魔弾使いのTS少女   作:黄金馬鹿

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この話は七十五魔弾の補完的な話ではありますが、これから先に投稿されるAfterストーリーを楽しめなくなる可能性を十分に秘めています。

それでもよろしい方のみ、本文の方へとお進みください。もし、Afterストーリーをほのぼの感たっぷりで見ていたい方々はブラウザバックをして次話の投稿をお待ちください。

それと、この話の前にあとがきを投稿していますので先にそちらをどうぞ











それでは、どうぞ


真・最終魔弾

 ブラッドフォードの城の中に何人もの人間が踏み込んできた。

 その気配は己の手の中にある水晶を覗き見ていたブラッドフォードにはすぐに伝わった。城の中は己の体内とほぼ同様。そして、そこへ配置している魔獣達はブラッドフォードが暇つぶし程度に造り出した物。外に巣食う魔獣達のレプリカ、クローンと言える生命体だが、それでもその力は軽くオリジナルを凌駕している。

 ブラッドフォード自身の細胞等を使い強化した特別製だ。それを倒せる人間なんてそうはいない。いない、のだが一人の人間が魔獣達を切り裂きながら突っ込んでくるのが感覚的に分かる。

 特別製の魔獣。何が特別かと言えばブラッドフォードを含めた真祖特有の不死性を得た魔獣なのだが、それを一刀で斬り捨てている。それが持つ意味は、その人間が『不死を殺す』という概念を封じ込めた武器を持っているか、単純に不死に対する特攻を神か何かから授かっているか。恐らく、前者だろう。昔その剣を片手に猪武者をしてきた人間は見たことがある。だが、五月蠅かっただけで数秒で肉塊へと変わったが。

 その時の剣は確か、何処かに放置してきた。それを拾ってきたのだろう。恐らく、あの若造を滅した男だろう。ブラッドフォードは己の玉座の後ろへ視線をやり、小さく笑いながら指を鳴らす。そうすると自分の後ろのモノはカーテンによって隠される。

 それと全く同時にブラッドフォードの待つ玉座へ続く扉が人間にしては一瞬。しかし、ブラッドフォードから見れば人間にしては速い、程度の速さで切り刻まれ、崩れ落ちる。

 その奥に居るのは、修羅。

 普段は優しい父としての顔を持つ男が、憤怒を。そして、誓いを秘めた目を持ち、それを体現する表情を浮かべて血を滴らせながら現れた。

 名を、イヴァン・マイヤーズ。

 

「ブラッドッ、フォードォォォォォォォッ!!」

 

 イヴァンの姿が霞のように消えていく。

 その一秒も経たないうちに。いや、コンマ一秒後にイヴァンの姿はブラッドフォードの目前へと出で、不死殺しの剣を振るっていた。

 その剣を楽々と手のひらから放出した魔力で作り上げた障壁で防ぎながら思い出す。

 あの剣の銘は何だったか、と。確か、『知り合いだった錬金術師』がそれを自慢げに見せてきたのを覚えている。それが紆余曲折あり他人の手に渡り続けて……それが今ここにある。

 確か銘は。そうだ。

 

「インモルターレ」

「何、を……ッ!!」

「その剣の銘だ」

 

 あの錬金術師しか知らない言葉だったのを覚えている。確か、意味は不死だったか。

 不死殺しに不死の名を付ける、というジョークだったのは覚えている。もう摩耗しきった記憶を漁りながらブラッドフォードは片手間にイヴァンを障壁の魔力を爆発させる事で吹き飛ばす。

 イヴァンはその程度では傷一つ負わず、再び霞のように消えて扉の前で姿を現した。

 奇妙な体術を使う。素直にそう思った。イヴァンが十年以上の年月をかけて生み出した体術はブラッドフォードにとって『奇妙』の一言で終わってしまった。

 

「して、何用だ?」

「ミラを、俺の娘を何処にやりやがったッ!!」

 

 ブラッドフォードの問いにイヴァンは食い掛かるように答えた。

 イヴァンは昨日、それを見つけた。真っ二つになった馬車とミラ達の荷物。そして御者の男の片腕の無い死体とおびただしいまでの血痕。それは明らかにミラ達が襲われて何かあったという事だ。

 あそこら辺一体の魔獣や害獣は片足しかないミラでも後れを取る事はない。しかも馬車には魔獣避けの結界を張るための装置もあり、それは馬車が真っ二つになったにも関わらずしっかりと動いていた。なのに、何かがあった。

 イヴァンはその近くにあったブラッドフォードの城からこれはブラッドフォードの仕業だと目を付けた。そう考えるのが、妥当だった。外れていたとしてもどちらにしろブラッドフォードは倒さなくてはならない敵。下してからミラを見つけにいくまでだった。

 イヴァンの怒りに染まった声を聞いてブラッドフォードは笑った。

 笑わざるを得なかった。

 この男は、まだあの娘が……眷属を含めた娘たちが『生きている』と思っている。生きて何処かにいると思い込んでいる。死んでいると思っていない。

 

「くくく……」

「何笑ってやがる……ッ!!」

 

 剣を握る手から血が滴っているぞ? と笑いながら指摘してやるが、イヴァンは気にした様子はない。

 ブラッドフォードは笑いながら先ほど仕掛けたばかりのカーテンを開けるために指を鳴らした。

 その音に反応し、カーテンはゆっくりを開いていく。

 

「貴様の探している娘とやらは」

 

 カーテンが開き、その奥にある物に目をやり、イヴァンの顔が面白いように青白くなっていく。その様子に笑いを隠し切れない。

 そして、カーテンが開ききり、その奥にある物を見せて。

 

「そこで『死んでいる』三人のどれかか?」

 

 嗤う。

 そこにあったのは、一つのカプセルだった。中の様子が見えるカプセル。

 その中には三人の少女が眠っていた。銀髪隻腕の少女と、金髪の少女と、そして隻脚の少女。その三人とも、あれだけド派手な攻防を一回したのにも関わらず眠っている。

 いや、眠っていて当然だった。その三人にはあってはならない物があったから。

 あってはならない物。それは、左胸に大きく空いた空洞。本来心臓があるべき場所にある空洞。そしてそこから流れていかない血と、三人の病的なまでに青白くなってしまった肌と顔色。

 銀髪隻腕の少女に抱き着くように眠る二人の少女。三人の少女は穏やかな顔で寝ているが、息をしていない。

 死んでいる。それがイヴァンには分かった。分かってしまった。

 

「そ、んな……」

 

 イヴァンが膝から崩れ落ちる。

 そのカプセルには、自分の娘が……ミラの姿があったから。彼女の左胸にもあってはならない筈の空洞があり、そして息をしていない。

 そんな彼女が抱き着いているひなたも、ミラと同じように反対側から抱き着いているシャーレイも。その二人も息をしていない。死んでいる。

 

「あぁ、貴様の娘は滑稽だったぞ? 少し口車に乗せてやれば抵抗なんぞしなかったからな」

 

 思い出されるのは先日の光景。

 ひなたに、己が眷属に元の世界に帰してやると提案して、それにまんまと乗って。

 後は簡単だった。魔法陣っぽい物を出して三人を同時に気絶させ、心臓を抜き取る。それだけで三人は死んだ。だが、死体の処分はしなかった。色々とやる事があったからだ。

 

「くくく、平和ボケした娘達だったぞ。異世界へ行く方法なぞありはしないのにな」

 

 三人を殺したあと、ブラッドフォードは空へ上っていく三人の魂を掴まえた。

 異世界へ送る事は出来ない。しかし、その魂に直接夢を見せる事によってそれを疑似的に可能とする。最も、三人にとってそれは夢だと思いだす事なぞ不可能であり、誰かの魂を潰すか話してやればそれはそれは面白い光景が見えそうだ。

 殺すが、夢は見せてやる。それが、ブラッドフォードがひなたに対して与えた『褒美』だった。

 

「しかし、我が眷属も愚かだったな。とうとう自分がこの世界に来た理由も分からずに死んでいくとはな」

「……嬢ちゃんが? どういう事だ」

 

 イヴァンがブラッドフォードの独り言に反応する。

 そう、ブラッドフォードはひなた自身が知らないひなたの秘密を知っている。

 

「簡単な事だ。我が眷属は我が直々にこの世界へと魂を呼び寄せた。所謂召喚という奴か? それをとある娘の魂に上書きしただけの事。これは元々奴の肉体ではない。別の人間の肉体に押し込んだだけの物だ」

 

 ひなた自身が知らない、ひなたの体の秘密。

 それは、ひなたの体は彼女が産まれ直した結果得れた物ではなく、元からあった体に憑依融合する形で得た者だった。ただそれだけの事だった。

 ひなたの肉体の元の所持者である少女はひなたの魂を上書きされ記憶を封じられ消え、軽く融合している状態だ。ひなたが徐々に女の姿に慣れ、言葉使いに慣れ、性の事にも徐々に慣れ、そして服装も女の物を受け入れていったのは男としての魂に少女の魂が融合していた結果だった。

 ひなたの男としての魂……つまり今のひなたの大部分を構成する陽太の魂は異世界からぶっこ抜いてきた。この魂ぶっこ抜きは、簡単に言えば召喚した。適当な魂を異世界から召喚した結果、陽太の魂は召喚され、ブラッドフォードの娯楽に利用された。肉体ごと世界を超えされるのはそれこそ神にしか無理な事だが、魂だけなら実態を持たないため簡単だった。

 そうしてぶっこ抜いてきた魂を今のひなたの肉体に上書き、というよりも陽太が八割、少女が二割程度の比率で混ぜた。ついでに魂をぶっこ抜いてから記憶を覗き、召喚直前に着ていた服やら荷物やらを作って着せたり持たせたりした。その時にブラッドフォードは地球の存在を知ったのだ。

 そうして魂を混ぜられ産まれたのが『暁ひなた』という少女だった。彼女が会話だけ出来たのは、陽太の魂ではなく少女の魂の影響だった。そして、文字を早い段階で覚えられたのも、その少女の魂があったからだ。

 そして、彼女の運命を自分が笑えるように、そして試練を与えるために自分が動いた。

 彼女を保護した人間の居る村を焼き、彼女の体を傷つけ、そして自分への憎しみを募らせながらも少女の魂が程よく馴染んだであろう頃合い……つまり半年前に彼女が訪れるであろう街の少女に手を出し自分の尻尾を掴ませ、後は成り行き。今回空を紅にして手を出したのは、ブラッドフォードが自分も適当に動くか、と思ったからだ。もしもブラッドフォードがひなたが死ぬまで放置しておくか、と思えばひなたはこの世界で笑顔で天寿を全うした事だろう。

 つまり、彼女……暁ひなたはブラッドフォードが暇潰しと娯楽で産み出された少女であり、そしてブラッドフォードの暇潰しと娯楽で死んでいっただけの、悲劇のヒロインだった。それだけの事だ。

 最も、暁陽太の魂を銀髪の少女の魂と混ぜてその体を使ったのも理由があったのだが。

 

「……つまり、だ。我が眷属も、貴様の娘も、我が楽しむためだけの駒だった。それだけの話だ」

「て、めぇ……何様のつもりだ……ッ」

 

 それを聞いたイヴァンの怒りが有頂天を迎える。いや、とっくに迎えている。

 今にでも斬りかかりたい衝動に駆られ、剣を握る手からは力を込め過ぎたためか血が流れている。

 

「我は我だ。それだけの事」

「そう、かい……!」

「うむ。付け加えるなら、貴様の娘の魂は美しいぞ? この水晶に閉じ込めているのだがな。銀と金、そして青……貴様の娘は青色だ」

「こ、のっ、クソ野郎がぁぁあああああぁぁぁぁああぁぁッ!!」

 

 とうとうイヴァンが動く。

 ブラッドフォードは笑いながらそれを迎撃する。

 人間を超えた人間と、真祖の戦い。それを見物する者は居らず、ただ玉座の後ろにカプセルに入れられた三人の少女の死体があるだけだった。

 彼女達の魂は夢を見る。見続ける。

 異世界の、地球で暮らす夢を。

 彼女達は気が付けない。それが夢だと言う事を。ブラッドフォードのさじ加減一つで崩壊してしまう世界に住んでいると言う事を。

 だが、彼女達は幸せなのかもしれない。死んでも尚、ずっと一緒に居られるのだから――




ラスボスが好々爺にいきなり変貌するわけないじゃないですかやだーww

と、いう事でひなたの本人すら知らない裏設定が開帳されました。

つまり、ひなたは『暁陽太』と『名も知らぬ少女』の魂が八対二で融合して出来た存在で、彼女は最初からブラッドフォードの手のひらの上で踊らされていました。完全にブラッドフォードの玩具だった、という訳ですね。

ちなみに、名も知らぬ少女に関しては設定がありますが……彼女に関してはひなたを拾った老夫婦、バーニーとエリザの二人が過去に巻き込まれた事件で中心にいた人物……に限りなく近い存在です。まぁ、そこら辺は小説一本出来る話になっているのでこれ以上は語りません。

ブラッドフォードに関しては……まぁ、彼も昔色々とあったんですよ、色々と。

では、また次回。血みどろな事が無いひなた達の夢の世界の話でお会いしましょう
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