命蝕龍伝記   作:柴猫

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第1話 彼女たちの生活

渓流のある場所にて

 

 

一頭の竜と一人の狩人が戦っていた。

 

泡狐竜 タマミツネ

彼の体には大小様々な傷がつけられていた。背びれもボロボロになり、尻尾の毛も半分近く血で塗られていた。息は荒く、既に瀕死であることが分かる。

彼は傷をつけた張本人を鋭く睨んでいた。

 

 

タマミツネに睨まれている雌火竜の防具に身を包んだ狩人はそれに臆せず、向きあう。

 

タマミツネがサマーソルトを繰り出す。すんでのところで回避し、大剣のブレイズブレイドを前脚に叩き付ける。

そこで薙ぎ払いを繰り出し、タマミツネが怯む。

反撃にタマミツネが嚙みついてきた。私はそれを再びギリギリで避け、今度は後ろ足に切り上げを食らわせる。

耐え切れずタマミツネが転倒する。私はすぐさまいつもより力を籠め、タマミツネの尻尾を斬る。

タマミツネの尻尾が半分ちぎれ飛び、タマミツネ自身も大きくのけ反った。こちらに向き直るタマミツネの目は怒りに燃えている。

タマミツネが泡を飛ばすが、大剣を横に構えガードする。だが、これで終わりではなかった。すぐさま追撃の泡が飛んでくる。私はここでタマミツネが大技を放とうとしていることに気づいた。

タマミツネが飛び上がり、こちらめがけて突っ込んでくる。それを強引に大剣でいなす。

回転しているタマミツネへ、最近習得した狩技を出す。

 

大剣を地面に叩きつけ、引きずりながらタマミツネの頭部を狙う。

私とタマミツネの視線が交錯した瞬間、大剣を一気に振り上げる。

 

狩技 地衝斬

 

 

頭部を抉られたタマミツネはよろけ、最期に苦しそうに鳴いてから地面に倒れ伏した。その後タマミツネはピクリとも動かない。

 

 

 

 

それを確認すると私はその場に座り込んだ。体はすでにあちこちが悲鳴を上げ、息も絶え絶えである。

更に休息を求める体の叫びを無視して、タマミツネに近づく。目を閉じ、泡弧竜の冥福を祈る。

 

再び目を開け、懐から剥ぎ取りナイフを取り出す。それをタマミツネの鱗の隙間に突き立て一回、二回と鱗をはぐ。三回目で何か輝くものに気づきそれを剥ぎ取る。

手に取ったものは希少な泡弧竜の水玉だった。口元に笑みを浮かべ、そっとポーチにしまう。

 

 

 

泡弧竜の亡骸を後にしクエスト達成の報告をしに、私はベースキャンプへ足を動かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー。」

 

「あ、お帰りロル。結構早く帰ってくるようになったじゃない。」

 

ギルドから貸し出されている自宅に帰ると、ソファにふんぞり返って本を読んでいる少女がいた。私にとっては師でもありそして、

 

「母さんにそう言われるとなんかな…嬉しいんだけど。」

 

「何よ。正直に嬉しいって言えばいいのに。」

 

私と年は離れていない、というか同年代に見える母は微笑みながらそう言った。

 

綺麗な金髪を短めに揃え、部屋服から見える手足は華奢で、瞳は湖のような藍色。まるでおとぎ話に出てくるような美しい姿をしている。尤も、おとぎ話に出てくる女性と比べると色々と少々適当ではあるが。

 

「で、何か良いものは出た?」

 

「うん。水玉を剥ぎ取れたよ。」

 

「お!やるじゃない。どれだけ狩りがうまくても運ばっかりは駄目だからねー。」

 

自分の武器を壁に立てかけ、母の隣に座る。

 

「泡弧竜をこの時間で狩れれば、大丈夫ね。」

 

「……いよいよ行くんだ。」

 

淹れてあったお茶をのぞきながら呟いた。昔の約束を思い出す。

 

「あんたが何のためにハンターになったのよ。ギルドからも依頼を先延ばしにしてあんたを鍛えたんだから。」

 

「分かってる。早く会いに行きたいから、今日まで必死に頑張ってきた。でも…ちょっと不安だなって。」

 

母は私の肩に手をかける。

 

「心配しないの。モンスターハンターのアルア様がついてるんだもの。何を不安がれというのよ。」

 

「料理は不安と不満の塊だけどね。」

 

「う…うっさいわ!」

 

ひとしきり笑い合い、二人で天井を見上げる。

 

「ありがとう、母さん。」

 

「礼なら後よ。明日、出発しましょ。」

 

「うん!」

 

母の言葉に私は励まされ、胸の中でまだまだ助けられてるなぁと思った。

 

 

 

 

 

 

その日の夜

 

私は自室で髪の毛を鏡を見ながら梳いていた。

鏡に映るのは、雌火竜の鱗と同じ緑色の髪。女子としては少々線が太く中性的な姿。目の色は母より薄い藍。

ハンターより踊り子の方が似合いそうだが、これでも上位の飛竜を狩れる実力はある。

 

髪の毛を梳かし終わりベッドに横たわり、これからの事を考えた。

 

母が受けている極希種の調査は大陸でも凄腕の狩人しか出来ない、非常に難易度の高いものだ。それに同行するだけでも上位クラスの実力が必要になる。極希種は通常の個体を超える強さを持ち、中には古龍級に強いものもいる。それらから命を守るためには最低でも上位でなければ許されない。

私は母から特訓を受け、この年で上位飛竜を狩れる実力にまで上がった。母には感謝しかない。調査の依頼は数年前に来ていたが、当時はまだ私が下位ハンターだったためここまで引き延ばしてくれたのも母だ。

母の期待にこたえるには、あの約束を果たさなければならない。極希種の調査を進めていけば必ず会えるはずだ。

 

「……待ってて。今から会いに行くから。」

 

そう呟き、私は瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

私と母は集会浴場で村長と会っていた。

いつもは妖艶な笑みを浮かばせる村長だが、今日は真剣な顔だ。

 

「アルアさん。フロルさん。あなた達が無事に帰ってくることを私たちは心から願っています。どうか、気を付けて。」

 

「大丈夫よ村長。私たちは極希種の調査を終えて、戻ってくるから。お土産楽しみに待っててよ。」

 

「そういって下さると嬉しいです。」

 

村長がにこりと笑うと、今度は私に顔を向けた。

 

「フロルさん。あなたはどんな困難にも立ち向かえるような気がします。自分の目指すべきところへ突き進んで行ってください。」

 

「は、はい!精一杯頑張ってきます。」

 

「固まりすぎよ、ロル。」

 

母のツッコミで、場に笑いが起こる。

 

「それじゃ、行ってくるわ。」

 

「ええ。それでは。」

 

集会浴場から出ると、村人たちが皆で出迎えていた。声援が飛び交う中、私たちは竜車へ乗り込んだ。

 

「皆元気でねーー!」

 

「皆さんも頑張ってくださーい!」

 

村人たちの声を背に、母が手綱を握った。

 

「行くわよ!目指すはバルバレ!」

 

 

竜車が重く、しかし確かに動いた。

 

 

 

 

 

 

 

私たちの物語が、今始まった。




遅れてすみません!今後忙しくなってくるので更新速度落ちるかもしれません。ご了承ください!

いよいよ新章突入!フロルとアルアはどのような出来事に出会うのでしょうか。お楽しみに!あ、リフィアも出ますよ!


ではまたいつか
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