三門市に引っ越しました   作:ライト/メモ

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△月、●月

 

△月×日

 

 銃はもちろん、通常の狙撃兵の勉強をした。他にもトリオンについて。近界(ネイバーフッド)と近界民(ネイバー)とトリオン兵のことも勉強した。世界にはまだまだ私の知らない世界があるのだと改めて知る。自分の体に見えない内臓(トリオン器官)があるなんて。

 

 今日も今日とて訓練。先輩方はみんな用事だったり任務だったりで訓練場には誰もいない。撃って走ってを自主練していると何となく"自分から目標まで何m"と分かるようになってきた。やっとスナイパーの入口に立てた気がする。

 

 

 

△月×日

 

 

 初めての実戦。

 

 ボーダー隊員は増えてきたと言っても広い三門市を守るにはまだ少ないから、ある程度の練度になれば「実戦で覚えろ」という方針らしい。

 

 組んだ人は太刀川慶さん。特徴的な格子状の瞳で1つ上の先輩だ。刀型武器の弧月を二刀流で駆使するアタッカー。性格は……猪突猛進で敵を見つけたらすぐに駆けて行って制止の言葉なんて聞いてくれない人だった。

 

 フォローする間もなく緊急脱出した太刀川さんに頭を抱えたけど、冷静に任務をこなすことだけを考えた。敵はモールモッド2体。距離はどちらも700m。撃って、失敗した場合の撤退経路を確認してからファイア。目標1ヒット。目標2が弾道を補足してこちらへ向かってきたが既に私は移動して目標2に狙いを定めていた。目標2ヒット。討伐完了。

 

 日記で書くと短くてあっさりだけど、撃つ時はかなり緊張した。本部へ戻ると太刀川さんと太刀川さんの師匠である忍田本部長に謝られた。確かに猪突猛進は止めてほしいと思うけど、太刀川さんのおかげで実戦経験を積めたのだ。太刀川さんのスピードが速すぎてフォローしきれなかった私も悪かったし。

 

 お互い様だということで終えた。というか忍田本部長が来るとか戦闘とはまた違う意味で緊張したよ。コミュ症つらい。

 

 

 

●月△日

 

 

 初任務達成からどんどんシフトに入れられるようになった。今のところアタッカーが多いため、戦力バランスを考えてスナイパーと組まれる。実戦に出られるスナイパーは10人もいないせいかシフトが埋まる埋まる。その分給料も貯まっているからそろそろ買い物に行きたい。

 

 

 

●月△日

 

 

 初めて緊急脱出した。

 

 前まで狙撃失敗した後に備えて撤退経路を2・3通り組んでいた。でも最近は「慣れてきたから」と慢心してしまった結果が緊急脱出だ。

 

 初心を忘れていた私が恥ずかしい。師匠の東さんや先輩の木崎さんにも申し訳ない。何より一緒に組んでいた嵐山と柿崎にも迷惑を掛けてしまい、きちんと謝罪をしたが2人は「八神さんにばかり負担を掛けてすみません」と逆に謝ってきた。なぜかそこから謝罪大会になり、東さんが通りがかるまで続いた。

 

 それから本当に何故か東さんに焼き肉屋で奢られてしまった。どう考えても首を傾げるしかない展開だ。

 

 

 

●月△日

 

 

 学校とシフトの合間を見つけて訓練をやり直すことにした。ゴールデンウィークには一度帰郷しようと考えていたけど、止めた。今訓練を中途半端にしてしまうと、これからも中途半端になる気がしたから。

 

 東さんと木崎さんは「無理だけはするな」と忠告だけして見守ってくれて、迅も「今の努力が将来どこかで実を結ぶから」とカッコイイことを言ってきた。

 

 よし、とことんやってやろう。

 

 

 


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