命蝕龍伝記   作:柴猫

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第6話 新しい仲間

母が驚愕の発言を起こした後、半ば無理やりに連れられてきた泥棒―――名前はコルネーというらしい―――と私たちは、ギルドの修練場に来ていた。控室と思しき場所には大剣からボウガンまで、ありとあらゆる武器が揃っており、初めて来たのだあろうコルネーは目を瞬かせている。

 

「ここには来たことないの?」

 

「は、はい。『修練場なんていらん。実践あるのみだ!』って言われて」

 

アルアとコルネーがそんな話をしていると、母は外套の袖を離し言った。

 

「じゃあ、ここから好きな武器を選びなさい。ちなみに前の奴とは何の武器で行ったの?」

 

「えーと……ハンマーでした」

 

「なるほど……重いものは扱いにくい感じ?」

 

はい、と話しているのを見て興味本位でついてきただろうリストルが、私に話してきた。

 

「随分と熱心だね」

 

「誰がですか?」

 

「君のお母さんだよ。さっきまですごいストレスを貯めてたようだったから。素質ある子に会って、師匠の心みたいなのが動いてるのかなって」

 

「あー、多分違うと思います」

 

正解を求めるリストルさんの顔を見て、熱が入ってるように見える母を見る。

 

 

 

「多分、母はもう選抜するのが嫌なんだと思いますよ」

 

私の推測を聞いたリストルさんは、私と同じ方向を見て

 

「……ああ」

 

ため息にも似た声を吐き出した。

 

 

私は正直、あまり彼に期待していなかった。

スリの腕は確かに良かったが物腰が臆病すぎる。ハンターという仕事は恐怖と戦う仕事と言っても過言ではないのだ。すぐに怖がるような人は、ジャギィのような小型肉食竜にさえ命を奪われる。

 

確かに彼の境遇には同情せざるを得ないが、無理に鼓舞して死なせてしまったりしたらそれこそ彼の家族や村長に申し訳が立たない。アルアは本当に何を考えているのか。

 

 

 

 

陽が落ちてきた頃には、そんな考えが泡のようにはじけていった。

 

歯車仕掛けで動くモンスターの案山子の急所と思しき部位に、次々と矢が刺さっていく様を、私は唖然とした表情とでしか見れなかった。動く標的にあれほど見事に射貫けるハンターは、私の知る限りでもごく少数だ。私だけでなく周りのハンター達も驚嘆して、その様子を見ていた。

 

鉄製の弓に矢をつがえ、次々に狙撃していくコルネーとその様子をじっと見るアルア。

 

「こんな感じですかね?」

 

「うん、ばっちりよ」

 

 

 

「すみません、何から何まで指導していただいて……」

 

「いいのよ、あたしとしてもアンタがここまで才能があるとは思ってなかったわ」

 

宿までの帰り道で、母とコルネーがそんな会話をしている。彼も最初は緊張していたが、母の気楽な話し方にリラックスしたようだ。母の会話術はとても尊敬する。

 

「さて、明日は早速狩りに行きましょうか」

 

「ええ!?もう行くの?もう少し練習してから行った方がいいんじゃ……」

 

「へ―キよ、さすがに飛竜は荷が重すぎるし、まあダイミョウザザミ位ならいけるでしょ。ね、コルネ―君?」

 

「え?あ……せ、精一杯頑張ります!」

 

「よろしい。そういう心意気は大事だよー?」

 

童顔の額を人差し指でつんつんしながら、アルアがいたずらっぽくそう言うと、私の隣を歩くリストルがコルネ―に行った。

 

「あ、そういえばご家族への連絡はしたんですか?極希種調査隊に入ると、簡単には故郷に帰れませんが」

 

その言葉を聞いたコルネ―は、ハッとして俯き加減にこう答えた。

 

「え、ええと……それはまだ……、きょ、今日は遅いですし明日にしようかなと」

 

「……まあ、そうですね」

 

 

 

 

大通りより少しそれたところにある私たちの宿、もといこれからの調査の基礎となる拠点はテント式だ。

竜車の引手のアプトノスにテント、簡易調理場など、生活に必要なものは大体揃っている。私たちが出かけている間にギルドの職員たちが整備を終わらせてくれていたらしく、竜車の側面にはギルドの紋章がかけられている。

 

お金のないコルネ―はここに泊まることになり、買ってきたもので軽い夕食を作った。もちろん母でなく私が、だが。作った料理はコルネ―にも気に入られてもらった。これから共に行動していくのならばうれしい限りだ。

 

 

夕食を終え、一人で食器を洗っていると足音が聞こえたので振り返ってみると、足音の主はコルネ―だった。

 

「こんばんは。どうしたんですか?」

 

「ちょっと、寝られなくて……少しお話良いですか?」

 

「……?いいですけど……」

 

陶器製のコップにお茶を入れ、コルネ―に渡す。

 

「ありがとうございます。……実は、フロウさんにどうしても聞きたいことがあって」

 

「聞きたいこと……ですか?」

 

 

「はい。フロウさんはモノブロスを狩ったことがありますか?」

 

「?いいえ」

 

「そうですか……実は僕がハンターになった理由は、モノブロスに会いたいっていう思いもあったんです」

 

お茶を机に置き、真剣な眼差しでコルネ―は話を続ける。

 

「昔、僕が砂漠の方へ村の人たちと砂漠でしか取れない植物を採りに行ったんです。……僕は全く取れなかったんですけど」

 

「それは…‥残念でしたね。それでその話とどういう?」

 

関係が、を言わなくてもコルネ―には通じたらしい。

 

「必死になって探しているうちに皆とはぐれてしまって……そのときに、モノブロスを見たんです」

 

ハンターに関係のない一般人がモノブロスと遭遇したという事実に私は驚いた。

 

「よくそれで生きて帰ってこれましたね……音爆弾でも持っていたんですか?」

 

「ああいえ、見たのはかなり距離が離れていたので、あちらには気づかれていませんでした。

……でも、遠くから見ただけでも威圧されました。世界には、こんなに強い生き物がいるんだなって実感したんです」

 

「……それでもう一度モノブロスに会いたい、と?」

 

はい、と初対面の時には欠片もなかった断固たる意志を発しながらそう答えた。

 

「竜人さん……リストルさんから聞いたんですが、極希種調査隊はモノブロスのような希少な生物の調査も行うんですよね。一目でもモノブロスを見たいんです」

 

私は数秒だけ考えてから答えた。

 

「いつになるかは分かりませんが、多分見れると思いますよ。私からも母に言っておきます」

 

「……!ありがとうございます!」

 

 

それからコルネ―は何度も握手をした後、寝床についた。嬉しそうなコルネ―の顔は思い出しても思わず微笑んでしまった。

 

 

 

そういえば、どうしてコルネ―は母ではなく私に相談したんだろうか?




こんな感じで緩く進めていきます


ではまたいつか
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