三門市に引っ越しました   作:ライト/メモ

20 / 92
÷月

 

 

÷月×日

 

 

 いつも通り、学校行って、ボーダーで訓練&任務をこなして帰宅して夜ご飯を食べてお風呂に入ってゆっくりしてた。

 

 チャイムが鳴ってこんな夜遅くに誰だと不審に思いながら誰何すると、迅だった。頭を抱えて顔色の悪そうな迅に慌ててドアを開けて玄関に招き入れた。

 

 ギュッと眉間にシワを寄せてかつてない程のしかめっ面の迅に抱きしめられて一瞬思考が停止したけど「ごめん、ごめん」と涙ながらに謝られてなんとなく察した。また良くない未来を見てしまったのだろう。

 私はここにいるぞーとこちらも抱きしめ返した。しばらくそうしてたけど、なかなか落ち着きそうになかったので手を引いて玄関から部屋へ移動してベッドに座らせた。

 

 お茶でも淹れようと離れるとアヒルの仔みたいに着いてきて苦笑した。どこにも行かないし今日は泊まって行けと言い渡して風呂へ追いやった。ダボダボの部屋着が上はあるし下もジャージがある。丈が短いかもしれないが毛布被れば寒くないでしょ。

 

 とりあえず風呂から出てきたら飯食ったか尋ねて、食べてなかったらてきとうになんか作ってからそのまま寝ますかね。

 

 

 

÷月×日

 

 

 めっちゃしかめっ面で「死ぬな八神」だと。どんなシチュエーションの夢見てるんだ。

 朝はしっかりと抱きしめられて身動き出来ず、なんか物騒な夢を見ている迅を軽く揺すったが起きなかった。

 一応頭を撫でるとしかめっ面が緩んだ。良く見ると迅の目の下には隈があって、ここ最近きちんと眠れてないらしかった。

 

 しかし正午近くまでベッドに拘束されるとは思わなかったがな。いや、私もゴロゴロするの好きだけどボーダーに所属してからは規則正しい生活してたから久々だったよ。

 

 ようやく目覚めた迅が抱き枕状態の私を見た途端に、ボロリとまた涙して焦った。ギュッと抱きしめてヨシヨシと頭を撫で続けて、やっと泣き止んだ時は本当にホッとした。

 

 泣いてぼーっとしてる迅を置いてとりあえずご飯を用意する。味噌汁の為の出汁を取っているとやっと迅が動き出して、味噌汁って偉大だと思いました。

 ほぅ…って味噌汁の味に心が落ち着いたらしい迅にこちらも安堵。いったいどんな悪い未来を視たのか気になるところだが、迅が言わないのなら私も聞かない。また情緒不安定も困るし。

 

 私は1日オフだし、迅も夜に任務が入っているらしいので家でこのままのんびりすることにした。迅はたまに「八神」と呼んできたので都度返事をすると目を伏せて何か考え込んだ。しかし何度も不安そうに呼ばれるとこちらだってモヤモヤする。なので思い切って言った。

 

 「どんな未来でも迅が楽なのでいいじゃん。聖人君子なんて似合わないし、人間なんだし自分の得になるのを選びなよ。自分の力なら自分の為に使いなよ」と。

 

 ぶっちゃけ過ぎたし、私の人間性がそのまま出た言葉だ。このまま迅が幻滅して親友を辞められたら悲しいけど、情緒不安定なままの迅も嫌だったから。

 

 迅は少しだけ口角を上げて「……そうだね。じゃあ、そうする」と言った。多少持ち直したか、と思ったら夜食の弁当をいつもの声音で要求された。回復早いな、と呆れながらもちゃんと弁当を用意して見送った。偉いぞ私。

 

 

 

÷月×日

 

 

 狙撃訓練をしているとエンジニアの冬島さんがやってきた。歯切れ悪く口ごもる冬島さんに首を傾げてたら、冬島さんの背中に隠れていた真木ちゃんがずいっと前に出てきて用件を伝えてきた。チームの勧誘だった。

 

 真木ちゃん曰わく、実力者をソロのままで放っておくのはもったいない。このままソロでせっかくの戦術を錆び付かせるくらいなら自分たちの隊に加入してほしい。あなたなら戦闘員ではない冬島さんが居ても問題ないでしょうから。

 

 怒涛の勢いで言われたのできっちり覚えてるわけじゃないけど、意味合いはこんな感じ。今までもチーム勧誘はあったけど、こんなに熱く勧誘されたのは初めてだった。なんやかんやと、A級ソロになったせいでチームに入るタイミングを逃してたからなぁ。

 

 真木ちゃんの熱い勧誘とエンジニアから新しいポジションの工作兵トラッパーに転属した冬島さんに頭を下げられて、私は冬島隊へ加入を決めた。

 

 もう1人の勧誘も真木ちゃんの言葉で決まった。なんとリーゼントの人ならぬ当真くんだった。見た目が特徴的なだけで性格はあっけらかんとしたものだ。

 

 スナイパー2人にトラッパー1人という偏った編成。ポジションバランスは悪いが冬島さんと真木ちゃんは今のところ目を付けた前衛はいないので保留となった。

 

 今日は隊の結成を書類に纏めて、ラウンジで戦略について話し合うだけだった。トラッパーの冬島さんのトリガーは以前私が提案したトラップ発動用の端末だった。相変わらず枠の占領が多く、オペレーターとの連携を取り入れて多少改善されていても3つは枠を取る。その為戦闘用のトリガーを捨てて隠密とサポート用のトリガーを入れることになる。

 

 私と当真くんの狙撃で敵を撃ち、スナイパーの基本である"撃ったら移動"をトラッパーのトリガーで補助し、スナイパーの機動力を底上げする方針だ。

 また、私の罠設置にも協力出来るし設定を弄れば冬島さんから発動も出来るようになるはずだとか。

 

 まだ合わせてもいないから机上の理論だけど実現してかっちりハマればほとんどの隊を圧倒出来ると思う。当真くんは考えることが苦手らしいので戦略面は他に任せてくれるとのこと。

 

 久しぶりの正式チームに今からドキドキしてる。

 

 

 

÷月×日

 

 

 沢村隊の時とも即席のチームとも違う冬島隊の連携。攻撃の要は正確さのある当真くんだ。悔しいことに私はたまにcm単位でズレちゃうから。

 けれど、冬島隊長の補助で移動スピードが上がり、狙撃ポイントに素早く到達して狙撃体勢を調える余裕が十二分に出来たことは大きい。

 

 学校に行くと迅にチームを組んだことを報告した。迅から「頑張ってね」と激励(?)を貰ったので早速新チームでランク戦に挑戦した。

 

 B級下位ランク戦にて圧勝。接近戦に持ち込まず、更に狙撃手のあぶり出しからのスナイプ。

 

 危ない場面もなく、私と冬島隊長の罠を使うまでもなく勝てた。まぁ、今までにない尖った編成だしみんな戸惑いが大きかったのだろう。

 

 

 

÷月×日

 

 

 あっという間にB級中位のトップ。ここからはそう簡単には上がれない。

 

 次に対戦するチームで苦戦を強いられそうなのが影浦隊。アタッカーとガンナーしかいないチームだが、視線が"わかる"影浦くんは冬島隊のスタイルにとって天敵なのだ。

 倒す手段は持っているけど、無理して取りに行くこともない。影浦くん以外の隊員が楽というわけではないが、一番の要注意は影浦くんなのだ。影浦くんは徹底的に避けて他の取れる駒を取りに行こう。

 

 迅がやたらとくっついてくる。そろそろ暑くなってくるから遠慮したい。あれかな、私の手足が末端冷え症故に冷たいから涼をとりにきてるのかな?

 実家では雪女やら吸血鬼やらと言われていたのを思い出した。とりあえずくっつき虫と化した迅をどうにかしたい。

 

 

 

÷月×日

 

 

 運が悪かった。冬島隊長の転送先がアタッカー激戦区だったせいで開始3分で落とされたのだ。

 

 冬島隊は冬島隊長のトリガーでスナイパー性能を底上げする作戦を第一に考えている。戦闘が出来ないから落とされやすい駒だとは分かっているが、あまりにも早い段階で落とされたのは痛かった。

 せめて私が一角でも罠を張り終えるまで粘ってほしかったが、アタッカー激戦区なら仕方ないね。ちなみに落とされた時、真木ちゃんは的確に冬島隊長をボディーブローするかのような言葉を投げ、冬島隊長はしょんぼり、当真くんは「あちゃー」と笑っていた。

 

 とにかく早々に作戦を切り替えて、アタッカー激戦区に入っていない駒を取っていく。アタッカー激戦区に銃口を向けるには影浦隊の北添くんを先に落とさないと居場所がバレて奇襲されかねないから。

 メイン狙撃手は変わらず当真くんに任せ、私は罠を張りながら補助。冬島隊長がいないので撃ったら足で移動だ。移動経路は真木ちゃんが割り出してくれるし罠設置箇所も冬島隊長が指示をくれる。楽だなぁ、と漠然と考えたよ。

 

 北添くんを始めとしたアタッカー以外を排除した時、当真くんが焦りの声を上げた。どうやら影浦くんが目の前のアタッカーをスルーして当真くんを狙い始めたようだ。

 ポイントゲッターの当真くんが落とされるのは痛いので援護に向かい、わざと姿を見せて囮となる。シュータートリガーで牽制し時には即席の罠で注意を引くなどしながら一定の距離を保つ。

 影浦くんを追いかけて私に奇襲を仕掛けてくる他のアタッカーへの対処にも追われたが、その頃には私が事前に作っていた罠地区に誘い込めたのでなんとか凌げた。

 

 が、影浦くんがとある攻撃を行い、呆気なく私は落とされた。当真くんが他のアタッカーを狙撃するも、それより速く影浦くんの攻撃が刺さった。そしてタイムアップ。得点としては影浦隊と引き分けだ。

 

 その後ランク戦のログで見ていると冬島隊長が攻撃の正体はスコーピオンだと断言した。弧月のオプショントリガーみたいなものがスコーピオンにも開発されたのかと問えばそうではないらしい。

 影浦くんのスコーピオンは出水くんの合成弾と同じ原理だと云う。両手のスコーピオンを合体させて伸縮率を上げた。攻撃範囲は強度などを考えてもシューターやガンナーと同じくらいではないか、と。出水くんと言い当真くんと言い、年下組の才能マンが多すぎる。

 

 しかし武器の正体が判明したならば作戦を考えられる。幸い次のランク戦はシフトの関係上1週間後。それまでにしっかり組もう。

 

 

 




OPの真木理佐ちゃんについて。
公式でプロフィール以外判明していないので捏造です。出来るだけ会話を省いた描写にしておりますが、八神の所属隊の関係上登場は欠かせません。
名前だけを借りた捏造オリキャラにだんだんなると思います。
公式で登場したら会話や行動の描写を入れたい。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。