「なんだこれ……なんだこれええええええええ!!!!!!?」
そう叫ぶのはなぜか小学6年生くらいの身長の少女に変身してしまった主人公……「風上 光」、彼……否、この場合彼女(?)はなぜ自分が幼女へと変身してしまったのか分からず困惑し、急いで元凶と思われるリョーガに連絡を入れた。
『あの、なんで光が幼女になってんですか……』
が、それよりも先に幼馴染の奈々の声が聞こえ、自分の聞きたいことを聞いてくれていた。
『んんっ? ダメだったかい?』
『いいえ、滅茶苦茶ウルトラナイスです、だってあの娘私好み超絶美少女なんですもん!! むしろよくやってくれました!! 中身が光という所も高評価です!! 白スクですし!!』
『はっはっは!! いやぁー、話の通じる人でよかったよ~』
確かに聞きたいことは聞いてくれたのだが……光的にはその辺もっとちゃんとツッコんで欲しかった。
(うわあーーーーー!!!!! 意気投合しちゃいけない人達が意気投合し始めてるーーーーー!!!!?)
流石に相手が化け物とはいえ、不審がられたくない光……というよりもテイルセイヴァーは心の中でそう叫び、心の中で必死に奈々がちゃんとツッコミを入れてくれることを願うのだが……テイルセイヴァーのその切なる願いは……。
『だって普通に変身したらつまんないだろう? 男が女に変身する!! こっちの方が面白いじゃないか!!』
『遊び心ですね!』
『そうだ!! どうだ!! これが私の遊び心だ!!』
『いいですねいいですね!! テイルセイヴァーちゃん可愛いですし、今すぐお持ち帰りして身体を洗いっこしたり着替えっこしたり抱きしめながら眠りたいくらい可愛い。 あなたのそのセンス素晴らしいです!!』
見事無残に打ち砕かれた。
(遊びすぎだと思うんですけどぉ!? 後、今初めて幼馴染にちょっとした恐怖を感じたんだけど!? っていうか奈々ツッコんで!! ちゃんとツッコミ入れて!! 奈々基本ボケキャラのイメージだけどツッコミも一応こなせるでしょう!?)
しかし奈々は一向にリョーガにツッコミを入れるどころかどんどん彼と意気投合していき、これでは何時まで経っても平行線のままなため、その辺のことは後回しにして今は目の前の敵を倒すことに集中する。
「むう、どうやら悩み事は済んだらしいな。 ずっと頭を抱えていたままだったから何事かと思ったぞ。 それで貴様、自ら自分のツインテールを我等に差し出すか? それとも邪魔をしに来たのか?」
(心配してくれてた!! えっ? この人実は良い人じゃないの?)
セイヴァーは一瞬そんな考えが頭を過ったがすぐにその考えをかき消し、リザドギルティは先ほどの自分の問いかけを否定しなかった。
つまり、なんにせよリザドギルティと戦う以外の選択肢など最初からなかった。
それを再び再認識し、セイヴァーはリザドギルティの問いかけにハッキリと人差し指をリザドギルティに向けて言い放った。
「……邪魔をしに来た……」
そう言いながらセイヴァーは踏み出そうとした瞬間……偶然にも落ちていたバナナの皮を踏ん付けてしまい……。
「わぷ!?」
「すてん!」と転んでしまった。
『ちょっとカッコつけて行こうとしたらバナナ踏んでころんっと転んでしまう仕草がクソ可愛いんですけど!! やばい超持って帰りたいですううううううう!!!!』
『はっはっは! ちょっとカッコつけて飛びだそうとしたら今時バナナの皮で滑るとはね~』
(やめてえええええええ!!!!!? 凄い恥ずかしいからあああああああああ!!!!!)
奈々とリョーガの話し声を聞いたセイヴァーはみるみると顔を真っ赤にしていき、少し涙目だった。
「『涙目が可愛いなああああああ!!!!』」
「……アレ、なんか……ハモった……」
先ほど見事にリザドギルティと奈々の声が偶然にも重なり、セイヴァーは失礼だとは思いつつも奈々って結構この怪物と仲良くやれるのではないかと思わずにはいられなかった。
「と、取りあえず今度こそ!!」
今度こそリザドギルティ達に戦いを挑もうとするセイヴァーだったが……今度は眠っていた犬の尻尾を思いっきり踏んでしまい、尻尾を踏まれた犬(しかも結構デカイ)は「キャウン!!?」という鳴き声をあげて飛び起き、セイヴァーを睨み始めた。
「ガルルルル……!」
「へっ……?」
「ガウウウウウ!!!!!」
「わー!!? 追っかけてきたぁ!!?」
当然犬はセイヴァーへと襲いかかり、セイヴァーは必死に犬から走って逃げだすのだが……その走ってる途中……今度は眠っていた猫の尻尾を踏ん付けてしまい、猫からも追われる身となってしまう。
「わーん!!」
必死に犬と猫から逃げるのだが……近くで素振りしていた野球選手らしき人物が手を滑らせて持っていたバットが飛んで行き、それがセイヴァーの背中に直撃して吹っ飛ばされた。
『いや、なんでそこで素振りしてんですか!? さっさと逃げてくださいよ!! っていうか今の奴セイヴァーちゃんになんてことを!! ちょっとムッ殺してきます』
『あぁ、いいよ。 っていうかバット投げられたくらいで吹き飛ばされたりしないと思うんだがねぇ……。 あぁ、アレか、ギャグ補正か』
通信でリョーガと奈々……後ついでに奈々に現在進行形でムッ殺されているであろう野球選手のような格好の人の悲鳴が聞こえてきた気がしたが……セイヴァーはそれを気にするほどの余裕はなかった。
なぜならバットで吹き飛ばされた後は電信柱に顔から激突し、しかもその真下にいたゴミを漁っているカラス達の元まで落下してきたため今度はカラス達からも襲われ、犬には噛みつかれる、猫には引っ掻かれる、カラスには突かれると散々な目に合うセイヴァー。
「わああああああん!!!! 誰か助けてーーーーーー!!!!」
『あぁ、よりにもよって今日は『アレ』でしたか』
『『アレ』?』
『いやですね、光って不幸体質なんですよ。 いつもならそこまでじゃないんですが……その不幸体質がたまに本気出す時がありましてね。 その時いつもかなり酷い目にあうんですよ、光』
そこで見ていられなくなったリザドギルティがセイヴァーに襲いかかっているカラスや犬や猫を払いのけ、どうにかセイヴァーは助かることができたのだが。
「うぅ……ありがとう、ございます」
「なに、礼はいらん。 ツインテールが乱れては勿体がないからな」
「なんかいい人な上に紳士なんですがこの人!!?」
折角覚悟を決めたというのにこれではリザドギルティを倒すことを戸惑ってしまう。
「取りあえずショックが治るまではそこで座っていろ。 その間にツインテール属性を貰うが」
「えぇ!? ちょっ、それはダ……へぶ!!?」
セイヴァーがリザドギルティを引き止めようとしたのだがまた足元にバナナの皮が落ちており、セイヴァーはそれを思いっきり踏んですっ転び、立ちあがってもう1度リザドギルティの元へと向かおうとするがまた犬の尻尾を踏み……以下略。
リザドギルティはもう1度指をパチンと鳴らすと再び慧理那の身体が空中へと浮かび、彼女は今度こそその巨大なリングの中へと通り、ツインテールが解かれてしまうのだった。
「っ……! しまった……!!」
セイヴァーはそれを見て唖然とした表情を浮かべ、彼女は膝を突き……拳を地面へと叩きつけた。
「……クソ……!! 守れ、なかった……!!」
これで慧理那は……心を殺されてしまった、その事実にセイヴァーは悔しさ、悲しさ……そして自分への怒りの感情に支配された。
「僕が……僕が、グダグダやってるから……!!」
犬に噛まれようが猫に引っ掛かれようがカラスに突かれようがそんなもの気にせずにでも戦えば良かった、そうすればまだ慧理那を助けられたかもしれなかったのに……そんな後悔が、想いがセイヴァーの中で渦巻いていた。
だからかもしれない、赤いツインテールの「少女」が……こちらに向かって来ていることに気づくのが遅れたのだが……。
「やめろおおおおお!!!!!」
空高くジャンプしたその少女が地面へと着地し、リザドギルティはその赤い少女を見ると目を見開いた。
「貴様は……!?」
「この人たちのツインテールを……返せ……! テメーが奪ったツインテールを!!」
「うっ、うおおおおお!!!?」
するとリザドギルティがなぜかなにもされていないにも関わらず吹き飛ばされ、そのまま膝を突いてしまう。
「ぐうう! あまりに強大な幼気に吹き飛ばされたか……。 これはなんと見事なツインテールか……!」
「お、おい……?」
少女はリザドギルティの言っている意味が分からないらしく、一体なにを言ってるのか困惑していたが……。
「やはり起点にこの地を選んだ隊長殿の予感は正しかった!! お前だったのか、ようやく現れた究極のツインテール!!」
「究極のツインテール」……その言葉に少女は「まさか……」とでも言いたげな顔をし、ギギギ……と首を横に動かし、セイヴァーと同じく車の窓に映っている自分の姿を見ると少女は絶句した。
「お……お……女になってるじゃねえかーーーーーーー!!!!!」
自分の姿を確認したその少女は空に向かってそう叫んだ。
「また滅茶苦茶可愛い幼女キターーーーーーーーーー!!!!!」
そしてまた奈々も空に向かって両腕をあげ、そう叫んでいた。
一方でセイヴァーはというと……放心状態になりかけていたがあの少女の叫びによって我に返り、ハッとなって辺りを見回す。
「えっ? な、なに……僕と似たような格好してるあの女の子!?」
『1つ言えるのは彼女は君と同じように戦う力を持っているということ。 それと先ほどのリングを通ったあの女の子のことだけど……24時間以内にあのリングをぶっ壊せば元に戻る。 だからまだ諦めるのは早い』
『そうですそうです!! 光、ぱぱーっとやっつけちゃってくださいあんな連中! 光なら、できます』
リョーガと奈々の言葉を受けてセイヴァーは頷き、立ちあがると今度こそリザドギルティの元へと駆け出そうと……。
「ぎにゃあああああ!!!!?」
したのだが、勢いよく突っ込んできたバイクに吹き飛ばされてしまった。
『イチイチ決まらないねぇ、彼……』
『今日までこのアンラッキーデーを憎んだ日はないでしょうね、光は』
だが、偶然にセイヴァーが吹き飛ばされた先にいたのはあの赤い少女であり、いきなり吹き飛んできたセイヴァーに少女は「ビクッ」と肩を震わせた。
「あ、あぁ……怖がらないで!! 一応味方だから!!」
「う、うん……」
少女は戸惑いつつも倒れこんでいるセイヴァーに手を差し伸べて立ち上がらせ、セイヴァーと少女は2人並び立つ。
「ううむ、見れば見るほど素晴らしいツインテール……。 そしてテイルセイヴァーとやらも中々……。 どちらもワザワザ自ら出てこようとは……。 その究極のツインテール!! 回収させて貰う!!」
リザドギルティは命令してアルティロイド達は一斉にセイヴァーと少女に襲いかかり、少女は「や、やめろおおおおお!!!!」と駄々っ子のように手を振り回し、偶然振り回した腕がアルティロイドに直撃し、アルティロイドは吹き飛ばされて建物の壁に激突し消滅した。
一方でセイヴァーは少女とは対照的に落ち着いており、拳法家のようなファイティングポーズを取るが……あっという間にアルティロイド達にセイヴァーは囲まれてしまった。
「赤心少林拳! 十字倒脚!!」
四方から襲ってくるアルティロイド達に対して、 蹴り上げ、手による打撃、蹴り上げの攻撃で一瞬でアルティロイド達は吹き飛ばされてしまった。
「「「モケェー!!!!?」」」
『ねえ、奈々くん』
『はい?』
『今、彼明らかにどっかで見たことある拳法使ってたんだけど……』
奈々曰く、「昔、仮面ライダースーパー1に影響されて何時も真似してたらいつの間にかできたそうです。 ちなみに私もできます」とのことだった。
『さらに言うと護身術身につけるために昔から愛香さんの道場に私と光は結構通ってまして。 愛香さんに何時も鍛えて貰ってるんです。 ちなみに他にも色んなヒーローの技完全にとまでは行きませんが私と光、再現できますよ』
『ある意味凄いな君たち!?』
『えぇ、おかげで変な因縁つけてきた不良やらヤンキーやら複数人相手でも軽く倒せるくらいには強くなりました。 まあ、光は殆ど背負い投げとか受け流しとかで終わらせてましたが……。 ちなみにその不良やらヤンキーやら……光の説得で今では真面目な性格になってるそうです』
『なにそれ』
また、奈々が言うには生身でもそのくらい強い実力を身につけたと言っても愛香には全く通用しないらしく、昔2人で愛香に挑んだ時は0.5秒で瞬殺されたとか。
『ちなみに1人だと0.1秒で沈められました』
(昔って言っても中学の終わり頃だから最近だけどね)
リョーガと奈々の会話を聞きながら苦笑するセイヴァー。
「アルティロイドをあっさりと……! その凄まじし力、一体何者だ!?」
「……なんなの? 俺……」
リザドギルティに問いかけられ、そこから少し黙りこむ少女……少しするとなぜかしょんぼりとした雰囲気になり、そんなしょんぼりした少女の姿にリザドギルティはテンションがあがった。
「よく分からぬのがしょんぼりした幼子たまらぬ!! 彼女に抱かせる人形を持てい!!」
「「「モケェー!!」」」
リザドギルティの言われた通り、人形を持ってアルティロイド達が少女とセイヴァー……主に少女の方に近づき、涙目の少女は「やめろってば!!」と叫びながら手を突き出しアルティロイド達を吹き飛ばした。
「強さと可愛らしさのまさに究極体!! 出会えたことに感動すら覚えるぞ!! ますます気に入った。 大人しく回収されよ!!」
「こ、断る!!」
「っていうか僕のこと忘れてません?」
セイヴァーはいつの間にかリザドギルティの懐に潜り込んで拳を放ち、リザドギルティの腹部を殴りつけ、リザドギルティは殴り飛ばされる。
「くっ、ぐおぉ!?」
リザドギルティは殴られた箇所を抑えつつ、背中にある無数のヒレが身体から分離し、空高く飛びあがってきた。
尚、身体とヒレは完全に分離している訳ではなく薄い光の帯のようなもので繋がっており、セイヴァーへと襲いかかってくるがセイヴァーはそれらを全て素手で弾き、攻撃を完全に防いだ。
「くっ、あの攻撃を全て受け流すとは……!」
『そりゃ、ウルトラマンレオのケンドロス戦で生み出した技も光も私も取得してますからねぇ。 あの程度の攻撃どうってこともありませんよ』
『どんだけ取得してるんだ。 君たちちょっと凄すぎないか?』
もしかしてあの金属ブーメラン投げられる特訓をこの2人はやったんだろうか……とリョーガは思っていたのだがすぐに奈々から「普通に柔らかい素材でできたブーメランでやりましたよ」と付け足された。
『でも愛香さんにはどんな技使っても0.5秒以内に仕留められます』
さらにセイヴァーはリザドギルティへと真っ直ぐ駆け出して行き、空高くジャンプするとそのまま急降下キックをリザドギルティに叩き込み、リザドギルティは両腕を交差して攻撃を受け止めた。
「でええい!!」
負けじとリザドギルティも尻尾を振るってセイヴァーに反撃し、尻尾がセイヴァーに直撃して吹き飛ばされてしまう。
「ダメだ……! 押しきれない!!」
「ええい!! 今はお前に構っている暇はないのだテイルセイヴァーとやら!! 俺はあそこにいる究極のツインテールを回収せねばならん!! アルティロイド!!」
リザドギルティはアルティロイド達を呼び出し、一斉にセイヴァーへと向かわせて行き、セイヴァーは迷うことなくアルティロイド達を迎え撃つが……その隙にリザドギルティはあの少女の元へと向かってしまっていた。
少女の元へと向かったリザドギルティは少女に光線を放ち、少女はどうにか光線を回避するものの中々反撃することができずなかった。
「あぁ、良い。 光線の輝きと共に空を舞うツインテール。 今、俺は神話世界の楽園に迷い込んだ錯覚を覚えたぞ!!」
「本当に錯覚だ気持ち悪い!!」
「はぁ、はぁ……ツインテール……」
「ひい!?」
両手を突き出してまるでゾンビのように少女に近寄ってくるリザドギルティに少女は小さな悲鳴をあげ、その場に尻餅をついてしまった。
「そのツインテールを親指と人差し指で軽くつまんで俺の頬をペチペチ叩いてくれぬか……!」
「きゃー!!」
少女は慌ててリザドギルティにアッパーカットを決めて殴り飛ばしたが……尚もリザドギルティは立ち上がって「はぁ、はぁ……ツインテール」と呟きながら少女へと迫ろうとする。
(なんだよこいつ、逃げても逃げても追ってきてキモい……しつこい!! 大体、バカの1つ覚えみたいにツインテールツインテールって……どんだけツインテール好きの変態……ハッ!)
そこで少女はあることに気がついた。
このリザドギルティはまるで自分と同じなのだということに。
彼女自身もツインテールが大好きであり、愛している。
そのため自分がツインテールについて熱く語った時、あるいはその相手がツインテールを知らなくてもどういったものか知った時、決まって誰もが自分を不審な目で見てきた。
好きな髪型を主張してなにが悪い、いつも彼女はそう思っていたのだが……。
(みんなの目には、こんな風に映っていたのか……。 見るに耐えない。 なにも知らない人から見れば俺もこんな奴等と同類なんだ……!!)
彼女は頭を抱えてその場に蹲ってしまい、リザドギルティはそんな様子の彼女を見て首を傾げて声を掛けようとしてきたがそれよりも早くアルティロイドを全て倒し終えたセイヴァーの跳び蹴りがリザドギルティへと叩き込まれた。
「セイハーーーーーー!!!!」
「ぐおっ!?」
セイヴァーは地面に着地すると少女の元に駆け寄り、一体蹲ったりしてどうしたのかと問いかける。
「う、うぅ……。 俺も、一緒なんだよあいつと。 俺はツインテールが好きだ。 好きな髪型を主張してなにが悪い……そう思ってた。 でも、俺もあの怪物と同じように気持ち悪い奴だったんだなって思うと……うぅ……」
「……まさか……」
この言葉を聞いたセイヴァーはこの少女の正体がなんとなく分かった気がした。
よく見れば右腕にトゥアールが総二に渡していたものと同じ赤いブレスレットをつけているし、さらに先ほどの彼女の言動とツインテールが好きだという言葉……ここから導き出される答えは1つ。
この少女の正体は同じクラスの観束 総二でほぼ間違いないという答えに……。
(でもまだ確信はないけど……十分可能性はあるよね。 僕自身女の子になってるし)
セイヴァーは少女の肩に手を「ポン」と置き、彼女に微笑みかけた。
「本当に同じだと思う?」
「えっ……?」
「僕もツインテールは好きだよ。 まあ、ヒーロー物の方が好きなんだけどね。 でも、どっちにしたってそれを関する物を無理やり奪うような真似はしたくない。 無理やり奪うことが愛してるってことなんじゃない。 大切にしてるってことが本当に愛してるってことじゃないのかな? 君は……ツインテールを誰かから無理やり奪ったりしないだろう?」
セイヴァーの言葉を受けて少女は黙り込み……顔を俯かせる。
その時、少女の方にもセイヴァーと同じように誰かからか通信が入ってきた。
『そーじ!! 気を確かに持って!!』
それは観束 総二の幼馴染である津辺 愛香だったのだ。
つまり、セイヴァーのこの少女が総二であるという予想は見事に当たっており、愛香は少女……総二に対して言葉をかけた。
『あんだけ大口叩いておいてアンタのツインテール愛はそんなもん!!? ここでなにもできなかったら本当にそいつ等と同じになっちゃうわよ!! やる時はちゃんとやりなさい!! リボンよ、リボン型パーツを触って武器を思い浮かべるの……! ってトゥアールが言ってるわ!!』
ちなみにそのトゥアールは愛香と色々あったせいで「トゥアールが言ってる」というよりも「トゥアールが逝ってる」状態だったりするのだが……。
『お願いそいつらを倒してそーじはそいつ等と違うってこと証明してみせて!! 今、そいつ等を倒せるのはそーじだけなんだから!!』
セイヴァーも一応いるのだが愛香にとって眼中にはなかったらしい。
そして……少女……総二はというとセイヴァーと愛香の言葉を受けて笑みを零し、再び立ち上がり、満面の笑顔を少女は見せるのだった。
「ははっ、そっか……そうだよなぁ。 サンキュー! 愛香!」
(あっ、愛香さんもフォロー入れてくれたみたい……)
『きゃああ!! 万面笑顔のあの幼女超可愛いいいいいいいいいいい!!!!!』
奈々がそんなことを叫んでいるのが通信越しで聞こえてくるが、セイヴァーは呆れつつもこの平常運航な奈々のおかげでどこか安心して落ち着いて戦えるので、セイヴァーも彼女には感謝しており、小さくセイヴァーは奈々に「ありがと」と呟いた。
『えっ? なにか言いました?』
「いや、なんにも。 ところでリョーガさん、なにか武器はないんですか?」
『あるよ、頭のリボン型パーツを触れてみてくれたまえ。 武器の名前も頭に思い浮かぶ筈だから出す時はその武器の名前を叫んでくれ。 そうしないと出てこない』
セイヴァーは言われた通り、頭のリボン型パーツを手に触れると三角定規を細長くしたような2つの剣が出現する。
「ブレイクソード!! アロー&スパークモード!!」
『アローとスパークってダブルベクターですか』
『名前はそれから取ったからね』
同じく少女もリボン型のパーツに触れるとそこから炎が飛び出してそれが巨大な剣……「ブレイザーブレイド」となり、少女はブレイザーブレイドをその手に握る。
(おかげで目が覚めた。 そうだ、愛香の言うとおり、このままじゃ本当にあいつ等と同類だ。 でも違う! 俺はツインテールの子をこんな辛い目にあわせたりしない!! ましてはあの子たちからツインテールを奪って自分の物にするなんて……絶対にしない!!)
少女とセイヴァーは2人並び立ち、2人はブレイクソードとブレイザーブレイドを構える。
「お望み通りペチっとしてやるぜ!! 顔出せ!」
「フン、猪口才な!!」
リザドギルティは右手から光線を放つがそれは少女に直撃する前にかき消されてしまい、そのことにリザドギルティは驚きを隠せないでいた。
「我が攻撃を容易に弾くとは……セイヴァー同様恐るべき敵! 我はアルティメギルの切り込み隊長リザドギルティ!! 少女が人形を抱く姿こそ男子は心ときめくという信念の元に戦う者よ!! 改めて貴様等の名を聞こう!!」
「俺は……テイルレッドだ!!」
「じゃあ改めて名乗るよ。 僕は、テイルセイヴァー……。 ここからは、僕達のステージだ!!」
挿入歌「レッドブレイバー」
少女……「テイルレッド」はブレイザーブレイドを掲げあげて空中へと飛び上がり、リザドギルティは攻撃が来る前に回避しようとするが……。
「逃がすかぁ!!」
目にも止まらないスピードでリザドギルティのすぐ近くまで接近し、ブレイクソードでX字に斬りつける。
「ぐっ!!」
「ラア!!」
さらにそこでレッドが振りかざしたブレイザーブレイドがリザドギルティを斬りつけようとするがリザドギルティは間一髪攻撃をどうにか回避した。
「まっ、そんな気味悪い信念掲げる奴に名前覚えられたくねえけど!」
「ツインテールの信念ならば貴様にも同じく宿っていよう!?」
そんなリザドギルティの言葉に「一緒にすんな!!」とレッドは否定する。
「一目瞭然よ!! ツインテール愛がなくばそこまでの輝きは放てぬ」
「よく分かってんじゃねえか……だったら……」
「そう、我等にとってツインテールとは……奪うことこそが愛!!」
しかし、レッドとセイヴァーは2人同時に「違う!!」とリザドギルティに対して言い放つ。
「無理やり奪うことが愛な訳がないだろう!! 大切なものは……大切だと想って守ることが愛してるってことじゃないのか!?」
「それにだ!! ツインテールは……愛でてこそ輝くもんだってことも知りやがれ!!」
レッドは飛んでくるリザドギルティのヒレを弾きながらリザドギルティに接近し、一気に距離を詰めて行く。
「ってわわ!? 素手じゃないとこの攻撃はちょっと防ぎ辛い……!!」
『光くん!! オーラピラーというものをリザドギルティに向かって放ちたまえ!!』
「っ、了解……!! オーラピラーッ!!」
セイヴァーは右腕をリザドギルティに向かって突き出し、右腕から光線が放たれ……その光線がリザドギルティに直撃するとリザドギルティの動きが封じられる。
「ぬおおお!? 動けぬ!!」
「ブレイクソード!! ブレイカーモード!!」
「「完全解放(ブレイクレリーズ)!!」」
レッドはブレイザーブレイドの形状を変化させ刀身から炎を吹き出させて長さを2倍にした状態で上から振り下ろす「グランドブレイザー」を。
セイヴァーはブレイクソードを左右対称に合体させ、刀身を輝かせて相手をすれ違いざまに切り裂く「ブレイクセイヴァー」をリザドギルティへと繰り出した。
「グランド……ブレイザー!!!!!!」
「ブレイクセイヴァー!!!!!」
「ぬううう、ぐおおおおおおおおおお!!!!!?」
レッドとセイヴァーに切り裂かれたリザドギルティは悲鳴をあげ、身体中から火花を散らし始める。
「ふ……ふははは!! 素晴らしい究極のツインテール属性の前に果てる……。 なんの悔いがあろうか男子本壊の極み。 今日この日は未来永劫忘れぬであろう! そうだ記念写真を頼む。 どうせならばテイルセイヴァーも一緒に。 こう俺の肩にこてんっと頭を預けて……そうそう」
「お、おいちょっ……」
「ありがとう……さらばだ」
それだけを言い残すとリザドギルティはテイルレッドとテイルセイヴァーと一緒に記念写真を撮ったという妄想を浮かべながら倒れ爆発四散したのだった。
「勝手な幻想見て消えるなああああああああ!!!!!?」
「はは……。 っと、取りあえず、アレを破壊すればいいんですよねリョーガさん?」
『あぁ、バーンっとやってくれたまえ』
セイヴァーはブレイカーモードのブレイクソードを一振りしてその場に残っていたリングを破壊するとリングによって奪われたツインテールは元の女の子達の元へと返って行き、それを見て安心したセイヴァーとレッドはそのまま立ち去ろうとしたのだが……。
「あの……」
その時、聞き覚えのある声が聞こえて後ろを振り返るとそこには慧理那が立っており、彼女はセイヴァーとレッドに「助けていただき、ありがとうございました」とお礼を述べてきたのだ。
「い、いや、俺達……私たちはたまたま通りすがっただけで……」
「いえ、その……途中で目を覚ましてましたの」
「うぉう、もうダメだ。 誤魔化せないよ、レッド」
レッドは「ヤバい、完全に寝てるもんだと……」と思っていたらしいが、セイヴァーは特に気にした様子はなく、むしろ元気な慧理那の姿を見て心底安心したかのような表情を浮かべていた。
「良かったぁ、なんともなくて」
「えぇ、おかげさまで……。 それにしてもお2人ともまだ小さいのに本当に勇敢で強くて、感動いたしましたわ。 あの! また、お会いできますか……?」
そう尋ねられたレッドは、ニコっと笑顔を浮かべる。
「あなたが、ツインテールを愛する限り……」
レッドのその言葉を受けて慧理那は一瞬困り気味な表情を見せ、レッドは「アレ? 外したかな」と少し不安になったが……その時、「お譲様ーーーーーー!!!!」と慧理那に仕えているメイド達がこちらに向かって走ってくるのが見え、レッドとセイヴァーはすぐさま立ち去って行った。
(一応、総二さんに僕の正体は明かした方がいいかと思ったけど……先ずは奈々達のところに戻ろう)
そしてセイヴァーはレッドに断りを入れてから奈々とリョーガの元へと戻り、他に人目がないのを確認した後、セイヴァーは変身を解除し光の姿へと戻るのだった。
「はぁ……」
「っと、光」
倒れそうになった光を奈々が支え、奈々は光に「お疲れ様でした」と労いの言葉を送った。
*
(……んっ、アレ? 何時の間に眠ってたのかな……僕)
光は薄らと目を覚まし、なにか後頭部に柔らかい感触があることに気づき、段々と頭を覚醒させていく。
(なんか、気持ちいいな……この枕……)
そしてやっとのことでボヤけた視界をハッキリさせて光は目を覚ますとそこには慈愛に満ちた笑みでこちらを見つめながら自分の頭を撫でる奈々の姿があり、光は顔を真っ赤にして飛び起きた。
「わっ、わわわ!? わーーーー!!!?」
「もう、そんなに驚くことないじゃないですか、光……。 昔はよくやってあげてたんですから」
「い、いや……でも!!」
「はっはっは!! いやー、若いっていいねぇ」
聞き覚えのある声が後ろから聞こえ、光は後ろを振り返るとそこにはリョーガが面白そうにこちらを見つめており、リョーガを見て「やっぱり夢じゃなかったんだな……」と改めて今日起こったことの出来事を信じざる得なかった。
「でっ……ここは……僕の家か。 兄さんは?」
「龍夜さんなら下の階で仕事してますよ。 一応リョーガさんのことはどうにか誤魔化して入らせて頂きましたが」
「そっか……。 それで……リョーガさん、説明してくれますか? あの怪物達は、僕が変身した姿のこと」
リョーガはあっさりと「いいよ」と答え、先ずはあの怪物……「エレメリアン」についてである。
あの怪物達の名は「エレメリアン」、そのエレメリアン達が結成した組織こそが「アルティメギル」と呼ばれるものであり、アルティメギル幾つもの世界を蹂躙した挙句この世界に乗り込んできたのだという。
その狙いは「エレメーラ」と呼ばれる人間の持つ「属性力」を奪うためだというのだ。
「属性力」とは人の心の中にあるなにかを愛する力であり、例えばツインテールに対する愛情が精神エネルギーとして凝縮したものを「ツインテール属性」と呼ぶとしよう。
「属性力」は誰もが持つ心の拠り所であり、彼等はそれを糧として生きる精神生命体……簡単にいえば「属性力を食べて生きる」者達である。
その中でも特にアルティメギルが狙っているのが「最強」と謳われるツインテール属性でああるのだという。
しかし、愛する力と言うのならば家族愛や友情といったものを普通は狙ってくるのではないかと思われるだろうが……それらはある程度の知的生命体にとっては本能であり誰にでもある普遍的な愛であるため、そういったものは狙われないのだというのだ。
「ちなみにテイルレッドが装着していたスーツはテイルギアと呼ばれるものでね。 あれは相当なツインテール属性がなければ使えない代物なんだな」
「じゃあ、僕にも協力なツインテール属性があるってことですか?」
「いいや、確かに君にもツインテール属性はあるようだがそれほどじゃないね。 まあ、その辺については後で説明しよう。 先ずはアルティメギルと私についてからだ」
そしてリョーガはそのアルティメギルによって滅ぼされた世界から来たらしく、その世界では殆どの人間がその属性力を奪いつくされ、無気力となり、俯瞰すればなに1つ変わっていないのかもしれないが……残されたのは心の希望も潤いもない寂しい世界へと成り果ててしまったのだというのだ。
「まあ、私は属性力は奪われてはいないのだがね」
「……リョーガさんはその……辛く、ないんですか?」
自分の世界がアルティメギルによって滅ぼされたという割にはあまり気にしていないようにも見える。
だから光はそんな質問をしてしまったのだが……リョーガは「さあねぇ」と受け流されてしまった。
「話は戻すが、先ほども言ったように属性力を奪われた人間は24時間を過ぎればもう元に戻ることはできない。 そして君が装着したあのスーツについてだが……あのスーツはトゥアールという科学者が制作した『テイルギア』を元に作っているんだよ。 ちなみに光くんが装着してるのは『テイルアーマー』だ」
「テイルギアに、テイルアーマー……」
元々、テイルギア自体そのトゥアールという女性科学者と共同で開発したシステムであり、リョーガはそれを自分がさらに改良したものがテイルチェンジャーなのだと光と奈々に説明する。
また、テイルギアは強いツインテール属性を持つ者でなければ使うことはできないのだがテイルアーマーは「ほんの少しでもツインテール属性があればテイルギアと同等の力を発揮する」というお手軽性のシステムとなっているという。
「そしてこれがテイルアーマーのスペックだ。 と言ってもさほどテイルギアと違いはないがね」
リョーガがポケットから取り出した折紙を広げると折り目が消えた液晶端末へと変形し、そのオーバーテクノロジーな端末を見て光達は「おぉ!」と声をあげた。
『以下 テイルアーマーについてのスペック。
テイルアーマー
ツインテール属性を核として装着者の属性力と共鳴し生成される対エレメリアン用強化武装。
地上のみならず深海や宇宙空間でも変わりなく運用出来る。
フォトンサークル
首に覆うパーツ。
認識攪乱(イマジンチャフ)を展開する。
フォースリヴォン
髪飾り型デバイスで装着者の属性力の高まりに呼応して武器を生成する。
フォトンヴェイル
全身を覆う、テイルアーマーの構成素材である極軟性金属。
ダイヤモンドの80倍の硬度を誇りながらも衣と同じように身軽に動ける。
スピリティカフィンガー
握力を強化するグローブ、パンチ力は100トン以上となる。
スピリティカレッグ
膝下から足首まで覆うパーツ、キック力は150トン以上。
テイルチェンジャー
普段は手首に装着されており、変身後はテイルチェンジャーの出力安定装置となる。
基地のメインコンピュータと連動し、稼働状況を0・001秒のタイムラグ無しで伝送する。
属性玉変換機構(エレメンタリーション)
左腕パーツにジョイントした属性玉(エレメリアンを倒した時に出てくる宝石のようなもの)の力を引き出す特殊装備。
変換された属性玉の力は実体化してテイルアーマー各部に装填される。
エクセリオンブースト
属性力を収束・開放する増幅装置。
エクセリオンショウツ
トイレに行きたくなっても、素早く吸収し分子分解し、大気に拡散してくれる機能。
フォトンアブソーバー
テイルギアを取り巻く精神エネルギーの防護膜』
「エクセリオンショウツの説明は見たくなかった……」
「ですねぇ……。 というかパンチ力とか何気に歴代最強スペックと謳われるアルティメットクウガを凌駕してるんですけど」
「まあ、それよりもだ。 大体の説明はこのくらいかな。 ちなみにテイルギアとスペックは殆ど同じだが……テイルアーマーにしかない機能もあったりするよ。 なにか質問はあるかい?」
そう聞かれてしばらく考え込んだ後、奈々が手をあげてリョーガに質問を投げかけた。
「あの、テイルアーマーやテイルギアを使うにあたってなにかリスクってありますか?」
「うーん、いや、特にはないとは思う。 強いて言うならばこれから命がけの戦うことになってしまうということだが……どうする? 光くん? 引き返すなら今だよ」
しかし、光は首を横に振った。
「相手は怪物……でも、怪物とはいえ僕は今日、彼を『殺した』……。 でも、だからって戦う力があるのにこの世界の人たちを見捨てるような真似はできない。 戦うことが罪なら、僕が背負ってやる……」
光は自分の右手を見ながらそう呟き、奈々は心配そうに彼を見つめつつ、光の右手を優しく握り締めた。
「光……辛くなった時は、存分に私に甘えてください」
「……奈々、ありがとう……」
そこで光の部屋の扉がノックされ、光は一瞬ビクッとなったがすぐに兄が来たのだと思い、部屋の扉を開ける。
「あっ、に、兄さん……どうしたの?」
扉を開けるとそこには光の兄であり、温和そうな顔つきとは違い、凛々しいというイメージがあいそうな顔つきをした光の兄……「風上(かざかみ)龍夜(りゅうや)」が立っており、龍夜は光を退かせるとリョーガの元まで歩み寄る。
「今さっき、怪物が暴れてその怪物と女の子2人が戦ったっていいうニュースが流されてたんだけど……そのニュースの女の子って……光、なのか……? それとも奈々か?」
「に、兄さん聞いてたの……!?」
「あぁ……悪いな、盗み聞きして。 まあ、どっちにしてもだ」
龍夜はリョーガを見下ろすとなぜかリョーガに向かって「ニコッ」と笑顔を向け、リョーガも頭に疑問符を浮かべつつ笑顔を浮かべると……。
龍夜にリョーガは後頭部を「ガシッ」と掴まれると思いっきりリョーガを床に叩きつけた。
「俺の弟とその幼馴染をなに危険な目にあわせてくれてんだてめえはあああああああああ!!!!!!?」
「ぐばああああああああああ!!!!!?」
尚、床に叩きつけられたリョーガは床に顔がめり込んでおり、光は冷や汗をかき、奈々は特に慌てる様子なくそっとリョーガに耳打ちした。
「リョーガさんリョーガさん……、光のお兄さんの龍夜さんは……ブラコンです」
「それを……早く言って、くれたまえ……ごふっ……」
「ってか……僕の部屋の床……」
「後で直す!!」