相変わらずの亀進行
ちょっと気まずいような何とも言えない空気の中三人は家に帰宅した。それまでの間にシャーレイにはミラと合流した時の状況やミラの稼いできた金について話したが、これに関しては勿論半額はありがたく生活費として頂くがもう半分はミラの小遣いという事になった。昨日好きに犯されたからか若干ミラが視線をあっちこっちに泳がせたり言葉を詰まらせたりとしていたが半分強姦のようになった昨日の事はミラの事では気まずくなる程度の事で済んだらしい。二度目だしそこそこ耐性も付いたのだろう。
帰ってきた時には世間的にはおやつを間食で食べるような時間。ミラは外で結構動いてきたためこんな時間でも普通に腹が減っており、ひなたとシャーレイも色々とあったため小腹が空いていた。どうせ三人ともそれなりに運動するし太る事はないだろうとの事で帰ってすぐにおやつタイムとなった。ひなただけは酒盛りタイムを始めようとしたが、これに関しては今日は外出の予定は無いから特別、との事だった。
何時ものソファに三人で座って前に広げた菓子やらジュースやらを適当に食べる。勿論、腹いっぱいになって夕食が食べられなくなる、という事がないように節度を持ってだ。これで家にある菓子類は無くなったがこれらは各人の小遣いで買われているためその内増えるだろう。
「あー……お腹熱い……」
「うわ、顔真っ赤だよ?」
「んー? そりゃ何時ものよりもキツイお酒だしね」
「……凄い違和感」
「それはボクが子供にしか見えないからかな?」
「…………うん」
「少しは言葉濁せよ」
適当に駄弁りながらも三人でぐだぐだと菓子を消費していく。その内段々とひなたの体が横にズレていってミラの肩に頭を預けるような形になり、シャーレイもそれに便乗してひなたの肩に頭を預ける。そしてミラはひなたの頭を肩に乗せながらも全く動じずに菓子をボリボリと食べる。
ひなたはそこまで酒に強い訳ではない。むしろ弱いくらいだ。だから普通としか言えないような度数の酒を飲んでもすぐに顔が赤くなる。その内アルコールが入った事による変な心地よさからかひなたを耐えれそうだが耐えると少し嫌な気分になり、耐えなかったら心地よくなれる程度の眠気が襲ってくる。
既にコップ二杯分の酒を開けており、シャーレイに買ってきてもらった酒も残りはコップ一杯分程度。小さな酒瓶だったためその程度しか中身はなかったが、段々と中身が無くなっていく酒に勿体ないような切ないような感情を抱いていた。が、いつの間にか一々コップに注ぐのが面倒だったのかとうとう酒瓶に直接口を付けてラッパ飲みを始めた。
「あはぁ……ひゃひゃひゃひゃ」
「うっわ、本格的に壊れだした……」
「……酒癖悪い?」
「んなこたぁないよ。ぜんぜんよってないってばぁ」
ケタケタ笑いながらおつまみを食べながら酒を飲むひなた。顔は真っ赤で肌も赤くなっている。外見相応には見せないような若干キツい目つきもその面影を残さず、今のひなたは童女のようにしか見えない。ラッパ飲みをしてぷはぁ、と一息ついてからつまみを口にする。そして何が可笑しいのか急に笑う。
何が可笑しいのやら、と思うが酔っ払いに何言っても無駄だというのは二人とも短い人生経験の中で既に学んでいる事だ。シャーレイはスラムで、ミラは同業者に加えて父親で。だからひなたはスルーして二人は菓子を食べる。まだ絡み酒をしてこないだけマシな方だ。顔を赤くしながらつまみを食うひなたに対して二人は溜め息を吐きそうになるが、こう見えても色々と苦労しているのだろうと無理矢理納得して無理に止めるような事はせずに適当に声はかけておく。その度に酔っぱらいの酔ってない発言が飛んでくる。
「あれ? ひなたちゃん寝ちゃった?」
そんな感じで菓子も食べ終わってシャーレイとミラはやる事がないためボーっとしていたらいつの間にかひなたが静かになっていた。何かあったのかと思ってひなたの方を見ると彼女は酒瓶を片手で抱えたままミラの肩に頭を預けて呑気な顔で寝ていた。もう酒瓶を抱えて酔っぱらって顔を赤くしている以外は完全に幼女そのものだったため何となく二人が笑いかけたが起こしちゃうかもしれないとそれは何とか堪えた。
ひなたが寝息を立て、二人はそれを聞きながらも時間を無駄に使って時々眠くなりながらも外が暗くなるのを待つ。時々どうでもいい事を喋って、時々無言になって。そんな感じでひなたが起きないように体制を時々変えてあげてとしていたらいつの間にか外は赤く染まって夕方になっていた。
「じゃあ私、お夕飯作ってくるから」
「……うん」
「ひなたちゃん、お願いね。ご飯はこっちに持ってくるから」
「…………このまま?」
「起こしたら癇癪起こしそうで」
「……そこまで子供?」
「時々幼児退行するからね」
確かに時々そんなひなたを見る気がするがそれも本当に時々で癇癪まで起こしている所は見たことがない。なんやかんやでこの中で一番年上だしまとめ役でもある。そんなひなたが癇癪起こしている所は若干見たい気もするが、今のひなたなら癇癪起こした所でシャーレイの一言でピタッと止まりそうな気はする。主に恐怖で。
それはどうでも良いとして、今どうにかしたいのは肩を枕にして寝ているひなただ。もう二時間近く肩を貸しているからか若干疲れてきたというか肩に違和感が出てきたというか。出来るならすぐに退いてもらいたいが酔いも段々覚めてきたのか少し赤い程度の顔でこうも安心した顔で寝られると起こそうという気は削がれるしもっと見ていたいという気分になってしまう。
手持ち無沙汰になってしまった故か思わずひなたの頭を撫でる。サラサラな銀髪を梳くように撫でるとひなたからくすぐったそうな声を漏らす。その声を聞いていると昨晩売られた腹いせに色々と犯した時の様子をつい思い出してしまい若干ムラっとしてしまうがここでひなたを襲ってしまうほどミラはシャーレイではない。性欲は我慢して抑え込む。
「…………ミラ」
「うぇ!?」
そんな気持ちを抑えながらひなたを撫でているとひなた自身から声が上がった。そのせいでミラが大きな声を出してしまったがひなたはそれに対して何も言わない。
何でだろうかとひなたの顔を覗き込んでみるとひなたは目を閉じたまま。つまり、眠ったままだった。
起きていないか、とホッと一息つく。
「……なにか、あったら…………」
「……ん?」
「……しゃーれいをおねがい………………」
何やら不吉な寝言を残してひなたは再び寝息を立て始めた。
その言葉の真意はよく分からないが、何かあったら、とはどういう事か。シャーレイをお願いという言葉は文面そのままの意味だろうが、その前の言葉にどんな意味が込められているのかが分からない。
何やら嫌な予感がするが、多分なんとかなる。ミラ自身、荒事は得意だし今の状態でも二人を守って戦う程度の事は出来る。もしもそれでも駄目な場合は父を呼べば大体解決する。だが、その場合は吸血鬼が絡んだ時くらいだろう。
だから、ひなたが死んだりする事は、本当に万が一が起きない限りないだろう。
「……大丈夫。私が守るから」
頭を撫でながら呟く。きっと、大丈夫だ。この生活は壊れやしない。
そう、きっと。
フ・ラ・グ! フ・ラ・グ!!
ひなたが完全にヒロインのポジションに付き始めている件