魔弾使いのTS少女   作:黄金馬鹿

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自分に素直になってやらかしました


第二十二魔弾

 煩悩退散と頭を打ち続けたひなただったが、結局数時間後になんとか頭の中の煩悩を退散させて額を赤くしたままシャーレイの作った朝食を口に運んだ。その日の朝食も美味しかったが、直前まであんな事を考えてしまっていたからか、余計にシャーレイの事を意識してしまっていた。

 そのせいか胸や下半身に目線が集中してしまっていた気がする。女同士だからそこまで気にはされていないかもしれないが、それでも多少不審だったかもしれない。挙動不審の領域にまでなっていたかもしれない。

 こんな状態で馬車には乗りたくなかったが、それに関してはどうしようもない。気持ちを切り替えなければ。

 もう一回、最後に忘れ物が無いかを確認してからひなたはローブを纏って二人揃って家を出る。シャーレイはウキウキランランと言った感じで時々スキップをしている。ひなたはその際に服の内側で揺れているのであろう双丘を思い浮かべるとちょっと視線が吸い寄せられたり顔が赤くなったりしていたかもしれない。

 そんな感じで二人別々の事を考えながら馬車の停留所へと向かった。

 馬車の停留所はそれなりに人が居て、そこにそれなりの数の馬車が置かれていた。そして、客を乗せるための馬車は看板のような物が置いてあり、そこに予約した人の名前が書かれていた。勿論、少し探せばひなたとシャーレイの名がある看板を見つける事が出来た。シャーレイを先導してその馬車へと向かう。

 

「すみません、予約していた暁ですけど」

「ん? あぁ、アカツキさんとランフォードさんかい? じゃあ、プレートを貰えるかな」

「どうぞ」

 

 プレート、と言うのはこの間予約した際に受け取った物に似ている。あれから一週間後にもう一度あの場に行った際に受け取った馬車に乗る際の引換券のような物だ。

 木製で出来たそれを馬車の御者らしい男性に渡すとそれを確認し、すぐにひなたとシャーレイの名がある看板を撤去した。

 

「じゃあ、お二人さんはこの馬車に乗ってくれ。今日の客はお二人さんだけだから、準備ができ次第出発だ」

 

 馬車は雨風も凌げるようなタイプで、後方から乗り込むタイプだった。簡単に言えば、日本の国民的ゲームの竜の名前が使われているヤツに出てくるようなタイプだった。

 

「え? ボク達だけなんですか?」

「そうなんだよ。ほら、最近よく温泉街近くで変死体が見つかってるだろ? そのせいで客が居なくなっちまってな」

 

 何時もは二組位は来る筈なんだがなぁ、と男性は呟いていた。

 確かに、ひなたも変死体が見つかったのは二週間前に聞いたが、最近よく、と言ったという事は、その変死体の発見情報は後を絶っていない、という事だろう。中々嫌な時期に予約してしまった物だ。

 だが、そんな事件に巻き込まれるのなんてまず無いだろう。ひなたはそうなんですか、大変ですね。とありきたりな言葉を言った後にシャーレイを連れて馬車に乗り込んだ。馬車の中はちょっと木箱やらが乗っているだけで他には何も乗っておらず、二人なら寝転がれるレベルだった。その馬車の中に鞄を乗せて持ち込んでおいたクッションを座る予定の場所に敷いてから外で色々と準備している御者に声をかけた。

 

「こっちは大丈夫でーす」

「あいよー。じゃあ、すぐに出発するから中で待っててくれ」

 

 馬車は一つだけ。御者の男性とひなた、シャーレイの三人旅だ。

 護衛は無いのか、と聞かれると無い、と答えられる。山賊のような人間はまずいない。基本的に人は街の中、もしくはスラムに住んで生きているため、街の外で盗みをして生きている人間なんてまずいない。もしも居たとしてもすぐにバレるため、即座に討伐され檻の中に入るか魔獣と害獣に食われて終わりだ。。

 そんな、害獣と魔獣に関しても心配はいらない。馬車には馬車一つと少しのスペースを包み込む小型の結界発生装置が積んであるため、襲われない。この小型結界発生装置は役所等で登録された人が結構面倒な手順を踏んで一日だけ作動できるというかなり面倒な仕様になっている事も山賊が居なくなった要因になっている。登録された人間に関しても一か月毎に一回は更新しに行かないといけない他、働き口の上司の証明書等、様々な面倒な手順が必要なため家と働き口のない人間がこれを更新する事は出来ない。ひなたが家一つ買える金があったのに馬車を買わなかった理由もこれだ。

 そんな訳で護衛はいらない。馬車の護衛は基本的に小型結界発生装置を持たない個人で馬車を持っている人間の依頼だ。企業の馬車には基本的に護衛がつかない。

 

「ち、ちょっとドキドキするね」

「そうかな? ボクは一日以上この馬車で揺れるのが若干不満なんだけど」

 

 車じゃないのだから趣味に合わせた音楽も流せなければ暇つぶし用の道具もない。本当に一日以上この馬車で寝ているかボーっとしているか。馬車の移動には二択しかない。スケジュールに関しては頭に叩き込んであるが、何時間かに一度、馬の交代と御者の交代があるだけ。夜中も動いてくれるのはありがたいが、馬車の揺れ次第では中々寝付けない可能性がある。ちなみに、食事に関しては持ち込みで馬車の中で済ませる事になる。

 

「何が不満なの?」

「暇。あと、お尻が痛くなりそう」

「寝てればすぐだと思うけど……」

「今寝たら夜中寝れなくなるし、どっちにしろ暇だよ」

「あ、そっか……でも、お話してればそうでも無いと思うよ?」

「そうかもしれないけど……まぁ、時間は適当に消費しようか」

 

 と、言いながら煙草を取り出して火を付ける。この馬車は喫煙可能との事なので煙草を吸うのに遠慮はしない。ちょっとシャーレイが膨れっ面になった気がするが、なるべく視界に入れないようにして煙を吐く。

 馬車の中が軽く煙で満たされた所で御者の男が顔を見せた。

 

「じゃあ、今から出発するが、本当に準備はいいな?」

「あぁ、はい。お願いします」

「あいよ。後、嬢ちゃん。未成年なのに大っぴらに煙草は吸うモンじゃないぞ?」

「これでも成人してるんですが」

「……マジ?」

「えらくマジ」

 

 やはり、歳相応には見られないらしい。主に胸と身長のせいで。思わず人差し指と中指で挟んだ煙草を潰しかけてしまうが、シャーレイが何とか落ち着けてくれた。

 困った笑顔を見せた男は何時の間にかそっとフェードアウトしていった。そして、御者台に御者の男が乗った後、すぐに客と御者を仕切るカーテンのような物が敷かれた。そして、暫く経ってからすぐに馬車は振動と共に動き出した。

 

「わわ、動いた」

「……結構揺れるね」

 

 車と比べれば、だが。

 馬車は思った以上に振動が少なかったが、それでも車等の近代的な乗り物に比べると十分に揺れる方だった。クッションが無いと確実に尻を痛めていただろう。外から聞こえる車輪が回る音と小さな蹄の音を聞きながらひなたは煙草を吸う。

 が、しかし、途中で一回大きく揺れ、灰が落ちてひなたの足に落ちた。しかも、運が悪い事に生足に。

 

「あっつぁ!!?」

「だ、大丈夫!?」

 

 パニックになりながらもすぐに灰を払って回復魔法の魔弾を押し付けて割った。

 その結果、すぐに回復魔法を使ったことで跡にはならなかったが、それでも結構熱かった。熱いを通り越して最早痛かった。激痛だった。全身を焼かれた事もあったがそれはそれ、これはこれで普通に熱かった。

 

「……畜生」

「火傷跡にならなくてよかった~」

「……ローブ敷いて吸わなきゃ」

 

 ひなたにとってはちょっと散々な目に合いそうな温泉旅行だった。

 

 

****

 

 

 ひなたが苦楽を共にしてきたローブは頑丈であり、煙草の灰が落ちても少し跡が付くだけで、ひなたの柔肌に傷を付ける事は無かった。これによってひなたは安全な喫煙を確保する事が出来た。

 そして、シャーレイに関しては最初ははしゃいでいたが、三十分も経てば飽きたのか大人しくなり、一時間もすると暇で眠くなったのかひなたの元左肩、現断面に体重をかけて眠りについていた。最初はどぎまぎしたが、それに関しても三十分程で慣れてひなたは持ち込んでいた読みかけの本を読みふけっていた。BGMは馬車の動く音と蹄の音、それから風の音のエンドレスリピートだ。

 だが、本を読むのならそれ位が心地いい。左側からかかる重みを感じながら穏やかな気持ちで本を読む。が、それも一時間近く経つとそれに疲れて一旦本を閉じた。ひなたの読書はこの世界の文字を一旦日本語に直してから理解しているため、スラスラと読むことが出来ない。そんな読み方をしているせいで一回の読書にかなりの疲労が伴ってしまう。

 

「はふぅ……疲れた……」

 

 一人呟き、首を回すとコキコキッ、と小さくも心地いい音が鳴る。それに若干の爽快感と心地よさを覚えながら改めて左側にいるシャーレイに視線を投げる。

 ひなたよりも背が大きいからか、肩に頭を乗せるのではなく、全体的にひなた側に体を寄せているだけになっているが、ひなたからシャーレイの様子は見て取れた。結構揺れるのに気持ちよく寝ている。規則正しい寝息と可愛らしい表情に思わず胸が高鳴る。そして、視線はゆっくりとシャーレイの唇へと移動していた。

 

「……」

 

 思わず見惚れてしまう。惚れた相手だからだろうか。どうしても下心のままに視線が向いてしまう気がする。この唇に口づけをしたらどんな感触なのだろうか、とかシャーレイの胸はどんな揉み心地なんだろうか、とかこのまま押し倒してシャーレイが寝ている間に事を済ませたらバレないんじゃないか、とか。

 そんな煩悩を何とか打ち払い、シャーレイの胸を触りたいのは自分に無い物を触りたいだけだ、と自分に言い聞かせて長く息を煩悩と共に吐いて何とか気持ちを切り替えようとするが、やはり視線と思考はシャーレイの方へと向いてしまう。

 

「……シャーレイ、可愛いなぁ」

 

 呟き、ジッと見つめてしまう。

 このままキスをしてしまえば。せめて、キスだけでもできれば。

 唇に唇を合わせるだけでも、と思ってしまう。が、もしもその最中に起きてしまったら、突き離されてしまうのでは、と悪い想像が働くとそれが行動へのストッパーとなる。

 だが、してみたい。一回だけでも、少しだけでも、キスだけでもしてみたい。そんな願望と欲望が入り乱れて混ざり合った願いがひなたの理性を打ち砕いていく。

 一か月以上、同じ屋根の下、同じベッドの上で生きてきた片思いの子。彼女にはひなたの恋心はきっとわかっていない。だが、分かっていないから辛いというのもあるし分かっていないから安心できるというのがある。もし、キスしたのがバレれば確実にひなたの思いはバレるだろう。そうしたらどうなるかは分からない。受け入れられるか、突き離されるか。どちらか二択だろう。

 それでも、見ていて我慢は出来ない。こんな無防備な姿を晒されると、ひなたの中の男が据え膳食わぬ云々と言ってくる。

 

「……ごめんね、我慢、出来ないや」

 

 そんな思いとシャーレイの無防備な姿が理性を壊す。理性のダムに穴を空けて水を、欲望を少しだけ漏らす。

 シャーレイの体がそのまま倒れないように右手で支えながら、シャーレイの前に陣取る。そして、顔を向き合わせる。

 駄目だ、我慢できない。もうここまで来たら後戻りは出来ない。そんな思いに突き動かされ、ゆっくりとシャーレイに顔を近づけていく。近づくと共に徐々に心音が大きくなっていく。心臓が大きく跳ねる。緊張と焦りとその他諸々が混ざり合って複雑な思いを胸中に生み出しながらも、ひなたの顔はしっかりとシャーレイへと向かっていく。

 それが何秒か経った時。我慢できないと欲望に従ってから数秒経った時。ひなたの唇に柔らかい物が触れた。

 

「ん……」

 

 キスした。してしまった。

 そんな達成感と罪悪感とが混ざり合ったような気持ちを抱きながらも唇を離そうとはしない。卑怯な真似だろうけど、こうしてキス一つ出来て、ひなたの心は満たされている。

 小鳥が優しく啄むようなキス。ディープな物ではなく、唇を合わせるだけのキスだが、そんなキス一つで心が満たされていく。息の続く限り唇を合わせ、その心地よさをただ噛みしめる。惚れた女の子との生涯初めてのキス。それが心地よくて気持ちよくて、だけどちょっと申し訳なくて。

 

「ちゅ……ん……」

 

 ただ、それ以上に嬉しくて。どうしようもなく嬉しくて。罪悪感よりも興奮と幸福感が勝り、もう自分でも止められない。理性の壁は中々直る事は無かった。

 結局、止め時も分からなければ細かいやり方も分からずに、息の吸い方も分からず体が酸素を求めた所で唇を離した。

 

「はぁ……はぁ……シャーレイ、ごめんね……」

 

 息を荒くしながらもシャーレイに謝る。だけど、もう一回、もう一回だけ、とひなたはシャーレイとの距離をゼロにした。

 ファーストキスとセカンドキスの味は、覚えていないけども満足感と幸福感と罪悪感が混ざり合ったような物だったと覚えている。




二十歳の女が十四歳の少女の寝込みを襲ってキスしたそうです、と書くとちょっと犯罪チック

果たしてシャーレイの貞操は何時まで持つのか
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