魔弾使いのTS少女   作:黄金馬鹿

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情緒不安定主人公のひなたさん(クソ雑魚ナメクジ)


第三十二魔弾

 シャーレイとルナはそれから十分ちょっと経った辺りで部屋に戻ってきた。二人とも若干顔が赤いのは単純にのぼせかけたのか下着を身に着けていない故の恥ずかしさからか。どちらにしろ、二人とも若干視線が左右に泳いでいたり浴衣の裾を抑えていたりして可愛いと思ってしまう。

 こうして、シャーレイを見ていると先ほどまでの卑屈な考えを押し込められる。彼女の前でだったら、強い暁ひなたとしていられる。ただの強がりだが、今、それは有り難い事だった。悪いことを忘れることが出来るから。

 

「おかえり、シャーレイ。ルナ」

「た、ただいま……」

「う、うん、ただいま……」

 

 二人ともやはり言葉の歯切れが悪い。それに、よく見るとシャーレイは胸が強調されていてエロイ。ブラをしていないからか少しの振動で揺れているようにも見えるし何より風呂上りというのもあってエロイ。十四歳とは思えない体と表情がエロイ。おっぱい大きい。寄越せ。

 なんて事を考えていると、シャーレイは顔を赤くして苦笑いを浮かべながら自分の着替えの入った鞄の元へそそくさと移動して中から下着らしき物を一式つかみ取るとこれまたそそくさと内風呂の脱衣所へ行って何も言わずに籠った。

 

「……ルナも下着着てないでしょ」

「は、恥ずかしいからやめてぇ……」

「あはは……っていうか、ルナって下着の替えないじゃん」

「うぅ……今日からパンツ履けないのは恥ずかしいよぉ……」

 

 愛いやつめ、とひなたはグリグリとルナの頭を押し付けるように撫でる。それは自分を慰めるためでもあったが、ルナは恥ずかしさからか軽く目を回しながらされるがままだ。それがまた可愛い。

 が、流石に下着無し、というのは恥ずかしいだろう。ひなたも忘れていたから今は下着を着用していないため、軽く恥ずかしい。見られても相手は子供とシャーレイなのだからそんなに恥ずかしい、という訳でもないが、この格好で外には出たくない。そこでもし何かの理由で誰かに見られたら死にたくなる。というか見た相手を殺す。血を吸ってからジェノサイドバスターで塵も残さずに消滅させてやる。出来ることならジェノサイドブラスターで消滅させる。

 そんな物騒な事を考えていると顔の赤みが軽く失せたシャーレイが脱衣所から出てきた。どうやら無事に下着は着ることができたらしい。

 

「シャーレイ。下着を着たついでにルナの下着を買ってきてくれないかな」

「え? 私?」

「実はボクも着るの忘れてたり」

 

 といって若干胸元を肌蹴させればあと少しでひなたの胸が完全に見えるくらいになる。それを見てシャーレイは若干顔を赤くしながら頷いた。

 

「あ、ルナも連れて行ってあげて。本人がいないとサイズとか確認できないだろうし」

「え、でも……」

「買うまではボクの下着でも着せればいいよ。少しぶかぶかだけど手で押さえたりしたら落ちないだろうし」

 

 言ってて悲しくなる。違法ロリとほぼ同じ体系とか。

 合法ロリだとは自覚しているが、こうやって改めて自覚すると凹む。不貞寝したくなってしまう。畜生と呟きながらシャーレイがひなたの下着を鞄から取り出すのを尻目に煙草を咥え火を付ける。この部屋は別に禁煙という訳ではないし普通に灰皿もあるので遠慮なく吸う。

 ルナが下着を脱衣所で着ている間、待っているシャーレイに向けておつかいを頼む。

 

「シャーレイ、ついでにお酒買ってきて。カクテル系の甘いやつ」

「えー。ちっちゃい瓶のやつでいい?」

「ちょっと文句言いながらも買ってきてくれるシャーレイマジ天使」

「も、もう……」

 

 調子のいいことを言っている自覚はあるがシャーレイの反応が楽しくてついついニヤケてしまう。やはりシャーレイは天使だ。結婚したい。

 なんて事を思っていると、若干不満げな顔をしたルナが脱衣所から出てきた。

 

「……なんか不満げだねぇ」

「う、上は大丈夫だけど……パンツが落ちちゃいそう」

「シャーレイ、お酒。今物凄く酔いたい気分」

「はいはい。ルナちゃん、パンツは抑えながらでいいから行こ?」

「う、うん」

「畜生! 巨乳は滅びろ!! Aカップ以上は消えろぉ!!」

「それ私含めて七割以上の女の人が消えるよ!?」

「但しシャーレイは除くぅ!!」

「ひなたちゃんが何考えてるのか分からなくなってきちゃったんだけど!!?」

 

 Aカップ以下のひなたにとってはAカップ以上は忌むべき存在だった。シャーレイを除く。

 まさかこうして巨乳を性的に興奮する対象ではなく忌むべき対象として見ることになるなんて思いもしなかった。やはり人生何があるかわからない。いや、本当に。

 シャーレイが情緒不安定なひなたにせめて暴れないでね、と一言告げてからルナと一緒に部屋から出て行った。流石に暴れないさ、と言いたかったが余り自信は無かったため苦笑いで見送った。

 そして、部屋が静かになり、吸っていた煙草の火がフィルターの直前まで来た。

 

「……もう一本」

 

 誰もいない部屋で呟いて煙草を灰皿に押し付けて消火してから新たな煙草を口に咥える。余り煙草を吸わないでいると、またナーバスになって変なことを考えそうだったから。

 別に、自分が貧乳だから、とか幼児体系だから、という理由でナーバスになるのではない。ルナの事で……自分の力に。だ。煙草を吸っていたらその気分も多少は晴れてくる。煙草の覚醒作用様様とも言えるが、それでもやはり考えてしまうものは考えてしまう。

 ひなたの魔法では、ルナを救うことは出来ないだろう。一度回復魔法の親戚とも言える魔法の一つ、レジストの魔法を込めた魔弾をルナに噛み砕かせようとも考えたが、それはあくまでもその人に魔法を解除するという魔法であり、魔獣を体の外に出す力なんてない。一度やらせてはみるが、どうにもならないと考えていいだろう。

 だが、今のひなた以上に心が苦しいのはルナの方だろう。己の命の長さを悟り、それでもひなたとシャーレイには悟られないように元気に笑顔で振るまっている。とても、苦しくて悲しくて辛くて怖い筈なのに、ああして歳相応の振る舞いと笑顔をばらまいている。ひなたよりも、心に余裕が無いのに。

 

「どうして、ボクは……」

 

 主人公じゃないんだ。

 その言葉は出ることはなかった。そんなもの、現実に存在するわけがないとわかりきっているから。

 ご都合主義なんてない。この世は全て偶然と運で巡り巡っている。シャーレイと会えたのだってただ運が良かっただけだ。生き残り続けれたのだって運が良かったからだ。ひなたが強かったからじゃない。ひなたが主人公だったからじゃない。ヒーローだったからじゃない。ヒロインだったからじゃない。

 先ほどまでの可笑しな雰囲気での狂乱はもう出来ない。一人では、そんな気分にはなれない。だから、酒が欲しかった。二人が寝た後、自分の気持ちを誤魔化すための酒が。何も考えずにグッスリと寝れるであろう酒が。悦に浸って悪いことを忘れたまま泥のように眠るために、欲しかった。

 前髪を握りつぶすように握りこみ、心のモヤモヤをそれで発散できないと思い知って大人しく煙草の灰を灰皿に落とす。

 どうしようも出来ないことがこんなにも辛い。見ているだけしかできないのがこんなにも辛い。これだったら、ミラにヘイト役を頼み、二人でミラを恨み続けた方が精神的には楽だったかも――そっちは別ベクトルで辛いと考えればすぐに分かった。

 だから、今のひなたに出来る選択肢は、限られている。

 ルナをミラに受け渡し、ルナが苦痛に苦しむ前に殺してもらうか。ルナの最後を見届けるか。ルナを考えれば、前者の事が一番なのかもしれない。苦痛に苦しむよりも、眠るように殺してもらう。きっと、ミラの剣技ならルナが自覚する前に首を斬り飛ばす事だって可能だろう。魔法も使えるのなら、その魔法で気づかぬうちに殺してもらう事も出来る。

 だが、ひなたはルナに生きていてもらいたい。あんな幼い子が理不尽に死ななきゃならないなんて間違っていると、そう思っているから。だけど、解決策なんて思いつかない。魔獣の正体だって分からない。少なくとも、明日の昼までは、ルナが苦しまない猶予がある。その日までに手がかりがあれば、と思ったがそんな物は恐らく無いだろう。ルナの体には、可笑しい部分なんてなかった。魔獣が寄生しているであろう根拠も何も。だから、探したところで情報なんて見つかるわけがない。

 駆除連合に頼んでルナに巣食う魔獣を追い出してもらう事も考えた。だが、そんなピンポイントな魔法を使える人間なんて居るわけがないし聞いたことがない。だから、返ってくる言葉は二次災害が起きる前に殺せ、という冷酷な言葉だ。駆除連合で仕事を受けているから、聞かなくたって分かってしまう。

 

「……詰みだ」

 

 これは、もう詰みだ。

 ルナを助ける術は、ない。

 気が付くと煙草はフィルター直前まで燃えており、吸える煙の量も少なくなってきた。その煙草を灰皿に押し付けるが、何時の間にか灰皿には灰と煙草が十本分ほど転がっていた。無意識に吸っていたのか、とひなたは驚き、煙草の箱を揺すって叩いて新しい煙草を出そうとするが、やはり空になっており新しい煙草なんて出てこない。

 

「……考え込むと煙草に逃げる癖出来ちゃったなぁ」

 

 空箱を握りつぶして新しい煙草を自分の鞄から取ってきて片手と口で封を切る。そして新たな煙草を口に咥えて煙を肺に落とす。肺に落とされた煙を吐き出すと煙草の覚醒作用が若干の快楽と気持ちよさをくれる。

 完全に使い方が麻薬のそれだが、煙草なんて合法麻薬みたいな物なので今更気にしない。

 新しい箱の一本を灰皿に擦り付け、新たな煙草を口に咥え、火を付ける。その辺りで丁度部屋の引き戸が開く音がして程なくしてシャーレイとルナが入ってきた。

 

「お待たせー……って煙草くさっ!?」

「す、すごい煙草の臭い……」

「あははー。おかえりー」

 

 この短時間でこの量は流石に新鮮な空気を吸ってきたばかりの二人にはちょっとキツイ位の臭いになったらしい。確かに、若干臭いがキツい様な気がしなくもないが。

 

「何本吸ったの……って、聞かなくても分かるか……」

「灰皿が剣山みたいになってる……」

「そんなもんだよ、喫煙者の灰皿って」

 

 ケタケタ笑いながら煙を吸う。だが、シャーレイは軽く怒り心頭なようで。

 

「……煙草没収!」

「あぁ!?」

 

 力づくで煙草を取られた。やはり、健康を気にするシャーレイにとってこの短時間で煙草を吸いまくったのは許せる事ではないらしい。さっき火を付けたばかりの煙草が灰皿に押し付けられ封を切ったばかりの煙草とライターが奪われた今、ひなたには新たな煙草を吸う手立てが無かった。

 が、こうしてシャーレイとじゃれあっていれば悪いことを考えなくても済む。煙草もいらない。

 

「ほら、お酒!」

 

 ちょっと不機嫌なシャーレイが酒瓶と取り出して渡してくれる。それはひなたの注文したカクテルのような果実酒で、家で飲んでいるやつよりも飲みやすくて甘くて美味しい酒だった。

 

「なんやかんやでお酒を渡してくれるシャーレイマジ天使」

「こっちの方が体に悪くないし……」

 

 ひなたはそれをさっそく抱えて冷蔵庫の中に入れた。夜中に飲むのが楽しみだ。

 

「ルナ、あれは飲まないようにね?」

「お酒だから?」

「うん。ルナが飲むと捕まっちゃうから」

「はーい」

 

 こうして話していれば、考えずに済む。

 ひなたはナーバスな考えを思考の隅に追いやって偽りない笑顔を浮かべた。全ては、明日だ。明日考えればいい。そう、明日に……




さくしゃ の りふじん こうげき!

こうかは ばつぐんだ!
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