命蝕龍伝記   作:柴猫

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過ぎ去った話

200年前

 

アルアが50歳(外見年齢は7~8歳頃)の時。

 

 

 

まだ、月詠族の集落があった時だった。

 

 

「パパー!ママー!」

 

虫が飛び交う綺麗な草原で一人の少女が両親のもとへ走ってきた。

 

「アルア!どうしたんだ?そんなに急いできて。心配しなくてもパパとママはここにいるぞ?」

 

柔らかそうな顔の父が我が子を抱きかかえ、自分の子供に問いかける。

 

「あのね、綺麗な虫さん見つけたの!パパとママにも見てほしいの!」

 

「本当?すごいじゃない!流石パパとママの自慢の娘ね!」

 

優しそうな母が娘を褒める。娘は喜び、微笑む。

 

「よし、じゃあ綺麗な虫さんを見に行くか!アルア、案内してくれるか?」

 

「うん!」

 

娘は元気な返事を返し、両親を綺麗な虫のもとへ案内する。

 

 

 

 

「これは……」「綺麗……」

 

「でしょ!」

 

アルアとその両親がいる場所は草原にある小さな洞窟だった。

 

 

そこにあったのは神秘的な黄色い光を放つ蛍のような虫が飛び交う、幻想的な空間だった。

 

「この虫さん捕っていいかな?」

 

アルアが両親に問う。両親は答えた。

 

「いいかい、アルア。」

 

「ん?」

 

「この虫さんたちは生きているんだ。一生懸命にね。」

 

「だから、虫さんは取っちゃいけないの。皆生きているから。」

 

両親の言葉にアルアはしばらく考え、

 

「分かった。虫さん捕らない。」

 

「いい子だアルア。」

 

アルアと両親は洞窟から出て、元の草原に戻る。

 

「虫さんだけじゃない。竜や獣、草花だって一生懸命に生きているんだ。」

 

父の呟くような言葉にアルアは首を傾げた。

 

「アルアにも分かる時が来るわよ。あ、お友達が来たわよ。」

 

「ホントだ!遊んでくるね!」

 

そう言って友達のもとへ走るアルア。

 

 

 

その表情はとても幸せそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10年後

 

それは突然やってきた。

 

アルアが少し遠くで遊んで帰ってきたとき、

 

 

村は地獄になっていた。

 

「え?」

 

辺りでは狂ったモンスターが次々に村人を襲っていった。

村人たちも武器を取りモンスターを倒してはいるが、焼け石に水だった。逆に反撃を受けて死んでいく。

あちこちで火の手が上がり、人の悲鳴が聞こえてきた。

 

 

そして、

 

上空から龍が舞い降りた。

 

鮮血に濡れた羽衣を身に纏う龍だった。

その姿にアルアは立ち尽くし

 

 

龍はアルアに狙いをつけ、口から紫色の水弾を放った。

 

水弾がアルアを貫く、はずだった。

 

横から風のように出てきた父親がアルアを庇った。

 

「パパ!」

 

その場に倒れ伏す父親を助けるためにアルアが手を伸ばした。

 

「来るな!」

 

父が吐き出すように叫んだ言葉にアルアは止まった。

そこへ母が駆け寄ってきた。

 

「ママ!」

 

「アルア!」

 

母親は自分の娘に言った。

 

「先に村の外へ逃げなさい!ずっと遠くに逃げて!」

 

「いや!パパとママと一緒に行く!」

 

「大丈夫だ。パパと…ママは後で迎えに行く。ちゃんと…生きるんだぞ。」

 

涙を流しながらアルアは頷き、逃げた。

 

 

 

 

 

ただただ逃げ続けた。






ではまたいつか
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