命蝕龍伝記   作:柴猫

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白い風

目の前の古龍を叩き潰し、翼脚を亡骸から離す。

 

依然黒い嵐は吹き続け、狂気の咆哮は絶え間なく耳に届いてくる。

 

前に自分を呼んだ人間と優しい人間、そして怖かった人間は地面に倒れ動かない。疲労してるのだろう。人間は竜と比べてスタミナが低いということは理解している。

 

むしろ脱皮前の自分では手も足も出なかった龍を本気にさせるまで追い詰めたのだから感嘆せざるを得ない。

 

十数秒間強い人間たちを見つめていたが、やがて目をそらし悪しき風に蝕まれた山の頂上へ目を向けた。龍の影響は時間がたてば消えるだろうがそれまでにこの山の生態系が持つことは無いだろう。ここは自分の故郷だ。乱されるのは気に食わない。

翼を広げ、山の頂上へ飛び立つ。

頂上へ向かう途中、聞いた事のある咆哮が聞こえた。眼下を見ると黒い嵐が吹き飛ばされ、原始的な風貌を残す竜がこちらを気に食わないように睨んでいた。

 

 

それを無視し、頂上に降り立つ。

力を溜め、一気に放出する。

 

 

 

 

 

空が本来の青い色を取り戻し、純白の光が広がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シナト村の人々と我らの団、そして万が一に備え駐在していたハンター達は呆然とそれを見ていた。

 

 

天空山の頂上から白い風のような何かが広がり、空全体を覆いつくしているのだ。そして天空山の黒い嵐のような狂竜ウイルスが徐々に薄くなっていき、やがて黒い嵐は完全に消え去った。

 

 

一同はしばし心地よい光を浴びていた。

 

 

 

 

 

 

白い風のようなものはシナト村だけに吹いてはいなかった。

シキ国の王都やそれ以外の村でもそよ風のように吹いていた。

 

 

シキ国だけではない。

 

エルデ地方やドンドルマ、果てはシュレイド地方にまでそれは届いていた。白い風は狂竜ウイルスに感染した人やモンスターを治していった。

 

それは丸一日に渡って吹き続けたという。

 

 

その後、禁足地に倒れていた三人のハンター達(とオトモアイルー一匹)を救助。全員重傷だが、命に別状はなかったらしい。

彼女たちは狂い舞いしアマツマガツチを討伐した英雄としてドンドルマの大長老に直々に称えられたが当の本人たちは微妙な表情を浮かべていた。討伐を称える宴は三日三晩続いたという。

 

その後、各地で白い結晶の欠片のようなものが見つかり調べてみるとその欠片はあらゆるウイルスを吸収しどんな病も治す不思議なものであることが判明。抗竜石と化合させ、狂竜化モンスターに攻撃すると狂竜ウイルスを完全に抑制することが出来たという結果が報告された。ギルドは量産体制を整えすぐさま残った狂竜化したモンスターの鎮静化へ動く方針を定めた。

 

 

その後、白い風の正体はディア・マガラの成体であることが判明。ギルドは命蝕龍を命蕾龍(めいらいりゅう)と変更、脱皮した後の成体を命華龍 リフィア・フィアラと名付けた。

 

 

 

 

 

 

こうして、後に〈狂嵐龍異変〉と呼ばれた世界規模の異変は幕を閉じた。




次回、最終回です。
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