第0話 震轟竜の生態
昔、塔に轟竜の希少種の番がいた。
彼らは一頭の卵を産みやがてそれが孵化。その子は活発で甘えん坊であった。
この轟竜がのちに震轟竜と呼ばれるティガレックスだった。
ある日、彼らの巣に一頭の竜が現れた。火竜希少種の番を撃退する実力を持つ彼らはその竜へ立ち向かった。
結果は、轟竜希少種の番の負けだった。彼らは見るも無残な姿になっていた。
子のティガレックスはその竜を見ていた。
漆黒の飛竜としか言えなかった。それは彼の親の遺体を食らおうとも、更に見ようともせずただそこに立っていた。竜は子供には気づかず、その場を飛び去って行った。
子は怯えていた。"UNKNOWN"への恐怖心が彼の心を支配していた。
やがて我を取り戻した子は考えた。
二度と怖い思いはしたくない。その為には最強にならなくてはならない。
たとえどんな未知が現れようともそれに打ち勝てるくらい強くなろうと考えた。
こうして彼は塔を離れ、各地を放浪した。
狩りの仕方は教わっていたので、獲物はとれた。外敵からも逃げ延び、やがて倒し続け、
30年後
ある荒れ地にアプケロスを食らっているものがいた。
荒々しい赤色の体にそれと正反対の青色の前足。
頭部は下顎が蒼、上が赤色だった。
震轟竜と呼ばれるティガレックスは獲物を食らい終わると辺りを見回し、飛び立った。
彼が降りた場所はオアシスだった。彼は水を飲もうとここに降り立ったのだ。綺麗な水を求めようと木が生い茂っていた。
そこに先客がいたことは想定外だったが。
煌めく逆鱗に身を包んだ千刃竜がそこにいたのだ。闘争心の強い千刃竜はやんのかごらぁ!と言わんばかりに咆哮。
それに対し上等だぁ!とティガレックスが咆哮。オアシスの水面が波打ち、千刃竜が怯むが、そこで逃げようとはしない。
まずは、千刃竜が飛び空中から奇襲。震轟竜は後ろに飛んで回避するが、すぐさま千刃竜が追撃。爪で震轟竜を切ろうとするが、あろうことか震轟竜がそれに向かって嚙みついたのだ。驚いてバランスを崩し、千刃竜が落下。更に嚙みついてくる震轟竜に千刃竜がもう一方の後ろ足で蹴りを入れ、何とか脱出する。
続いて、接近戦は不利と見たか千刃竜が刃鱗を飛ばす。震轟竜は大咆哮を放ち刃鱗を全て落とす。今度は震轟竜が突進し千刃竜に近づく。千刃竜はそれを回避し後ろに回り込む。すると震轟竜が前脚を持ち上げ思いきり地面に叩きつける。
直後、地面が大爆発を起こした。飛んでいた千刃竜は直撃こそしなかったが震轟竜にかまれた足に当たり、更に爆発してしまう。噛みつかれたときに爆発性の鱗片が付着してしまっていたのだ。千刃竜は墜落し、地面に叩き落される。
そこへ震轟竜がゆっくりと近づいてくる。千刃竜は飛んで逃げようとするが、その前に首に嚙みつかれてしまう。
千刃竜は息絶え、震轟竜は再び咆哮を轟かせた。
飛行能力ではリオレウスに匹敵するほどのセルレギオスがここまで一方的にやられるとは誰が予想しただろう。
こうして彼は水を飲んで、飛んで行った。
今、彼は何を追っているのだろうか。彼自身も忘れてしまった。20年も経てば竜の頭では記憶がなくなってしまう。しかし、あの時の悔しさは覚えていた。
初めて獲物に逃げられたのだ。それまで自分より強いものに対して逃げたことはあるがあくまで自分より強い者であり、それらも強くなってから仕留めた。
獲物に逃げられるのは初めてであり、これほど長く仕留めていないことも初めてだ。もっとも当の本竜は忘れてしまったが。
モンスターにとって時の流れは速い。生まれたことなどあっという間に過ぎてしまう。昨日食らった獲物の味など覚えていない。
人と違い過去に縛られることも、未来に怯えることもない。
ただ、今を生きていく。それだけだ。
命は一途に歩み続ける。遅かれ早かれ。
震轟竜はどこかの岩場に着地した。地平線に沈みゆく太陽が彼を照らす。
眩しそうに眼を閉じて、彼は寝た。
どこからか音が聞こえ、震轟竜は目を覚ました。
遠くに砂塵が立ち、音がそこから聞こえる。目を凝らしていた震轟竜の瞳に映った。
金髪の人間だった。それだけなら彼は無視して寝付くのだが、何かが引っ掛かり彼はその人間を見続けた。
光が走るように彼は思い出した。逃がした獲物の一頭。
そう考えた瞬間、震轟竜は岩から飛び降り獲物へダッシュする。横に古龍の気配がするがそんなことは関係ない。
狩猟の本能のみが彼を動かしていた。
20年の時を経て
今再び、彼らの
そして新たな英雄たちの
運命の歯車が動き出す。
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