<月§日
遠征に行っている間にA級チームが増えていた。B級チームの頃に切磋琢磨してきたいくつかのチームがA級入りしていた。また油断禁物なランク戦になりそうだ。
そうそう。ランク戦に新しいシステムが出来た。ランク戦をモニターして実況&解説席を設けることにしたのだと。
A級やある程度実力のあるB級は観るだけでなんとなく解るけど、経験の浅い隊員には『何が何だかわからない』ということで、ボーダーの実力を底上げするべくシステムが導入されたらしい。
大々的に動いているのはオペレーターの武富ちゃんで面白い実況だった。スポーツ実況とかも得意そう。解説席に入るのは主に東さんで、手の空いてるA級やB級隊員が声を掛けられているようだ。
ただログを見るのと、どういう動きか理解しながら観るのとじゃあ全然違う。どんどん進化していくなぁ、と感心してしまった。
<月§日
迅とキス、しました。2回も。
最初は事故だった。うん、私のドジ。私が段差に気づかないで躓いて迅を押し倒して、唇が触れただけ。漫画かよぉ!
で、ドジと不意の接触に混乱してたら、頭を支えられてキスされた。情けなくもピキッと固まった私に迅は追加で爆弾。
「かわいい」って笑顔で言うな! しかもいつの間にか三つ編みが解かれて項から後頭部をソッと撫でられてゾクってした。で、また、キス。なんかエロいよバカ!
思い出すとまたゾクってする。迅こえーよ。学校であんな事故からのキスとか、もうね……ハレンチだ!
<月§日
迅と会うと唇に目が行ってしまう。気づいたアイツがにやぁっと笑うので、ムカつく。もう意識するな私!
残暑でまだまだ暑いし、迅のせいで度々体温が上がるしでどうにかならないものか。
お祭りデートに誘われた。ついでに浴衣までプレゼントされた。お祭りは嫌いではないし、そこまでされたら行くしかあるまい。
浴衣くらいなら自分で着れるけど、髪型はどうしようか。そういえば着ける機会をすっかり忘れてた1本挿し簪があったし、それでアップしてみようかな。
<月§日
綺麗だ、似合ってる。
開口一番の言葉に自然と笑顔になった。照れもあったけどオシャレして褒められると嬉しい。
履き慣れない足元を気にして歩みは遅くなってしまったけど、色々屋台を回って楽しんだ。屋台で買うと高いけど雰囲気でついつい買っちゃうよね。花火も見る予定だったからそれまで迅と遊び回った。ヨーヨー釣りとか射的とか的当てとか。
途中でクラスメートに見つかって冷やかしを受けて迅がキスしてこようとしてイチゴ飴を口に突っ込んでやったら笑われた。
クラスメートと別れたら嵐山隊がヒーローショーやってるのを見つけたり、影浦くんたち後輩に見つかって彼氏彼女の関係にビックリされたりした。
特に当真くんなんて「マジか。拡散しとこ」って言い出すものだから慌てて止めようとして迅に手を引っ張られてキス。「拡散よろしく」とどや顔する迅と、携帯を構えたままの後輩達。ナニコレ羞恥刑?
顔上げられなくて迅に抱きつくしかなかった。写真撮られるって分かってても赤い顔を撮られるよりマシだよ!
迅が「じゃ、デート中だから」とその場を離れてくれて助かった。いや、羞恥刑の原因はアイツだけどね。冬島隊のグループトークに写真投稿されてて軽く絶望した。明日会ったら殴る。
花火は玉狛支部の屋上で見た。大きな花火だし、水面にも反射して上も下も綺麗で見応えバッチリ。玉狛支部には私たち2人と林藤支部長と陽太郎くんの4人が花火を見ていた。
他の人は興味がなかったり、友人と屋台に行ったり、任務だったりでいなかったから。
ドーンという花火の合間に耳元で「また来年も見よう」と囁かれたので私も「もちろん。悠一、好きだよ」と返せば珍しく迅が真っ赤になった。仕返し成功だ。
<月§日
朝に本部へ行くと、なんかボーダー公認のカップルになってて精神的に疲れた。沢村さんには我が事のように喜ばれ、忍田本部長にも声を掛けられ、城戸司令からは「節度は考えるように」と釘を刺された。ガクブルものなんですけどーッ!
当真くんに詰め寄ろうとしたら冬島隊長に「おめでとさん」と出鼻を挫かれ、真木ちゃんに迅のことを訊かれて撃沈した。どこが好きか訊かれて「顔か?」との問いには否定しておいた。顔の好みなら城戸司令と答えたら大爆笑された。
気を取り直して、陽太郎くんの誕生日。今年は視覚探索絵本をプレゼントした。イラストや写真の中から目的の物を見つけるタイプの遊び本だ。
簡単に見つけられる物からムムムッと唸る物と奥が深く、帰宅した林藤支部長も感心したように陽太郎くんと雷神丸と桐絵ちゃん、クローニンさんまで巻き込んで探すのに夢中になってた。気に入ってくれて何より。
買い出しから帰ってきたゆりさんと迅から食材を受け取って木崎さんとクッキング。お子様定番のオムライスだ。陽太郎くんにはお子様プレートを使ってファミレスのお子様ランチ仕様。玉狛支部の旗を挿せば完成。
絵本組に呼びかけると、ビックリするくらい年上組が真剣で面白かった。