魔弾使いのTS少女   作:黄金馬鹿

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何もない日に書き溜めを作っていくスタイル

R-18版に関する活動報告を作りましたのでR-18版に関する意見はそちらへどうぞ


第三十魔弾

 再びルナの手でイロイロとあったが、少し欲求不満を解消出来た……させられたひなたは何かを悟ったような表情でルナを抱えながらシャーレイの使っている湯船へと向かった。一応、ルナにはもう人の胸は揉んじゃ駄目だと言っておいたが、何だか物寂しさを感じてしまったのは気のせいだと信じたい。

 

「ひなたお姉ちゃーん、降ろしてよー」

「またナニかされそうだから嫌」

「ごーめーんーなーさーいー」

「適当な謝罪だなおい」

「てへっ」

「くそ、可愛いから許してしまう自分がいる」

「お姉ちゃん、可愛いは正義だよ」

「待て、それは誰から聞いた」

「お母さん」

「君のお母さんは君に何をさせようとしていたんだよ……」

 

 何だかルナの育った環境に不安が募っていくが、今さら考えた所で何も変わりはしない。頭を抱えながらも抱えたルナを降ろしてからひなたも湯船につかる。若干熱い位のお湯が体の疲れを癒してくれる。

 口から何かが出ていきそうな快感を覚えながらシャーレイの隣に移動する。シャーレイも温泉が気持ちいいようでかなりだらしない顔をしている。

 

「あぁ~……」

「疲れが取れてく~……」

 

 だが、それはひなたも同じで一年ぶりの温泉に思わず顔がだらしなくなる。ルナは時々入っているから新鮮味が無いのか、単純にそう思わないだけなのか分からないが、よく分からないと言った感じの顔をしながらひなたの膝の上に乗ってひなたの胸板に背を預けた。だと言うのに普通の座椅子と変わらない感じで座られているという事実がちょっと心を抉ってくる。

 先ほどのルナにイロイロとされて洗い場の床に倒れかけたがなんとか耐える事が出来た。が、体力を思った以上に消費させられたのは変わらないため、背中を浴槽の淵に預ける。

 

「温泉って凄い気持ちいいね~」

「それなー……」

 

 思わず日本に居た頃の感じで返事をしてしまったが、シャーレイは特に気にしていないようだった。チラッとシャーレイの方を見れば、シャーレイは目を閉じて完全にリラックスした状態でお湯に浸かっている。その様子にエロスを感じないかと言われればそんな事はないと言えるが、欲求不満を若干解消する事が出来たため、理性の糸がプッツリと切れる事は無かった。

 が、多少はムラムラするのでそれを我慢しながらも今は温泉に自らの身を任せる。が、その途中でルナがひなたの膝の上から降りてひなたの手をひっぱる。

 

「どうかした?」

「お外行こう?」

 

 その言葉を聞いて一瞬露出プレイか何かかと思ってしまったが、すぐにその言葉が露天風呂の方に行こう、という言葉だと言うのは理解できた。が、一瞬でもそんな事を考えてしまう辺り性欲の問題は結構深刻なようだ。

 ちょっと火照ってきた体を冷ますのも目的に入れてシャーレイにも言って露天風呂と室内風呂を仕切る扉に手をかけて開く。露天風呂は幾つかに分けられた温泉があって、男湯であろう場所とは壁で仕切られていた。

 

「おー、広い広い」

「いっぱい温泉があるね……」

「効能とか違うんでしょ」

 

 こう見えても煙草を吸って酒を飲んでいる以外は基本的に健康体のひなたにとっては効能なんて二の次レベルだが、体の疲労がよく取れる効能を持っている温泉があるのなら入りたい。一人でテンションを上げながら適当な温泉に向かうルナをシャーレイに一時的に任せてひなたは温泉を見て回る。

 大きな壺のような浴槽の温泉だったり電気風呂だったり普通の温泉だったりサウナだったり水風呂だったりと色々と温泉はあったが、その中で特に目を引いたのはとある効能を持った温泉を見つけた。

 

「……成長促進と疲労回復」

 

 疲労回復は特に入りたかった物だが、もう一つの効能に心が引かれた。

 成長促進。つまり、この胸と身長をもっと増やす事が出来るかもしれない温泉。下を見れば見える絶壁を山に変えられるかもしれない温泉。

 魔法なんて物があるのだからもしかしたら胸が大きくなったり身長が伸びたりするかもしれない。ワンチャン。ワンチャンある。これは期待ではなくこの効能が本物なのかを確かめるかの実験なのであり、決して我欲で入るわけではなくて……

 

「……すぐには大きくならない」

「うっひゃぁ!!?」

 

 なんて考えて効能が書かれた看板をガン見していたら後ろからかけられた声にびっくりして足を滑らせかけた。

 

「だ、だれ!?」

 

 混乱して何度も転びかけながらも起爆銃を抜くために足に手をやる。が、そこにあるのは素肌だけで愛銃の姿はそこにはない。しまった、と思いながら魔弾をすぐに生み出せるように魔力を魔弾の作成に割り当てながら声をかけてきた下手人を見る。

 そして、そこにいたのは……

 

「……話をしに来た」

「ミ、ミラ……」

 

 ひなたが敵対していた筈のミラだった。

 

 

****

 

 

 ミラは攻撃する素振りどころか敵対している意思すら見せない。それがどうしてなのかは分からないが、ひなた如き何時でも殺せるのだと思われていての行動ならとても屈辱的だし惨めだった。

 そんな彼女と同じ温泉に浸かっている。裸の付き合いとかそんなのを考えている暇はなかった。

 話をしに来たと言ったのにそのあと何も話すことなくひなたの手を引っ張って温泉に入るミラに困惑と敵対心を抱きながらも同じ温泉に浸かり、今に至る。

 隣には全裸のミラ。服を取っ払って見る彼女の裸は胸がひなた同様可哀想な状態だったが、身長はそこそこあるため、ひなたのような幼児体系ではなくスレンダーな美人、という印象だった。一本に纏められていた綺麗な髪の毛はお湯に浸からないように綺麗に纏められていた。そんな少女を真横に若干の興奮を覚えながらも警戒だけは解かない。

 そうしていると、ミラが口を開いた。

 

「…………私、敵対する気はない」

「……」

「……パパの事は、あやまる」

「……意味が分かんないんだけど」

 

 本当に、意味が分からない。

 こっちは殺されかけたし保護した子を殺すために引き渡せと言われるし。これで敵対する気はないと言われても全く信用なんて出来ない。しかも表情筋が死んでいるのか知らないが、殆ど表情が変わっていない。だから表情や目の動きから何を考えているかなんて予想も出来ないのが彼女に対する警戒心や敵対心を増長させる。

 

「……上手く、言えない」

「……」

 

 もしかしたら、この子はただの口下手なのでは、なんて思ってしまったがルナを殺そうとするキチガイの仲間の一人だということをすぐに思い出して警戒心と敵対心を取り戻す。

 何故こちらから攻撃を仕掛けないのか、と思われるかもしれないが、ここまで近づかれている時点でひなたには何もする事ができない。それどころか魔弾使いなのに起爆銃を持っていない時点で戦う力がないような物なのに、こうも近づかれたらこっちが何か仕掛けられた途端に殺される可能性がある。だから、迂闊に手を出せない。

 今朝のようにシューターを手の中で砕いて放てばいいじゃないかと思われるかもしれないが、あれは砕いた瞬間に手の中で魔弾が暴れる上に細かい制御も出来ない。だから下手すると手が暫く動かなくなってしまう可能性もある。だから、あれは最終手段の一つであり、そう安々と使えるようなものではない。だから、大人しくしているしかなかった。

 

「……あの子」

「あの子……ルナのこと?」

 

 呟いたため聞いてみると、ミラは頷いた。

 もしかして、まだ引き渡せと言う気なのか。そう身構えているとミラはそれに近しいが、意味合いは違う事を話し始めた。

 

「……明後日までに、死ぬ」

「……は?」

 

 思わず聞き返す。が、ミラは何も話さない。

 明後日に、ルナが死ぬ? それは明後日にルナを全力で殺しにかかるという意味合いなのか? と思ったがミラが次に口にしたことはそれを否定する事だった。

 

「……魔獣が殺す」

「魔獣? まさか、街中に魔獣がすでにいて、ソイツがルナを殺すって言うの?」

「……合ってる」

「くだらない冗談は止せよ」

 

 ふざけて言った言葉を肯定され、舌打ちをしながらも呟いてしまう。

 この街中に魔獣が既にいる? 冗談じゃない。この街は結界がちゃんと張られている。だから、決して魔獣が入るなんてことはない。だというのに、もう魔獣はこの街にいるという。全くもって意味の分からない夢物語であれば根拠のない与太話だ。

 無表情故に本気で言っているように思ってしまうが、それでもミラは前言を撤回しようとしない。

 

「…………あの子、殺さないと」

「……」

「……もっと死ぬ」

 

 ルナを殺さないと、もっと人が死ぬ? そんな馬鹿なとその言葉を一蹴しようとしたが、脳内をとある言葉が過ぎる。

 

『何でも、まるで内側から爆ぜたように死んだ人間、だってよ』

『内側から? 爆弾でも飲んだのか?』

『いや、そこまで詳しくは無いんだが……』

『じゃあ、ただの眉唾じゃねえのか?』

『さぁな。けど、今は腕の立つ二人組がそれについて調べてるって言うぜ』

『腕の立つ二人組……?』

『温泉街付近じゃ、トップレベルだとか』

 

 確か、そんな言葉を駆除連合で聞いた気がする。

 内側から爆ぜる。もしも、それが魔獣の仕業だとするとミラの言葉を肯定出来てしまうかもしれない。もしも、ひなたが今考え付いた可能性の一つ……人間の体内に潜み、最後に宿主を殺す魔獣が居るのなら、それは何となくだが理解できてしまう。

 人間から人間へ。人間を殺しながら人間の間を移動していく魔獣。そんなのが居たとしたら、ミラの行動にも納得がいってしまう。

 ミラは、これ以上の被害を無くすためにルナを殺そうとしている。そして、ルナは自分がそれを分かっていたのに……分かっていたから死の恐怖から逃げてしまったが、ひなた達に拾われ懐いてしまった事で、ひなた達を殺させたくないと考え、ミラに殺されようとした。少し自意識が過剰かもしれないが、何故だろうか。そう考えると納得ができてしまう。

 極め付けには温泉街のトップレベルの二人組。これがもし、ミラともう一人の男だとしたら……邪魔をしているのはひなた達の方だ。出なくてもいい犠牲を出そうとしているのはひなた達の方だ。だけど、ミラ口下手過ぎて誤解され続けているが、優しい人だから何とかひなた達、無関係な人を傷付けないようにして対話しようとしている。この予想が全て本当なら……

 

「……馬鹿馬鹿しい」

 

 いや、そんな訳がない。そんな都合のいい話、ある訳がない。

 人に寄生する魔獣? そんな物、魔獣について調べたこともあったが見たことも聞いたこともない。先ほどの想像はもしもそんな魔獣が居たとしたらという過程からの結果なのだから、前提条件である魔獣が居なければこの想像はすべて崩れ去る。

 

「嘘を吐くのなら、もっとマトモな事を考えたら?」

「……嘘じゃない」

「証拠は」

「………………」

「なら信じられない」

 

 言われた事を全て信じてしまっていたらこの世界では生きていけない。そう知っているからミラの事は信用できない。

 

「…………明日の昼」

「ん?」

「……あの子、血を吐く」

「……」

「…………それから、半日以上」

「半日以上……経つと、どうなる」

「……体、破裂する。死ぬ」

 

 何か、冷たいものが背中を走ったような気がした。

 

『何でも、まるで内側から爆ぜたように死んだ人間、だってよ』

 

 体が、破裂する。

 

『まるで内側から爆ぜたように死んだ人間』

 

 内側から、爆ぜて死ぬ。

 

『内側から爆ぜたように死んだ』

 

 それは、もしかしたら本当に魔獣が寄生していて――

 

「そんな事、信じられるか!!」

 

 そんな夢物語、あるものか。そんな残酷で残酷で仕方がないそんな事実が存在してたまるか。

 あんな子供が既に死の運命を悟っていて、それを受け入れているなんて信じられるものか。信じてたまるものか。絶対に。

 

「……死ぬ直前。凄い苦痛」

「……」

「……楽に、してあげたいから」

 

 そう言うと、ミラは立ち上がった。共に巻き上げられたお湯がひなたの顔を濡らす。

 

「…………明日、尋ねる」

 

 額に手を当て表情を見られないようにしているひなただが、顔から滴る水滴が先ほど巻き上げられたお湯なのか涙なのかは、他人からは分からなかった。




こ  れ  が  理  不  尽  だ


~ひなたが宿に入ってから~


ミ(……汚れた。温泉いこ…………あの宿、温泉だけでも入れる)


~そして数分後~


ミ(……あの子いる。話しかけよう)
ひ「成長促進と疲労回復…………」
ミ(あっ……)
ひ「…………(ワンチャン。ワンチャンある)」
ミ「……すぐには大きくならない」
ひ「うっひゃぁ!!?」

ミラが居たのは実はタダの偶然でしたってオチ
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