが、ノワールは尚文が本当にマインを強姦しようとしたのならば、服を破った時点で少なからず髪の毛1本や指紋の1つもついている筈だろうと訴えるが、元康はそんな話を信じようとはしない。
「だけど、だったらなんでマインは泣いてるんだよ!?」
『どうせ嘘泣きだろう? 何故かは分からないが、その女はどうにも尚文のことを悪者にしたいらしい』
「そんなことをして、マインになんの特があるんだ!?」
(だからそれは分からないって言ってんだろ、バカか!?)
元康はあくまでマインの話を信じているらしく、それは錬や樹もどうやら同じようでノワールは呆れて物も言えなかった。
「まさか、ナイフの勇者よ・・・・・・。 お主、さては盾の勇者とグルなのではないか!?」
(ハァ・・・・・・!?)
「確かに。 尚文さんの無罪を主張しているのはあなた1人」
「それに、アンタの言うマスク機能とやらが本当かどうかも怪しいしな。 元々、奇妙な格好もしてて怪しさ満点だしな」
尚文のことを庇ったことで、ノワールはオルトクレイから「もしかして尚文とグルなのではないか?」というあらぬ疑いをかけられ、それに樹や錬も同意するように頷き、彼等はノワールのことまでも疑いだしたのだ。
(成程、そう来る訳か・・・・・・)
「残念です。 何かおかしいことになるんじゃと心配はしてたんですが・・・・・・」
「勇者なら何をやっても許されると勘違いしている」
樹や錬はノワール共々、尚文を責め立てるような発言を行い、ノワールは「こいつ等殺してやろうかな」と一瞬思ったが、彼等もマインに恐らく騙されているだけなので、今はグッと彼等の身体を引き裂いてやりたいという衝動を必死に抑える。
「お前等はこの異世界の主人公なんかじゃない! 身の程を弁えろ!!」
「・・・・・・」
元康にそう言い放たれ、ノワールは内心苛立ちを募らせ、尚文はガクリと項垂れる。
(なんだ? これ・・・・・・。 なんなんだよ・・・・・・! マイン、マイン・・・・・・。 なんでお前そんなこと!? 俺達仲間じゃ・・・・・・)
尚文は、なんでマインがこんなことをしたのか分からず、彼はマインの方へと視線を向けるのだが・・・・・・その時、尚文はマインが僅かにほくそ笑んだことに気付いた。
「っ!?」
すると、マインは尚文に向けて「あっかんべー」をしながら、小馬鹿にしたような表情を見せた。
「・・・・・・!!」
尚、その表情はノワールも確認することができ、そんなマインのあっかんべーを見たノワールはその顔があまりにもムカついた為、頭に血が激しく上っていくのを感じた。
そして、それを見て、尚文はマインが自分の仲間になると言ったのはこの場で自分を陥れるための真っ赤な嘘であることに気づき、最初から彼女は自分を罠に嵌めるつもりだったのだ。
「お前、騙したな・・・・・・!」
そのことに気付いた尚文は、マインに激しい怒りを感じ、マインのことを睨み付けるのだが、次の瞬間・・・・・・。
「・・・・・・フン!!」
「ぶべっ!?」
あっかんべーしていたマインの顔面を、いつの間にかマインに急接近していたブラック・ノワールが思いっきりブン殴り、鼻の骨をヘシ折っていたのだ。
その一瞬の出来事に、尚文も元康も、錬も樹もオルトクレイも、その場にいた他の騎士達も、殴られたマインですら今、一体何が起こったのか分からず困惑し、唖然とするしかなかった。
「あ、あああああ・・・・・・! ひゃなが、わだじのひゃながぁ・・・・・・!?」
鼻血を出しながら、折られた鼻を必死に抑えるマインだが、さらにそこから全員が唖然としている隙にノワールがマインに飛びかかり、馬乗りとなると彼女を顔を何度も、何度も、何度も、何度も、何度も、殴りまくる。
「ふぎゅっ!? ぶへっ!? や、や゛め゛・・・・・・!!? でっ・・・・・!?」
(聞こえんなぁ)
マインは必死に「やめて」と叫ぶが、ノワールは当然聞き入れず、歯が折れて顔にアザが出来、赤く膨れあがっても殴るのをやめず、執拗に殴り続ける。
「ハッ!? お、おい!! 何やってんだよテメー!!?」
そこでようやく我に返った元康が槍を構えてノワールを背中から突こうとするのだが、ノワールはバク宙で飛んで元康の後ろに回り込み、元康は素早く振り返りざまに槍を振るうが、ノワールはそれを右腕で受け止め、左拳を元康の腹部に叩き込み、気絶させる。
「き、きっさまぁ!!? マルティになにを・・・・・・!!?」
オルトクレイはノワールに執拗にマインを殴られたことに怒ったのか、王座から立ち上がって激しい怒りを見せるが、ノワールは「マルティって誰だよ」と思いつつ、オルトクレイに素早く近づいて彼の顔面に強烈な蹴りを叩き込み、オルトクレイは白目を剥きながら気を失い、玉座に倒れ込む。
「ノワールさん! 何を・・・・・・」
「女に手を挙げるとは、やはりお前も尚文と同じ最低な野郎だった訳だな・・・・・・!」
(女? 何を訳の分からんことを・・・・・・。 アイツは尚文を罠に嵌め、陥れた立派な悪党・・・・・・。 悪党は生きている価値などない、家畜以下の畜生だ。 そこに男も女も関係あるものか)
樹は矢を連射してノワールに向けて放つが、ノワールは地面に煙玉を投げることで煙幕を張り巡らせ、姿を眩ませる。
「目眩ましか!?」
ノワールの張った煙幕によって辺りが煙りに包まれ、マスクの機能で煙の中だろうか視界が良好なノワール以外のこの場にいた全員の視界が遮られてしまうのだが、その時、錬は背後に気配を感じ、後ろを振り返ると自分目がけて2本のナイフが飛んで来て、錬はそれを素早く剣を振るって煙をかき消すと同時にナイフを弾き飛ばすのだが・・・・・・。
「あいつ、どこに・・・・・・!?」
煙を晴らしても周囲にノワールの姿が確認出来ず、錬と樹が辺りを見回していると天井に張り付いていたノワールが錬と樹の2人目がけて落下し、2人の頭を掴んで2人の頭を掴んで地面の床に強く叩きつけたのだ。
「・・・・・・!!」
「「がああ!!?」」
(お前等は騙されてるだけだろうからな。 殺さないでおいてやるよ。 あの女も、尚文の冤罪を晴らす為にはまだ必要だから今はこの程度で済ませてやる。 最も、ぶち殺すのはどの道決定事項だがな)
そしてノワールは煙玉を床に投げつけて煙幕を作り出すと、ノワールは尚文を押さえ付けていた騎士の1人を蹴り飛ばし、その騎士が落とした剣を拾いあげるとさらにもう1人の尚文を取り押さえていた騎士の右腕を切断し、アッパーカットで殴り飛ばすと、ノワールは尚文の首根っこを掴んですぐさま城から飛び出すのだった。
「ぎゃああああ!!!? 俺の腕が、腕がああああ!!!?」
「お、おいノワール!?」
(これ以上、この場にいても無駄だろう。 幾ら冤罪であることを訴えても、あの場にいる連中はきっとまともに取り合おうとはしないだろうからな)
Qなんで転生系にしたの?
滅多に手を出さないジャンルだから、自分が書くとしたらどうなるのかなとか、思い、ちょっとそういう要素を入れてみた。
と言っても転生要素はほぼオマケみたいなもん。
それにブラック・ノワールをオリキャラ化するならこっちの方がやりやすそうだと思ったから。
Qなんで神様から転生特典を貰う描写入れなかったの?
テンプレをなるべく避けることと、そういう描写を入れるのは苦手だったから。
転生要素はオマケでしかないんだから無理にすることないと思って。
Qなんでブラック・ノワールをオリキャラ化したの?
ドラマでの掘り下げが全く無いから。
でも好きなキャラだから主人公にチョイスした。
ブラック・ノワール
年齢不明
男性
一人称は「俺」もしくは「私」
基本的には無口であり、コミュニケーションを取る際はメモ帳で書いた言葉やプラカードに書かれた言葉でやり取りを行う。
見た目はドラマ版ザ・ボーイズのブラック・ノワールだが原作の設定なども一部取り入れられている。
そのため彼の素顔はアイツにそっくりであり、実はヴォートが生み出した人工的に作り出した人造人間でもある。
本人も自分の出自に関しては知っているが、特に気にしてはいない様子。
前世からこうだったのか、それともヴォートに生み出され、ずっとヴォートという組織に育てられてきたからかは不明だが、彼の思考はすっかりとヴォートの思想に染まっており、テロリスト相手とは言え何人も無残に殺していく様はとてもヒーローと呼べるものではない。
本人にその自覚はなく、彼自身は自らをスーパーヒーローと称し、悪人は男だろうが女だろうが容赦なく皆殺しにすべきという危険思想を持つ。
しかも悪人を殺すことに快楽を感じており、楽しんですらいる。
そのためパニッシャーのような悪を憎む理由もなければロールシャッハのような信念もないというダークヒーロー、アンチヒーローと呼ぶにしてもはその辺はあまりにも薄っぺらい人物。
とは言え、彼自身悪人ではないと判断した人物に対しては比較的好意的に接しはする。
ちなみに他の勇者達とは違い言語理解能力を持っているようで、彼の所持している名刺や彼の書いた文字はそれを見た者が知っている言語に変換される模様。
つまり、尚文がブラック・ノワールの名刺を見てすらすらと文字が読めたのは尚文にはそれが日本語に見えていたからである。
本来は英語で書かれていた。
尚、普段は力をセーブしているようで本気を出せばホームランダー並の怪力を誇る。