魔弾使いのTS少女   作:黄金馬鹿

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何故か休みの日になると筆が遅くなるという

ガンダムバーサスとかゲーセンに行ってマキオンやってるからかなぁ


第四十四魔弾

 結局ひなたとシャーレイは起爆銃のパーツの取り寄せをしてもらってからすぐに武具屋から出て行った。もう拳銃を買うための金なんて残っていない上に今日分の食費程度しか財布しか残っていない。だからこれ以上の買い物をするなんて以ての外だった。

 明日からはミラを連れて金稼ぎに行かなければダメかもしれない。基本的には魔弾をばら撒く地雷戦法でいいが、もしもの場合に起爆銃が壊れたらデッドエンド待ったなしだ。だからミラに協力してもらって護衛してもらう必要がある。明日からはまた激動……とは言えないがそこそこ大変な一日が続くかもしれない。若干憂鬱だ。折角一週間以上連勤して金を稼いでその金がなるべく減らないようにせっせと時々働いて補充してきたのに。一瞬で金欠だ。

 それでも戦う力が無くなるよりは遥かにマシではあるが。

 

「ごめんね、勝手にお金使っちゃってさ……」

「大丈夫だよ。家にまだ食材あるし、三日位ならこれでも全然平気だから」

「その優しさが心に痛い……」

 

 事実を言っているだけなのか、慰めてくれているのか。どっちかはよく分からないが、その言葉が胸に痛いと同時に慰めてくれる。取り敢えずはシャーレイのこの優しさに甘えさせてもらおう。明日からは頑張らなくては。

 大丈夫だから、と頭を撫でて来るシャーレイだったが、忘れてはならない。ひなたの方が年上だししかも男だ。自分よりも年下の女の子に頭を撫でられるなんてこっ恥ずかしいなんてレベルじゃない。顔に熱が籠っていくのがなんとなく分かりすぐにシャーレイ手を掴んでゆっくりと頭から離す。それが照れ隠しだと分かられてしまったのかシャーレイは笑っている。それが余計に恥ずかしく、しかし出来る抵抗は無いも同然で顔を背けて真っ赤になった顔を隠すだけだった。

 これも照れ隠しだ、と言わんばかりにシャーレイの脇腹を抓り、シャーレイが小さく悲鳴を上げた所でようやく精々した。が、これも照れ隠しだと知られているためどちらにしろ顔が赤いのは隠せていない。

 

「……肉じゃなくて皮だけなのがムカつく」

 

 抓ってみた感想だが、シャーレイに贅肉と呼べる肉は殆ど付いていなかった。ひなたも別に太っている訳ではないし太りやすい体質でもなく、また運動もしているため体系はキープ出来ているがそれでもシャーレイが殆ど運動していないのは知っている。少なくともひなたよりも運動していないことは。なのに贅肉が少しも付いていない事に若干嫉妬を覚える。

 ひなたは太りやすくはないだけで食っちゃ寝していたら普通に太る。なのに胸は据え置き。昔ちょっとそうしたら胸が大きくなるんじゃないかと思ったら腹が弛んだだけだったので泣いた。なのにこの子は大した努力もなく胸は大きく背も普通にある。スラム育ちなのにどうしてここまで差が付いた、と悲しくなってしまう。

 

「いたた……実は私、あんまり太らないんだよね。胸は大きくなるのに」

「うっせー!!」

「ひゃぁ!?」

 

 思わずキレてシャーレイの胸に昇竜拳。しかし返ってくるのはシャーレイの胸の柔らかい感触だけでひなたの方のダメージの方が大きかった。

 今なら血涙を出せそうだと思いながら自分の胸を改めて触る。ぺったんこだ。いつも通りにぺったんこだ。TS前の胸とあんまり変わらない位にぺったんこだ。

 

「……これが胸囲の格差社会」

 

 テンションが上がったり下がったり。正に情緒不安定だが、もうシャーレイもひなたの情緒不安定に加えて貧乳コンプレックスには慣れっこなので苦笑いするだけだ。一部のマニアにはこの体系が人気なのは知っているし欠損というのも一つのステータスになるのは知っているが、男モテなんて一切考えていない上に折角女になったんだからナイスバディーになってみたかったという色んな願望が渦巻いて涙が出てくる。

 そんなひなたを見てシャーレイが再び頭を撫でる。そしてすぐにひなたが怒る。

 

「撫でるなーっ!!」

「はいはい」

 

 うがー、といきなりキレるひなたをシャーレイは笑ってスルーして歩を進める。ひなたはそれにムッとしながらも付いていく。これじゃあどっちが年上なのか分からない。少なくともこの現場を見ていた人はシャーレイの方が年上、もしくは姉だと思うだろう。

 金髪と銀髪の美少女姉妹。外見だけならパーフェクトだ。中身は壊滅的だが。

 

「くっそー……」

「そんなに拗ねないの。あ、そうだ。ちょっとお塩切らしちゃってるから買ってきていい?」

「別にいいよ? ってか、塩切らしてたんだ……」

「今朝使い切っちゃってね」

 

 ひなたの中では塩と砂糖は結構切れにくい調味料というイメージだったので少し意外だった。が、やはり味付けには頻繁に登場するそれらは大量に買い置きしておかないと結構無くなる。一か月前に少しだけ買った程度だったので尽きるのは別に可笑しくなかった。

 シャーレイは脳内マップと今の自分の居る大体の位置を照らし合わせて今何処にいるかを把握しどこのスーパーへ行こうかを決める。少し遠いが一番塩が安いスーパーの存在を思い出したのでそこへ向かうことにする。

 ひなたが先を行く彼女の後をついて歩く。こういう事は全部シャーレイ任せなのでひなたは何も言わずについて行く。下手に口を出したら逆鱗をつついてしまう可能性もあるからだ。

 最早台所はシャーレイの独壇場。ひなたじゃもう口を挟めない状態だ。勿論、ミラも。

 一応ひなたが日本にいた頃の自炊で身につけた色んなレシピを教えたりはしているが最早ひなたが作るよりも美味しい上にもうレパートリーは無くなったためひなたの日本人としてのアドバンテージなんて当の昔に捨てられてしまった。

 

「結構遠くのスーパーに行くんだね」

「そっちの方が安いの。それにポイントカードもあるしね」

 

 と言いながらドヤ顔で懐から何枚ものポイントカードを取り出すシャーレイ。この世界にポイントカードなんてあるのか、と驚愕しながらもう主婦みたいだな、と苦笑いして相槌を打つ。

 まさかスラムで十年以上生きてきたシャーレイがここまで逞しく生きれるなんて思ってもいなかった。シャロンも天国でそう思っているだろう。

 

「スラムじゃ小銭だって馬鹿に出来ない程だったからね。一ポイントを笑う者は一ポイントに泣くんだよ」

「その言葉どっかで聞いたなぁ……」

 

 あぁ、日本だ。と思い出してもシャーレイのドヤ顔は止められない。取り敢えず両手の指の間に挟んだポイントカードをひったくってシャーレイのポケットにねじ込んでからドヤ顔のシャーレイの背を押す。こんな感じでちょっとウザい位にドヤ顔をかましてくるシャーレイだが、それすらもひなたにとっては愛おしい。何とも言えない気持ちを胸に抱きながらもシャーレイの手を取って歩く。それだけでも胸の内の気持ちをある程度解消出来ている気がする。

 

「どうしたの? いきなり手なんて繋いで」

 

 そんなひなたの様子が疑問になったのか、シャーレイが素朴な顔で質問する。それに対してひなたは咄嗟に出てくる言葉がなく、一言だけしか咄嗟に返す事が出来なかった。

 

「なんとなく」

 

 これじゃあ素っ気ないだけじゃないか、と思ったらシャーレイは何かを察してくれたらしい。こういう要らない時だけ察しがいいのはどうしてだろうか、とひなたは左手で頭を掻こうとしたが左手が無いのに改めて気が付き何となく胸にモヤモヤが溜まる。

 

「寂しくなったの?」

「懐は寂しくなったよ」

 

 だが、シャーレイの言葉に軽口を叩けるようになるくらいには頭も働いた。その言葉にシャーレイは少しだけ笑った。その笑いが楽しそうに聞こえたのは気のせいか本当か。

 

「上手いこと言ったつもり?」

「まさか。ボクは詐欺を一つしか出来ないレベルの酷い口下手だよ」

「へぇ、どんな詐欺?」

「外見詐欺。年齢詐欺とも言えるかな?」

「それは口下手でも出来ちゃう詐欺だね」

「その場で立っているだけの簡単な詐欺だよ」

 

 冗談の叩き合い。それだけでも十分な充足感を得られる。

 外見詐欺の部分は若干の自虐を込めたつもりだったがそれが汲み取られたのか否かは分からないがシャーレイも笑顔になってくれている。それだけで無い知恵を振り絞って完成させた冗談も報われるという物だ。

 

「あ、そういえば」

「どうかした?」

 

 ふとシャーレイが声を上げた。この辺りであった噂か何かを思い出したのかは不明だがこうして声に出されると何となく気になってしまうため思わず反射的にシャーレイに聞く。

 彼女はその言葉の前に大した事じゃないけどと一言置いてから思い出した物を口にした。

 

「この辺りに新しく豪邸が建ったらしいよ?」

「この辺りにって……ここら辺の土地って結構いい値段するよ?」

 

 まさかそんな場所に豪邸なんて。相当な金持ちが引っ越してでも来たのだろう。

 

「なんか執事さんとかメイドさんが沢山いるんだってさ」

「ふぅん。メイドさんは見てみたいけど別に興味ないかな。金持ちなんて近づくだけで問題を与えてくる困った種族だよ」

「それは否定しないけど……」

 

 否定しないのかよ。ひなたは内心でシャーレイの言葉に小さくツッコミを入れる。

 

「確か当主の人はワラキアって言って凄くイケメンで若い男の人なんだって」

「へぇ」

 

 全く興味がない。そのせいか返事がかなり適当になってしまったがそれはシャーレイも同じなのかそれだけ。と会話を切り上げた。やはりこの子自分のせいで百合の道に目覚めてしまったのでは、と思うと罪悪感的な物が沸いてきてしまう。

 ミラは自らバイと自白したため何ら罪悪感は感じないがシャーレイに関してはまだ十四歳なのに、という気持ちがある。

 だがもうどうにもならない事なので気にしない事にした。男に走られるよりは女の子に走ってもらったほうが自分にもまだチャンスはあるし。

 

「でも、豪邸とやらは見てみたいかな?」

 

 ふとシャーレイがそう言った。

 確かにそんな気はする。野次馬根性と言うべきか。豪邸豪邸と噂されるくらいなら確かにこの目で一回くらいは見てみたい気持ちはするが、ここら辺でなるべく長居はしたくない。

 と、言うのもここら辺は先日、あの魅了の魔法のような物を全くの予備動作無しでかけてきた男が教えてくれと言った住所の近くだからだ。もしもまたあの男が近寄ってきてひなたの理性が完全に消える位の魅了をかけられたら逃げられるとは思わない。しかもここには魔法に耐性なんてないシャーレイもいる。

 だからなるべく会いたくはない。一応レジストの魔弾はいつでも割れるようにポケットの中に仕込んでおく。

 

「いや、ボクはいいかな」

「そう?」

「金持ちの家なんて大きいだけだって」

「そうかなぁ?」

 

 なんとかここを離れたいという気持ちはある程度伝わったようだ。

 じゃあ早くスーパーに行こうとひなたが声を出せばシャーレイは何の違和感も持たずにそれに頷いた。これで後はスーパーに行って買い物だけ済ませて一安心――

 

「――――おや、そこにいるのは」

 

 とはいかないようだ。

 後ろから聞こえた声に露骨に顔を顰めてすぐにもう一発のレジストの魔弾を生み出してシャーレイのポケットに忍ばせる。彼女はそれをポケットを一回叩いて確認する。

 

「これはどうも、先日振りですね」

 

 嫌な顔は隠して笑顔で後ろから声をかけてきた先日、魅了をかけてきた男に挨拶を返す。

 男の一見好意的に感じる言葉と視線。そして一切の下心を感じさせないその視線は確かにここら辺の奥様方には好意的に見えてくるだろう。

 シャーレイはひなたの露骨な猫かぶりに驚いているが、すぐに無言で頭を下げるだけの挨拶を行った。

 

「この間は助かったよ。言われた通りに歩いたら無事に家に辿り着けた」

「それは良かった」

 

 大丈夫だ。まだ思考回路は普通だ。

 まだ正常だ。この男は油断ならない相手でこんな男を魅力的だなんて一切合切思っていない。まだ魅了はかけられていない。

 早くこの男を振り切らないと。そんなひなたの焦りが伝わったのかシャーレイの顔が若干の不安を帯びてくる。

 

「今日はどうかな? 先日のお礼として、そっちの子も一緒にお茶でも」

 

 勿論、そんな誘いは断る。ついていったら何をされるか。

 

「そうですね。今日は急ぎの用も無いですし――」

 

 その瞬間レジストの魔弾をポケットを叩く振りをして叩き割る。その瞬間、勝手に動き出した口は止まり、若干ついて行ってもいいという気持ちが消え去る。すぐさま新たなレジストの魔弾を作成しながら先ほどまで口にしかけていた言葉を訂正する。

 

「――いえ。今は買い物の途中なので」

「…………」

 

 どう出る? ひなたは新たな魔弾を手に握った状態で相手の出方を伺う。

 彼は暫し黙った後、すぐに口を開いた。

 

「そちらのお嬢さんはどうかな?」

「え、私ですか?」

 

 急に話を振られてシャーレイが困惑する。その顔色が少し怪しくなりソワソワとした後に彼女はひなたの方を向いた。それに頷くとシャーレイは口を開いた。

 

「……そ、それなら折角誘ってもらったんだし」

 

 その瞬間、シャーレイのポケットの中の魔弾を見えないように握りつぶした。

 

「……あ、あれ?」

 

 そしてすぐにシャーレイが素に戻った。やはり、シャーレイの方にも魅了がかけられたらしい。自分の言った事と思考の支離滅裂さに自分でも困惑しているらしく口を抑えて呆然としている。

 これなら、シャーレイをダシにここから逃げる事ができる。シャーレイの手を取ってひなたは口を開く。

 

「すみません。この子、ちょっと生理中で調子悪くって」

「おや、そうだったのか。それはすまない事をした」

「ここら辺のスーパーで生理用品が安いらしくって。あまり出歩かせるのも辛そうなのでお先に失礼しますね」

 

 なんか結構エグイ下ネタをかました気がするがそんな一時の恥は捨てる。呆然としているシャーレイの手を取って男に背を向けて歩く。

 

「もしも何か入用があったら、この付近に新しく出来た家に来るといい。ワラキアという名前を出せばウチの執事とメイドが案内してくれる」

 

 ワラキア。恐らく名前なのだろう。

 こうやって名乗るという事は後ろめたさを一切合切感じていないのか何かあったとしてもどうとでもなると思っているのか。少なくともひなたにはもう彼と関わる気は一切ない。適当に愛想を撒いて返事をしながらとっとと男の視線から外れる。その際にもう一回レジストの魔弾を自分とシャーレイで割る事を忘れない。

 先ほどの言葉から遅行式の魅了をかけられる可能性があったためこうしてもう一回レジストの魔弾を割ったが自身に魔法がかかっている事を知るにはまた別の魔法が必要になるためそれが正解だったのかは分からないが少なくとも遅行式の魅了はこれで打ち消す事が出来た。

 

「ひ、ひなたちゃん?」

「帰るよ、シャーレイ」

「そ、それはいいけど……さっきの人って」

「もう関わっちゃ駄目だ。ここにも近付いちゃダメだ。あの男は明らかに可笑しい」

「そ、それは分かるけど……さっきも思ってもない事を勝手に言っちゃったし」

「厄介な事になったよ、全く……」

 

 これから先、何かに巻き込まれそうな気がする。変な確信を得ながらひなたは歯を食いしばる。

 せめてシャーレイだけは絶対に守らなくては。右手に込める力が無意識の内に強くなっていくことに気が付かず、心配を形にしたような表情を浮かべるシャーレイの手を引き家へと帰る。




まぁ、こういうのはよくあるテンプレ展開なのかなーって。だけど狙われているのが主人公のひなたという

こいつもうヒロインだろ。シャーレイが主人公らしいことしてないから主人公不在でヒロインだけの状態が出来上がるけど
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