とは言ってもただの日常的な物を書いただけなので刺激等は全くありません
ミラが家に来てから一週間の時が経った。その間、ひなたは稼ぎに向かい、シャーレイは家事に勤しみ、ミラは新しい家に慣れたりこれから住む事になる街をその辺で買ってきた老人用の杖を両手に歩き回っていた。暴漢か何かに襲われる可能性も思い至ったが、ミラなら片足でも暴漢如きに遅れを取るなんて考えられないからだ。彼女は魔法使いよりも威力も精度も低いが魔法が使えるため、別に機動力が削がれても戦う力のない変に威張った男なんか数秒で戦闘不能に出来る。
そしてひなたの方は一週間フルで働いたため、三人でも二週間は生きていけるくらいの金を稼ぎ、ついでに三人分のお小遣いを稼ぐ事も出来た。それに加えて旅行で使わなかった分の金もあるため、暫くはニートしていても問題は無いだろう。
そんな金をシャーレイは受け取り、管理すると同時にひなたからひなたの分の小遣いを受け取り、シャーレイはある物の作成を任されていた。木材と金槌と釘。それから鋸や鑢を買ってきてもらって作るもの。それは家具等ではなくミラの生活を出来るだけ楽にするための物だった。
「えっと、これをこうして……あ、外れちゃった。じゃあここは接着剤を使ってっと」
家の庭で家事をし終わってからコツコツと材料を買い集めて道具を買い集めてミラとひなたが出かけている時にテキパキテキパキとそれを作っていく。こうして普通に物作りが出来るのはシャロンと暮らしていた頃、捨てられていた壊れた家具や木材で家具を作っていたからだ。スラムでの生き方がこうして現れているのは、あのクソッタレな場所で必死に生きていた事が……シャロンと生きた十数年が報われている気がして苦ではなかった。
太陽の日差しを浴びて汗を流しながら。しかし、それを拭く綺麗なタオルがあるという事実が今の自分はあの街で生きていた時よりも遥かに裕福で幸せだという証拠で。その動作一つ一つが嬉しかった。
「ゴムで留めて、ここは釘で固定して……」
自分で引いた設計図を見ながら一つ一つ丁寧に組み立てていく。時々、釘が届かなかったりするため接着剤で無理矢理くっ付けその周りを接着剤でまた固めて、そこに斜めから釘を打ってみたりで更にそれを強固にして。そんな感じの工程を一人でこなしていく。
既に作成から三日。それまではパーツを自分で削って鑢にかけて綺麗にしたりとある玩具を悪い笑顔を浮かべながら作っていたりとしていたが、それも今日で終わりだ。二本一セットのそれを手作りで完成させ、最後に接着剤が必要だった部分を自らの体重を思いっきりかける事で耐久性を確認し、少し難があると思えば再びそこを補強して。他の部分も壁にぶつけたり殴ってみたり蹴ってみたりして一切悲鳴を上げなかったのを確認してようやく息を思いっきり吐いてそれを壁にたてかける。
「かんせー! 疲れたぁ……」
時刻は既に正午を回っており、気が付けば昼食を忘れて作業をしていた。それを思い出すと今更ながら腹の虫が鳴く。誰も聞いていないが、なんとなくの恥ずかしさに苦笑いを浮かべてから完成品を片手に家の中に戻る。家に戻るとタイマーで起動していた空調が火照った体を涼めてくれる。
「ふぅ……ご飯作っちゃおっと」
汗を拭き、タオルを洗濯物を積んだ籠に入れてから台所へと向かう。今日のお昼は何にしようと冷蔵庫の中を覗き込みながら考えていると、玄関が開く音が聞こえた。
「ただいまー。あれ? シャーレイいる?」
この声はひなただ。今日も魔獣狩りに行っていた筈だが、早く終わったのだろう。すぐに冷蔵庫を閉じてひなたに顔を見せに行く。
「おかえりー。今日は早かったね」
「案外近所での依頼があったからね。サクッと終わらせてきたよ」
ローブを脱いで壁にあるハンガーにかけてからベルトに着けたポーチと起爆銃を入れたホルスターをテーブルの上に置いてソファに寝転がるひなた。これがただ散歩してきただけなら少しは手伝って、と文句を言うが、こう見えても数キロ単位での往復と戦闘を済ませてお金を稼いできた後だ。そんな事は言えない。それに、こうして帰ってきたひなたのお世話をするのは嫌いではないためなんとも言わない。と、言うかこうしてぐでーっとしているひなたを見ていると、彼女の生活の大半を支配していると思えて何となく快感を覚えてしまっている。
ふと居なくなったら泣きわめいて自分を探して家事も出来ずにそのまま寂しく生きていく事になっちゃうんだ、と思うと彼女の生死を握っているみたいでゾクゾクする。最初は誰かと一緒にいたいから、捨てられてくないから、という依存だったのにいつの間にか彼女を支配してそのままずっと一緒に居たいという依存に変わってしまっている。しかもシャーレイに自覚なし。
全ては温泉街でひなたを滅茶苦茶に犯しつくした辺りからだが、それに関しても自覚なし。そしてひなたもシャーレイに依存してしまっているので逃げようとも思わない。win-winとも言えない何とも奇妙な共依存の関係が構築されている事にこの二人は気づいていない。
そこに二人に捨てられたら死ぬしかないミラまで加わっている物だからもう奇妙過ぎる三角形が構築されている。しかもそれがより良い形でガッチリ組み合ってしまっているのだから更に質が悪い。変な依存関係である。
「そういえばシャーレイ。お昼ってもう食べた?」
「今からだよ?」
「そうなの? じゃあどうせだし食べに行かない? 見た感じ、あれも完成してるからミラも呼びに行きたいし」
と、言いながら部屋の中にあるシャーレイが先ほど完成させた物をチラ見する。ひなたが見ても、大分いい感じに出来上がっている。これはミラに渡す物なので、どういう反応をされるのかは分からないが、それでも嫌な顔はされない筈だ。それに、もしかしたら機動力を今よりも確保できて戦闘も魔獣との物ならこなせるようになるかもしれない。
シャーレイはひなたの提案に昼食は全くの手つかずだったため二つ返事で了承し、ひなたは腰に財布を入れたポーチを着けた。そしてシャーレイはそのまま外に行こうとして、服が汗を吸って軽く気持ち悪いのと普通に汗臭いのでは、と思い外へ行こうとする足を止めた。
「ちょっと着替えてくるね」
「え? それ部屋着だっけ?」
「汗臭いから……さっきまで外で作業してたし」
「あー、なるほど。ごめんね、変なこと聞いて」
「ううん、それくらい別にいいよ」
先に一言言っておいてから階段を上がって自室へと向かう。
現在、この家は一階がほぼ共有スペースで二階がひなたとシャーレイのもう二人の私物を置くだけの部屋と化した各自室があり、そこに加えて二人の共有の寝室。それから空き部屋が一つと物置部屋になる予定の部屋が一つ。そして、一階の方にも一つ空き部屋があり、風呂もある。そして、一階に二つある部屋の内一つはミラの部屋になっている。もう一つは空き部屋だ。
女二人で住むには広すぎた家は現在女三人で住むには広い家に変わり、どっちにしろ広い家となった。ここまで広いのにひなたの金でどうにかなったのは完全に立地の悪さからだが、ここまでスペースを持て余すのならもう少し立地のいい場所の家を買った方がよかったかもしれないと思ってしまう。
が、そんな事はつゆ知らず。全部ひなたにお任せで家を決めたシャーレイは自室に入ると服を脱いでから選択済みの外行き用の服に着替え、先ほどまで着ていた服を抱えて階段を下った。その服を洗濯籠に放り込んでからぱたぱたと少し急いで玄関で待つひなたの元へ。
「おまたせ」
「言うほど待ってないよ」
壁に背を預けて煙草を吸っていたひなたからはどこかクールっぽさが漂っていたが、シャーレイは特に気にしない。夜にあれだけ乱れるのだからもうクールっぽいという印象はシャーレイの中から完全に抹消されているからだ。
ジーッとひなたを観察するシャーレイに本人が気が付き、どうかした? と聞くが、何でもないよと返す。煙草を咥えながらひなたはドアを開け、ドアが開いている内にシャーレイも中から出る。
外の日差しに思わず目を隠してしまうが、すぐにこの日差しにも目は慣れ、目を隠す手も必要なくなる。ひなたの吹き出す煙が空へ上っていき、気が付くとそれは太陽の日差しの色と同化して完全に目では見えなくなる。灰を携帯灰皿に落としながら歩くひなたの隣を歩き、街の中心へと向かう。よく見ても姉と妹……それも、シャーレイが姉でひなたが妹だが、ここら辺に住む人はもう煙草を吸って歩く銀髪の合法ロリの事を知っているため誰もひなたの事を咎めない。むしろすれ違うと挨拶してくれる。それに対してひなたは何時もども。と一言返すだけだが。
隻腕の銀髪合法ロリなんて探しても見つかるような物ではないため自然と周りに住んでいる人やこの街の人には知られている事だが、それでも知らない人の方が多数で、衛兵等とすれ違うと時々子供が煙草を吸うなと言われる。その時はいつも身分を確認できる物を見せて黙らせている。
気付けばひなたは煙草を一本吸い終わって携帯灰皿に吸殻を落とすとそれをポーチに仕舞った。ひなたは何か思い悩んでいたりストレスを感じたりすると煙草を続けて二、三本と吸っていくがそれが無いときは基本的に手持無沙汰の時に吸ったりしてインターバルを置いている。だから、シャーレイが注意することもない。
「ん? あそこに居るの、ミラじゃない?」
「え?」
携帯灰皿をポーチに仕舞い、口が少し寂しいのかガムを噛み始めたひなたがモゴモゴと口を動かしている最中に少し遠くを指さす。そこには確かに老人用の杖を二本使って器用にバランスを取りながら片足で歩くミラの姿があった。
「ホントだ」
「丁度良かった。声かけていこっか。一緒にお昼食べれれば食べよう」
「そうだね。それに、歩くのも少し大変そうだし」
「慣れればそうでもないんだけどね」
と、欠損歴一年のひなたがシャーレイに言う。
そうなの? と返すとひなたはそんなモンだよ、と一言返し、一泊置いてから自分の場合は腕だが理由についてを説明し始めた。
「まぁ、簡単に言えば慣れちゃうのさ。ボクの場合は腕だけどね」
「そういう物?」
「そういう物さ。もっとも、幻肢痛は付き纏うけど、腕が無いならこうしたらいい。足が無いならこうしたら体を動かせるって体が自然と適応するのさ。幸いにも、人間は慣れるのが得意な生き物だからね」
その言葉にシャーレイは特に意を唱える事無く納得できた。
自分がスラムに身を落として生きていく事になってから。まず、親がいない生活に慣れた。次に、シャロンと生きていく生活に慣れた。次に、男共の下衆た視線の中で生きていく事に慣れた。腐りかけの食べ物を食す事に慣れた。様々な事に慣れていった。そして、つい最近も。こうして、一般人同様の生活をする事に慣れた。
こうして環境に慣れていくこと。それが人間は得意なのだと言われると実体験を含めて納得できた。
ひなたはまだ謎が少しだけある少女だけど、きっと腕が無い生活に慣れて、今まで一緒に生きてきた人を失い、一人で生きていく事に慣れて。そして、復讐に生きることに慣れてきたのだろう。そう考えれば、ひなたの言った言葉は全てが納得できた。
だから、きっとミラも慣れていくのだろう。この街で生きていく事と、足が無い生活に。そう考えれば、今はまだ慣れている最中で決して憐れみを持ってほしくないと。納得ができた。彼女も必死なのだから。必死に新たな生き方に慣れようとしているのだから。
「……偉そうな事言っちゃったね」
「そうかな? 普通に良い事言ったと思うよ?」
「うん、一言余計な言葉も無かったし百点の返し」
「付け足そうか?」
「冗談。じゃ、このまま見るのもアレだし、声をかけに行こうか」
軽口を叩き合ってミラの元へと向かう。こうして軽口を叩き合えるのは互いが互いを対等に思っているからで。それが何となく嬉しくてちょっとスキップしそうになりながらも前を歩くミラへと近づく。
ミラはゆっくりと歩きながらも後ろから近付いてきた二人に気が付くと振り返り、二人の姿を確認した。
「……どうしたの?」
相変わらずな表情作りの下手っぴさと言葉足らず。だが、その言葉に怒気等は感じられず、単純にどうしてここにいるのかを不思議がっているのがその無表情な表情の中にある小さな感情から読み取る事が出来た。
既にミラの細かな感情を言葉や無表情の中からある程度把握できるようになったシャーレイがミラの疑問に対して答えを投げた。
「お昼を外で食べようってなったの」
「……いいね」
「でしょ? たまにはね?」
発案者のひなたが人目につかないようにガムを包み紙に吐き出してから横やりを入れた。それを携帯灰皿に入れている事からゴミを入れる袋を用意していないのを把握しちょっと笑いかけてしまう。後で捨てる時に大変かもしれないなぁ、とは思う物の、シャーレイもゴミ袋なんて持ってきていないため何も言えなかった。
老人用の握る場所が一番上にしかない松葉杖のように使うには少し使いにくい杖で上手く体を動かしながらミラも二人に合流し、二人は彼女の歩く速さに合わせて並んで歩く。
太陽を受けながら歩く事数分。日本で言うところのファミレスのような店を見つけ、ここで食べようとシャーレイが提案した事でそこで食事をする事になった。三人でそこに入り、少し変な顔をされた物の気にする事無く案内された席に座った。きっと、隻腕と隻脚の客が来たことで吃驚したのだろう。その程度で不快には思わないしむしろ普通だと思ったため何も言わなかった。
ミラとひなたが隣り合って座り、正面にはシャーレイ。三人でメニューを見ながら何を食べるかを決める。
「……ボクは決まったよ。ミラ、後は選んじゃって」
「…………」
選ぶのに必死なのか、ミラは返事をしなかった。それに何となく笑ってしまったがバレていないようだ。
ふと視線を投げるとテーブルの上に灰皿が置いてあったためそれを手繰り寄せてから煙草を取り出して火を付ける。そして最初の煙を吐き出してから灰を灰皿に落とす。そして煙草の臭いに気が付いたのかシャーレイがメニューから顔を上げた。
「あ、また煙草吸ってる」
「灰皿あったしね」
「身体に悪いよ?」
「腹をぶち抜かれたりアバラ全滅させられたりでもう身体に悪い事だらけだったんだから気にしない気にしない」
「そりゃそうだけどさ」
「……それとこれとは話は別」
「そう言われると何も言い返せないかな」
だがひなたは煙草を吸う手を止めない。もうこれに関してはシャーレイも諦めているため全く……と声を漏らしただけで何も言う事は無かった。すぱーと煙を何回か吐いた所でシャーレイとミラも頼むものが決まったようで呼び鈴で店員を呼んだ。
店員は数十秒でやってきた。
「はい。ご注文をどうぞ」
「えっと、ボクはこれで」
「私はこれをお願いします」
「……これのセット」
「はい。以上でよろしいでしょうか?」
「大丈夫です」
あたり触りの無い注文を行い灰皿の淵に一旦置いてあった煙草を再び咥える。どうやら、この煙草はミラが吸っているとでも思われたのだろう。明らかに視線が煙草を行ってからミラの方を行っていたからすぐに分かった。ミラは同年代と比べれば雰囲気から大人に見えるため、成人していると思われたのだろう。胸は可哀想な事にひなたと同列だが。
ミラは自分が本来の年齢よりも年上に見られた事に気が付いていないため何も言わないが、ひなたは内心ケタケタ笑っている。自分が幼児体系だという事は忘れて、だ。
「ミラちゃん、今日は何処に行ってたの?」
「……駆除連合」
「あ、その帰りだったの?」
「……そう」
シャーレイとミラの会話を聞きながらひなたは笑いを軽く堪えつつ煙草を咥えている。この二人も最初は口数が少なかったが、今になってはかなり口数も増えてきた。ミラに対する誤解が解けてから、二人はやはり何となくの居心地の悪さに口を閉じている事が多かったがひなたが仲介する事で二人は普通の友人程度には会話を弾ませるようになった。
だが、最近というか温泉街から帰ってきてからシャーレイのひなたを見る目が明らかに獲物を見る目になっている時があったり、それを受けるひなたに対して同情の視線を向けるミラだったりと、少し関係が変化してきている気がした。
前回犯された記憶はないひなただが、その視線を受けるだけで背筋がゾクっとする。体は覚えているため恐怖を覚えるのは必然だった。最近になって吸血を抑えてシャーレイを発情させないようにしていたりするためか、煙草の本数は増えるわシャーレイにバレると襲われる可能性があるから家で一人で発散出来ないわでひなたも最近の生活は変わった。具体的には性欲が以前よりも増した。
ぽけーっとしながら煙草の煙を肺に入れては吐き出してを繰り返していると、ふと目の前にミラの手があり、それが振られているのが見えた。そこでようやく意識を戻してミラの方を向くと、二人はどうしたの? と言いたげな目をひなたに向けていた。
「あ、あぁ……ちょっとボーっとしてたよ。で、なんだっけ?」
多分、何かしらの事をひなたに聞いたがひなたがボーっとしていたため、先ほどの行為に入ったのだろう。ひなたは煙草を一旦灰皿に置いてから二人が何を聞いていたのかを改めて尋ねた。
「……シャーレイが」
「私もやっぱり自衛位は出来た方がいいのかなって思って。ひなたちゃんはどう思うかなって」
と、なると駆除連合の話から戦えた方がいいかもしれない、という会話に変わっていったのだろう。大体の会話の流れを頭の中で予想してからシャーレイの言葉に答える事にした。
ひなた的には危ない戦いに参加するのは反対だが、自衛するだけなら話は別だ。戦力的には半分以下にまで落ちたミラとそのミラと互角かそれ以下かのひなただ。それより弱かったとしても時間を一秒でも稼げればひなたもミラも手を打つことは可能だ。だとしたら出来た方がいいに決まっている。
「出来た方がいいかなって思うけど……それで危険な事に首は突っ込んでほしくないって感じ」
「流石に危険な事はしないってば……」
荒事はひなた。家事はシャーレイ。昔の夫婦のようだが、これは前から決めている事だ。シャーレイもそれは分かっていると苦笑いしながら言っている。
だとしたら、ひなたは全面的に賛成出来る。だとすると、特に訓練せずに扱える武器としては……
「なら、銃とか使ったらどうかな?」
「え? 起爆銃?」
「違う違う。普通の銃。オートマチックピストルの事」
「……リボルバーじゃなくて?」
「あっちは反動がね」
この世界にもリボルバーはある。そして、起爆銃の最新型はオートマチックピストルだ。つまり、オートマチックピストルの機構は作れるという事であり、実弾を使うピストルも勿論存在する。
だが、この世界での銃はそれが最新型なので結構値が張る。この世界のリボルバーが地球でのピストル程度の威力であり、この世界のピストルは勿論それよりも貧弱なため威力はそこまでだが、それも弾である程度は補える。だから、余り反動も強くなくそこそこの威力を持つピストルが今のシャーレイのも使えると判断した。
それを察したのかミラも頷いた。この世界では基本的にサブアームはメインアームの射程と合わせた武器を持つためピストルを使う人間は少ないが、それでも高速で弾を飛ばす拳銃を持つのは牽制にもピッタリだ。ちなみに、ひなたのサブアームは己の魔弾を零距離爆破でミラはポーチの中のバタフライナイフだったりする。
「今度買いに行く?」
「じゃあ、行きたい。後、ホルスターはひなたちゃんとお揃いがいいかなぁ、なんて」
「あったらね? これも一年前のやつだし」
今日はローブを羽織っていないため足のホルスターは剥き出しだ。ミラがそれを見て確かに古い、とボソッと声を漏らした。今の型は確かデザインが少し変わっていた筈だ。別に古いからどうだ、という訳ではないが、ひなたはもうこれを使い慣らしているため、最新型に変える気はサラサラ無かった。
というか、旧式起爆銃を仕舞えるホルスターなんてそんなに多くないため探すのが面倒だった。今使っている起爆銃なんて十年以上前の型だ。もういい歳だったあの人が現役だった頃に使っていた銃なのだから、それ位は型落ちしている。マニアには堪らない逸品だ。
ちなみに、今旧式起爆銃を買おうとしたら新型起爆銃が十数個は買えてしまう。
「……旧式なのに綺麗」
「そりゃ、一応簡単なメンテはしてるし」
ミラが勝手に起爆銃を手に取って見ているが、別に不快には思わないため取り返したりはしない。それどころか褒められたため少し気分がいい。
もう十年前から使われている起爆銃なんて普通は結構ボロボロだが、細目に分解してはパーツごとにメンテして組み立てたりしているため細かい傷はあってもかなりの美品だ。大きなメンテは武具屋へ行かないと出来ないが、塗装の剥がれ等は自分でも何とか出来る。実は何回か似た様な色で塗り替えたりしているため、塗装ハゲはどこにもない。
「……デザインはかっこいい」
「でしょ? 銀色と金色。結構好きなんだよね」
「……髪色と同じ」
「そ、そうだね……」
言えない。実は塗装ハゲが起きた時にもう全部塗り替えちゃおうとなって塗り替えた際に元の銀色じゃなくて自分の髪色と同じ銀色を使ったなんて。本当はもう少し違う銀色が元の色だったなんて。
金色だけは元と同じ色なのにどうして銀色だけ違う銀色を使ったのか。自分でもわかっていない。多分適当だった。あははと乾いた笑いで誤魔化しながら最初に持ってこられた水を口に含む。
「……そういえば、ヒナタの髪の毛」
「ん? 何かな?」
「……綺麗な銀色」
「そうかな?」
綺麗な銀色だと自分の外見を男時代の目線で見てみれば確かに思うが、ナルシストではないため余り声高らかに肯定は出来ない。この銀色の髪も元は膝下まであった超とその前に付く位のロングヘアーだったが、それも一年前に炎に突っ込んだ際にチリチリになったためかなりバッサリ切った後だ。あれが無ければ今のひなたの髪形はその時と変わりなかっただろう。
地毛が銀髪なのは初めは驚いた。が、今はもう慣れた。というかこの世界はアニメや漫画のように結構地毛がカラフルなので驚いたら負けだ。
「ほら、もうすぐ来るからボクの髪の毛離して」
「……ん」
ミラに髪の毛を離してもらって少しボサボサになった髪の毛を片手で直す。
「ほんと、ひなたちゃんの髪の毛って綺麗だよねぇ……夜の結構乱れてた時とか――」
「シャァレイィ……?」
「ごめんなさい」
シャーレイが余計な事を言いそうだったのでプニプニのほっぺたに起爆銃を突きつける。流石にマズかったとシャーレイも思ったのかすぐに謝った。
だが、その言葉を聞いたミラが何か余計な事を察したのか何か微笑みながらひなたの肩を叩いた。
「……私はレズでも気にしない」
「おうその口閉じれ」
なんかミラが余計な事を言ったため顎の下から起爆銃を押し付けて無理矢理口を閉じさせる。あう、と小さな声が漏れて一瞬可愛いと思ってしまった。
「……た、ただ、私はバイだけど襲わないで…………」
「だってさ、シャーレイ。襲ってあげなよ」
「今度ね」
「…………え゛っ」
シャーレイにロックオンされたミラが素で変な声を漏らす。これで的が減るとひなたはニヤけた。
が、ひなたは気づいていない。的が増えてもどうせ気絶させられるまでヤられる事に。
そしてシャーレイもシャーレイでレズと言われたのに何も言い返さなかった。これが男に近寄らずに生きてきた少女の末路だったとさ。
****
結局食事をしてから三人は何処にも寄る訳でもなくそのまま家へと帰った。
そして、帰った二人はミラについ数時間前に完成した物をプレゼントした。それを受け取ったミラは首を傾げた。
「……これは?」
作っていたのは一本の棒にそれを手に持つための棒が一本飛び出し、更にそれを手に固定するためのベルトが付いた物。
「ほら、今の杖じゃ歩きにくいでしょ? これなら体重を乗せやすいしそこそこ頑丈だし」
簡単に言えば杖だ。ロフストランドクラッチと呼ばれるタイプの杖で、松葉杖のように脇で挟んで体重を掛けるタイプの物ではなく片手で持ってベルト部分を手に巻き付けて固定する。これなら老人用の杖よりはまだ楽に歩く事も出来れば杖に力を込める事も可能だろう。
試しにミラが二本一セットのシャーレイお手製の杖を手に動いてみると、少し慣れないがちゃんと動けていた。
「……慣れるのに時間かかる」
「駄目かな……?」
「……全然。凄くいい」
「よかった……」
どうやら、ミラは気に入ったようだ。時々片手だけに装着して動いているが、それでも十分に動けるらしい。義足の無いこの世界ではこれが精いっぱいだが、ちゃんと動けるだけマシな方だった。
ちなみに、この杖はこの世界には売っていないためひなたの知識から生まれた物だ。
「……少し、出かけてくる」
「何処に行くの?」
「……手紙。忘れてた」
どうやら、誰かに手紙を出したいらしいのだが、出しに行くのを忘れていたらしい。ミラは少し明るい顔で外へと出て行った。
ひなたはそれを見送ってから酒でも飲もうと冷蔵庫に向かう。が、その足が止まった。
「……ひなたちゃん、後でご褒美貰ってもいいかな?」
「ご、ご褒美……?」
ひなたが何時の間にか後ろに回っていたシャーレイの声を聞いて謎の悪寒を覚えると同時に足を止めたからだ。
確かに無理言って作ってもらったからご褒美を頂戴と言われれば断れないが、何故そこに悪寒を覚えるのか。ひなたはよく分からなかった。
そして、すぐにその悪寒の理由が分かった。
「じゃあ、夜にベッドの上で、ね?」
「ヒェッ……」
どうやら、今日の夜は平和に終わらないらしい。
ミラはバイ。つまり……
R-18版も本編の合間合間に執筆中です。本編投稿前にこの話の続きのR-18版を投稿します
本編の方はもうしばらくお待ちください