命蝕龍伝記   作:柴猫

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第5話 臨機応変・・・?

太陽が空の頂点を少し過ぎたばかりの時間。

 

私たちの拠点では、顔なじみの人と見慣れない人が一人、床に緊張した様子で正座していた。

立っている私の隣には麦わらに座りながら昼飯にがっついているアルア、そして少し離れた所には、ちゃんとした椅子に座るリストルさんの姿。

 

「べ、はんではんたはズリだんかばったやけ?(で、何でアンタはスリなんかやったわけ?)」

「……あの、なんて……?」

「ばあ?ばんはびどのばなしぎいべんの!?(はあ?アンタ人の話聞いてんの!?)」

「ヒィィ!すいません、すいません!」

 

母に理不尽な起こられ方をされた泥棒に少し同情してしまうが、私は母の言葉を代弁した。

 

「そもそも、あなたはどうしてスリをしたんですか?」

「それは……えっと……」

 

口を濁らす泥棒の口を開かせたのは、傍から見ていたリストルだ。厚い羊皮紙をめくり、あるページに指を置いた。

 

「バルバレの法律では、窃盗などの悪事を働いた者を司法関係者以外が捕らえた場合、その身柄をどうするかは本人の意思次第となっていますね。つまりあなたを牢に入れるのはフロウさんの気持ち次第となりますが……、昔は暴力犯が近くにいたハンターに捕らえられて、そのまま砂漠に放り棄てられたそうですよ。その後その暴力犯は干からびてミイラになって発見されたとか……」

「わぁぁぁぁぁ!分かりました。言います、言います!」

 

力と知識という刃を突き付けられた可哀想な泥棒は、泣く泣く事情を話した。

 

 

 

―――

 

僕はここからはずっと離れた小さな農村で育ったんです。

 

でも、本当に僕は仕事が出来なくて……羊たちの放牧も、鶏の世話も、料理も何をやっても駄目だったんです。周りの大人からは叱られ続け、年下の子にもバカにされるような生活を送ってきたんです。

 

唯一、村長さんがこんな僕を見かねてくれたんです。僕にハンターをやってみないかと提案してくれました。凶暴な飛竜を狩れるような腕前じゃなくても、小型モンスターを狩れるなら全然お金は仕送りできるくらいなら稼げると。村長さんは昔ハンターをやっていて、バルバレに信頼できるハンターもいるからその人に教わりなさいって。村にいても邪魔者扱いされた僕は村を出て、このバルバレに着いたんです。

 

―――

 

「その後、どうなったんですか?」

 

泥棒は先程よりも低いトーンで続きを語った。

 

「……ここに来たまでは良かったんです。ただ、そのハンターさんが大怪我を負っていて、とても、僕なんかに狩りを教えられる状態じゃなかったんです。だから代わりにその息子さんが教えてくれることになったんですが……その……中々そりが合わなくて。村にいたころと大して変わりませんでした。」

 

顔を伏せ、より哀しみの漂う声色で話した。

 

「そして、息子さんにとうとう見放されたんです。彼の父親がバルバレの病院に転院するのを機会に……」

 

そこで黙り込んでしまった泥棒に、アルアが言う。

 

「じゃあ、そこで帰ればよかったじゃないの」

 

「それは考えましたよ……でも、ここで帰ったら村長に申し訳が立たないですし、何より、何もできずに僕が帰ったら村長は村のみんなから非難されてしまう……そう考えるとなかなか帰れなくて……。考えてるうちに路銀も尽きてしまって、それで……」

 

移動式のテントに沈黙が漂う。カーテンの閉まった窓からは遮られた陽光が暗く室内を照らしている。

 

各々が沈黙を破ろうと思考している中で、私は俯く泥棒を見た。

今までの話が嘘である可能性はあるにはあるが、作り話にしてはあまりにも現実的だ。加えて、泥棒の頬を流れる涙はそれらが作り話である可能性を大いに削っていた。

 

 

パン!と、室内に母の両手を叩いた音が響いた。思考に耽っていたリストルと私、俯いていた泥棒も視線を母に向けた。

 

「アンタの話はよく分かったわ。でも、私たちにはアンタを連行する権利はない。持っているのは……」

 

そこで母は私に視線を向ける。それだけで、私は母の言わんとしていることが分かった。

 

ボロボロの外套の肩に手をかけ、話しかける。

 

「私はあなたをギルドナイトには通報しません。盗まれたものも全部帰ってきているわけですし、もうスリはやめてくださいね」

 

その言葉を聞いた泥棒、は音が聞こえそうなくらいの勢いで、地に頭を付けた。フードがはだけ、埃だらけの童顔があらわになる。

 

「ありがとうございます!ほんとうに、何から礼を言ったらいいのか……」

 

室内に入り込む陽光が部屋を暖かく照らし、雰囲気が一気に明るくなる。

 

 

そんな中、母だけは何かを考えこむかのようにして椅子に座り込んでいる。数秒の後、何かを閃いたかのように顔を上げた。

 

「そうだ!いい事思いついた!」

 

私はアルアの言葉に嫌な予感を覚えつつ、振り向いた。唖然とした表情の泥棒少年を指さし、

 

 

 

「アンタ、私たち極希種調査団に入りなさい!」

 

 

 

その後、またもやバルバレに少年の声が響いた。




少し焦りすぎましたかね、出来があまり良くない……

今後はのんびりとやっていこうかと思います。もう一つに関しては……現在思索中です
皆さんもお体に気を付けてください。


ではまたいつか
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