三門市に引っ越しました   作:ライト/メモ

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 三門市に戻ってきた。最初に確かめるのは冷蔵庫の中身だよねやっぱり。帰宅した今日は仕方ないからコンビニご飯で済ませたけど、明日買い物に行かなきゃ。

 

 さて、実家ではそれなりにゆっくり出来た。最初の2日間は何も考えずボーッと家に引き篭もり、母が用意してくれたご飯を食べて過ごした。ラクしかなかったよ。

 

 3日目からは妹の宿題を見ながら私も学校の課題に取り組んだ。夏休み前からちょくちょく消化していたからそんなに量はない。1日で終わった。妹の羨ましそうな目に冷たい麦茶を煎れて逃げた。

 

 4日目以降は不可抗力とは言え弟子になった二宮さんに教えることをまとめ始めた。他人に教えるような上手い戦術じゃないから書き出してもバラバラでちぐはぐ。とりあえず必要なこと、やっていることを箇条書きで書き出してから整理していった。無意識のうちに処理していた行動もあるから改めて書き出すと結構多い項目に、厨二病じみていて恥ずかしくなった。これを二宮さんに公開するとか、拷問か……!

 

 6日目は家族全員揃ったから水族館に行った。大きなイルカのぬいぐるみを買った。後悔はない。イルカのぬいぐるみには"只野イルカ"と命名した。語呂が気に入ってる。

 

 そして7日目の今日、帰宅。中学のトラウマさんに会わなかったことをひたすら安心する。連絡なんてしてないし家からほぼ出なかったから大丈夫とは思ってたけど、改めて。

 

 じゃ、さっさと寝支度して明日の訓練に備えて寝ますかね。

 

 

 

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 訓練室の入口で二宮さんが腕を組んで仁王立ちしていてビビった。

 

 二宮さんと私では取れる戦術が全然違うこと、あくまで私はスナイパーであることを前提にして私の立ち回り方を知ってもらう。二宮さんはシューターとして立ち回りたいだろうから、後で私のやり方を取捨選択して自分のスタイルにアレンジしてほしい。

 

 私独特の感覚やスナイパーとしての癖が必要になる私のスタイルに二宮さんは眉根を寄せていたけど、真面目に聴いてくれた。

 

 まだまだ始めたばかりだから分からないけど、天才の二宮さんならきっと私のやり方を消化して自分の物にするんだろうな。

 

 

 

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 二宮さんと訓練する中、私も二宮さんから色々学んでいる。むしろ私の方が弟子じゃね? ってくらい。申し訳ない。

 

 まあ師匠なんて呼ばれたいわけじゃないし、敬語も崩していないし、あんまり私が上だとは思わない。

 

 そういえば何故東さん以外の師匠を探していたのか問えば、東さんは他にもたくさん弟子がいて、それでいて自分たちの隊長だ。仲間として隊長の負担になるばかりではいけない。的なことを言ってた。要するに忙しい東さんに迷惑を掛けたくないらしい。良い人だ。

 

 東さんには私も度々お世話になっているし、これは協力しないわけにはあるまい。

 

 

 

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 チーム模擬戦で久し振りに東隊と当たった。私の戦術を知っている二宮さんがいる以上一筋縄ではいかない。風間さんもかなり悩みながら戦略を練っていた。

 

 私が二宮さんについて言えるのは訓練で垣間見れた修得技術たちと、動き方の癖。共に訓練をしていく過程でソロ模擬戦を何度か組み、勝率は5分五分。私は相手の癖を見抜く力が他人より上だということをそこで自覚した。二宮さんの技術には追いつかないけど、そう簡単には変えられない動きの癖からの先読み・予測、十分な地形情報把握が出来れば勝てないことはない。

 

 チーム模擬戦の結果は、沢村隊の敗北。内容としては沢村隊長と風間さんとの近接戦闘を徹底的に避けた東さんの狙撃だけで牽制。二宮さんと加古望さんと三輪秀次くんの3人がかりで私を挟撃してきて、逃げ続けるしかなかった。一応最初から私が狙われることは予想していたから撤退ルートの確保とトラップの設置は間に合っていた。

 

 とは言え、さすがに3人がかりで来るなんて考えていなかったから最終的に落ちたのだけど。

 

 トラップを設置しながら逃げる中、二宮さんの右足と三輪くんの左肩と左脇腹をシュータートリガーでぶっ飛ばしたまでは良かった。途中で加古さんが東さんのフォローで抜けたけど、タイムアップを待たず私は仕留められて東隊の勝利となった。

 

 逃げるのに集中していれば良かったと反省してたら終わった後に隊の皆に褒められた。結果は残念だったが東隊の作戦を狂わせたのは間違いない。逃げる最中に作るトラップを最小限にすれば完全に逃げ切れたぞ、と。

 

 狙撃訓練場で会った東さんからも苦笑を浮かべて「やられた。合流にしようにもトラップを警戒して思うように動けなかったよ」とコメントをいただいた。大師匠の東さんに認められたことが一番嬉しい。

 

 二宮さんには「トラップを作るくらいなら撃ち込んでくれば良かっただろう」と言われた。ごもっともな意見だけど、私が撃ってたらあれだけ逃げ続けるのは無理だった。逃げと攻撃を兼ねたのがトラップだと私は考えているから今更それを止めろと言われたら反発するよ。それに私が使わなかったトラップたちは後で仲間が再利用してくれるかもしれないから良いのだ。

 

 東さんが2つの部隊を焼き肉屋に連れて行ってくれた。隣に座った三輪くんは始終しかめっ面だったけど、話しかけると普通に会話してくれた。左肩と脇腹についても怒っていないようで安心した。私が野菜ばっかり食べてたら焼きたてのお肉を分けてくれた。優しい子や…。

 

 加古さんは二宮さんをからかいながら私に「二宮くんのこと、もっと叩きのめしてね」と笑顔で言ってきて戦慄した。後から月見連さんに聞いたら加古さんと二宮さんはウマが合わないらしくああいうのは日常茶飯事なんだとか。同じ隊なのは隊長の東さんを同じく尊敬しているからとか。東さんってやっぱり凄い。

 

 

 

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 夏休みが終わる。友達とはちょこちょこ遊んでいたけど大きなイベントはなかったな。そう思ってたら木崎さんから玉狛支部で花火に誘われた。小南ちゃんが提案したらしい。

 

 任務が入ってなかったから向かうと小南ちゃんが涙目で抱きついてきてビックリした。「玲はいいの!? 本当に迅なんかで!」と訴えられて何かと思えば迅が頭を掻いて溜め息を吐きながら説明してくれた。迅が「八神は俺にとって大事なパートナーさ☆」と小南ちゃんに言ったところ親友とか仕事仲間とかじゃなくて恋愛的な意味で捉えたらしい。たぶん迅の言い方はわざとだと思うけど、小南ちゃんがこんなに本気にするとは思わなかったのだろう。

 

 丁寧に小南ちゃんの誤解を解いて花火を始めると林藤陽太郎くんが火元に近づこうとしたので慌てて抱き込んで止めた。好奇心旺盛なのは良いけど危ないぞー。

 

 

 




迅は本気で親友や相棒として言っています。

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