魔弾使いのTS少女   作:黄金馬鹿

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ノーマル、レズ、バイの三人組。しかし三人とも体の関係を持っている

こうして言葉だけにすると違和感しかないんじゃが


第四十五魔弾

 シャーレイの手を引いて逃げるように家の近くへと戻ってきた。あんな場所に……あんな男が近くにいる場所にそう何十分も居たくはなかった。

 あの男の視線からは劣情めいた物は感じ取る事が出来なかった。出来なかったからこそ、あんな男と一緒に居たくは無かったし顔も合わせたくはなかった。魅了をかけてくるのにも関わらず劣情が無い。有り得ない話だ。

 明らかにあれは可笑しい。視線とやっている事の矛盾。それが生み出す気持ち悪さはシャーレイにも伝わっていたようでシャーレイ自身、魅了をかけられたという事に気付かず、しかし己の中にある気持ちとは正反対の言葉が出た事と男から感じる視線に劣情を含めない、しかし何処か含みのありそうな視線に嫌悪感を抱いただろう。

 この世界の男は基本的に性に素直だ。娯楽の少ないこの世界では性行為そのものを娯楽として生きている人は決して少なくはなく、体を売って己の充足感を感じると共に金を稼いで生きる女もいればそんな女に貢ぐ男もいる。男は女よりも性欲は強い。それ故に、性を感じた男というのは女を抱きたいという気持ちを地球にいる男よりも強く抱く。だからどれ程の善人でも多少の劣情は視線の中に含める物だ。シャーレイはそれが特に酷い環境で生きてきたしひなたも元男という事でそういう視線に嫌悪感を抱いた事は少なくない。

 だからこそ。そういう経験があるからこそ、全くの下心を抱かずに接してきたあの男が気持ち悪かった。女を性的な対象として見ない男なんて男の視線に敏感になって生きてきた二人にとっては気持ち悪い他無かった。

 別に下心を感じさせないだけならまだホモか何かかと思えるがそこに魅了が加わったのだからもう駄目だ。その時点で二人にとっては気持ち悪い男でしかない。ホモ相手ならまだシャーレイがそれの女版なので少し気持ち悪いと思ってしまうかもしれないがお茶程度なら付き合う。体の安心が保障されているような物だから。だが、魅了がそこに加わると何をされるか分かったものじゃないし気持ち悪い。

 だから断った。全力で、全霊で。幸いにも相手は力で押してこなかったがこれから先、力で押し切られる事も考えたらもう二度と会わないように立ち回るのが正解だ。武具屋に寄ったら一目散に帰るのが正解だろう。

 

「ごめんシャーレイ。あんな男と喋らせて」

 

 シャーレイの手を引いて歩きながら後ろのシャーレイを見る事無く呟く。その言葉はなんとか聞こえたのだろう。小さく大丈夫、と声が聞こえた気がした。

 徐々にシャーレイもあの男が自分の精神に何かを仕掛けてきた結果自分の意志とは正反対の事を言ったのだと気づいてきている。魅了という物を知らないシャーレイはその程度で終わったが、それでも何でそんな物を自分に仕掛けてきたのか。なんで下心を感じさせない視線を持ったあの男がそんな物を使ってくるのか。

 この世界の恐ろしさ。それを知っているからこそ怖くなる。底知れない相手と会話するという恐怖はこの世界では死に直結するか人生の終わりを意味する事だって容易に想像できる。攫われて身売りさせられていた。借金のカタに娼婦にされた。気が付いたら身包み剥がされて森に放置させられていた、なんて事は頻繁ではないが時々耳に挟む暗い話だ。もしも魅了が使えたら言葉一つでひなたやシャーレイのような女を身売りさせれるのだから嫌悪感を抱くのは当然とも言えた。

 流石に殺すから、という事はないと思うが見てくれは美少女な二人を好む男なんて幾らでもいる。魅了で引き入れて洗脳して身売りさせれば簡単に金が手に入る。そういう対象として見ていたかもしれない。だから余計に怖くなる。底知れぬ男というのが。何を考えているのか分からない下心を一切持たない男というのは。

 暫く歩き近所のスーパーの前に着いた二人はそこでやっと手を離した。

 

「シャーレイ、買い物ならここで」

「う、うん……」

 

 今日も、これからも。含めた意味は恐らく伝わったのだろう。シャーレイの声は少しどもっていたが肯定の言葉だった。

 あまり黙りこくって事務的な事しか口にしなかったらシャーレイが不安がる。肯定の声に不安の色が滲んでいるのを感じ取ったひなたは一度心を入れ替えて深呼吸すると少しだけ無理をしているがもうあの男はいない。少なくとも今日、今この時ははもしもの可能性がないというのを飲み込み自信を安心させてから笑顔でシャーレイに声をかける。おそらく、これがシャーレイを安心させる材料になると信じて。

 

「じゃあさ、ついでにお酒を買ってきてくれないかな。ビールでもいいから」

 

 少し無理をしているというのが察せられたのかは不明だ。だが、無理のない笑顔を浮かべて財布を持たせるひなたに対して今日は大丈夫だと多少の安心はしたのだろう。シャーレイは笑顔を浮かべて頷いた。しかし甘い酒しか飲めないのに何でビールとか言っちゃったのか。これが分からない。

 それを見てよかった。と内心で声を漏らしてシャーレイにおつかいを頼む。せめて今日の夜は酒でも入れないと満足に眠れそうにない。そう思ったから酒を頼んだがよく考えてみたら家にまだ果実酒が残っていた。だが、どれもこれも度数は低いため追加注文を忘れない。

 

「あ、度数は高いやつで」

「安いやつでいいなら」

「飲めればいいよ」

 

 こう言っておけば甘い果実酒を買ってきてくれるだろう。買ってきてくれないと困る。特にビールはまだ飲みなれていないからビールを渡されると余計に困る。多分ミラにも飲んでもらう羽目になる。ミラが酒を飲めるのかは不明だがこんな世界で逞しく生きてきたのだから酒程度グビグビイケるだろう。見た目は全然二十歳でも通るし。

 ミラにバレたら一発殴られそうな感じがする事を考えながらスーパーの中に入っていくシャーレイを見送る。そしてひなたはそのまま喫煙所へ。

 少し不安定になっていつも以上に情緒不安定になりそうな心を落ち着けるために一服する。煙草を箱から出して火をつけ、息を吸いながら煙を肺に収める。そして吐き出した煙が空に昇っていくのを見ながら心が落ち着くのを感じる。周りの喫煙者は既にひなたの事は知っているため何も言わない。もうひなたはこの辺りでは銀髪碧眼の合法ロリとそこそこ知られている。

 周りからの視線は特に感じないため一応周りに気をつけておきながら煙を再び吐き出す。一日十本とか平気で吸い始めたここ最近だが、やはり煙草はこんな腐った世界じゃほぼ必需品だ。嫌なことを一時的に忘れさせてくれるというのはそれだけでありがたい。あの男の事も忘れる事が出来て、しかしシャーレイとミラとの最近楽しかったことを思い出せて煙草の麻薬みたいな効果が気分を良くしてくれて。日本にいた頃は合法麻薬だとか金だけを食っていく嗜好品だとか言っていたがこうして喫煙者になると煙草は安易に手に入れられる麻薬であり悪いものを簡単に忘れさせてくれる道具だと。これは簡単に手放せない。少なくとも、この世界にいる以上は。

 

「ふぅ……何であんなのに目を付けられちゃったんだか……」

「…………ヒナタ?」

「うっひゃぁ!!?」

 

 ボソッと呟いてから大体一秒ほどか。いきなり肩を突かれて変な声を出しながらちょっと反対側に移動してからようやくそちらを振り向いた。

 そこには今日は出かけている筈の顔があって。

 

「ミ、ミラ?」

 

 思わず間抜けな声で彼女の名前を聞き返した。ミラはその言葉に頷きだけを返した。

 腰に着けているポーチはいつもよりも膨らんでいるように見えて何が入っているのかが気になったが後で聞けば分かる事だと一旦スルーした。

 口数の少ない彼女は杖を両手で付いた状態が少し疲れたのか喫煙所の壁に背中を預けた。しかしひなたはスタンド灰皿の都合上ミラの横に背中を預けて立つことが出来ないため煙草を吸いながらなるべくミラに近い場所に立つのが精一杯だった。

 

「今帰りなの?」

「……うん」

「どうだった? 上手く動けた?」

「……あんまり」

「そっか。まぁ仕方ないよ。暫くは杖をついた状態で戦闘できるように慣れないとね」

「……努力してる」

「知ってるよ」

 

 ミラとの会話はひなたの話す言葉の方がかなり多いためミラの受け答えが淡泊に思われる時がある。が、彼女が無口だと知っていてこうした一言程度の言葉を話すのにも結構色々と思考していると知っているから別にそれは不服でも何でもなく、こうして喋っている事になんとなくの可愛さを覚えてしまう。

 もう半分ほどになった煙草を躊躇なく吸いながらミラを見る。どうやら慣れない杖での長距離移動に疲れたのか一旦杖を手から外して自分の手を揉んでいる。どうやって戦っていたのかは気になる所だが、大体は予想できるため特にこちらから聞くことはない。

何度も試行錯誤していたからかミラの服はかなり汚れており、土が付いていたり髪の毛に葉っぱや枝が巻き込まれていたり所々擦りむいたような傷があったりとしていた。その様子から何度も転んだのは簡単に予想でき、ミラでも片足になっただけでこんなに変わるのか、と不謹慎ながらも思ってしまったり。

 だが、このままだと風呂等で傷に染みて大惨事になりそうだというのは容易に想像できたためちょっとだけ治療するため回復魔法の魔弾を一つ生み出すと肩を軽く叩きながらそれを割った。小さな傷はそれで仮の皮膚が再生して塞がり、そこから発生していた痛みも引いたのだろう。ミラは驚いた様子でそれを見た。

 

「これも魔弾使いの特権だからね」

 

 無詠唱で魔法をポン、と味方にかける事が出来る。また、強化をかけるための魔弾を予め作成しておきそれを戦闘中に前衛が割ることで戦闘中に咄嗟に強化をかけること、また回復を魔弾を割るというたった一つのアクションで可能にする。しかも一度に割る数が多ければ多いほどその効果は高まる。

 ミラはいきなり回復魔法をかけられた事にビックリしていたがすぐに礼を口にした。

 

「……ありがと」

「いいっていいって」

 

 通常時はこの程度の回復魔法しか掛けられないがそれでも喜んでくれるなら使った甲斐がある。

 血を吸わないと魔弾十二発を作成するだけでも相当魔力を持っていかれるのに今日はレジストの魔弾二発と回復魔法の魔弾が一発。既に三発も作成したためか若干の気だるさを感じる。精神的な気だるさは寝るまで解消されないため若干モヤモヤするがそれももう慣れた感覚だ。

 それに、自分の魔力全てを使うことが出来ない感覚という物にも違和感を感じてしまう。胸の中に蓋を仕込まれたような気分で自分の力全てを使う事が出来ないというのにも多少のモヤモヤを感じる。

 口に出来ないようなそれにも慣れたがやはり魔法を己の魔力の限り使えない。ちょっとした魔法だけでここまで魔力を消費するというのは気分がいいものではない。シャーレイには分からないがミラは分かってくれるであろう感覚だ。

 

「……なんでここに?」

「ん? ここにいる理由?」

「……家で吸えばいいのに」

 

 急にミラが口を開いたが少し言葉足らずでひなたには伝わらなかった。が、ミラの次の言葉で彼女が聞きたいことがようやく分かった。

 いつか口下手もなんとかしてあげたいが一拍置けばちゃんと話してくれる分、まだマシなんだろうなと思いながらミラの質問にはしっかりと答える。

 

「シャーレイが買い物中」

「……なんで外に?」

「起爆銃のパーツを買いにね。しかも売ってないわ取り寄せ代がクッソ高いわで結構お金使っちゃったよ。具体的には明日の生活費が危うい程度には」

 

 ははは、と陽気に笑ってはいるが結構な痛手だというのはミラもわかっている。

 生活費何日分が起爆銃のパーツだけで溶けたのか。というか旧式起爆銃のパーツがどれほどレアなのか。ひなたの言葉で想像してミラは若干ゾッとしたがそれの解決策は既に用意してあった。

 元々そのために持ってきた物だったが、これの解決になるのなら、とミラはポーチを開いて中に入った物を取り出した。

 

「……これ」

 

 取り出されたのは袋だった。それを手渡されたため一応持ってみるとズッシリ重い。思わず落としそうになってしまいそうになるがそれを耐えてなんとか片手でそれを保持する。

 

「なにこれ?」

「…………生活費」

「……お金?」

「……そう。お世話になってるし」

 

 そう言いながらミラがひなたの手から一旦金が入った袋を返してもらいひなたを招き寄せてから中を見せる。そこには確かに大量の金があった。紙幣ではなく硬貨ばかりだったがそれでもかなりの量であり、先ほどひなたが使った金位は入っているだろう。

 

「ど、どうやって稼いだの、こんな額」

「…………ちょっと遠くまで」

「ちょっと……?」

「……二十キロくらい離れた場所」

「そこで?」

「……高い魔獣狩ってきた。沢山」

 

 二十キロ。それは恐らく片道だろう。それを往復したら勿論四十キロ。フルマラソン一歩手前レベルの距離だが彼女はそれを杖をついた状態でやらかしたのだろうか。どちらにしろ片道二十キロでも往復二十キロでもかなりの距離でありひなたでは丸一日かけて行くレベルの距離だ。

 確かにそれくらい離れたら魔獣もあまり狩られないうえに依頼も結構あるだろう。おそらく根こそぎ狩ってきたのが予想される。

 だが、硬貨だけなのはちょっと分からない。

 

「どうして硬貨だけなの?」

「……そっちの方が使いやすいかなって」

「紙幣でいいのに……」

 

 どうやらミラなりの気遣いだったらしい。嬉しいのやら嬉しくないのやらで複雑だ。

 

「じゃあ、半分だけ生活費にしようか。あとはミラの小遣いって事で」

「……別にいい」

「ミラだって武器のメンテとか衝動的に買いたくなる物とかあるでしょ? その時のために持っておきなって。生活費ならボクも稼げるからさ」

 

 じゃないと本格的にひなたが要らない子になる。ただの煙草を吸って酒飲んで毎日ブラブラ暇つぶししているだけのニートな合法ロリになってしまう。

 流石にそれは避けたい。というかその中で生きていたら色んな気持ちに押しつぶされてその内泣いてしまいそうだ。

 そんな事は完全に心の中での隠蔽を済ませて袋を一旦ミラに返す。ミラは暫くどうしようかと視線をあっちにやったりこっちにやったりしていたがひなたが言ったからそうしようとでも思ったのか一回頷いて一旦袋をポーチに仕舞った。ひなたはそれに頷いてもうフィルター直前まで吸った煙草をスタンド灰皿に落としてミラと一緒に喫煙所から出る。

 隻腕と隻脚のコンビという奇妙な二人組に周りは視線を奪われているがすぐにあの二人か、と気付くと視線を外す。特にミラに至っては明らかに高価で凄そうな剣を腰に吊っているため近寄りたくなんてないだろう。

 

「シャーレイが中で買い物しているから待ってようか」

「……荷物持ち?」

「それならボクがやるよ。お塩と酒だけだからさ」

「…………塩が肴?」

「んなわけ。家に魚の干物があるからそれ。お塩は単純に切らしてたの」

「……違うの?」

「ちげーよ」

 

 本当に塩を肴にするとでも思ったのかキョトンとしているミラの頬を右手の指だけで挟む。柔らかくモチモチしている。

 

「ぁぅ」

「おぉ、モチモチ」

「は、はにゃして……」

 

 頬を弄んでいるとミラは顔を動かしてなんとかひなたの手から顔を離そうとする。

 が、ひなたはそれを離さずにずっと弄ぶ。なんだかこうしてミラに触っていると猫と戯れている気分になって和んでくる。

 しかし、ミラはこうして何かされている時が一番かわいい。というか何かされた時の反応がいつものクールな様子とはかけ離れてギャップ萌えのようなものを引き起こしてくれている。そのせいでずっとこうやって頬を弄んでいたくなってしまう。確かミラがシャーレイにヤられた時も反応は女の子らしかったなぁ、なんて思いながらずっと頬を弄っていると流石にもうこれ以上は嫌だったのか手を使ってひなたの手を引っぺがした。

 あぁ、残念。なんて思っていると若干ミラが怒っているのか頬を膨らませているようにも見える。可愛い。

 

「……お返し」

 

 そう言いながらミラがひなたの頬を同じように手で挟む。が、

 

「ぎゅふぇ」

 

 力が強かったのかひなたの口から女らしくない声が漏れる。しかも地味に痛い。

 

「あっ」

「おぉぅ……地味に痛い……」

「だ、だいじょ……」

「あれ? 何してるの二人とも」

「……シャーレイ?」

「もふぇ」

「あっ」

 

 何が起こったのかを簡単に説明すると頬を抑えたひなたを心配してミラがウロウロしていたが、取りあえずひなたに大丈夫か聞くために手を伸ばした所、シャーレイが偶々出てきて二人を見つけミラがそれに反応した。その結果、手がズレてひなたの顔に。

 結果ひなたからはよく分からない声が漏れた。ミラはどうしたらいいんだろうかとそのままの状態で固まり、シャーレイはよく分からないため呆然とするしかなかった。

 

「……えっと」

「うん、手を離してくれると嬉しかったかな」

 

 そう言いながらひなたがミラから半歩距離を取ることでミラの手から逃れる。

 

「じゃ、シャーレイも戻ってきたし帰ろっか」

「…………そ、そう」

「なにがなんやら……」

 

 そして何事も無かったかのように歩き始めるひなた。ミラは困惑しながらもそれに同意してシャーレイは何があったのかよく分かっていなかったが取りあえず帰ろうと二人の後に続いた。

 ちなみに、ミラはシャーレイに昨日犯され尽くして気絶させられたばっかりだからかちょっとシャーレイと距離を取って移動していた。シャーレイはちょっと傷ついた。




ひなたの奇声シリーズがまた増える

ミラのクールさが最近微塵も残っていない件。最初は属性がクールだったのに完全に今はキュートだよ……

まぁ、最初のプロットだとミラは死ぬ予定だったからね。こうやって後付けのプロットと設定が加わるとあーもう滅茶苦茶だよ
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