命蝕龍伝記   作:柴猫

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第7話 遭遇

「あ、暑い……」

 

コルネ―が額に汗を垂らしながらそう独り言を言った。

 

「この程度でへばってたら、火山とかマジで死ぬわよ」

 

「はは……そうですね」

 

「ほら、クーラードリンク」

 

アルアから渡されたクーラードリンクを危なげにキャッチしたコルネ―。その様子を見ながら、私は音爆弾をポーチに入れた。

 

 

旧砂漠

傾斜の多い砂漠。昼は灼熱の太陽が、夜は極寒の空気が襲う過酷すぎる地。

元々はここまで傾斜は多くなかったらしいが、二十年以上前に隕石の落下によりこのような急峻な砂山が聳え立っているという。

 

今回のクエストの狩猟対象はダイミョウザザミ。

盾蟹と呼ばれる甲殻種の一種で、ヤオザミの成体である。モンスターとしての危険度はそこまで高くはないが、異名の所以となる盾のような鎌に、堅牢な甲殻を持つ初心者ハンターの登竜門とも呼べるモンスターだ。

 

「大丈夫ですか、コルネーさん?無理でしたらリタイアしてしても……」

 

「フロウは心配しすぎよ。男なんだからこれくらいは平気でしょ?」

 

「ま、まあ……」

 

視線を動かしながら曖昧な返事をするコルネー。

 

「それじゃ、さっさと行くわよ」

 

 

アルアの声とともに、私たちは足を進めた。

 

 

 

 

 

極希種調査隊といっても極希種のみを調査対象にしているわけではない。

極希種の生態や、戦闘能力、そしてなぜそのような進化を遂げたのか等だ。その為に他のモンスターを狩猟したりすることもあるし、全く関係がない依頼でも受けられる。

非常に自由なシステムだが、リストルに聞いた話だと「君のお母さんの提案が元になったんだよ」という。

 

 

そういうわけで狩猟対象を探すべく、私たちは旧砂漠を歩いていたのだが……

 

 

「いませんね……」

 

「ですね……」

 

30分以上探索を続けて、見当たらないのだ。痕跡もまばらで、とても現在位置を特定するには及ばない。

 

「面倒なことになったわね…………!そうだ!」

 

アルアは空の気球に向かって手を振った。

気球からモールス信号の光が届いた。確認すれば開けた砂漠の遺跡群があるところらしい。

 

 

「よーし、二人とも行くわよ!」

 

アルアの声に私たちは、勢いよく返事をした。

 

 

 

ギルドの区分けにより、エリア8と呼ばれるその場所は今日は風の強い日らしく、肌を焼くような日差しは和らいでいるものの、砂塵がビシビシと頬に当たる。

 

私たちは言葉を出すことなく、いつでも戦闘できるよう気を張り詰めていた。意外にもコルネーも黙ってついてくる。

 

母の訓練の成果か、それとも単に怯えて声も出ないのか。

 

 

ザリッ、と明らかに砂塵の出す音ではないものを聞いた。二人とアイコンタクトを交わし、より慎重に歩みを進める。

微かだが砂塵の向こうに影が、そして人間以上のサイズを持つものが見えている。

 

 

 

目の前を覆う砂のカーテンが剥がれ、その姿をあらわにしたのは

 

 

ターゲット、盾蟹 ダイミョウザザミだ。

 

彼我の距離は約10メートルか。今はこちらに背を向けている。コルネーの憧れであるモノブロスの頭骨は、死してなおその迫力を残している。

 

 

今がチャンスと思い、背負う大剣を構えようとしたその時、

 

突然アルアが手でその動作を制した。

 

「母さん!?」

 

盾蟹に気づかれない最小限のボリュームで問いかけると、アルアは

 

「待って、あいつ何かおかしい……」

 

「え?」

 

言われてみて注意深く観察していると違和感に気づいた。ヤドである頭骨が所々、何かに貫かれたような跡が残っているのだ。それらが砂で埋まっていたためこの距離まで気づかなかったのか。

 

盾蟹がゆっくりとこちらを向く。

ヤドの破損に対して本体はそこまで傷がなかった。

 

キシャー、と鎌を上げこちらを威嚇する。私とアルアが自分の武器を構える。コルネーはガンナーの基礎として、私たちから一歩離れて弓を構え、弦を引く。

 

 

 

狩猟開始―――

 

 

 

 

その時、大地が爆ぜた。

 

「「「「!?」」」」

 

 

ダイミョウザザミの後ろの地面から土煙があがる。盾蟹自身も驚き、体を固め防御の姿勢を取る。

 

 

 

その決して小さくない体が駒のように吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

三本の金色に輝く角が、地面から突き出ていた。豪快に砂をかき分け、這い出てくる。

 

甲殻に付着した砂金が、砂漠の容赦ない太陽に照らされ、自身の存在を誇示するような圧を見せる。

三つ又に変形した尻尾を地面に叩きつけ、赤い視線が射貫くようにこちらに向けられている。

 

両翼からは爪の間から伸びたかのような、角が。頭部の角はそれ以上に黄金に輝き、見るものの視線を奪うほど美しく、そして何よりも恐ろしい。閃一角竜の名に恥じぬ輝きが、その者の名を無意識にフロウに言わしめていた。

 

 

 

「モノブロス…………極希種」

 

 

 

「うわあ!?」

 

盾蟹はコルネーの近くに落下し、彼は砂にダイブして躱す。

 

盾蟹は少しの間もんどりうっていたが、体を起こすと急いで砂をかき分け、逃げて行った。

閃一角竜の関心は、逃亡したものにはもう向けられておらず、目の前に立つ三人の人間に変わったようだ。

 

こちらを見据えながら右翼を持ち上げ、一気に叩きつける!

 

「避けて!」

 

アルアの声に我を取り戻し、彼女とは反対の方向に飛ぶ。

 

ドスッッ!!という音とともに角が地面に突き刺さった。音からして、砂の下の岩盤ごと貫いたらしい。少し遅ければ串刺しになっていただろう。

 

モノブロス極希種は私に目を向けた。角を抜き、こちらに突進する。突進をギリギリまで引きつける……

 

今!

 

そのタイミングで大剣を地面に対して横になぎ、躱す。切っ先が翼に掠り、それだけで大きく体勢が崩される。口に砂が入りながら横転していく私の視界に

 

 

 

突進中のモノブロスが、左翼の角を地面に突き刺し、それを支点に180度回り、ほぼ勢いを抑えずにこちらに再度向かってきた。

 

角竜種は地域によっては突進を往復して行うものもいるのは知っている。だが、それらは突進の勢いを足で無理やりとどまり、そこからもう一度蹴って突進するというものだ。あそこまで滑らかに往復してくるのは知らなかった。やはり極希種は凄い。

 

とはいえ、もう遅い。ここからでは回避は間に合わない、大剣の横を構えガードする。

 

 

コルネーの鉄弓から五本の矢が放たれた。四本は頑丈な甲殻に阻まれダメージを与えられなかったが、一本が翼膜に当たった。

 

わずかな怯みを見逃さずまた避ける。

 

「……っ!」

 

突進を終えたモノブロス極希種の眼前で光が迸った。

 

「逃げるわよ!」

 

アルアの叫びに、大剣を背負って全速力で走る。すぐ後ろにコルネーが必死に付いてくる。

 

 

 

 

キャンプに入るまで、私たちは一心不乱に走った。

 

 

 

 




四か月もサボった結果がこれだよ!!
もう少し早く仕上げられるようにしていきたいと思います。(probably

ではまたいつか
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