魔弾使いのTS少女   作:黄金馬鹿

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すまない……今回は短いんだ……すまない……


第二十魔弾

 金稼ぎは一週間ほどほぼ毎日行い、かなりの金額を稼いだ。偶々この街の近くでの駆除依頼が害獣と魔獣含めて毎日舞い込んでいたため、毎日しっかりと依頼をこなして金を稼ぐ事ができた。

 この結果にはひなたも満足気で、温泉に行く際の必需品等を買いそろえても全然お釣りが来た。シャーレイと共に必需品を買って予約も無事に全行程を終わらせて、温泉街へ向かうのは次の日にまでなった。その日の夜は買い忘れている物は無いか、忘れ物は無いかをちゃんと何回も確認してから二人で床に就いた。

 だが、シャーレイは明日が楽しみなのか眠れないらしく、ベッドの中でソワソワしていた。ひなたは最近働きっぱなしだったため、すぐに寝ようとしていたが、シャーレイのソワソワが気になって寝る事が出来なかった。

 

「……シャーレイ、いい加減寝ようよ」

「ご、ごめんね? でも、寝れなくて……」

 

 幾ら今まで野宿のような事も経験してきたひなたでも隣にいる人がソワソワしている状態では眠った事がないし、きっとこれからも慣れる事なんてない。

 イライラはしないが、苦笑いした状態でシャーレイの頭を撫でて落ち着かせようとするが、シャーレイはそれでもソワソワが落ち着かない。余程楽しみなのだろう。初めての馬車と温泉が。確かに、ひなたもこの世界の温泉は入った事がないため、楽しみではあるが眠れない程ではない。歳のせいだろうか。

 ひなたは眠れないため一旦起き上がり、ベッドから降りた。

 

「ひなたちゃん?」

「ちょっと煙草とお酒飲んでくる。吸血代わりにね」

 

 酒は今までガッツリ飲んだことは無かったが、普通に飲めるしこの家の冷蔵庫にもひなた用の酒が置いてある。結構弱いため、アルコール度数は低めの甘い果実酒だが、ちょっとでも酔えば寝やすくはなるだろう。少なくとも、シャーレイがソワソワしていても気にならなくはなるだろう。

 煙草に関してはシャーレイから吸血しないためだ。今日吸血した結果、シャーレイが明日貧血状態になりました、なんて申し訳無さすぎる。だから、それを防ぐためにシャーレイからは吸血はせずに煙草で済ませる事にした。

 

「あ、じゃあ付き合う」

「いいよいいよ。おつまみもあるし、偶には一人で月見酒ってのも乙なものだから」

 

 日本酒のような物は無いが、果実酒片手におつまみ食らって締めに煙草、という物もいい物だ。一瞬、これって駄目な大人っぽい? と思ってしまったが、この程度なら十分に許されるだろう。

 シャーレイを寝室に置いてひなたは台所へ向かって冷蔵庫の中から果実酒を取り出すとコップをその瓶の上に乗せて口におつまみ……ジャーキーを咥えて居間へ向かい、煙草を取ってくるとソファに座ってコップに酒を注ぐ。窓から入ってくる月明りがその液体を照らし、幻想的に魅せてくれる。

 それを少し口の中に流し込んで一息吐く。甘味の中に混ざる苦味が程よく美味しく、アルコールが喉を通る感覚が心地いい。そこに少し辛いジャーキーを食べ、口の中のジャーキーが無くなった所で再び酒を飲む。

 

「くぁー……」

 

 思わず、そんなマヌケな声が出てしまうが、今は一人だ。別に聞いている人はいないのだから声なんて大きくなければ無遠慮に出す。

 そんな晩酌を暫く続けていると、徐々に顔が熱くなってくる。それがアルコールが回ってきたという自覚が徐々に迫ってくる。それに変な心地よさを覚えながら再び酒を口にする。あまり強くないのに酒は好きなため、すぐに限界が来てしまうが、それでも構わずに酒を飲む。

 そしてまたコップに酒を注ごうとしたが、手が思うように動かず、そろそろアルコールが体に回ってきたな、と自覚する。これ以上飲むと明日に関わるかもしれない、とすぐに酒を飲むのを止め、煙草を口に咥えて火を付ける。

 

「……こりゃ長生きしないかもね」

 

 煙草に酒に戦闘に。そして可愛い女の子。勝ち組に思えるかもしれないが、早死にする原因は見事に揃ってしまっている。寿命も短くなってしまっているかもしれない。

 そんな事実にケラケラ笑いながら煙草の煙を肺に送り込み、灰を灰皿に落とす。少なくとも男にモテるような女ではないが、元々男にモテる気なんて一切ない。性欲はあるがそれで男を求める様な精神はしていない。女は求めるけども。

 このままシャーレイと両想いになれたらどれだけ幸せな事かと考えてしまうが、シャーレイはひなたと同じように心の中は男だったりレズだったりはしない訳で、この想いは一方通行のままだという事は嫌にも分かる。

 

「はぁ……辛いなぁ……」

 

 ひなたはシャーレイに依存している。シャーレイもひなたに依存している。が、二人の依存の仕方は少し違う。

 ひなたはシャーレイという陽だまりに依存している。だけど、シャーレイが依存しているのは一緒に生きてくれる人。一緒に居てくれる人だ。

 シャーレイからしたら、ひなたがこの場から去ったとしても、また新しく一緒に居てくれる人が出来たのなら、ひなたの事は忘れようと思って生きていくに違いない。だが、ひなたはもうシャーレイが居ないと生きていけない。もう、孤独を味わいたくない。シャーレイという子がいないと生きていく意味すら見出す事も出来ない。

 それに、ひなたはシャーレイが好きだ。恋愛対象として見てしまっている。

 寝ているシャーレイにキスもしたいし吸血した時の、少し色っぽいシャーレイのマウントをそのまま取って性的に襲いたい。そんな思いを煙草と吸血で隠して一緒に生きていく。それがどうしようもなく辛い。

 酒の勢いに任せて思いをそのままぶつけてしまいたいと思うが、それでシャーレイが離れて行ってしまったら元も子も無い。そんなのは嫌だ。

 そんなマイナスな事を考えると煙草を吸う気にもなれず、まだ半分程残っている煙草を真ん中から折ると灰皿に突きつけて火を消した。

 

「……シャーレイ、好きだ」

 

 この一言すら、性別という壁が邪魔をする。

 TSという性転換がひなたの本心を打ち明ける事を許さない。

 これが元の男のままだったら。女ではなく男のまま抱いた感情だったなら、この想いを酒に任せて素直にぶちまけていた事だろう。だが、女という性別が男のままだったら出来た事を許してくれない。

 

「……そんな事考える柄じゃないだろ」

 

 頭に手を当ててそんな思考をすぐに頭から排除する。酔った勢いで色々と考えてしまったら手遅れな事をしてしまうかもしれない。すぐに頭を振って何も考えないようにしてから窓から月を一回見てからジャーキーを口に全部突っ込んでから酒瓶とコップを回収してフラフラしながらもコップを軽く洗ってから飲みかけの酒を仕舞い、酔いにフラフラしながら寝室へと向かう。

 ほんのり赤くなった顔で寝室に入ると、シャーレイは布団を抱えた状態でひなたの寝る場所に背を向けて眠っていた。規則正しい寝息は寝室に入るとすぐに聞こえてきた。

 何処となく香るシャーレイの匂いにドキッとしながらもひなたもシャーレイの隣に腰を下ろし、横になる。シャーレイの後姿は酔いのせいか色っぽく感じ、思わず片手で抱き着いた。少し腕を動かすと、柔らかい物が手に当たったりすると同時にシャーレイが小さく喘ぐ。それにどうしようもない愛らしさを感じながらもう片方の手が無い事を悔やむ。

 両手があれば、シャーレイを抱きしめる事が出来たのに。ぎゅっと力強く抱きしめる事が出来るのに。そんな気持ちを隠しながら片手だけでシャーレイを抱き寄せる。

 

「……シャーレイ、好きだよ。これからも、ずっと」

 

 寝ているシャーレイに酔い故か本心を呟いてからひなたは瞳を閉じた。

 明日からの温泉旅行が、シャーレイにとって忘れられないいい日になりますようにと願いながら。




こんな感じで悩む子は可愛いと思います
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