¶月<日
迅が任務だったので1人で下校してると、たまに料理教室に招待するお婆ちゃんに会った。台車に載せたコンテナいっぱいに泥のついたサツマイモを積んでて重そうだったからお手伝いした。
お礼にサツマイモを下さったので、スイートポテトをいっぱい作ってご家族分をお返しに行った。残りは影浦家にお裾分けした。
¶月<日
誕生日。付き合って初めての誕生日だ。迅が今年は2人っきりでもいいか尋ねてきたので頷く。すっごく緊張した。
迅が市販のケーキを買って家にきた。1ヵ月前に予約しないと食べれない限定品でちゃんと調べてくれていたんだと心が温かくなった。ケーキを食べて紅茶を飲みながらゆっくりしてたら、プレゼントをくれた。
迅の瞳の色の装飾が彩るヘアゴム。桐絵ちゃんのが壊れてから自前の味気ないヘアゴムを使用していたので、お礼を言うと三つ編みの先に早速つけてくれた。
瞳の色とか、サプライズにも程があるよ。嬉しい!
¶月<日
陽太郎くんの誕生日で思ってたんだ。陽太郎くんは幼稚園にも保育園にも行ってないし、玉狛支部のご近所に同年代の子供がいるわけでもない。遊び相手は年上か雷神丸。このままでは小学校に上がっても同級生と馴染めるかどうか……
そういうわけで、余計なお世話ながら知り合いの主婦様方がよく集まっている公園に陽太郎くんを連れ出した。ちなみに雷神丸も一緒。
最初は変に大人振る陽太郎くんだったが、だんだんと周りの子供たちに感化されて年相応にはしゃぎ出した。私は木陰で水筒とタオルの番をして雷神丸と涼み、たまに主婦様方とお話しをしていた。
移動が雷神丸に乗ってたことが多い陽太郎くんは、日頃から遊び回っている子供たちよりバテるのが早かった。でも楽しそうに笑い声を上げる様子は玉狛支部とはまた違った様子で。
夕方に迎えに来た林藤支部長が雷神丸の背中で寝てる陽太郎くんの様子を見てお礼を言ってきた。連れ出して良かった。
¶月<日
陽太郎くんから電話が来た。珍しく頑張って早起きしたらしい。今日も公園に行きたい、と。昼から任務なので午前中だけならと了承した。
陽太郎くんを迎えに行くと林藤支部長が陽太郎くんの昼食も頼んで良いかと訊かれたのでOKする。昼過ぎに木崎さんが帰ってくるらしかったので、もし陽太郎くんがお友達と昼も遊ぶ約束をしたなら連れて行ってもらうように言った。
公園に着くと既にお友達が居て陽太郎くんに手を振ってた。すっかり仲良くなったね。たまにお茶休憩を挟みながら時間いっぱい遊ぶ子供たち。それを横目に木陰のベンチで課題を解いていく私。子供に怪我がないように気を配るので完全に集中できなかったが、それなりに進んだ。
お昼が近くなり、案の定お昼も遊ぶ約束をしたらしい陽太郎くんのテンションは高い。一度玉狛支部に帰って簡単チャーハンと胡瓜とワカメの酢の物と卵スープを作った。
食べ終わる頃に木崎さんが帰ってきて、陽太郎くんはすぐにお願いしていた。木崎さんも陽太郎くんにお友達が出来たのは嬉しいらしく、ポーカーフェイスをちょっとだけ崩して笑ってた。
¶月<日
任務の交代引き継ぎで多少時間がかかっていつもより遅く夜ご飯を作ってたらチャイム。
迅だった。デジャヴと思いながら玄関を開けると、へにゃりと笑った迅が「ご飯たかりに来ました~」と宣言。呆れたが招き入れて、追加で作成。麻婆豆腐と餃子とワカメ中華スープと胡瓜とレタスの生野菜。
前回とは違って迅を泊まらせなかった。情緒不安定でもなさそうだったので笑顔で送り出すと納得行かない顔でキスをされた。
大方、友人の頃に泊まれて恋人の現在に泊まれないことが不満なんだろう。あの時は完全に親友としての枠組みで、異性として一切意識していなかった上に母性愛的な庇護欲しかなかった。今はきちんと意識しているからこその断りだ。
そうはっきり伝えると迅は唇を尖らせながら不服そうにしていたが、雰囲気はとても嬉しそうだった。分かりやすい奴め。
¶月<日
誕生日も過ぎて晴れて18歳になったので、自動車の免許を取ることにした。車を買う予定は一切ないけど、実家は車移動の方が速い手段なので運転できた方が良い。
保険証じゃなくても免許証を出せば身分証になるし、学生証がなくなっても年齢を示せる免許証があれば万事OKだとは風間さんの談だ。あの人の童顔と身長だとね……
土日と放課後が講習で拘束されるのでシフト調整をお願いした。座学の方は自習で間に合うけど運転練習はどうにもならないからね。卒業後じゃないと本免試験が受けられないから、余裕持って講習を入れてもらうことにする。
¶月<日
ハロウィンだ。ちょうど陽太郎くんを連れて公園に行く日だったのでクッキー缶を持って行った。陽太郎くんがお気に入りのヘルメットに小さな角を付けてもらって子鬼になっていた。迅がコスプレしないのかと真顔で問いかけてきたので丁重にお断りして口にクッキーを突っ込んでやった。
仮装した子と、してない子とで少しイザコザがあったけどクッキーを配ると鎮静化した。みんな単純で良かった。
ホッとしてたら1人の女の子が近づいてきて「よーたろーくんが、おねぇちゃんボーダーのひとっていってたよ」と言ってきたのでそうだよと返すとにぱっと笑って飴玉を渡してきた。
「あげる! いつもありがとー!」と。ボーダーのことを訊いてきたから"守ってくれてありがとう"なのか、それとも単純に"遊んでくれてありがとう"なのかは分からなかった。けどとても温かい言葉に私も「ありがとう」と笑顔で言えた。
そしてその女の子をきっかけに他の子も私にお菓子を渡してきて、なんと主婦様方からももらった。それを見た幼い子たちがお菓子のお裾分け合いが始まり、公園でお菓子パーティーになったのだった。
子供はそんなに得意ではなかったけど、こういうことがあると"いいな"って思う。うん、子供かわいい。