三門市に引っ越しました   作:ライト/メモ

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八神視点


策士はスイッチを切り替える

 

 

 

 

 B級ランク戦に盛り上がっていたらしい土曜日が過ぎて、日曜の朝の現在。沢村さんと一緒に会議資料を部屋へ運んでバタバタと準備を行っている。

 

 昨日の午前は普通だったけど、午後からの防衛任務が面倒だったなぁ。

 

 ソロ隊員たちの臨時隊長として入ったのだが、問題児さんたちがいらっしゃいまして。

 1人は遅刻常習犯で、1人は自信過剰っ子。

 

 遅刻常習犯は文字通り通算8回目の遅刻だった。今回の言い訳は「友人と話していたら遅れた」で、1時間の遅刻である。

 防衛任務を何だと思っていると問い詰めれば、逆ギレされてスコーピオンを突き付けられた。映像を記録していたので今頃は解雇だろう。

 

 自信過剰っ子は「トリオン兵なんてガラクタ」と言って制止の声も聞かずに1人突っ込んでから緊急脱出(ベイルアウト)した。初期の太刀川さんを思い出したよ。

 訓練用に弱体化させたトリオン兵を相手に圧勝して、後は対人戦ばかりを行ってそこでも同期のC級隊員を蹴散らしていたからの自信だった。

 とりあえず残りの隊員と連携して任務を果たし、基地へ戻って報告書作成。その際に自信過剰っ子に問題ある行動を指摘すれば、暴言を吐かれるわ、報告書の捏造をしようとするわ、挙げ句の果てには「アンタがしっかりサポートしないからだ。A級で正社員な上に有名人と恋人だからって調子ノリすぎ」と理解し難い言葉をもらった。

 まぁ、ただの僻みかと流していたら悠一のことも口汚く罵ってきたので、それまでの色々なことも含めて教育的指導をしておいた。

 

 こういう新人は普通にいるし、指示を聞く人間ばかりでもない。

 

 出る杭を打つ、なんてしようと思わない。A級もB級もクセの強い人間が多いし、自信過剰っ子もまだ経験が少ないだけでリーダー気質ではあるのだ。これからに期待しよう。

 

 あと私個人に感情をぶつけてくる人間もいる。ほとんどが女の子だ。ボーダー屈指のイケメンと呼ばれている青年たちとまでは言わなくても、顔立ちが整っている上に実力者である悠一も、当たり前にモテる。

 それなのに私みたいな普通の女が隣にいるのは許せないらしい。任務中に急所を狙われるわ、変な噂を立てられるわ、嫌がらせ目的のストーカーが発生するわ……近界(ネイバーフッド)遠征任務よりハードだった時期があったのは記憶に新しい。

 

 正直、昔は悠一が他の女の子を選ぶならそれでも良いと思っていた。過去に何度か女の子たちの方へ誘導したことも、あったなぁ。

 けど今は、譲る気なんて一切ない。もう悠一の気持ちを疑わないし、『愛してる』って言葉を我慢するつもりもない。ちょっと気恥ずかしいけど。

 

 

「玲ちゃん今日は非番だったよね? 大丈夫?」

 

「大丈夫ですよ。それに対策会議を上に提案したのは私ですから」

 

「そうだけど……夜間任務で徹夜だったんだから無理したらダメよ?」

 

「はい、ありがとうございます」

 

 

 モニター設定と資料の抜けがないかをチェックしてたら、沢村さんに気遣いの言葉を貰った。円城寺さんとはまた違う、頼れるお姉さんな沢村さんに笑みを向ければ、仕方ないなぁと微苦笑をされた。

 

 沢村さんの言った通り、私は夜間任務に冬島隊長とコンビで担当していた。当真くんと真木ちゃんは高校生なので、出来るだけ夜間任務には入れないようにしている。頻繁な夜更かしは身体に良くないからね。

 

 本当は臨時隊長としての防衛任務後、短時間の仮眠を摂ってから夜間任務に入る予定だった。緊急の事態でも起きなければそこまでトリオンを消費しないサポートだから、と。

 

 通常なら連続勤務でも問題ないはずだった。

 それが問題児さんたちの件で無駄に時間とトリオンを消費して、仮眠を摂ることなくそのまま任務に就くことに。と言っても、そこまで苦ではなかった。連携し易い冬島隊長とコンビだった上に、イーグレットとスパイダーと繰糸の3種のトリガー構成ならトリオン残量は余裕だった。

 

 眠気も任務中は関係ない。トリオン体には基本的に戦闘をする上で邪魔な要素となる疲労も空腹も眠気も生じないからだ。しかし、トリオン体を維持する為に必要なので、食事と睡眠を意図的に行える作りとなっている。

 

 夜間任務後は、1時間の仮眠を摂り食事をしてトリオン体を維持した状態で会議の準備を始めた。

 非番とは言え、こちらが提案した会議に休むわけにはいかない。でも会議が終わったら、少しだけ眠ろうかな。会議の結果次第だけども。

 

 会議室の準備が終わった頃、徐々に席が埋まっていく。それぞれに挨拶をして、召集が掛かっている隊員たちの到着を待った。

 

 

「揃ったな。では、緊急防衛対策会議を始めよう」

 

 

 風間さんと悠一の到着を認め、忍田本部長の合図に応えて資料を配る。

 

 会議に参加するのは城戸司令と忍田本部長と沢村さんの3人。そして現在防衛任務中の加古隊と、他県へのスカウトに行っている草壁隊と片桐隊を除いた、A級部隊長たちの5人。B級の代表として東さんに、加えて提案側の悠一と私の計11人だ。

 

 

「早速だが本題に入らせてもらう。先日の防衛戦で捕虜にした元・黒トリガー使いエネドラから『新たに近界(ネイバーフッド)からの攻撃が予測される』という情報を得たと、開発室から報告を受けた。そして、迅の予知でも襲撃は確定だ。

 玉狛支部のレプリカ特別顧問が残した軌道配置図によれば、まもなく3つの惑星国家がこちらの世界と接近する。このうちガロプラ、ロドクルーンの2つがアフトクラトルと従属関係にあり、今回の敵国となる」

 

「従属関係……こないだの連中の手下ってことか」

 

 

 太刀川さんが一瞬言葉の意味を考えたように見えたが、おそらく気のせいだ。

 

 

「詳細な襲撃方法などはまだ不明だが……」

 

「街への襲撃はないよ」

 

 

 忍田さんの視線を受けた悠一がきっぱりと言い切れば、皆が一様に驚きの表情を浮かべた。

 確かにここまではっきりと断言する悠一を見たのは久し振りだと思う。

 

 

「マジかよ迅」

 

 

 思わず、という風に太刀川さんが悠一を見やれば、ニッと自信満々な笑み。

 

 

「うん。玲がいるからね」

 

「八神が?」

 

「なるほど。上手く利用するのか」

 

 

 冬島隊長の隣に立つ私に視線が集まったが、東さんが納得の声を上げたことで視線がそちらへ行った。ありがとうございます東さん。流石です東さん。

 

 

「東さん、どういうことですか?」

 

 

 三輪くんが私と東さんを交互に見て、ほんの少しだけ首を傾げた。

 東さんがこちらを見たので頷きを返すと、三輪くんに視線を戻して答えを口にする。

 

 

「前回の国の従属国ということは、先の攻防戦もある程度情報が伝わっているはずだ。あれだけ目立っていたんだ。その中に『市街地防衛を一手に引き受けた人間』と『戦法』が入っていなければおかしい。つまり、八神がいるだけで市街地を攻めることを躊躇わざるを得ない」

 

「……なるほど。ありがとうございます」

 

「情報戦は既に始まってるということか。だが、それはこちらに分がある」

 

 

 東さんに頭を下げた三輪くん。その向かいに座っていた風間さんが頷き、隣の席で笑う悠一を横目に見る。

 

 対策会議の空気は軽くも重くもない、丁度良い緊張感だ。

 忍田本部長もそれを認めたのか緩く口角を上げた。そして、すぐさま表情を引き締めて話を一時停める為に片手を挙げた。

 

 

「これからその2国の対策を練るわけだが……その前に、城戸司令よりこの件についてひとつ指示がある」

 

 

 成り行きを静かに見守っていた城戸司令が視線を受けて、作戦の根本を定める指示を発した。

 

 

「今回の迎撃作戦は、可能な限り対外秘として行うものとする」

 

「対外秘……!? 市民には知らせないということですか?」

 

「そうだ」

 

 

 その場の部隊長たちが驚き、代表するかのように嵐山が問えば城戸司令は表情を変えることなく肯定した。

 

 第二次大規模侵攻からまだひと月も経っていないのだ。いくら市街地に被害を出さなかったからと言っても、遠目からでもトリオン兵の大群は市民には恐ろしかっただろう。あれだけ大きな侵攻を目にした後では、不安を増長させかねない。現在計画を調整中の遠征任務を順調に進める為にも、ボーダーへの不安や風当たりを煽る必要はないということだった。

 

 城戸司令の指示はご尤も。当然、敵の出方次第では避難勧告を出す必要もあるが。

 

 

「『気づかせない』のレベルだと、ボーダー内部でも情報統制が必要になりますが」

 

「その通りだ。作戦はB級以上、必要最低限の人員にのみ伝える。それ以外は通常通りに回してもらう。防衛任務もランク戦も平常運転だ」

 

 

 風間さんの確認に、忍田本部長が肯定した。

 

 B級部隊員は良いが、ソロ隊員たちのシフトはもう少し調整しなければならないかな。侵攻が警戒されるうちは出来るだけ連携の取れる部隊を防衛任務に就かせたい。間違っても昨日みたいなワンマンプレーが目立つ隊員は、早めにシフトを消化させるか後半に繰り越すかしないと危険だ。

 

 

「一応、大規模な襲撃の可能性も押さえつつ、基本的にはA級中心で警戒・迎撃に当たってもらう」

 

 私の方へ顔を向けてきた城戸司令へ「かしこまりました」と了承。シフト調整の意味と、作戦立案を任された。

 前に忠告されたことが頭を過ぎってちょっぴりドキッとしたが、悠一と一瞬だけ目が合って落ち着いた。悠一の援護力が半端ないです。

 

 東さんの進言で天羽くんのサイドエフェクトの力を借りることが決まった。

 相手の実力を色で判断出来る彼がいれば、小部隊でも効果的な戦力投入が期待出来るからだ。

 

 

「今回の作戦は迅と八神が纏めた予測情報を基にしていく。八神」

 

「はい。皆さん、お手元の資料をご覧ください」

 

 

 それぞれが配付された資料を手に取ったのを確認して、冬島隊長の隣から一歩前へ出る。

 

 前回のような危ない橋を渡る作戦ではない。私1人で立てた作戦ではないし、悠一がひとりで動いたものでもない。2人でしっかりと向き合って確かめた情報だ。

 そして、今度は仲間と共にクオリティーを上げていくんだ。

 

 ほんのりと薄く、しかし泰然とした強気の笑みを浮かべる。

 

 無表情よりも笑みを。

 されど、今回の笑みは作っているわけでない。腹の底から湧き上がるような熱量が、自然と表情を変えさせた。

 

 ───ああ、ここが私の戦場だ。

 

 どこかの私が内心呟いた。攻撃手たちが剣戟の合間に魅せる烈しいものとはまた違う、いっそ灼熱とも謂える水面下の情報戦(冷戦)

 集めて用意した材料で、顔も知らない"敵"を丁寧に、ぶちのめす。

 

 恍惚としたような響きさえ添えて、その呟きが霧散すれば。

 

 ───開戦。

 

 

「次の侵攻予測の大前提ですが、作戦を段階に分けたいと考えています。何故なら、初手の邂逅だけでは2国を完全に撃退も、捕虜にも出来ないからです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「さあ、仕事だ仕事だ。お先~」

 

 

 会議が終わってそれぞれが席を立ち、冬島隊長は体を伸ばして肩を回しながら部屋を出て行った。

 生身だったしまだ眠気が残っていたのだろう。お疲れ様です。

 

 

「八神、今度は無理するなよ。自分を大事にな」

 

 

 東さんからそう声を掛けられ、思わず苦笑いになる。前回が前回だけに、色々な人に心配を掛けて申し訳ない。

 

 

「あはは……前回については耳が痛いばかりです。でも今回は胸を張って『大丈夫』と言えますから」

 

「そいつは頼もしいな」

 

 

 胸の前で軽く拳を握って『大丈夫』と笑えば、東さんがおかしそうに微笑みながらも同じように拳を作って応えてくれた。

 こういうノリが良いところが慕われる秘訣なんだろうなぁ。

 

 

「そう言って玲ちゃんは無理するからな~今日だって寝不足なんだから」

 

 

 沢村さんが私の背中からひょこっと顔を出して東さんに密告した。元隊長に裏切られた、だと……!!

 

 

「沢村さん……それは任務だったから仕方ないじゃないですかー」

 

 

 背中から隣へ移動した沢村さんにジト目を送れば、ヨシヨシと頭を撫でられた。

 身長は私の方が少しだけ高いけど、そういうもの関係なく沢村さんはお姉さんっぽい。

 

 沢村さんは東さんの方に向き直って「遅れたけれど一級戦功おめでとう。後進の育成も順調みたいね」と満面の笑みを浮かべた。

 

 それに東さんも笑みを返す。

 

 

「ありがとう。でも戦功を挙げられたのは、優秀なオペレーターを始めとした後方支援の皆がいるからこそだ」

 

「またまた~上手いんだからもうっ」

 

 

 沢村さんがご機嫌な様子で拳をつんっと東さんの体に当てる。照れているのとは違う気易い間柄の掛け合いに、傍から見ていた私も微笑んだ。

 

 その後、東さんが三輪くんに声を掛けて焼き肉を食べに行く約束を取り付けたり、沢村さんが焼き肉を羨ましがったり、A級部隊長組と悠一が和やかに話したりしてから、忍田本部長と沢村さんと私以外は退室して行った。

 

 

「八神、少しいいか?」

 

 

 沢村さんと部屋の片付けでも、と思ったところで忍田本部長から声が掛かった。

 ちなみに城戸司令は会議が完全に終わる前に、次の仕事時間が来てしまい既に退室している。後で会議のまとめを沢村さんが提出するのだろう。

 

 

「はい」

 

「次の遠征任務の引率者(リーダー)が私に決まった」

 

 

 忍田本部長は室内に沢村さんと私以外の人間がいないことを再度確認してから話し始めた。

 

 

「それと、遠征の道程が長くなることを考慮して、通例より選抜を早めて研修・訓練期間を延ばすこととした。ついては、君の選抜基準を参考までに聞かせてほしい」

 

「選抜基準ですか……艇の規模を拡大中ということですが、そちらも考慮してのものでしょうか?」

 

「いや、実際の人数制限は設けない。君が次の遠征で必要だと思う要素だと捉えてくれ」

 

「かしこまりました」

 

 

 なるほど。名指しをしてしまえばと人柄や背景まで定めてしまうので、それを省いた上での判断基準ということか。

 

 次の遠征は市民への公開遠征だ。

 であれば"大成功"と言える結果とは『攫われた人間を全員救出した上で、遠征した人間も無事に帰還すること』だ。

 

 当然、困難な任務目標なのは間違いない。目的地のアフトクラトルとこちらの世界の間に、幾つかの星国を挟まなければならないのだ。行きも帰りも全員無事にする遠征日程が前提となる。

 それが理想だが、決して容易ではない。

 

 そうすると、必然的に欲しい要素が定まってくる。

 

 

「そうですね……やはり従来の選抜基準である生存能力が高いことが重要だと考えます。これには戦闘能力も含みますが、不測の事態への臨機応変さや精神の安定力にも(かか)っていますから。

 今回は『奪還』を目的としていますので、情報収集や撹乱などの工作能力があること。そして、奪還した隊員を落ち着かせたり説得が出来ること。遠征任務では個人での別行動も予測される為、自己判断能力も一定水準満たしていた方が良いかと」

 

 

 説得云々は重要だと考える。精神的ショックで敵味方の判断が出来なくなっていたり、洗脳されていた場合などは無理やり気絶させるか意識を刺激して説得するしかないからだ。

 またそういった人員は、集団の良好な関係性を築ける者が多い。

 

 

「ふむ……街の防衛も重要だが、今回ばかりは遠征に重きを置くべきだろうな……ありがとう。君の意見、参考にさせてもらう。休日が半日になってしまったがきちんと体を休めてくれ」

 

「はい。お気遣いありがとうございます」

 

 

 頭を下げて片付けを再開しようと部屋を見渡すが、話している間に沢村さんがすべて終わらせていた。流石です。

 

 残された仕事もなかったので、ありがたく退室することに。

 

 

「では、忍田本部長、沢村補佐官もお疲れ様でした」

 

「ああ」

 

「お疲れ様」

 

 

 忍田本部長と沢村さんから微笑みと共に見送られ、退室した後に気づいた。

 

 会議室内にあの2人っきりだ、と。

 

 でも忍田本部長が沢村さんの恋心に気づいている節はないし、沢村さんも公私混同をしない方だし、プライベートで会っている様子もない。見守るこちらはじれったいけど、こればかりは強要できないものだ。せめて忍田本部長が沢村さんの恋心に気づけばまた事態が変わってくると思うんだが。沢村さんは沢村さんで、忍田本部長が格好良すぎて告白の勇気が萎んでしまうらしかった。

 普段がしっかりしているだけに、沢村さんのそういう所が可愛すぎる。ギャップ萌えの使い手だよね。

 

 自販機エリアに差し掛かった所で、ポケットに入れていたスマホが震えた。

 マナーモードにしていたスマホは音が鳴らずとも、画面が点灯して『今はどこにいますか?』という夏目ちゃんからの絵文字たっぷりの文面が表示されていた。

 

 私が現在の位置を記して送信するとすぐに『今から来ます』という慌てて打ったような素っ気ない文面が返ってきて思わず笑う。そして、何か約束していたかな、と首を傾げた。正直心当たりはない。

 

 それでも慌てて来るということは大事な用事に違いない。もしかしたら緊急で訓練を付けてほしいのかもしれない。それならばトリオン体を維持しているのは無駄なトリオンの消費となるか。

 

 

「トリガー解除(オフ)──ぅわ」

 

 

 ドッと生身の肉体に疲労と眠気が降りかかってきた。

 

 なんとか頭を振って目を開け、自販機からホットコーヒーを購入。ベンチに腰掛け、紙コップから立ちのぼる湯気と共に香りを吸い込めば、自然とため息が出た。

 水面に息を吹いて気休めに冷ましてから、緩く傾けて少量を口に含む。

 

 

「あつ……」

 

 

 手の中にあるコーヒーもだったが、頭を中心に全身がそうであった。

 耳には血液が忙しなく流れている轟々とした音が響いている。どうやら会議に熱中し過ぎたらしい。寝不足もあるのかな。

 

 夜更かしは頻繁にしているけど、家の中でリラックスした状態と、気を張っている夜間任務とでは全然違う。

 冬島隊長は無事だろうか。いや、あの人は夜更かしに慣れているから大丈夫かもしれない。でも遠征前はしっかり寝かせないと、また艇酔いで大惨事になってしまうから気を配らないとダメだ。

 

 とにもかくにも、片付けないといけないモノを早急に済ませて今日は早く寝よう。

 ふかふかぬくぬくのお布団で只野イルカを抱きしめて寝るのだ。3秒で落ちる自信があるぞ。

 

 

「あ、ししょー!」

 

「夏目ちゃん」

 

 

 廊下を駆けてくる夏目ちゃんに手を挙げて応えれば、私の前まで来た彼女が笑顔で今日の成果を報告してくれたのだった。

 

 

 




 ・仏の顔も八度まで
 防衛任務は戦闘員の隊員にとって最重要任務な筈で、市民の安全の為にも遅刻は厳禁かと。再三注意していたのに改善が見られず、最終的にトリガーを脅しに使ったことが決め手となりクビになった遅刻常習犯。
 自信過剰っ子は教育的指導によって泣いた。
 八神は自分の容姿を「一応、他人を不快にさせない程度」と自己評価しており、容姿について何か言われても「あ、そう」くらいで特に気にしません。メンタル面も近界で鍛えられたせい(おかげ?)か、生半可な誹謗・中傷では傷つきませんし鼻で笑い飛ばせるくらい逞しくなっていたり。でも流石にストーカー案件はトラウマが刺激されたのでOHANASHIしました。

 ・原作と拙作の迅の違い
●原作よりもモテている実力派エリート
 胡散臭い印象は相変わらず持たれているが、"透明で掴み所のない"原作の迅悠一よりも、恋人を持ったことで『人間味』が増して親しみ易くなっています。二重の意味で八神の尻を追いかけ、程よくミステリアス(胡散臭げ)な喜怒哀楽が見られる為、女性人気が爆上がりしてしまったエリート。それによって八神は色々と苦労しているのですが、彼女は鍛えられたメンタルで当事者なのに傍観者の気分で流しています。
●情報を大盤振る舞い
 原作と視ている未来の可能性が違い過ぎることも要因ですが、ここでもキャラ崩壊が起こっています。
 突出しているのは『新しい未来分岐の開拓意欲』です。学生時代から長年確定していた"八神の死"を覆したことで、拙作の迅には強い自信が備わりました。どんな未来だろうと善い方向へ変えてみせる、という意志を持っています。更に、八神と心を交わすことで「どれだけ挫けそうになっても、彼女と一緒ならば俺は折れない。そして玲だって折れることなく、未来の可能性を教えてくれる」と、完全に信頼して心を預けています。
 原作の彼はどちらかといえば、未来が大きく動いて不安定な未来分岐発生を嫌がっています。だから必要最低限しか未来の情報を出さず、分岐を乱立させない為に独りで暗躍して「ごめんな、俺のせいだ」と背負い込みます。
 未来はどちらの方が善いのか、は一概には断言出来ませんが、拙作の迅は『己の為』という根幹が決まっているのでキャラ崩壊が起こりました。
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