今話の八神のトリガー構成
イーグレット・バックワーム・アステロイド・シールド
バックワーム・スパイダー・繰糸・メテオラ
八神視点
『空閑、
空閑くんの戦闘体からトリオンの煙が漏出し、私はブースへと転送された。空閑くんもブースのベッドに送られただろう。
「5ー0だね」
空閑くんとのランク戦は、今のところ私が全勝。だが、これは私が旧ランク戦ルールを前半に設けたからだ。本番は次から。
旧ランク戦ルールとは、狙撃手が対人戦をする場合に最初の転送地点が通常よりも離れた場所になる、だけ。
現在は狙撃手の人数も増えて昇格条件が『合同訓練にて3週連続で上位15%以内の成績』に変わったが、以前は前衛ポジションと同様にランク戦でポイントを稼いで昇格していたのだ。ただ、この旧ランク戦ルールだと最初の距離が十分にあるせいで若干狙撃手の方が有利だったりする。
純粋な攻撃手が相手だと、練度の高い狙撃手なら間に置いた距離を縮めることなく、平行線を保ったまま狙撃を行えるのだ。射手と銃手、万能手ならばちょっとした工夫が必要だが。
私が空閑くんに旧ランク戦ルールを持ちかけた理由は単純明解。私よりも空閑くんの方が強いから。
現在のルールで始めから行った場合、7本は瞬殺される自信があった。残りの3本は5分以内にやられて、まともな対戦にならないよ。
だから私は最初の5本を旧ランク戦ルールへと変えてもらい、空閑くんの動きを観察した。ちなみに5本とも全勝した理由は、狙撃手の距離に居ながら狙撃せず、終始トラップで空閑くんのトリオンを削り取った結果だ。狙撃してしまえば居場所がバレて寄られるのが目に見えていたからね。
たったの5本だけど、始めてから優に2時間が経過していた。
『次からは逃がさないよ』
「あはは……お手柔らかに」
モニターから響くちょっぴり不完全燃焼気味の通信音声に、空笑いを返して次の転送に備える。
私の現在のトリガー構成は、ライトニングを抜いて代わりにバックワームを入れてある。メインとサブのどちらにも入れた形だが、チーム戦ではないので隠れることは重要だ。ライトニングの速射も捨て難かったがイーグレットで十分事足りる。
何だかんだで所属当初からお世話になってて、それでいて一番取り回しに慣れているトリガーだ。
『6本目、開始』
余裕で目視できる距離に転送された。互いにガチリと目が合う。
獲物を襲う猫科のような瞬発力を持って駆けてくる空閑くんに対し、私はスパイダーキューブを撃ち出した。
私のスパイダーキューブは見た目を弄ってあり、一見すると普通のシュータートリガーだ。
ワイヤーが伸びる方向が角無しだとわかりにくいがそれも慣れである。
空閑くんはそれをシールドで受け止めた。狙い通りだ。
スパイダーキューブからワイヤーが空閑くんのシールドと、私の方へ伸びてくる。
「!」
私はそれに足を引っ掛けて、伸びる力でそのまま距離を稼ぐ。
一瞬瞠目した空閑くんだが、すぐにスパイダーへ飛び乗って私を追いかけてきた。大道芸がお望みかな。
空閑くんに遠距離攻撃手段はない。スコーピオンの投擲くらいかな。私が距離を取ってしまえば前半の繰り返しになる為、追ってくるしかないのだ。
綱渡りの要領でスパイダーの上に立ってイーグレットを起動。片手で狙いを定めて撃つと、銃口の見えた銃弾は容易く躱された。
アタッカー上位陣のほとんどが弾を斬り払うとか、余裕で避けるとかやってくれるけどさ。なんで出来るの、って逆ギレしたくなるよまったく。
とは言え、予想通りの結果に口角を上げれば、私を注視していた空閑くんがハッと周囲へ目を配る。
小指の爪よりも小さく分割したメテオラが空閑くんの周りに散らばっている。
「おおっ」
メテオラを嫌ってスパイダーから飛び降りた空閑くん。だが私を追うことを止めず、地面に右足を着けた瞬間。
括り罠が発動。
括り罠はワイヤーが足に絡まり、動きを止めるもの。猟師がキツネやタヌキなどの獣を生け捕りにする時に設置するのを参考に作ってみた。
動きが止まったのを機に、イーグレットでメテオラの群れを起爆。その煙に乗じて私もスパイダーから飛び降りてバックワームを起動し、身を隠すために駆けた。
空閑くんはシールドのフルガードで防いだはず。
フルガードから、スコーピオンで括り罠のワイヤーを切るという行動。それから私の狙撃を誘う為と、位置を確認する為にグラスホッパーで高くジャンプするはずだ。
だから私が駆けられる目安はあと二軒だけ。
空閑くんとの予測距離は400m。射角を得る為に高さが欲しいけど、贅沢な希望だ。
スピードを維持したままガードレールに付いているカーブミラーにスパイダーを伸ばす。本命はそれだが、他にも見破られないよう三重で張り、民家へと身を隠した。
ソッと民家の陰から出ない範囲で外を窺えば、タイミング良く空閑くんがグラスホッパーで飛び上がった瞬間だった。
「当たり」
引っ張ってきていた本命のスパイダーを思いっきり踏み、膝射でイーグレットを構える。
付いていたスパイダーによりカーブミラーが動き、私とは逆方向にある民家の二階窓へ光が反射する。狙撃の光と勘違った空閑くんがシールドを出して、グラスホッパーを用意。
ファイア。
『空閑、
6本目にしてやっと狙撃だ。
あの光の反射は誰でも引っ掛かる。タイミングが合わないと気づかれるけど、それでも一瞬の光には気を取られるものだ。
さて、7本目だ。
『7本目、開始』
「わっ、と! はやい、なぁ」
「つかまえた」
キューブを出す暇さえくれずに、スコーピオンが投擲されてシールドで防げば、空閑くんが肉迫する。
やばい、完全に懐に入られた。
近接は空閑くんに分がある。刃を捌く経験が圧倒的に違う。
「くっ」
シールドだけで空閑くんのスコーピオンは凌げない。
スパイダーを張って
苦し紛れにバックワームを起動して、空閑くんへ脱ぎ捨てたがやはり意味がない。右で一刀両断された瞬間、左のスコーピオンが突き出された。
首を狙った攻撃をシールドで逸らし、体を捻る。
刺突を避けた、はずだが枝分かれした刃が心臓部を穿った。
『八神、
ベッドに転送された。
先ほどの攻撃は
私が避けることを見越して分裂させたな、アレは。
ああ、風間さんに怒られる負け方だ。
『8本目、開始』
肉迫。
空閑くんのスピードは観察時よりずっと速い。目で追えるけど、対処に余裕はない。風間さんと同等か。
イーグレットを起動して、物理的な盾にする。
実銃でこんなことしたら暴発の原因になるけど、それを気にしなくて良いのはトリオン銃の利点だ。
「へえ」
スコーピオンを振るいながら、にやりと空閑くんが笑う。余裕そうで何より、だっ!
軽さと取り回し重視のスコーピオンが、上段からイーグレットの銃身に叩きつけられた。
衝撃に耐え、前へと押し出す。一瞬離れた間合いは、すぐさま詰められる。
イーグレットを両手で持ち、トリオンを籠める。
右の斬り払いを銃口で弾き、左の斬り上げを銃床で受けた。半歩下げていた足裏で地を蹴り、銃身を回転させて銃口を空閑くんへ。
バンッと撃ち出された衝撃に身を任せて後退。
イーグレットはアイビスより威力は劣るが、それでも半端な強度のシールドでは防げない威力を誇る。
「っマジか」
空閑くんの居た場所にはグラスホッパー。
すでに私の後方へ空閑くんは立ち、刃を納めている。
首が落ちた。
『八神、
首筋を撫でながら、ベッドから身を起こす。
両手に持っていたスコーピオンは、一つのものだったらしい。私の読み違い。
おそらく、私が応戦する構えを取った時にはスコーピオンをメインだけに切り替えていたのだろう。イーグレットが発射された瞬間、保留していたサブでグラスホッパーを起動したようだ。
やはり空閑くんは強い。いや、私が弱過ぎるのか?
『9本目、開始』
始めから立射姿勢でイーグレットを起動。スコープを覗かず一発。
避けられた。
でも、踏み込みの足をズラしたぞ!
変幻自在のスコーピオンと言えども、肉体的に腕のリーチは私の方がある。加えて、イーグレットだ。
突きの形で迫る刃に、こちらも銃口を突き出す。
互いの切っ先は僅かにズレて、擦れる。
「フッ!」
無意識の呼気を吐き出し、刃の腹を叩き、続いて持ち手の親指を突く。
「!?」
手から滑り落ちたスコーピオンに目をやる、なんて愚は互いに犯さない。
親指を突いた銃口は真っ直ぐに空閑くんの喉へと向かう。速度を上げる為に一歩踏み込む。
だが空閑くんは上半身を反らし、もう片方のスコーピオンで下から銃口を払いのけ、私が踏み込んだ足を蹴り掬う。
「ム」
けど、私だって読んでいた。
踏み込んだ足はブラフ。
既に重心は後ろ足に移動しており、転ぶことなく逆に空閑くんを飛び越えるように前へ跳ぶ。
転がるように着地から横向きの伏射姿勢。
頭上スレスレに飛んできた刃を気にすることなく、空閑くんの胴へファイア!
集中シールドで防がれたが衝撃は殺せていない。
その隙に威力特化のメテオラを飛ばす。スピードはいらない。
そのままイーグレットでメテオラを撃ち抜き、爆破。爆風と激しい煙。
飛び上がるように立ち、前方に網状のスパイダーを張る。シールド強度だが、ピンと張らず弛めに。
スコーピオンを構えたままの空閑くんが飛び込み、ギチリと網が軋んだ。
「──」
視線が交差する。
「
イーグレットで、細く変更したスパイダーごとぶっ放す。
網の隙間からスコーピオンが伸びて私の左頬から耳を落とされたが、致命傷には程遠い。
『空閑、
空閑くんの動きは、今までログで観たものとは異なっている。思い返してみれば体格と力で押し負けるからこそ、スピード重視の戦い方だった。
けれど、私との対戦では斬り合い重視だ。
こちらが近接武器を持っていないので競り合いがないこと。間合いを開けてしまえば私にはシュータートリガーがある上に、逃げて狙撃されるからだろう。
超接近戦は、スコーピオン使いだけの特権だ。それに上手く持ち込まれている。
『10本目、開始』
グラスホッパーが3枚。正面ではなく角度をつけての間合い詰めか。
左手側から迫ってくる空閑くんを、後方へ下がりながらアステロイドを生成して応戦する。
持ち前の瞬発力と、グラスホッパーでの更なる加速。瞬間速度はボーダー内でもピカイチだ。
でも、もう目は慣れた。動作のイメージ修正も終えた。
アステロイドを作り続ける。
真っ直ぐにしか射出できない弾種だが、一番扱い易く手堅い弾。スナイパートリガーの弾と同様に真っ直ぐ飛ぶからこそ、私は好んで使っているのだ。
空閑くんは左手のシールドを頭を守るように張り、右手は空いたまま迫る。
アステロイドを密集させるように並べ、射出。
「スパイダー」
「! ウソか!」
口に出した言葉の真偽を、反射的に空閑くんが見破る。
特に空閑くんは後天的に受け継ぎ、生来からの訓練がない。
アステロイドの中にメテオラを混ぜた。爆発の連鎖が起こり、たまらず空閑くんはグラスホッパーで後方へ跳び退がる。
私は今度こそスパイダーを起動してその場から離脱し、投擲されるスコーピオンをスパイダーで音もなく絡め取る。投げ返しはしない。
強度と太さを最低まで落としたスパイダーを次々と張っていく。
太さを最低まで落としたワイヤーは肉眼での視認が出来ない。それこそオペレーターの補助が要る。
「……こないの?」
「レイさんが逃げずに姿を見せてる時点でトラップだらけデショ」
私を見つけたのに、動きを止めた空閑くん。
「まぁね」
わざとらしく肩を竦めてイーグレットを起動。
「よっと」
撃ち出した弾を簡単に避けた空閑くんが、弾道を正確になぞったルートで突っ込んでくる。器用だね。
9本目と同じようにイーグレットでスコーピオンを受ける。突く・打つ・払うの動作で応戦しながら、空閑くんの動きを読んでいく。
完結する動きは一つもなく、すべて連続した刃の繰り出し。
反撃よりも防戦に徹していれば、一瞬の間。
グラスホッパーの板が私たちを囲うように出現。
A級隊員の緑川くんが得意とする
口角を微かに持ち上げた。
「!」
それだけで、空閑くんはグラスホッパーに掛けようとしていた足を咄嗟に地へ着けて、グンッと私と距離を縮めた。おやおや
グラスホッパーの板は消え、両手に握ったスコーピオンが振られる。それを最初のようにイーグレットで凌いで防戦へ。
『何か』ある。
そう思わせてしまえば、相手の選択を制限させられる。今の空閑くんにとって、私の微かな表情までもが警戒に値する"武器"と感じている筈だ。
幼い見た目に見合わず、剣筋は重く鋭い。
スコーピオンに"重い"という表現は似合わないが、それだけ空閑くんに凄みがあるのだ。
足を動かして後退すれば、その分詰められる。
「ッと」
払い損ねて銃口と左手の指先が消えた。親指が残ったとはいえ、細かに支える手が減ったのは痛い。
けど、もう十分。
「!」
「逃がさない。
跳び下がろうとした空閑くんの体を、既に絡みついていた無数のスパイダーが押さえつける。
体勢を崩し、地面へ転がった空閑くんへ新たに作り直したイーグレットを撃ち込んだ。
『空閑、
結果は8ー2。前半の5本はハンデ貰ったので、実際は3ー2だね。
特殊ルールが入ってる為ポイントの増減はない。
『もしかして、あの時イーグレットを撃ったのはおれを誘うため?』
「うん。空閑くんの言った通りトラップの設置は終わってたから、あとは入ってきてもらうだけだったんだ」
『むぅ……スパイダーって、思ったよりベンリだな』
空閑くんの唸る声に笑みが漏れる。
最後の強度も太さも最低に落としたスパイダーは、体に纏わりつかせる為に張った。
トリオン体は痛覚を遮断しているので、それに伴って触覚も若干鈍い。それを利用して細く脆い糸を体にくっつけ、十分な量になったところで繰糸を使って一気に強度と太さを変える。
身動きできなくなったところへ、バンッだ。
もちろんその場全体にスパイダーを張っていたので、私のトリオン体にもくっついていたがそこは繰糸で操作選択しますから。
「私のはA級特権の改造なんだ。でも、スパイダーの汎用性はぜひオススメするよ。使い方は色々あるし。さ、飲み物でも奢ってあげるよ」
『ふむ。ありがとうございます』
ブースから出て、空閑くんと合流し一番近くの自販機へ。別にチャレンジャー御用達ではない。
空閑くんはサイダーを選び、私は100%オレンジジュース。コーヒーと迷ったが、給湯室で淹れた方が美味しいからさ。
ベンチに座ってお互いに水分補給。
微妙に火照っていた熱が冷たい飲み物で治まった頃、空閑くんが口を3の字にしたまま問い掛けてきた。
「レイさんって槍使いなの?」
「え? ううん」
「だってあのイーグレットの使い方はそうでしょ?」
言い切るようで首を傾げた空閑くん。
もしかしてさっきの言葉に
無意識だったとは言え、悪かったな、と思いながら答えるべく口を開いた。
「断っておくけど、本当に槍を使ったことはないよ。でも、捌き方の参考にはしたかな。米屋くんって分かるよね?」
頷いた空閑くんに、私もまた頷いて言葉を続けた。
「米屋くんを最初に観た時、物珍しさからだったんだけど」
初めに観た米屋くんのログで、間合いの取り方がかなり上手くて感嘆した覚えがある。
当時、私はシュータートリガーもそこそこ使えるので遠・中距離に対応できていた。
しかし、チーム戦では役割特化すればそれで良いのだけど、ソロランク戦では攻撃手に寄られるとすぐに落ちてしまう。因みに射手や銃手相手なら、私の間合いでもあるので五分の闘いが出来ていたよ。
特にやりにくいと感じたのはスコーピオン使いだ。空閑くんが行ったような超接近戦に持ち込まれたら諦めるしかなかった。
そこで米屋くんの槍捌きからヒントを得て、槍術や銃剣術、半棒術を調べ始めた。
一応、分類的に私が使っているのは柔術だと思う。
「きちんとした師に教わったわけじゃなくて、見様見真似から始めたものだけど、やってみると意外と出来てね……弧月にはリーチと耐久力で負けるからシュータートリガーの方が良いけど。
というか、A級部隊にはスコーピオン使いが多いから重宝してる方かも」
シフトの関係であまり行われないA級ランク戦。
攻撃手の魔窟とも言える激戦区に、囮として向かわなければならない時の恐怖は筆舌し難い。何度、風間隊を筆頭としたスコーピオン使い達に切り刻まれたことか。
まぁ、それは置いといても体術やその場に有った物を使って攻防をする術は、
「どうしても武器を持って行けない場所とか、武器を出さないで相手を黙らせないといけない場面ってあるだろう?」
「あるね」
覚えがあるのかウンウンと頷く空閑くんに、やっぱり年に見合わない経験をたくさん積んでいるのだと改めて思った。
「おれはどっちもトリオン体だけど、さわがれるのがメンドーだからよくやってた。そういえば、オサムと仲良くなったのもそんな感じだ」
「え。すっごく出会いが気になるけど……時間だから、そろそろ仕事に行くね。ランク戦、色々と勉強になったよ」
「おう。おれもレイさんのやり方がベンキョーになった。ありがとうございマシタ」
「ふふ、うん。こちらこそ、ありがとうございました」
ベンチから立ち上がってお互いに礼を述べる。
空閑くんの若干カタコトの言葉遣いに思わず笑みが零れてしまったが、空閑くんは気を悪くすることなく手を振ってくれた。
よし。切り替えてお仕事を頑張りますか!
それに今日の昼休みは、明日のバレンタインデーに向けて加古さんとお菓子作りする予定だし、放課後は夏目ちゃんと訓練する約束だ。どちらも遅刻しないよう気をつけないとね。
サブタイトルの"2週間"は、空閑がB級に上がっての日数です。どちらの日数も『約』を付けようか迷いましたが、無い方が語感が良かったので省きました。
・戦闘の補足
空閑を弱体化させ過ぎ&八神が強過ぎでは、と指摘されそうなので補足を。
今回、ランク戦前半に八神は『罠』しか使っていない、という前提があります。また、後半に入っても『罠』や『不意打ち』を見せています。これによって空閑は八神の挙動にかなり意識し、思うように己の戦闘リズムへ運べていません。トリッキーな使い方をするグラスホッパー戦法も下手に八神と距離を開ければ逃げられたり、罠の数を増やされたりなどの危惧があって積極的に使えませんでした。
『罠』を意識させ、勝ち筋を狭め、如何に相手のリズムを崩して有利を穫るか。八神の狙いはこんな感じです。
そして、空閑の方は長年黒トリガーでの戦いに慣れている為、やはりボーダートリガーの扱いに一瞬の"間"が生じると思いました。更に威力や細かな性能もまだまだ調整中で、それは個人ランク戦や小南との特訓にて感覚を掴んでいくしかないでしょう。いくら才能があって戦場慣れしていたとしても、すぐに武器の性能を最高値で引き出せはしないし、人間には波もあります。
己の狙いを通した八神と、リズムを崩されトリガーの練度差もあった空閑。それが今回の対戦結果となります。