命蝕龍伝記   作:柴猫

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………今回は誠に申し訳ございません。新小説の方に精を出しすぎた結果、一年も待たせてしまいました。
さすがに開けすぎました…申し訳ありません。
恐らくこれから投稿頻度が遅くなり続けると思いますがご了承ください。
そして、一年も待たせてしまいまして申し訳ございません。


本編どうぞ


第4話 見合う者を求めて

ふと上を見上げれば満天の星空が煌々と輝く深夜。私と母さんはバルバレのメインストリートを歩いていた。

さすがに時刻も深夜近いこともあってか、ほとんどの店は戸締りされており通行人も私と母さん以外ではギルドの職員がたまに見かけるくらいだった。

 

私は未だに痛む頭を擦りながら、母は目をこすりながら歩いていた。

 

「ねえ、お母さん。」

「ん~?」

 

眠気を孕んだ声で母は答えた。

 

「…今日、どこで泊まるの?」

「しらん」

「あーそっか。…ってええ!?」

 

驚いて返すと、母は頭を掻きながら返答した。

 

「テキトーに探して見つかるでしょ、って思ってたけどまさか式があんなに長引くと思ってなかったんだもん。しょうがないじゃない」

「しょうがなくない!どうすんの今日、武器の手入れもまだだし色々準備しなきゃいけないのに極希種調査隊結成しょっぱなから野宿なんてわたし嫌だよ!?」

「まあ、なるようになるわよ」

「だーかーらー!!」

 

「おや、こんな夜遅くに随分と元気のいいことで」

 

母を叱ろうとすると、私たちの後ろから男の人の声が聞こえた。

バッと振り返ると、そこには見知った顔の人が立っていた。

 

「ああ、失礼。本当ならば式が終わってからすぐに伺うつもりでしたが、事務仕事に追われまして」

「お久しぶりです。リストルさん」

「あれ?あんた式に出席してたっけ?」

 

リストル・エイジア。極希種調査及びある古龍(・・・・)の研究の第一人者であるすごい人。

母が知り合いで、子供のころに何度か会ったことがある。竜人族でとても律儀で、新大陸古龍調査隊にもスカウトされるほどの優秀な研究者らしい。

 

「いやいや、式典の最初の言葉を述べたのは私ですよ。まさか忘れられているとは」

「私、調査書を受け取った以外は殆ど寝てたんだけど」

「寝……」

「すいませんリストルさん。母が本当に…」

「はは、気にしないでくれ。君が謝る事じゃないよ」

 

人懐っこそうな、しかしどこか心の読めない笑いを浮かべるリストルさん。初めて会った時は少し怖かった印象があったが、それももうすでに去ってしまった。

 

「それで、用件は何?」

「ああ、そうでした。いや、もうこんな時間なので宿屋探しに困っているかと思いまして、私の部屋で良ければと……」

 

その言葉を聞いた途端、母が目を輝かせ、リストルの背中を叩く。

 

「ホント!?なーんだ、あんた意外と気が利くじゃない」

「いやいや……あのちょっと叩くのやめてもらってもいいですか?」

 

ごめんごめんと言いながら母がリストルの背中から手を離す。

 

「じゃ、行きましょ」

 

リストルに連れられ、私たちは宿へと向かった。

 

 

 

 

 

翌朝

 

私たちは、出発への準備を整えていた。大きな物資や竜車の手配はリストルさんがしてくれているので私は回復薬や食料の補給をしていた。極希種調査隊の印章を見せればすぐに運んでくれたので、それは楽だった。

 

問題なのは、私たちが一番やるべきで、難しい準備。それは……

 

 

 

隊員探しだ。

 

 

「う~~~ん……」

 

頭を抱えて悩む母に問いかける。

 

「あっ、お母さん。あの人良いんじゃないかな。猟虫の操り方がうまいし」

 

「いや、駄目ね。あいつ狙った部位にロクに攻撃できてない。フロウの言う通り虫の操り方は良いけど、それだけね」

 

 

私たちは今、バルバレの闘技場にいた。闘技場は捕獲したモンスターを専用の闘技場に放し、ハンターに狩らせる施設だ。一般の人々も観戦できるので、ギルドの資金の半分を占めていると言っても過言ではない。フロウは闘技場があまり好きではなかったが、楽にハンターの腕を見るのにこれほどの場所は他にないだろう。

 

極希種調査隊は、一部隊ではなく世界に何百という隊がいる。厳密にいえば、私たちが入った極希種調査隊は263番隊である。なぜ、新大陸古龍調査団のように一つにまとめないのかというのは、それは対象が地域ではなくモンスターだから、しかも世界に一頭しか確認されていないほど貴重な。

それほどのモンスターを一つの組織がまとめて調査しようとしても、膨大な人手と設備がかかる。そこでギルドは、まず隊のリーダーを決めてそのリーダーが隊全てを仕切る仕組みにしたのだ。

そうすれば、極希種の目撃情報が入り次第即、調査が可能。ギルドとしても運営に人手を割く必要もない。とても合理的である。最も、隊のリーダーになるには様々な試験が必要な為、立てるのはそう簡単ではないが。

 

 

「あのボウガン使いの人は?」

 

「確かに狙いも性格だけど、少し押しすぎね……あっ、被弾した」

 

ボウガンハンターは体勢を立て直そうとするも、ラングロトラに轢かれた。そのままネコタクで運ばれていった。

 

 

「あのハンマー使いの人はどう?他の人との連携が上手いよ」

 

「確かにそうね……でも、どうも自分本位っぽい。他の奴に対して当たりが強すぎる。一応、後で話聞いてみるけど、期待はしない方がいいわね」

 

ハンマー使いは仲間に対して、大きく檄を飛ばした。そこから徐々に連携がずさんになり、結局狩猟は失敗に終わった。

 

 

 

隊のリーダーは自分の部隊の隊員を決める権限も持っている。そのため隊員の構成も自由であり、一番大きい隊では百人以上の隊員がいるという。

でも、母さんは少数精鋭で行くらしくそのためスカウトの目も厳しいのだ。

 

すると、厳めしい鐘の音が聞こえてきた。これはバルバレで正午を告げる鐘だ。

 

「あっ、もうこんな時間。お昼どうしようか……」

 

「母さんは待ってて。私がご飯を買ってくるから。何が良い?」

 

「じゃあ、ホワイトレバーの定食お願い」

 

「うん、分かった」

 

私は闘技場の外にある食堂へ足を運んだ。お昼時ということもあってか、短くない列ができている。最後尾へ並び待っていると

 

 

スッ

 

 

ボロボロの外套を羽織った人が私の後ろを横切った。

私は即座にその男の腕を掴み、地面に押し倒す。

 

「のわぁ?!」

 

拍子抜けする間抜けな声をだしながら、男は地面に叩き伏せられた。男の手には私の財布が握られていた。

財布を引き抜くと、男はそのまま地に頭をつけた。それと同時にフードの顔があらわになった。

 

男、というよりかは少年の顔だった。童顔で、とても頼りなさそうな目つき。よく見ると、身長も低い。顔と同じく年は決して高くはない。もしかしたら私よりも幼いかもしれない。

 

 

「ごめんなさい、ごめんなさい!どうかギルドナイトに突き出すのだけは勘弁してください!」

 

少年はまくしたてるように謝罪をし、深々と頭を下げた。

 

 

 





ではまた(半年以内に)いつか

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