赤龍帝は千葉に居る   作:おーり

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おひさしぶりです


第5話

「ははっ、みなよハチ! このちから、自在に動くよっ!」

「お前はどこのキメラアントだ」

 

 

 時刻は放課後、場所は学校の屋上。

 調子に乗って聖なるオーラを身体に纏わせて遊ぶあーしさんに、俺の胡乱なツッコミがむなしく響いた。

 

 てっきり気のせいかと思っていたのだが、よくよく注意して促してみると見事に【特殊なチカラ】に目覚めたあーしさん。

 いやほんとにびっくりだ。

 てっきりちょいと気になる描写で読者の期待を引きつつ物語をフェードアウトさせるだけの過剰表現かと思っていたのだが、神の視点から俯瞰する世界線の状態変動は無駄に緻密に俺の逃げ場を奪ってゆくスタイルを地で往くらしい。これがシュタインズ・ゲートの選択か。ちょっと何言ってるかわからんね。

 

 それにしても、これで(悪魔)の天敵が3人に増えた。

 ラウラにアーシアにあーしさん、と刈り取られる未来しか見えない。

 細心の注意を払って、しかし決して下手に出ていることを悟られないように、俺は微妙な距離感を維持しつつ逃げ場を探すしか生き残る道は無さそうである。

 ……改めて鑑みてももうだめかもわからんね。

 

 

「まあ、そのチカラがあればまた悪魔に襲われても対処できるだろ。悪魔にとってそういう波動は天敵らしいからな、なんか武器の形になるようにでも動かせば、」

「んー? こう、か……? わっ、なんか出た!」

「」

 

 

 出て来たモノのオーラに絶句する。

 それまでにあーしさんが維持していた微かなエネルギーとはもっと別の、特に強力で攻撃的な反応を俺の探知領域が知覚していた。

 ……聖剣やないかーい。

 

 

「ハチハチ! なにこれこわいやばい!」

「ばかやめろ振るな近づくなそれ仕舞えッ!?」

 

 

 素人目に見てもへっぴり腰だとわかる姿勢でぶんぶんと振り回し、大慌てで手放そうとするあーしさん。

 しかし所有権の問題なのか、剣の柄から手が離れないようで、そのまま駆け寄ってくる彼女に思わず声を荒げてしまう。

 普段の女子に近づかれてドキドキ☆ みたいなものとはまた別の、もっとやばい恐怖を生存本能レベルで察知する俺がいた。

 

 

 

  ☆

 

 

 

 そんなドタバタラブコメ(物理)をひと通り終えて部活動に勤しむ俺たち。

 疲れたよミウラッシュ……と、彼女のせいなるぱわーに充てられて弱弱しくなっている俺は正直もう帰りたかったのだが、ユルサンと引き摺られ奉仕部に連れていかれる同伴出勤。

 それを出迎えてくれたのは御馴染み部活メイト女子ふたりの冷たい目つき……などではなく、くだんの奉仕部部室前にて部屋を覗いている不審な姿の部活メイトおふたりであった。

 

 

「……なにしてんの?」

「わっ!? って優美子か………………なんでヒッキーを引きずってんの?」

「というか、ふたりでいっしょに来るってどういうことなのかしら」

 

 

 若干優しい目つきであーしさんに応えたかと思えば、俺へとスライドされた視線から妙に光が消えてゆく始末。ハイライトさん仕事して!

 そして続け様に繋がれた雪ノ下の科白は、何処か温度が感じられない。冷たい視線に晒されることは避けられようもない結果であったらしい。これがシュタインズ・ゲートの以下略。

 

 

「いえ、あなたたちがどういう関係かということは気にはしていないの。でも部内で如何わしい行為に発展しそうになる関係性を不明瞭なままに残してしまうと今後とも活動に支障が出ると言わざるを得ないわ。そういうわけで三浦さん轢企谷くん何故遅れたのか何をしていたのか詳しくじっくり聞く必要があるわね。本当は興味もないのだけれど、仕方ないわよね」

「そういえば、さっきも昼休みもふたりで先に消えてたし……。どういうこと?」

 

 

 無駄に長い言い訳を心なしか早口でつらつら並べる雪ノ下と違って、由比ヶ浜は語彙が少ない。

 どちらにしても言えることは、何をどのように答えても言い訳にしか捉えられないので何を言っても無駄ということでしかない。

 まあ、言い訳する気力が現状無いのだけれど。

 あと雪ノ下、お前俺の名前すげぇ酷く誤変換してませんかね?

 

 

「いや、あーしは、こう、ちょっと用事があったから、ね? ていうかユイ、その言い方だとあーしとこいつがいっしょに教室から出てったみたいじゃん」

 

 

 実際のところ、俺は小手先の魔術で無線のようにあーしさんの鼓膜に直接要件を震わせて、昼休みも放課後もさっさと先に出て行った。

 なので彼女の言う通り、俺たちが連れ立って消えたようだという認識がされていることがおかしいのだが、

 

 

「……でも、優美子はヒッキーが教室からいなくなったのを追いかけるように慌てて出て行ったじゃん、お昼も、さっきも」

「うぐぅ……っ」

 

 

 お前何してんの。

 

 いやタイミングずらせよ。

 お前の身体の事情を鑑みてこっそりやってる俺の労力がほぼ無駄じゃねーか。

 

 しかし、あーしさんの新たなチカラの監修と聖剣の邪気に充てられて、現在俺には弁明するほどの気力が沸いていない。

 がんばれー、まけるなー。

 しかし聖なる剣なのに邪気とはこれ如何に。

 

 

「……あの、そろそろ我の方にも声をかけていただきたいなー、なんて……あ、いえなんでもないですスイマセン……」

 

 

 そんな彼女たちに対して、部屋の中から顔を覗かせたのは若干太めの眼鏡男子であったのだが、ひょっとして冷やかしか不審者なのだろうか。

 依頼人()? そんなモノが申し訳程度の実績も見出せないこの部屋に訪れるわけがなかろうに、と内心鼻で嗤う。

 あと眼力で部屋に再度引っ込むなよ、もうちょい主張しろ。

 

 

 

  ☆

 

 

 

「え、マジでお前依頼人なの? ふーん、わかったわ。痩せろ。これで解決だな」

「いや待ってくれ八幡、我まだ何も依頼内容を言っておらぬ」

「女子にモテたいとかそういう依頼だろ?」

「ち、ちがわい! きめつけるにゃー!」

 

 

 語尾を噛んで無駄に萌えキャラみたいな主張をするのは材木座何某。

 自身に自分で剣豪将軍という二つ名を名付ける中学二年生が陥りそうな病を患っている太めの男子だ。

 ご丁寧にバンダナに眼鏡に指ぬきグローブに厚手のマントという無駄な装備の徹底振りで、御座る口調の道化を買って出ている稀有な人材だ。

 なるほど、確かに、そのような人材がそのキャラ造りを投げ売ってまで女子にモテたいなどと願うはずもない。

 キャラの売買を取り扱う業者が何処にいるかはわからないが、簡単に取引が横行しないからこそ悪魔とかいう精神病の代表みたいな存在が堂々と実在できていたのだろうけれども。

 

 さて話がずれたがこの自称剣豪将軍、先ほど部活メイト女子ふたりが部室に入れなかった原因に当たる。

 実際、先立ってこんな人物が室内に先に佇んで居れば、如何に部屋の主であろうとも入室を躊躇わざるを得ないことは言うまでもない。

 斯く言う部屋の主の乳質(にゅうしつ)は中々薄いことも言うまでもないが。

 本当に言うまでもないことだったのはまた言うまでもない。失言なので言葉にはしない。

 

 

「ていうかヒッキー、そのひとと知り合いなの……? なんだか仲が良くない……?」

「良くはないし知り合いでもない。とりあえずなんでそういう結論に至ったのかをちょっと語れ」

「なにいってんのかわかんにゃい」

 

 

 言い回しを理解し難いあほの子には通じない言葉遣いであったのか、これまた無駄に媚びを売る語尾で他人のことを引き籠り呼びするガハマはすっとぼけていたコンチクショウ。

 思わず腐り目がガンをつけるようにメンチを切るのも仕様が無い話である。

 

 

「あまりそんな下卑た視線を向けないで欲しいわねイヤらしい。おそらく教室内でもボッチを敢行して無言で押し切っている貴方が、彼に対しては饒舌に見えるからそういう発想に至ったのではないのかしら?」

「解説どうも。つうか言うほど饒舌でもねえよ、普段も無言ってわけでもねえけどな」

 

 

 語りたがらないのは騙ることを良しとしない内心と語る必要性を抱けない人間関係の希薄さが原因なのは、ガハマの通訳を買って出た氷雪系の女怪にも理解できる理由だと思うのは俺だけなのだろうか。

 その辺りを説明する気は当然無い。どうせお前も同類だろう。解れる話を改めて語ることは尺稼ぎでしかないのだ。

 

 あと当たり前のように言葉に罵倒を挟まないで欲しいが、そこは薄っぺらいキャラ付の一環でもあるかもしれないので突き詰めるつもりにもあまりならない。

 代わりに内心で狂おしいほどに憐れみを与える。教室(故郷)へ帰…ることもできないのだろうから、お前にも家族がいるのだろう、という言葉はごっくんしましょうねぇ~。

 

 

「けぷこんけぷこん、それでだな相棒」

「俺は特命係じゃねぇぞ」

「そっちではないわ。忘れたか、あの辛く苦しい戦いの記憶を……!」

 

 

 ゴザルキャラというよりはデブキャラが使いそうな咳使いで意識を向けさせる剣豪将軍に留意を促す。

 個人的には亀山が一番好きだ。

 

 

「最近の艱難辛苦っつったらドイツ旅行くらいだが」

「我の知らぬ間に何処に向かっておったのだお主……!? そっちではなく、ほれ、あれであるぞ、いや、マジで忘れてないよね? 我のこと覚えてるよね?」

「……?」

「地の文も働かせずに普通に小首傾げて疑問符を挟むでないわぁー!? 体育の授業であるぞー! ペアを組んだではないかー!?」

 

 

 ああ、あれかぁ。

 

 

「あれは先生の攻勢殺戮呪文(ふたりひとくみつくってー)が炸裂した程度の話だろ。日常じゃねえか、俺やお前や雪ノ下の」

「そこに私を加えないで欲しいのだけど」

「間違ってないだろ」

「大いに間違っているわよ。というか、そのルビで通すってどれだけ殺伐とした日常なのよ」

 

 

 甘いな。それが俺の場合、エンカウントする小学生()によってはニフラムをかけられるまである。

 どちらかというと俺が敵っぽいが。しかもザコキャラっぽいが。しかもお前の経験値なんていらねえよ、と暗に言われているので全く誇れもしないが。

 

 

「ええい! 甘い空気を作り出すでない!」

「作ってねえよ」「偽造(つく)れてないわよ」

「女子と会話できるだけで充分ラノベみたいな話ではないか! それより依頼の話をさせてください! 話を進めさせてください! もう尺稼ぎはこりごりだよぉー!」

 

 

 昭和のオチみたいな画面が円状に窄まる幻覚を見せる怒涛の叫びに、しぶしぶ俺たちは剣豪将軍の依頼を聞く。

 ぶっちゃければ、このまま呆れて帰ってほしかった。はたらきたくないでござる。

 

 

 

  ☆

 

 

 

「転校生をォ紹介する!」

「と、虎沢愛子です! よろしくおねがいします!」

 

「……郷里(ごうり)先生、紹介するところ間違ってませんか?」

 

 

 剣豪将軍が消えたと思ったら何やらやってきて胡乱なことを宣っていた。

 雪ノ下の呆れるセリフは尤もで、そもそも部活動に転校生紹介ってなんじゃそりゃ。

 

 

「間違っとらん、平塚センセーの許可もきちんともらっとる。こいつを預かってもらえりゃそれでいいんだ」

「よ、よろしくおねがいしますぅ!」

 

 

 部室の扉をスパァンと開け放ち言い放ったスタイリッシュな登場シーンで充分に目を引いただけでジャージにグラサン姿の外語教諭・郷里先生の口調は元の落ち着いたモノに戻っていたが、連れてこられていた金髪猫目でショートヘアの、しかし色々とでかい女子の口調は落ち着くことを知らぬようにテンパったままだ。

 というか、此処の顧問に当たる平塚女史の許可も既に得られていたら、雪ノ下の拒絶の言葉も通用するわけもない。

 

 

「……許可が得られていると言われましても、そもそも此処は易々と部員を入れるような活動でも無いと思われます。彼女がそもそも何者なのか知らされていないというのに、入部だなんて、」

「お前や比企谷がいる時点で、此処はボッチを更生する施設みたいなもんだろ。こいつも似たようなもんだから仲間に入れてやってくれや。じゃ、あとは頼んだ!」

「」「よ、よろしくおねがいしますぅぅーー!!」

 

 

 私は拒絶する、そう突き放そうとした事象の隔絶は無手に終わり、自負の届かぬ領域があることを彼女は自覚したのである。

 口惜しそうに歯噛みする大和撫子とは裏腹に、この部のギャル系女子の比率は鰻登りだ。いいぞ、もっとやれ。

 

 というか、意外と俺も知る人ぞ知る人物であったことを今知らされていた。

 思わず誇らしい気持ちになるのだが、その感情は間違っているのであろう。

 

 

「え、ええと、虎沢さん、だっけ? あたし由比ヶ浜結衣、ゆいでいいからね!」

「あーしは三浦優美子、好きに呼びな」

「比企谷八幡だ。よろしく」

「は、はわわあ! と、虎沢です! よろしくですぅぅぅ!」

 

 

 入部がそこまで嬉しいのか、あざとい系とはまた違う慌て方を醸し出しつつ、やや涙目で喜びを露にする虎沢。

 なんだかほっこりとする光景がそこにあった。

 

 

「ま、まちなさい、私はまだ許可するとは言ってないわよ……」

「いや、諦めたら? もう平塚センセイの許可はあるって、ゴリセン言ってたじゃん」

 

 

 郷里先生(ゴリセン)の言い分で絶句していた雪ノ下であったが、案外復活も早かった。いやこれ復活できてるか? もうちょっと休んでろと言いたくなるくらい口調に覇気は無い。

 そんな彼女の代わりに受け入れ態勢を先に作った由比ヶ浜ではなく、あーしさんが諦めを促している。なんだかんだで仲が良いよなぁこいつら(白目。

 

 

「ていうか、雪ノ下が認められないのはゴリセンにボッチ厚生施設って認識されてたこの部の方だろ。わかるわ」

「」

 

 

 めんどくさいのでとどめを刺しておく。

 ゆっくりと、おやすみなさい……。

 

 轟沈した雪ノ下がいつもとは違う、毅然と椅子に腰掛ける姿ではなく、がくーんと背凭れに持たれて天を仰ぎ見る形で口元も半開き。ハイライトさんが死亡したのを確認し、俺たちは新しい仲間につきっきりである。

 此処はアットホームな部活です!

 

 

「虎沢さん、んー、長いから虎子ちゃんだね。虎子ちゃんはなにか特技とかってある?」

「と、とらこちゃん……! あだな、はじめて……!」

「きいてる?」

 

 

 使い物にならなくなった雪ノ下を優しさで放置し、怒涛のコミュ力を誇るガハマさんが率先して虎沢へ話題を振っている。

 そのいちいちが初体験にも当たるのか、虎沢は嬉し泣きで今にも召天しそうなほどに感極まっていたことが傍目にもよくわかった。

 

 

「ああ、呼びやすいのが一番だよな。俺とは違う不本意ではなさそうな綽名で良かったじゃないか。空も飛べそうだ」

「何の話してるん?」

 

 

 例えば校舎二階の窓から大空へ飛翔しそうな。

 本当に何の話だろうか。

 俺の場合なら鷹とバッタを交えてくるくらいのことを語りそうなのに。

 

 さておき、意外にもこの部には綽名持ちが数多く集まったことになる。

 ボッチが半数以上を占めた割には、ゆきのん、ガハマ、あーしさん、虎子、ヒキガエル、と枚挙に暇がない。

 一瞬何処かの怪異譚みたいな方向へシフトし掛けた気もしたが、出揃っているのが雪女にカエルに虎にひとふたりでは物語が始まる余地は余り無い。

 冬が来て虎が人を襲って蛙は冬眠して、それで物語は終わりだ。

 ひとりだけ上手いこと逃れた気がしないでもないが、小動物なのだからそもそも話に語られることがおかしいのだから仕方がない。すまんね、俺は先に位置抜けさせてもらう。

 

 話が大いにズレたので軌道を修正。

 虎沢愛子の話に戻そう。

 材木座の話? そんな物はなかった。そもそも誰だザイモクザって。

 

 金髪のショートカットに、やや釣り目の強気な眼差し。しかしその精神性ゆえか、眼差しは怯えたように垂れて庇護欲をそそる。

 先にも語ったが、彼女の容姿は精神性さえ除けばギャル系と言っても差し支えはない。

 しかしそれだけならばあーしさんともやや被るのだが、大いに違う点が彼女の容姿には存在する。

 でかいのだ、いろいろと。

 肉厚で長身で、豊満。

 雪ノ下が口惜しそうに歯噛みした原因が其処にもあると言っても過言ではないくらいに、彼女はダイナマイトなボディでおどおどと入り口に佇んでいた。

 普段より学内にて深層の美少女などと揶揄されている雪ノ下とはいえ、その厚みは美麗さでは抑えきれない圧倒的な格差、明白に言えば女子としての矜持が白日の下に解体(バラ)され晒され並べられる。

 そんな雪ノ下に言える言葉と言えば、まな板にしようぜ! くらいしか思いつけない俺を許してくれ……っ!

 

 あ、雪ノ下の話じゃなかったな、虎沢だったわ虎沢愛子。

 ゆきのんのことはあたまのなかからポーイっ。

 

 

「さておいて、綽名で呼ぶ、というモノはボッチにとっては一種のステータスであり障壁を破壊する行為にも等しい。ガハマさんは前々から思っていたがボッチキラーの素質がある。この場合のキラーは文字通り殺すことに等しいのだが、意味合いを二つか三つは兼ね備えていると言っても過言ではない。キタナイ、さすがガハマキタナイ。実質俺も呼ばれたくない綽名を名付けられたひとりでもあるのだしせめてそこんところ矯正できやしないものかね、友達として?」

「長いし何言ってんのかわかんねーしつーかあーしに言ってんの?」

「この中でガハマさんの友達っつったらお前だけだろう」

 

 

 新たなゆるゆりの気配、と呼ぶよりはややでっかいモノが並び立ちいっそ『二台巨砲建造』という言葉が生まれそうなおふたりから若干の距離を置いており、尚且つこの部屋で正気を保てているのは俺を除けばあーしさんしかいませんが何か?

 ちなみにガハマさんは平均身長なのに対して虎沢がストロングなので、並び立つと言っても身長の話ではない。おっぱいサンドは男の夢だよな。

 

 

「その認識も中々ひどいと思うんだけど……。つか、言いたいことあったら直接言えば?」

「言っても効かないんだよ。雪ノ下(ゆきのん)なんかもう諦めてるっぽいし」

「ハチがその綽名を使うとすっげぇ違和感……」

「怖気が走るわ」

「言うね、お前も」

 

 

 気付け薬になったらしい。

 気づけば復活し会話に混じっていた雪ノ下がさらりと俺を罵倒していた。

 次にお前は『馬鹿な、お前は死んだはず……!?』と言う……!

 

 

「あ、復活したんだ雪ノ下」

 

 

 なんでもない感じであーしさんが雪ノ下を迎え入れていた。

 言わなかった、残念だ。

 

 

「ええ、少々アイデンティティが揺るがされたけれど大丈夫よ、私はまだ戦える……!」

「何と戦ってるの、あんた……?」

 

 

 虎沢の来る前にも若干感じていたが、雪ノ下は雪ノ下でそれなりに中二病なのではと思う。

 まるでBLEACHのヒロインの如く、幽鬼のように立ち上がろうとする雪ノ下だが、その膝は未だ震えていた。

 結構レバー(肝要)へダメージが届いて要るっぽいが本当に大丈夫か?

 

 

「入部テストよ、虎沢さん」

「「ほぇ?」」

 

 

 どや顔で言い放つ雪ノ下に、虎沢とガハマさんが同じリアクションでこちらへ振り返る。

 ギャルゲーの立ち絵っぽい姿で姿勢を正し、雪ノ下は毅然と続けた。

 

 

「その結果次第では貴女を我が奉仕部へ入部することを許可しても良いわ」

「入部は決定事項なんだから諦めろよ」

「――訂正、結果次第では退部してもらうわ」

 

 

 追い出す方向に問題提起する辺り、よっぽどボッチ扱いが腹に来ているらしい。

 それならば俺のようなボッチの中のボッチこそ追い出すべきではないのか、と提起したいのだがどうか。

 ダメ? それじゃあ物語が終わってしまう?

 いいじゃねーか、代わりに舞台も学園を移して主人公交替で総武校をフェードアウトさせよう。

 それで年頃男子向けにお色気路線多めにシフトチェンジしようぜ。

 タイトルは、そうだなぁ、【乳物語(ちちものがたり)】とかそれっぽくない?

 

 

「ゆきのん、大人げないよ……」

「大人ではないのだから問題ないわ。高校生なんて子供よ」

「それを自分から使うひと初めて見た」

「わ、わかりました! その勝負、受けます!」

「受けちゃうの!?」

 

 

 ガハマさんのツッコミがさく裂する。

 容易く煽りに乗ったというか、話の激流に乗り遅れまいと内容を吟味せずに勢いで乗っている感が無くもない虎沢なのだが、話が早いのは多少ではあるが喜ばしい。何と言っても字数的に。

 

 

「それでは勝負内容なのだけど、」

「い、いきます!」

「え」

 

 

 え、今やるの?

 という雪ノ下の内心が聴こえた気がした。

 

 科白の途中で突貫した虎沢に、雪ノ下くんフットンダ!

 

 って、力業ァ!?

 

 

 

  ☆

 

 

 

「ほむ、では感想を言ってもらおうか! …………? あの、なんか増えておらぬか……?」

 

 

 翌日、部室へ現れたのは眼鏡をかけたデブであった。

 指ぬきグローブにマント、となんだか演出過多な恰好で現れたのだが……。

 正直、誰なのかを皆目思い出せぬ。

 

 

「すまん、お前誰だっけ」

「たった一日で忘れるわけなかろーうw ……え? マジネタ?」

 

 

 その『たった一日』が随分と濃厚だったんだよ、昨日は。

 

 あれから、虎沢に吹っ飛ばされたように見えた雪ノ下であったが、明確には押し『倒された』。

 その際はなんか妙な物理法則でも働いたのか、偶然にも制服を破り捨てられ、下着姿を露わとしてしまったあられもない雪ノ下を女子らが慰めることで絆が深まったらしい。ペルソナか。

 それにしたって衣服を強制的に破くほどの攻撃力ってなんだよ。いつからこの世界はtoLoveるに? その技を【装備破壊(ドレスブレイク)】と名付けよう。

 そんな濃密な放課後で、安いラブコメみたいなお色気シーンを強制的に拝見させられた俺は、とりあえず退部にはさせられなかったらしい。

 おかしい、対象が虎沢から俺に変わってる。

 いや、異論は無いのだが、拝観料として暫くは奉仕活動に準ずることを強いられるそうである。

 

 そして本日になって改めてやってきた男子は、剣豪将軍ザイモクザヨシテル。

 何処かの女神転生を思い起こさせる種族名だが、そういえば虎沢の前に来ていたわ、そんで小説を置いて行かれた。

 さて、そうして感想を言って欲しい、とのことであるが。

 

 

「悪ぃ、読んでなかった」

「そういえば、カバンに入れっぱなしだったわね」

「……え? あーしも読むの?」

「……だれだっけこのひと?」

「なんのおはなしですか?」

 

「我の扱いが酷すぎやしないかねチクショーウ!? あと八幡! お主ますますハーレムの(あるじ)みたいな立ち位置に座っておるぞぉー!?」

 

 

 マテ、今その話題に振るのは不味い。

 あとガハマさんが総じて距離を取っているだけでお前の扱いについては妥当だ。

 

 

「ハーレム……、ああ、そういえば、比企谷君にはしっかりと責任を取ってもらわないといけなかったわね……? 刑罰は何にしようかしら?」

「俺が原因じゃないじゃん、やめてよ、刑罰とか断定するの」

 

「あれはハチが悪いっしょ。女子の肌は気安くねーんだからね」

「下着、下着姿な。裸見た、みたいな言い方やめて? いや、俺からしたら大して魅力もねーんだけど、妹で慣れてるし」

 

「ヒッキーのえっち!」

「幼馴染でも被害者でも恋人でも源さんちの娘さんでもないお前に言われるのは一番納得がいかん。ノリだろ、ノリで言ってるだけだろ?」

 

「ひ、ひきがやさんはわるくないんです! わたしがちからがつよすぎたせいでぇぇ!」

「そうだけどさ、前に立ち塞がらないでくれ虎沢。今度は俺が脱げる気がする」

 

 

 男子のサービスシーンとか誰得。

 そんな悲劇を回避するためにも、全員の一言一答の最中でも虎沢から距離を取ることを忘れない。

 

 もっと明白にするならば全員からも距離を取りたいのだが、教室内の思い思いの場所に陣取る彼女らの誰からも距離を取ることは不可能な狭さなので、極力中間地点を選んでいる俺である。

 もっと広い空き教室を使うような部活動には出来なかったのか。

 平塚先生が無理を通して立ち上げたと噂の非公式活動の癖して部室を備えているとか、奉仕部のくせに生意気だ。

 

 

「やはりハーレムではないか……っ! うわーん! ハチえもーん! 八幡がいじめるよぉー!」

 

 

 薄々感づいていたのだろう、居場所が無いと思い知ってしまった物理的に幅を持つ男子は、俺を愉快な未来道具流出狸みたいなあだ名で呼んで泣きつきつつもその本人にいじめられたと部屋を脱出してゆく。

 というか逃げられた。

 おおい待ってー、お前の依頼まだ終わってないよー?

 つーかマジで俺を此処に取り残すのはやめておねがい。

 




はずかしながらもどってまいりましたが、暇つぶしで書いたモノの適当な放流ですので続きはまた間が開きます
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