@月?日
模擬戦がランク戦と称されることになった。もともと隊員にはS級を最上位に、A・B・C級と実力で格付けされていたが、これからはチームにも適用するとのこと。チームが作れるのはB級隊員以上。
既にチームであり、何度か戦果を挙げている沢村隊はA級チームだ。A級チームも何隊かあり、A級チームの中でも順位が公開されることとなった。この順位付けは今までの模擬戦での勝敗数が関係し、A級チーム1位はダントツで東隊だ。次点で沢村隊。模擬戦に滅多に参加しない古株チームはA級だけど、規格外過ぎて順位付けには加わらなかったらしい。
更に以前までの昇格試験で合格したA級隊員はそのままA級隊員だが、チームのランクがA級に上がったら所属隊員をA級として扱うとのこと。私はB級の試験しか受けていなかったので"A級チームのB級隊員"だったが、"A級チームの八神玲"という感じに変わった。些細な差だけど周囲の視線が少しだけ変わることで実感した。ソロとチームでは役割が全然違うから実力の発揮も異なる。それを伝えてくれる今回の制度にはとても好感を覚えた。
チームから抜けるとまたB級の八神玲だけどね。
@月?日
夏休みが明けて学校のクラスメートの半数がこんがり焼けていた。部活だったり、海だったり、と休みを満喫していたようで何より。案の定課題忘れも数人いたけど、それは些細なことでしょう。
休み明けのテストではまずまずの結果を予測する。課題を確認していたけど、そこまで真面目に解いていたわけではないし内容もいくらか抜けていて今までのテストで一番点数が悪いかもしれない。今回は、うん、赤点じゃなければいいや。ぶっちゃけ、猛暑が続いてダルすぎてさ。学校にクーラーつけてほしいわ。
@月?日
ボーダーに所属して一応体力は作っていたけど、夏バテは否めない。学校では授業以外、だらんと机に突っ伏して下敷きを団扇にして涼を取っている。ぬるい風だけどないよりマシ。
迅も暑そうにしているがそこまで苦痛ではないらしく、たまに私に風を送ってくれる。ありがとう。
ボーダーに行けば空調が利いている上、トリオン体になると暑さを感じないので学校がある日は「はやく授業終わってくれ。ボーダーに行かせてくれ」と心底思うようになった。だって家でクーラーをつけると電気代がかかるし。
@月?日
秋。まだまだ暑い。夏場はダルすぎて日記書く気力が湧かなくて。
久し振りの日記に書くのは私の誕生日のことだ。家族からはメールでお祝いの言葉を貰った。友人からは手紙だったり駄菓子だったりとお祝いをいただいた。ちょっとくすぐったい。
迅から玉狛支部への招待状を貰った。何でも木崎さんがケーキを焼いてくれるらしいのだ。頷くしかないさ。
桐絵ちゃんと迅がカレーを作って、陽太郎くんがお皿を運んでくれた。微笑ましかったし嬉しかった!
木崎さんのびっくりするくらいふわふわしっとりのシフォンケーキも美味しくて、思わず顔がふにゃふにゃになった。色んな人に「おめでとう」を貰って幸せな誕生日だと思った。帰りは林藤支部長に送ってもらった。
$月@日
だんだんと寒くなってきたけどまだ昼間は暑い。
円城寺さんが新しい恋を見つけたらしい。まだ恋人とかではなく片想い中だとか。沢村隊長と盛り上がっていた。
学校でもクラスメートの何人かがカップルになっていて、なんだか皆ピンクムードですね。他人事だし特に気にしてなかったけど、巻き込まれた。
休み時間に友人とトランプのババ抜きして負けた。罰ゲームで『迅をデートに誘え』とニヤニヤ顔で言い渡されてしまった。そういう系の罰ゲームは言う方も言われる方も後味が悪くなるんですけど。抗議は意味なかったので仕方なく「迅、面貸して」「え、ヤクザ? 怖い」と拒否られたので、友人に「振られましたー」と報告。「そんな誘い方があるかー!」と怒られたが"行け"ではなく"誘え"だったから破っていないぞ。
疑問に思った迅が経緯を尋ねてきたので罰ゲームを説明して「なるほどねぇ。そういえば小南が今度の休みに一緒に買い物行こうって言ってたよ」と迅が言ったことで、迅に"小南"という彼女がいると勘違いをされた。ドンマイ。
$月@日
沢村隊長がインフルエンザに罹った。お見舞いに行こうかと隊で話したが、円城寺さんから止められた。風間さんは受験生だから絶対にダメだ。
沢村隊長が戦線復帰するまで沢村隊はランク戦を休むことにする。戦闘員の風間さんと私が健在だけど、決定力に欠ける上、風間さんも受験勉強に集中するらしいので丁度良かったのかもしれない。
ランク戦に出なくても任務はあるので、それが風間さんの勉強の邪魔にならないと良いのだが。その旨を伝えると「良い気晴らしになる」と親指を立てられた。さすがの風間さんも勉強三昧はストレスが溜まるらしい。
$月@日
久し振りに迅と任務に就いた。
相変わらず黒トリガーで無双する迅をサポートする私の図。黒トリガーの仕様はなんというか……ぶっちゃけ……すごくサポートしにくい。
数本の刃を置き弾にする、とかはいいんだ。敵の動きと迅の動きを読んでどこに置くのかと予測出来るし、それが発動出来るように私が追い込めば良い。
ただ、迅はたまに「なんでそこに置く!?」と予測外の場所に設置するのだ。発動させようにも私が追い込んでも難しい場所。しかし迅は、絶妙なタイミングでそれを発動させて不意打ちを防ぐし、背中に目があるのかと驚くスピードで敵を撃退する。
はっきり言って、迅にサポートとかいらない気がする。でも、何もしないとか私も嫌だし、結局は迅の邪魔にならないようにちまちま討伐するしかないんだよね。
経験の差とかあると思うけど、たまに迅は予知が出来るんじゃないかと疑うレベルだよ。歴史書とか戦術書とか読むとそういう人間もいるし珍しくもないのかも。まぁ、私よりも長く戦場に立っていた証拠だろう。
せっかくベテランと一緒の任務だ。可能な限り勉強させてもらおう。
$月@日
インフルエンザの襲撃ってネイバーの侵攻並に怖いな。
今日から学年閉鎖、臨時休業になった。もともと隣のクラスでインフルエンザが流行っていて学級閉鎖になっていたのだが、とうとう私のクラスにも感染者がちらほら。大侵攻の影響で学校の生徒数が少なく、閉鎖になるのは早かった。
昨日まで元気だった友人が翌日いなくなり、教科書を借りていた友人がいなくなり、一緒に弁当を食べていた友人がいなくなり……ぽつりぽつりと教室に空席が増えていく。こう書いているとホラーだが、実際はインフルエンザ。ちなみに迅もインフルエンザだ。
1人暮らしの私は「インフルエンザに罹るとヤバい」と危機を覚えていたが、今のところ元気だ。おそらく予防接種をしたかどうかの違いだと思う。三門市は入学前に大侵攻を受けて予防接種を受けに行く余裕のある人間が少なかったのだ。私は病気関係だけは気をつけていたし、暇を見つけて地元のかかりつけだった病院でインフルエンザを始めとするいくつかの予防接種を受けていた。学校側から予防接種を義務付けされていた受験生の3年生も罹患者は少ないらしい。
学生が多く所属しているボーダーでもインフルエンザにはてんやわんやである。うがい手洗いマスクを義務付け、戦闘員は出来るだけトリオン体で居ることになった。任務も元気な人間で回すしかないので私のシフト表はぎっしり埋まった。
$月@日
今日は東隊+私で任務に当たることになった。
特に何のトラブルもなく完了したさ。ランク戦を休んでいるけどログを見ていないわけじゃないし、直近の東隊の戦術だって把握・研究している。だから連携の邪魔をすることなく淡々と任務をこなした。ら、東さんにべた褒めされて二宮さん・加古さん・三輪くんに凝視……いやあれは睨まれた?
一応、二宮さんからは「よくやった。だがアレくらい当然だ」と言われ、加古さんからは「よく見てるわね。敵としては要注意だけど味方なら安心よ」とフフッと笑われ、月見さんからは「こんなにオペレーターと連携するのって珍しいですね」と通信が入り、三輪くんからは「なんであそこで撃ったんですか? どうしてタイミング良く俺の動きに合わせられたんですか?」と質問攻めを受けた。
グイグイ迫ってくる三輪くんに圧倒されてしどろもどろになるコミュ症の私に助け舟を出してくれる東さんと二宮さん。さすが師匠と弟子(師匠)!
でも二宮さんが「そんなに気になるなら今度の八神との訓練に三輪も参加すれば良い」と言ったのは恨みます。だから私は他人に教える程技術を持ってないですから!!