↑月Θ日
珍しくソロの防衛任務に就いた。偶然誰もが都合が悪く合わなかったらしい。こういう時はだいたい迅と組むのだが、迅は反対方向の地区担当でソロ任務だとか。臨時オペレーターの方がいるので情報面は問題ない。あとは私の実力。
任務時間になると私は早速担当地区に罠を仕掛けに行った。今回の防衛任務は数の有利がないので、多数の箇所に出現されると処理が追いつかないかもしれないのだ。なので足止めや時間稼ぎ、欲を言えば仕留められるような罠を設置していく。起爆や発動のタイミングはスパイダーを導線代わりに待機場所まで引っ張ってくる。
ゲートの発生は警報サイレンから5~10秒以内に警戒区域に誘導されて出現のタイミングは事前にオペレーターから教えられる。担当区域全体を見渡せるビルの地点は調査済みで、入念にトラップも設置した。
準備万端となったところで警報。誘導されてゲートから半身を出した瞬間にイーグレットで撃ち抜く。沈黙。
射程と威力を備えたイーグレットで対処できるうちはトラップを節約しなくては。発生と沈黙を淡々と繰り返す。
何度か同時出現があってトラップを発動させたが、トリオン残量も余裕がある。防衛任務時間は5時間。平均的なトリオンの持ち主は2,3時間でトリオン切れを起こすのでこんなに長時間のソロ任務は与えられない。チームだと普通だけどね。
私も平均より多めのトリオン量を持っているがソロで長時間任務は初めてだ。配分が不明なので節約を心がける。こういう時はスパイダーなどのトリオン消費が少ないトリガーがあると便利だ。節約の為にバックワームも解除しているのが不安だったが、こちらへ来る前に仕留めることが出来たので問題ない。
トリオンに余裕を持って任務を完了することが出来た。今日だけで1週間分の給料を確保出来たと思う。交代時間になったので張り巡らしていた罠を解除して本部へ戻ると、すぐに臨時オペレーターの方と一緒に報告書を作成。
特に変わったトリオン兵もいなかったので難しくはないが、なんせ今日は数が多くて時間がかかった。完成する頃には集中力が切れて机に突っ伏していた。
いつの間にか迅がいてコーヒーとチョコレートをご馳走してくれたのでなんとか復活して帰宅。今にして思えばなんで本部にいたんだアイツ。
↑月Θ日
今日も今日とてソロ任務。なんか任務時間を伸ばされててびっくりした。1時間延長かそうか……慣れによる油断が一番の敵かもしれない。
罠を設置する作業を終えて待機。オペレーターみたいに端末に位置情報を入力してパッと罠を設置してボタン1つで発動出来ればいいのに。ああ、でも現場でちゃんと細工しないとスパイダートラップはバレやすいかも。なら、スパイダートラップとは別の簡易だけど効果的なトラップがいいのか。今度円城寺さんに相談してみようかな。
イーグレットでバンバン連射してたらゲートの誘導が狂って狙撃ポイントの背後に出現した。超近い。
思い返すと心臓がバクバクするけどその時は集中してハイになってたのか焦ることなくアステロイドとメテオラで吹っ飛ばして狙撃で仕留めた。
すぐに次のポイントへ移動して狙撃体勢へ戻った私に臨時オペレーターさんがびっくりしていた。私自身も客観的に見てびっくりしているよ。
その集中の分、任務が終了するとスイッチが切れたようにぐったりするんですけどね。
γ月↑日
今日も今日とて(以下略
さすがにこうも頻繁にソロ任務があると疑問に思う。しかもだんだん任務時間が延長されていく鬼畜仕様。おかげで日記を書く気力もわかなかった。
どういうことだろうと考えていると本部長から呼び出し。何事かと緊張して向かうと、A級昇格について打診された。
通常A級入りにはチームを組み、ランク戦で勝ち上がる必要がある。しかし私はいまだにソロなのでその方法は出来ない。チームを組む予定も今のところない。そんなわけでA級昇格なんて寝耳に水。
どうやら今までのソロ任務は昇格の為に実績を積ませる為だったらしい。ソロで精鋭の名に相応しいと周囲に認められる為の実績。司令も他の幹部も、A級の主な部隊からも"昇格を認める"承認書を忍田本部長から見せられて、思わず忍田本部長の傍らに控えていた沢村さんを見ると「さすが元沢村隊の第2の頭脳」と笑顔で親指を立てられた。
「突発のチーム編成でも対応でき、既存のチーム連携を崩さずにサポート出来る力量。肝心のソロでの攻防も今回証明した。A級と名乗るのは十分だ」
と忍田本部長にべた褒めされた。これからもソロを続けても良いがチームを組むことも期待している、とも言われた。
最初は現実味を帯びなくて、でも本部を歩いてると色んな人から「ソロA級昇格おめでとう」と祝われて心がフワフワした。
そのままの勢いで狙撃訓練場でイーグレットを撃つと見事にホームランして落ち込んだ。調子に乗るとアカン。
γ月↑日
鬼畜仕様ソロ任務はなくなった。でもまたいつ入るのか不明なので戦々恐々としている。
さて、今日は私の誕生日だ。電話で家族からお祝いの言葉を貰ったので私もサプライズでまたA級隊員になったことを報告しといた。チームではなくソロで認められたことをいかに凄いか語った。知人・友人だと恥ずかしいけど家族になら自慢しても罰は当たらないよね!?
ちなみにソロA級隊員は大侵攻の前から在籍している隊員(主に玉狛支部所属)がそうだ。実力は雲泥の差だけど、仲間入り出来たことが嬉しい。あと、A級固定給+出来高(撃退数)のお給金を貰ったことが「そうか、A級になったんだなあ」と一番実感してしまった。
今年も迅が玉狛支部に招待してくれたのでそれに甘えた。誕生日と昇格を一緒にお祝いしてくれて嬉しかった。
迅から文房具のマーカーセットを貰った。インクが切れる頃だったのでちょうど良かったです。桐絵ちゃんからは紅椿の装飾が付いたヘアゴムを貰ったのでさっそく三つ編みの先に付けてもらった。学校では規則で付けられないが、休日やボーダーへは付けて行こうと思う。今年の木崎さん作ケーキはイチゴのショートケーキで、生クリームのデコレーションが完璧でした。女子力高い。
陽太郎くんに謝った。誕生日が先月だったのだが私に余裕がなくてすっかり忘れていたのだ。少しだけ拗ねていた陽太郎くんだが、謝ると駅前のどら焼きで手を打ってくれた。
γ月↑日
トラップ関連のトリガーを試運転してきた。
以前、ソロ任務の時に円城寺さんへ相談した内容が開発室で話題になり、実践段階までになったらしい。
ボタン一つで、という要望からトリガーを発動させるとPC型の端末が現れる。ただ問題なのはこの端末は情報をフルに詰め込んでいるせいでホルダーのサブ枠を全部潰してしまうことだ。端末自体もトリオンの消費が大きく、トラップを起動させるのもトリオンを消費する。
この段階だと私の戦闘スタイルと合わせることは難しく、枠とトリオンの消費を軽減してもらわないと実戦ではキツい。情報はオペレーターと連携すれば端末に詰め込まなくても良いだろうし、トラップも一瞬の隙を作れるくらいの簡単な物で良いと要望は出しておいた。
γ月↑日
魚が食べたい! という強い想いから回転寿司屋に行ってきた。だって安いし。
夕方に寿司屋さんへ向かっていると影浦くんを見つけたので声を掛けると、気づかなかったけどその隣にキャップ帽の男子とツンツン頭の男子もいた。
ツンツン頭の男子は狙撃訓練場で見たことがあるし、特別訓練で組んだことがあった穂苅くんだ。
キャップ帽の男子は荒船くんというらしい。同じボーダー所属で同い年みたいなので話が合うようだ。
ちょっと迷ったがそれが影浦くんに伝わって急かされたので、回転寿司屋さんにお誘いした。A級昇格したし奢ってやんよぉ!
3人をゲットしてお寿司屋さんへ。ぐるぐる回ってくる寿司皿を取ってもぐもぐしてると穂苅くんが「荒船と組みました。チームを」と報告されたのでおめでとうと言った。
荒船くんはアタッカーで既にB級なんだとか。アクションが好きでどうせならトリガーを全部使ってみたいと説明されたので「木崎さんみたいな完璧万能手でも目指す?」と言ってみたら木崎さんについてめっちゃ訊かれた。
影浦くんは北添くんとチームを組む予定だがまだオペレーターが見つかっていないのだそう。影浦くんに物怖じせずズバズバ指示を出せるオペレーターかぁ。私が知る限り円城寺さんくらいだけど、もうエンジニアだし今後中央オペレーター研修が終わった新人オペレーターたちに期待しよう。
イクラ・縁側・サーモン・マグロ・カンパチ・押し寿司etcと満足するまで食べて最後にデザートの杏仁豆腐でしめてお茶を呑む。
男子高校生の胃袋って凄いなぁ。途中から大食い選手権のように応援してしまったら3人に笑われた。
女子会も楽しいけど、男子と行くのも食べっぷりを見てスッキリするよ。まぁその分お財布もスッキリしたが、たまには社会に金銭を還元しないとね。忙しくて最近ショッピングにも行ってないし、良い機会だったよ。
八神のソロA級昇格について。
個人での実力評価も含まれていますが、広範囲の防衛を可能にしている点が大きく評価されています。
周囲との軋轢も少なく、臨時での集団指揮能力も発揮しているので、目に見える形で八神を暫定ではなく臨時でも隊長として据えられる環境に上層部が配慮しました。
実質的な攻撃力・突破力はかなり劣りますが、防衛については文句無し。優秀な人材を逃がさない為にも昇格させた、という感じです