ただひたすらに銃を撃つ。その作業じみた行為に神経の全てを使い、無意識下でも練習通りの事が出来るようにと練習を繰り返す。的の中心に穴が生まれ、その穴の付近に更に穴が出来ていく。それを無言で見守り、弾が無くなったところで懐からマガジンを取り出しリロードを行ってからホールドオープンを解除してから再び狙いを澄まし引き金を引き的に新たな穴を作っていく。
それも数分が経てば銃は再びホールドオープン状態になり、すぐさま新たなマガジンを懐から取り出そうとして、手を止める。既に地面に捨てられたマガジンは今朝弾を詰めた数と同じ数転がっており、もう懐にはマガジンがない事を示していた。一応ホールドオープン状態は解除して足のホルスターに銃を仕舞う。そして逆の足に着けたホルスターから起爆銃を抜き……手を降ろした。
「……弾は限られてるし、撃てないかな」
シャーレイは呟き、腰に着けたポーチの中に手を入れる。
残された起爆銃と魔弾。その数は限られており、一応ミラも魔弾を作成することは出来るが、ひなたのように作りなれている訳ではないため、シューターの魔弾はあらぬ方向に飛んで行ってしまったりした。が、ミラが得意とする魔法……氷の魔法、ではなくその元となる水の魔法を発動させる魔弾は何とか用意出来た。
しかし、ひなたの作った魔弾は五十発程度しかなく、その中で常に使っていたシューターは五発程度と少なく、シールドはばら撒くための物が八発程あったが、それ以外はライトニングやバインド、エクスプロージョンばかりであった。
その魔弾が通常は零距離でしか使えない物だとは一応聞いていたため、使えない。特にライトニングはミラ相手に零距離で使っている所を見て、ひなた自身も痺れている所を見たため、自身では使えないと知っているため、起爆銃は使えない。お守り代わり、と言うのが正しいだろうか。
それに、起爆銃のパーツは色々と事情があり届いていないらしく、まだ無理をさせれない状態であるため、使えない。ミラの作った魔弾は特に負担が大きいらしく
「……ご飯、作らなきゃ」
ホルスターに起爆銃も仕舞い、一度ホルスターごと起爆銃を撫でる。だが、その顔はどうしても暗く、起爆銃をホルスターの上から撫でる行為は自分を慰めるためにしているようにしか見えなかった。
実際、それは合っておりシャーレイは無意識で自分を慰めようと、大丈夫だと言い聞かせるためにそれをしており、表情が暗いのも仕方のないことだった。
家の中に入り、自分の部屋に向かい練習着としても使っている戦闘服を脱いでから私服に着替え、一階に降りてからエプロンを着けて昨日から考えていた昼食を作るために冷蔵庫を開き食料を取り出す。そしてそれをキッチンに置いて包丁を手にした所で、ミラが台所に入ってきた。普段、料理はシャーレイに任せっきりなミラがこの時間帯にキッチンに入ってくる事は珍しいことだった。
「どうしたの?」
間食を作ったりする際に台所に立ったりする事はあるが、それ以外は片足立ちを強要されてしまうため、あまり台所に立たないミラがこうして台所に入ってきた珍しさに思わず声を出してしまう。
ミラの手には一通の手紙のような物が握られており、それを見せるように手を振ってから一言呟いた。
「……四日後。ヒナタの結婚式が街外れの小さな教会で行われる」
「そ、れって……」
結婚式。それは、ひなたを取り戻す最初で最後のチャンスであり、シャーレイの戦う時であった。
作戦はミラが情報屋に足を運んだ次の日に既に決めている。それには自衛のために訓練していたシャーレイが出ないと行けない位にキツい作戦であり、ミラはあくまでも足に徹し、シャーレイがひなたを取り戻す役をする。シャーレイが望んだことであり、同時にそれがミラがサポートに徹する事で事故を未然に防げる可能性を増やす手立てであった。
ここでやらなくてはならないのが、ひなたの誘拐、そして説得。そして、万が一ヴァルコラキが襲ってきた時のシャーレイ、ミラの死亡の防止、そして下手人がシャーレイとミラである事の隠蔽だった。これを成して初めて今回の作戦の成功となる。
だったら、ミラがひなたを取り戻す役を務めれば、とも考えたが、ミラはヴァルコラキが襲ってきた時に不意打ちをかまし、シャーレイとひなたを救出する役がある。もし、ミラがヴァルコラキに正面から戦いを挑まれて志望したらシャーレイもなし崩しに殺される可能性があるからだ。ミラが動かないのは、これを考えたから。
こうして作戦を練ったのはいいが、それでもそれに失敗したら。ひなたを取り戻せなかったら、もうひなたを取り戻す算段は無いと言っても過言ではない。
最初に無茶だと言ったが、それでもそれしかないと考え、こうして無茶だと思った計画を実行に移そうとしている。
「……大丈夫。絶対に成功させる」
「うん……」
絶対に成功させなければならない。成功させるのだ。成功させなければ、ひなたは近いうちにヴァルコラキの心も体も犯され、殺される。それだけは回避しなければならない。
どんな手を使ってでも、ひなたを助け出す。それだけを考えて計画を実行させる。
「……細工は流々、準備は上々、後は仕上げを御覧じろ」
「それ、なんのセリフ?」
そう言いながらシャーレイは笑うが、それでもすぐに表情は暗くなってしまう。何かの本で見たセリフを頭の中をグルグルと回しながらようやく思い出して口にしたが、それでもシャーレイの暗い表情を晴らす事は出来なかった。
それに対してミラは若干表情を暗くしながらも一応、シャーレイを安心させるために同じ便箋に入っていた紙の内容を口に出す。
「……今のヒナタの事も少しだけ分かった」
「……本当に?」
「……基本的にヒナタは一人で過ごしているらしい」
「基本的には?」
ミラの言葉の中で気になったのは、その言葉だった。
つまり、一人じゃない時間がある、という事なのか、と思い口にしたが次にミラが口にした言葉でその理由は分かった。
「……たまにヴァルコラキがヒナタと話をしているらしい……大体中指を立てられて青筋浮かべて去っているとか」
「な、中指って……っ」
その光景を簡単に想像出来るため思わずちょっと笑ってしまった。
こうして嫁いでいったのに中指を立てて夫を追い返しているという事は、少し心の中で懸念していた事……本当に心を奪われ嫁いで行った、という可能性が完全に無くなった事に喜びを覚えた、という事もあり、笑いがこみ上げてしまった。それはミラも同じで微笑んでいる。
これで全くの憂いなくひなたを誘拐する事が出来る。誘拐して、この街を離れるなりなんなりしてヴァルコラキから逃げてミラの父と合流し、報復がある前に体制を整え、ヴァルコラキを迎撃する。報復が無ければヴァルコラキは放置しておけば勝手にミラの父がヴァルコラキを討伐してくれるだろう。
「……パパも来週にはここに来れる」
「それで、この件は……」
「……ハッピーエンド。ただ、多分パパも暫くここに泊まる」
それは単純に、折角助けてもらったのに適当な安宿に泊まれ、なんて言いにくいからだ。それに、ミラとしても父には色々と話したい事はある。だから泊まってほしかった。年頃の少女しかいない家に泊まる、というのも父にとっては複雑かもしれないが。
「それなら、ちょっと夜は控えないとね」
「……あはははぁ」
その言葉にミラは苦笑いを返す事しかできなかった。
一応、ミラの父には体の関係は秘密にしているのであまりバレたくないのは確かだが、声を控えた所で夜中の静かな時に色々とヤったら小さくも声が漏れてしまいバレてしまうため、どっちにしろヤるのを控えてもらわないと父から結構白い目で見られるかもしれない。
そこにミラも混ざった事があるとバレれば結構複雑な目で見られるかもしれない。一人娘がバイだと言ってそのまま同性の同居人の性処理に巻き込まれたなんて複雑に決まっているだろう。ミラも自分に子供が出来たとして、そんな爛れたような関係になりました、なんて言われたら複雑な気持ちになるだろう、としか思えない。
「……取り敢えず、あと四日は待機することになる」
「四日……」
「……だから、練習でケガしないように」
「分かった。怪我しない程度に頑張るね」
「……うん」
後は四日後の結婚式だ。一応、時間は朝ではなく昼頃らしいが、それでも時間が多く残されている訳ではない。すぐに心を戦いに備えさせないといけないだろう。
言いたいことを言い終わったミラが台所から出て行ったのを見届けてからシャーレイは出してあった食材をまな板の上に置いた。それを切る力が何時もよりも少しだけ強かった。
シャーレイが銃を使ってミラが剣……ひなた要らなくね? こいつ家で待機させておいた方がよくね? ってかこいつを主婦にさせておいた方がよくね?
もうこれ(誰が主人公か)分かんねぇな